5分でわかる議院内閣制!メリット、大統領制との違いなどをわかりやすく解説

更新:2021.11.16

日本も採用している政治制度「議院内閣制」。きちんと理解している人は意外と少ないのではないでしょうか。この記事では特徴や大統領制との違い、メリット、歴史などをわかりやすく解説していきます。あわせてもっと理解が深まるおすすめの関連本も紹介するので、ぜひチェックしてみてください。

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議院内閣制の特徴を簡単に解説!「連帯責任」とは

 

政治制度のひとつである「議院内閣制」。内閣と議会が分立していて、さらに内閣は議会の信任を得て成立しているものをいいます。

特徴は、「内閣の長である首相は議会から選出される」「議会は内閣不信任を決議することができる」「内閣は法案を提出できる」「内閣を構成している大臣は議会に出席する権利、義務がある」「内閣は議会に対して連帯して責任を負う」などが挙げられます。

つまり、首相や国務大臣などの「内閣」が、「議会」に属する国会議員のなかから選出され、行政を託されているシステムのことです。

日本の場合は、明治時代から「大日本帝国憲法」にもとづいて内閣や議会が存在していましたが、各大臣は議会ではなく天皇に対して責任を負うという体制になっていました。憲法上は議院内閣制ではなかったのです。

第二次世界大戦後に施行された「日本国憲法」で、議院内閣制を採用したものとされています。なかでも第66条3項には、「大日本帝国憲法」には見られなかった「連帯責任」が盛り込まれました。

「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ」というもので、首相と大臣の意見が異なる場合に、大臣は閣内に留まったまま反対派となることは許されず、首相の意見に従うか辞任するかを選ばなければなりません。また議会から内閣不信任決議を受けた場合、内閣は「解散総選挙」か「総辞職」をしなければならないと規定されています。

内閣と国会は「信託」と「責任」という協調関係にある一方で、「不信任決議」と「解散総選挙」という双方の行き過ぎを防止する手段も有しているからこそ、均衡状態を維持できているのです。

議院内閣制と大統領制の違い

 

議院内閣制と並び多くの国で採用されている政治制度が「大統領制」です。大きな違いは立法府(議会)と行政府(内閣)の関係性にあります。

まず議院内閣制における行政の長は「内閣総理大臣」で、議会によって選出されます。一方の大統領制における行政の長は「大統領」で、国民の直接選挙によって選出されます。つまり大統領は、議会に対して責任を負っていないのです。

議院内閣制における内閣は、議会からの信用によって成り立っているため、不信任決議を採択して内閣総理大臣を辞めさせることが可能です。また総理大臣も解散権をもっているので、議会を相互に干渉することができます。

しかし大統領制では、議会と内閣がそれぞれ独立して存在しているので、犯罪などによる弾劾を除いて大統領を辞めさせる権限はなく、また大統領側も議会を解散させることはできません。

さらに議院内閣制では、内閣は議会に対して法案を提出することができますが、大統領制では法案提出権がありません。また議院内閣制においては、内閣総理大臣や国務大臣の多くは国会議員から選出され、内閣総理大臣も頻繁に議会に出席しますが、大統領制では大臣が議員を兼務することはできず、大統領が議会に出席するのは年に数回程度なのです。

わかりやすくまとめると、議院内閣制では議会と内閣が相互干渉や協調を通じて密接な関係を築いている一方で、大統領制ではそれぞれが独立した組織として働いているといえるでしょう。

議院内閣制のメリットは?

