『小林少年と不逞の怪人』全巻ネタバレ紹介!美麗なミステリ漫画!

更新:2021.11.25

あの江戸川乱歩の名作推理小説をベースに、再構築した意欲作。それが上条明峰のサスペンス漫画『小林少年と不逞の怪人』です。 怪人二十面相、明智小五郎、少年探偵団の小林などのキャラクターが登場し、さまざまな謎に迫っていきます。大正浪漫の世界観を描いた華麗な展開に、つい目が釘付けとなるでしょう。今回の記事では、そんな本作の内容を全巻分ご紹介。

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『小林少年と不逞の怪人』が面白い!【あらすじ】

 

時は大正、ところは東京。近頃、和洋のモダンが混在する帝都の夜を騒がせる、怪人騒動が起こっていました。

あらゆる警備、あらゆる錠前を突破する希代の大怪盗、残虐にして冷酷無比な「怪人二十面相」です。しかし、華やかな活動とは裏腹に、彼は世の中に退屈していました。

 

著者
上条明峰
出版日
2017-11-20

 

一方、「喫茶白梅軒」を根城にする色白の美青年・明智小五郎も、「退屈」が口癖となっていました。

ある時、退屈を持て余した明智の前に、彼を怪人二十面相の正体と言い張る小林少年が現れます。すったもんだのやりとりをした後に、彼らは偶然にもD坂にある古書店で、奇怪な死にざまとなった女性を発見し……。
 

人には闇があると言ってのける明智小五郎が、快刀乱麻を断つが如く、難解な事件を解き明かしていくのです。

 

作品の魅力とは?

『小林少年と不逞の怪人』は怪奇小説、推理小説の大家である江戸川乱歩「明智小五郎シリーズ」「少年探偵団シリーズ」を原作として、オリジナルの脚色と登場人物を大胆にアレンジした、野心的なサスペンス作品です。

2016年に『D坂の殺人事件』、2017年に『心理試験』をモチーフとした読み切りが発表された後に連載化され、2018年に完結しました。くしくも、探偵・明智小五郎がキャラクターとして確立し、乱歩の代表作となっていった経緯と似ています(原作がこの順で発表され、シリーズ化した)。

日本で生まれた探偵といえば、金田一耕助か明智小五郎か、と言うほど、明智は有名キャラです。本家だけでなくパロディの元ネタにもなっているので、原典を知らなくても聞いたことのある方は多いでしょう。

著者
江戸川 乱歩
出版日
1987-06-01

 

モチーフがモチーフなので、彼が主要人物になっているのは当然なのですが……驚くべきはその設定。なんと本作『小林少年と不逞の怪人』における明智小五郎と怪人二十面相は同一人物なのです。

確かに明智小五郎をはじめとしてシャーロック・ホームズといった名探偵には、変装の達人という設定がしばしばあります。また怪人二十面相の方も、原作では時に明智に化けるということもしていましたが、探偵の方が変装した姿で、本性が悪人というのは前代未聞でしょう。


本家・江戸川乱歩のおすすめ作品を紹介した<江戸川乱歩のおすすめ作品15選!長編から中短編、代表作まで一挙にご紹介!>の記事もおすすめです。

出典:『小林少年と不逞の怪人』1巻

これは本作1番のアレンジですが、人の心の闇を暴いていくという作品のテーマで見ていくと、探偵役がもっとも闇を抱えているというのが非常に面白い点となっています。ある意味で、原作よりも残酷冷酷さが際立ち、怖気を催すこともあるでしょう。

もう1つ特筆すべきなのが、小林少年の存在。明智が二十面相であると勘付いた唯一の人物なのですが、実はその正体は、男装した少女なのです。紆余曲折を経て探偵助手となった彼女のツッコミが、作中では清涼剤のように働きます。

『小林少年と不逞の怪人』1巻の見所をネタバレ紹介!

 

明智と小林少年の2人は、夜の古本屋「杉書房」に不審な点を感じて、店内に入りました。すると彼らは、店主の奥さん・なつが無惨な姿で殺害されているのを発見するのです。

彼女の知り合いだと言う小林少年は独自に調査を始めるのですが、それが実を結ぶ前に、なんと彼自身が犯人として警察に捕まってしまうのでした。

 

著者
上条明峰
出版日
2017-11-20

 

状況証拠だけで無念にも確保された小林少年と、完全に他人事の明智が対比的です。原作のこの話では、そもそも小林少年は出てこず、人間関係も微妙に異なるので、元を知っている方でも楽しむことができるでしょう。

無気力な明智こと怪人二十面相が、いかにして探偵として活動を始めるのか。エログロ混じった描写も込みで、大人向けの内容となっています。

 

『小林少年と不逞の怪人』2巻の見所をネタバレ紹介!

