コン・ゲーム小説おすすめ6選!二転三転の騙しあいが面白い作品

更新:2021.11.17

騙し騙される頭脳戦と、先の読めない展開が魅力のコン・ゲーム小説。登場人物と一緒に読者も騙され、待ち受けるどんでん返しに何度も驚くことでしょう。この記事では、思わず手に汗握ってしまう、おすすめのコン・ゲーム小説を厳選してご紹介していきます。

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コン・ゲームとは

 

「confidence game」の略称であるコン・ゲーム。コンマンと呼ばれる詐欺師を軸に、二転三転するストーリーが描かれるミステリーのジャンルを表す言葉です。

敵も味方も欺く策略をめぐらせて、先の先を読む頭脳戦の応酬。大仕掛けとどんでん返しで、騙し騙される魅力がたっぷり詰まっています。

コン・ゲーム作品としてもっとも有名なのは、1973年に公開された映画の「スティング」でしょうか。シカゴを舞台に、修行中の詐欺師と天才賭博師が、ギャングのボスに復讐するストーリーです。

小説でも、映像に劣らない爽快感を楽しめる作品が多数あります。特におすすめの6作を厳選してご紹介していきましょう。

コン・ゲーム小説の代名詞『百万ドルをとり返せ!』

 

大物詐欺師に提案された架空の油田会社の投資話に騙されて、合計100万ドルを巻きあげられてしまった4人の男たち。天才数学教授に医者、画商、貴族といった面々です。

本書では彼らが、それぞれの専門知識を活かしたプランをたて、あの手この手の頭脳戦で100万ドルを取り戻そうとしていきます。

世界的ベストセラー作家、ジェフリー・アーチャーのデビュー作で、コン・ゲーム小説の傑作として当初から爆発的な人気を博しました。

著者
ジェフリー アーチャー
出版日
1977-09-01

 

4人は詐欺においては素人ですが、知恵を出し合って計画を練ります。その全貌は読者にも知らされず、ハラハラドキドキの展開が続くのが魅力でしょう。

原題は『Not a Penny More, Not a Penny Less』といい、直訳すると「1ペニーも多くなく、1ペニーも少なくなく」という意味。まさにこの言葉とおり、騙された100万ドルをきっちり取り返していきます。一発逆転で一気に取り返すのではなく、4回に分けて綺麗に回収する上品さも感じられるでしょう。

日本では1977年に初版が発表されましたが、コン・ゲーム小説というといまだに本作を最高傑作としてあげる人が多いそう。最初の一冊におすすめです。

和製コン・ゲーム小説の先駆け『紳士同盟』

 

1979年に雑誌「週刊サンケイ」で連載が始まり、日本初の本格コン・ゲーム小説として話題になった作品です。本作以降、日本のクライムミステリーにおいてコン・ゲームを用いた作品が多数登場することとなりました。

物語は、スキャンダルなどさまざまな理由で大金が必要になった男女4人を中心に展開していきます。かつて伝説と呼ばれていた老詐欺師のもとに集い、にわかチームを結成して大掛かりな詐欺に挑むことになるのですが……。

著者
小林 信彦
出版日
2008-06-28

 

本書の魅力として、詐欺の手口がスマートなことが挙げられるでしょう。さらに作者の小林信彦から読者に対しても「詐欺」が仕掛けられているので、呼んでいる私たちもいとも鮮やかに騙されてしまうのです。

4人が詐欺で手に入れようとしている目標額は、なんと2億円。技術や知識だけでなく、人間心理のちょっとした隙を計算して、華麗に計画を遂行していくさまから目を話せません。

続編『紳士同盟ふたたび』も発表されているので、本作が気に入ったらぜひ続きも読んでみてください。

偽札作りとアクションを描いた『奪取』

 

バックにヤクザがついている闇金で、1260万円の借金を作ってしまった雅人。友人の道郎とともに、偽札を作って返済することを考えつきました。

コンピューターに精通している道郎の技術を用い、まずはATMを騙せる偽札を目指します。試行錯誤をくり返し、しだいに精巧な偽札を作れるようになっていきました。

すると今度は、彼らの技術に目をつけたヤクザから、その身を狙われることに……。偽札作りとヤクザとの攻防が並行してすすんでいきます。

著者
真保 裕一
出版日
1999-05-14

 

