「ノアの方舟」は実在した?アララト山で発見されたもの、動物の謎などを考察

更新:2021.11.17

旧約聖書に登場するエピソードには興味深いものが多く、そのなかでも有名なのが「ノアの方舟」です。地球上のすべての動物を積み込み、洪水を逃れたというエピソードですが、もしかしたら実在したかもしれないことをご存知でしょうか。この記事では、あらすじとともに、舟の大きさや動物の数、「ノアの方舟」が漂着したアララト山について解説していきます。あわせておすすめの絵本も紹介するので、ぜひ最後まで読んでみてください。

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「ノアの方舟」旧約聖書の物語のあらすじを紹介

 

「旧約聖書」の「創世記」に記されている「ノアの方舟」という物語。いったいどんな内容なのか、まずはあらすじを紹介していきます。


地球上にいる人間の愚かさや堕落を嘆いた神は、すべての人類を洪水によって滅ぼしてしまおうと決めました。ノアのことは、神への信仰を常に失わなかった「正しい人」と認めていたため救うことにし、彼に方舟を作るよう命じます。

ノアは言いつけのとおり、木造で3階建ての大きな舟を作ります。そして自身と妻、3人の息子と彼らの妻、さらに地球上のすべての動物のつがいを乗せたのです。

神が起こした洪水は、40日間も続きました。方舟は流されて、「アララト山」の上に漂着します。

まずノアは、カラスを放しました。しかし地上に止まる場所が無かったため、カラスはすぐに戻ってきます。ハトも放してみたものの、結果は同じでした。

それから7日経ち、もう1度ハトを放してみると、今度はオリーブをくわえて舟に戻ってきました。

さらに7日後にハトを放すと、もう戻ってこなかったので、水が引いたことを察知し、ノアたちは方舟を出るのです。

その後彼らは祭壇を作り、神への祈りを捧げます。神は、ノアとその家族を祝福し、彼らの子孫や人類、動物たちなどすべての生き物に対し、洪水を起こして滅ぼそうとすることはしないと誓ったのです。

 

「ノアの方舟」は実在した?舟の大きさや動物の数などを検証

 

ノアとその家族だけでなく、すべての動物のつがいを乗せたという「ノアの方舟」。非常に大きなものであることが推測できます。実際のサイズについては「創世記」に記述があり、それによると「長さ300キュビト、幅50キュビト、高さ30キュビト」だそう。

「キュビト」というのは古代から西洋で使われていた単位で、メートルに直すと「長さ133.5m、幅22.2m、高さ13.3m」ほどになります。これは、現代の造船技術における黄金比率に近い数字なんだとか。

貨物列車に直すとおよそ500台分で、舟全体には、平均的な大きさの動物を12万匹以上乗せられる計算。当時の動物の種類数は約1万だと考えられているので、つがいにしても約2万匹と、十分なスペースがあるのです。

「ノアの方舟」は航行ではなく、浮遊して沈没しないための舟だったため、その形状は直方体に近いものだったと予想されています。

 

「ノアの方舟」は実在した?アララト山で発見されたものは?

 

神による洪水が起き、「ノアの方舟」が流れ着いたとされている「アララト山」。トルコに実在する、標高5000mを超える火山です。

そしてなんとこの場所から、「木造船の一部とみられる遺跡」が発見されました。1800年代に大規模な火山が起き、その後方舟のような建造物が見つかったのです。

旧約聖書に載っているサイズとほぼ同じ幅をもつ舟のようなもので、左右対称で作られているため明らかに人工物だそう。

この遺跡が「ノアの方舟」であることは、公式には認められていません。しかし「アララト山」で見つかったことから、「ノアの方舟」自体が実在したかもしれないと夢を膨らませることができるでしょう。

 

「ノアの方舟」には元ネタがある?「ギルガメシュ叙事詩」のあらすじを紹介

 

「旧約聖書」ができる以前に成立した、古代メソポタミアの文学作品「ギルガメシュ叙事詩」。実はこのなかに、「ノアの方舟」と非常によく似た物語が記されていることをご存知でしょうか。

「ギルガメシュ叙事詩」の主人公ギルガメシュは、旅をする途中で、ウトナピシュティムという賢人と出会います。ウトナピシュティムはギルガメシュに、洪水が起こった際に舟を作って危機から逃れたことを語るのです。その内容は次のようなものでした。

神はウトナピシュティムに対し、「家を打ち壊し、舟を造れ。物を諦め、すべての生きものの種を舟に積み込め」と命じました。さらに舟の寸法も縦横高さ60mの立方体にするよう指定。7階建ての舟が完成します。

やがて嵐が起こり洪水が発生すると、ウトナピシュティムは銀や金などの財産、家族、職人、動物を乗せました。洪水に飲まれた舟は、ニシル山に漂着します。

7日間後に嵐が収まると、ウトナピシュティムはハトを放しました。しかしハトは、止まる場所が無いためすぐに舟に戻ってきます。しばらくカラスを放つと、今度は帰ってきません。水が引いたことを察し、ウトナピシュティムは神に祈りを捧げました。

いかがでしょうか。「ノアの方舟」のエピソードと非常に似ています。ただ「旧約聖書」においては、神は信仰心の強いノアとその家族だけを救おうという意図が見えましたが、「ギルガメシュ叙事詩」にはそのような描写はありません。

古代、洪水は何度も起きていたといわれています。そのなかでも生き残った人が、信心深く尊い存在とされたと読み取ることができるでしょう。

 

英語でも楽しめる!かわいい動物がたくさん登場する絵本

著者
いもと ようこ
出版日
2003-04-01

 

いもとようこの可愛らしいイラストで「ノアの方舟」を描いた絵本です。

聖書に収録されているエピソードは興味深いものが多いですが、小さな子どもが触れるにはやはり絵本が最適でしょう。動物たちがたくさん登場するので、楽しく読むことができるはずです。

また本書は、英訳もついているのが特徴。絵本の文章を訳したものなのでわかりやすく、英語の学習を始めたばかりの方にもおすすめです。

 

絵だけで読む「ノアの方舟」

著者
ピーター スピアー
出版日
1986-04-01

 

「ノアの方舟」の物語を、絵だけで伝えてくれる作品です。文章による説明がないからこそ、想像を膨らませることができます。どうしてノアはこんなに大きな舟を作ったのか、どうして動物はつがいで乗せられたのか……子どもたちと話しながら読むのもよいでしょう。

本作は、「コールデコット賞」という、アメリカでその年に出版された絵本のなかから優れたものに贈られる権威ある賞を受賞しています。細かく書き込まれたイラストが魅力。おすすめの一冊です。

 

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