 

一般的に議院内閣制のメリットは、「政権運営が安定する」「内閣総理大臣を任期中に解任できる」「与野党がはっきりと分かれる」「過激な政策をおこなう人物は内閣総理大臣に選ばれにくい」などが挙げられます。

まず「政権運営が安定する」ですが、国会議員の投票によって内閣総理大臣が選ばれるため、最大議席をもつ党の推薦する候補者が選ばれることがほとんどだからです。内閣総理大臣の出身政党と同じ政党ということになり、政権の運営が安定するといわれています。

ただ日本のように二院制で、しかも両院の権限がほぼ同等な場合、下院と上院(衆議院と参議院)で多数派の政党が異なる「ねじれ」が生じやすく、そうなると政治が停滞するという問題も指摘されています。

次に「内閣総理大臣を任期中に解任できる」ですが、これは大統領制には無い、議院内閣制の大きな特徴です。内閣総理大臣が行き過ぎた政策を実行しようとした場合、不信任決議の採択によって任期の途中であっても解任させることが可能です。

「与野党がはっきりと分かれる」は、議院のなかから選出される国務大臣が、ほぼ与党の議員となるからです。国会においても、内閣寄りの与党と反対する野党というように役割がはっきりと分かれ、チェック機能が働くとされています。

そして最後の「過激な政策をおこなう人は内閣総理大臣に選ばれにくい」は、国民による直接選挙ではなく、議員によって選ばれるからだといわれています。しかしこれは、議員が国民よりも冷静な判断ができるという前提に立っているもので、近年は大きく揺らいでいる考え方になってしまっているのも事実です。

議院内閣制の歴史。イギリスを中心に紹介

 

世界で最初の議院内閣制は、18世紀のイギリスで誕生しました。当初は、内閣を組織している大臣は国王によって自由に任免される存在だったといいます。

18世紀の末頃になると、内閣は国王と議会の双方に責任を負い、大臣は国王の信任をもって地位を認められるとともに、議会からの支持を得られないと辞職しなければならないとする「二元主義型議院内閣制」というものに発展していきます。

さらに19世紀になると議会の力が大きくなっていき、国王による任命権は形式なものとなり、議会の多数派党首が首相に任命される慣行が成立します。またこの頃には、首相は議会が不信任決議を採択した場合辞職しなければならなくなり、内閣が議会に対してのみ責任を負うので「一元主義型議院内閣制」と呼ばれるようになりました。

この「一元主義型議院内閣制」において、君主は儀礼的な役割のみを担い、行政は内閣が担うようになります。現在のイギリスをはじめ、日本やドイツなど多くの国でこの制度が採用されています。

ただイギリスでは内閣と与党が一体となっている一方で、日本は内閣と与党が独立した関係にあるのが特徴です。政務は首相以下官邸や閣僚がおこなうのに対し、党務は幹事長などの党役員が担うもので、これは1970年代以降に定着した日本独自の慣行だといえるでしょう。

イギリスの歴史から学べることとは

著者
高安 健将
出版日
2018-01-19

 

政権交代のある二大政党制、そして強いリーダーシップ……イギリスの議院内閣制は、長らく日本が理想としてきた統治手法でした。

しかし二大政党といわれていた保守党と労働党は国民の支持を失い、さらにEUから離脱をするなどして混乱をし、「理想」といわれてきたイギリスの政治は大きく揺らいでしまいました。そしていまイギリスは、これまでの議院内閣制を変えようとしているのです。果たしてどんな道を進んでいくのでしょうか。

本書は、議院内閣制の成り立ちや歴史、問題点、イギリスと日本の制度の違いなどさまざまな角度から政治の在り方を解説し、今後について考えるきっかけを与えてくれています。同じく議院内閣制をとる日本にとっても示唆に富む内容で、一読の価値があるでしょう。

日本の議院内閣制がよくわかる一冊

著者
飯尾 潤
出版日

 

本書は、日本の内閣や議会、官僚、政党など議院内閣制の基盤となっているものをそれぞれ説明し、そのうえで海外の事例と比較しながら日本の統治機構を解説している作品です。

日本の首相というと、官僚や党に担がれて何かと制約を受けているというイメージを抱いている人も多いかもしれませんが、実は構造的にはアメリカ大統領と比べてより強い権限をもっているのだとか。

議院内閣制や大統領制とひと口にいっても、国によってその運用はさまざまなのです。語り口は明朗で、特別な事前知識は必要ありません。まずは本書で日本の統治システムを学んでみましょう。

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