「日本推理作家協会賞」と「山本周五郎賞」を受賞した作品です。

偽札作りは、究極の騙しあい。2人は「誰も偽物だと気付かない偽札には被害者は存在しない」とし、偽札を作ったものだけが勝者となる究極のゲームだと考えています。そして紙の素材や特殊加工など高度なスキルを学び、まっすぐに偽札作りに向き合っていくのです。

本当は犯罪ですが、その真摯な姿勢を見ると、応援したくなってしまうでしょう。巧みなプロットとユーモアあふれる筆致も相まって、読者は主人公たちに感情移入してしまいます。

コン・ゲームとともに、ヤクザとの攻防ではアクションシーンも楽しめる作品です。

舞台はアジア!スケールの大きいコン・ゲーム小説『T.R.Y.(トライ)』

 

1999年に発表された井上尚登のデビュー作です。「横溝正史ミステリ大賞」を受賞しました。

舞台となっているのは、20世紀初頭の東アジア。特に明治時代の日本と中国です。数ヶ国語に精通している天才詐欺師の伊沢。中国の清王朝を倒し、革命を起こそうとするグループに手を貸すことになりました。軍を相手に、一世一代の詐欺を仕掛けます。

著者
井上 尚登
出版日

 

本作の魅力は、何といってもそのスケールの大きさ。実在していた歴史上の人物も多数登場し、読者を物語に惹き込みます。随所に散りばめられた伏線がどんどん回収されていくさまも見事。どんでん返しに次ぐどんでん返しで、疾走感を保ったままラストまで駆け抜けていくのです。

また、悪を騙して弱きを助ける、「騙すこと」が正義になるコン・ゲーム小説の魅力が詰まった作品だといえるでしょう。

登場人物も妙に人間臭くて個性的。しっかりと構成されたプロットの隅々まで堪能できる一冊です。

ユーモア溢れるコン・ゲーム小説『真夜中のマーチ』

 

恐喝やAVへの斡旋などで小金を稼いでいる青年実業家、一流商社に勤めているダメ社員の青年、そして謎の美女の3人がチームを組み、美術商から10憶円を騙し取る計画を立てます。しかしプロの犯罪者集団も同じように10億円を狙っていて……。

コメディ要素も存分に含まれていて、楽しく読める作品です。

著者
奥田 英朗
出版日
2006-11-01

 

2003年に発表された、直木賞作家、奥田英朗の作品です。

ちょっとした犯罪をきっかけに知り合った3人が、それぞれの思惑のために10億円を狙います。彼らも悪人のはずですが、他の登場人物たちがもっと悪人なので、ついつい応援してしまうでしょう。ユーモラスなやり取りとドタバタ劇を楽しめます。

二転三転するストーリーで結末が読めない面白さと、スピーディーな展開が魅力のコン・ゲーム小説。ページをめくる手が止まらなくなる一冊です。

カンニングやイカサマで騙しあう痛快コン・ゲーム小説『Fake』

 

興信所で調査員をしている宮本のもとに、浪人生の息子を東京芸術大学に合格させてほしいという依頼が持ち込まれました。彼は絵の才能はあるものの、勉強がまるでできず、センター試験に四苦八苦しているというのです。宮本は、東大出身の加奈の力を借りて、完璧なカンニング計画を立てました。

しかしこれは、ある目的を達成するためにカジノバーのオーナーが仕掛けた罠だったのです。

すべてを失ってしまった宮本と加奈、そして合格を目指す親子は、復讐のために10億円をかけたポーカー勝負に挑戦することに。完璧なイカサマを用意するのですが……。

著者
五十嵐 貴久
出版日

 

ギャンブルならではの緊迫感とスリルに加え、ポーカーの醍醐味である心理戦が巧みに描かれた作品です。ポーカーのルールを知らなくても、ひと通りの説明があるので安心してください。

ハイテク機器も駆使したカンニングやイカサマはリアリティがあり、騙しているつもりが騙されていて……というコン・ゲームも堪能できるでしょう。

勝負の行方は最後までもつれにもつれます。宮本たちは10億円を手に入れて、復讐を果たすことができるのでしょうか。

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