 

未だ活動を続ける、怪人二十面相。今度は「暁月の冠」なる至宝を退屈凌ぎに盗み出すのですが、その仕事の帰りに自殺しようとする女学生を見かけて……。

明智としての顔と、怪人としての顔。相反するこの男が次に挑むのは、たおやかなはずの女学校の女子寮で起きた、連続自殺事件です。

 

著者
上条 明峰
出版日
2018-04-06

 

短編『屋根裏の散歩者』をまたも大胆にアレンジしたエピソードです。ここから登場する花崎マユミは、小林少年と同じく「少年探偵団シリーズ」に由来するキャラ。

本筋は元ネタに沿ったサスペンスミステリーですが、見所は女の園が舞台ということもあって、二十面相の力を駆使した明智の女装かもしれません。

果たしてこの怪事件に、明智が見る心の闇とは?誰がどのような経緯から「散歩者」になったのかもご注目。

 

『小林少年と不逞の怪人』3巻の見所をネタバレ紹介!

 

明智探偵事務所に花崎マユミがメイドとして雇われ、にわかに事務所が活気づいていきました。

その矢先、小林少年の懐に挑戦状らしき謎の手紙が、何者かの手によって届けられます。

本郷春木町の山岸家へ来い、というメッセージに導かれた明智達が赴くと、折しも山岸家の娘・冨美子が誘拐されたことが発覚するのです。

 

著者
上条 明峰
出版日
2018-08-06

 

それが世間を騒がす「黒手組」の仕業とあって小林少年は意気込むのですが、明智は別行動を始めます。果たして、冨美子を無事に取り戻すことは出来るのでしょうか?

本巻では短編『黒手組』『一寸法師』をモチーフとした2編のエピソードが描かれます。話は完全に再構築されて原作とは違う展開になるので、結末を予想することは困難となるでしょう。

明智の影に隠れがちですが、秀才と称される小林少年の活躍も見所です。

 

『小林少年と不逞の怪人』4巻の見所をネタバレ紹介!

 

山野家を襲う復讐劇。山野大五郎の妻、百合枝「一寸法師」と接触し、山野家の暗部を目にしました。

肉親の仇討ちに燃える「一寸法師」の正体を暴き、その出自を知った明智と小林少年は、その凶行を食い止めるべく急ぎますが……。

 

著者
上条 明峰
出版日
2018-11-06

 

一族への妄執、愛憎が感じられる、いつにも増してサスペンス色が強い展開。山野家は被害者ですが、犯人の方がよほど人間的であり、だからこそ救われないやるせなさが感じられます。

読者は小林少年の心情とマッチ。心の闇を追う明智は、そこに何を見るのでしょうか?新キャラ、ジャン・ルパンによって、明智小五郎の「本物」がいることが示唆されますが……?

 

『小林少年と不逞の怪人』5巻の見所をネタバレ紹介!

 

「涙袋の女」が次々殺されていく怪事件に、小林少年が巻き込まれてしまいました。

拉致された小林少年の手がかりを元に、明智――二十面相は、真犯人へと至ります。

 

著者
上条 明峰
出版日
2018-12-06

 

乱歩の推理小説『蜘蛛男』『猟奇の果』をベースとした最終巻。

巷を騒がす連続婦女殺人鬼「蜘蛛男」は存在せず、ジャン・ルパンのでっち上げた架空の犯人であることが判明します。二十面相の待ち望んだ、ドス黒い闇との対峙。なぜジャンは、このような行動におよんだのでしょうか?そして「本物」の明智小五郎の行方は……?

大正の闇にうごめいた事件が終息していきます。その結末は、ぜひ本編でご確認ください。

 

いかがでしたか?本作『小林少年と不逞の怪人』は漫画化にあたって原典から翻案されてマイルドになった部分と、よりセンセーショナルになった部分があり、大胆なアレンジが混在する秀作です。奇妙な違和感も味わいとして楽しむのが、乙といえるでしょう。


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