『ギヴン』青春バンドBLが尊い。4巻までの見どころをネタバレ【アニメ化】

更新:2021.12.10

上ノ山立夏(うえのやま りつか)は、隣のクラスの佐藤真冬が持っていたギターの弦を直してあげたことをきっかけに、彼に懐かれます。初めは迷惑そうにしていた立夏でしたが、しだいに真冬の音楽センスに惹かれていくようになります。 立夏と真冬、そして彼らを取り巻く人々の恋と音楽を描いた『ギヴン』。2019年にはテレビアニメも放映された本作の魅力を紹介していきましょう。

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『ギヴン』が尊い!2019年7月アニメ化【あらすじ】

 

男子高校生の上ノ山立夏(うえのやま りつか)は、地元のライブハウスではそこそこ名の知れたギタリスト。

ある日、弦の切れたギターを抱えていた佐藤真冬と出会ったことで、彼は失いかけていた音楽への情熱と楽しさを取り戻していくようになります。

 

著者
キヅ ナツキ
出版日
2014-11-29

 

当初は意思疎通ができない真冬に手を焼いていたものの、彼のボーカルセンス、音楽センスに一気に惹き込まれ、また真冬自身にも惹かれていくようになりました。

そして2人の出会いによって、立夏と一緒にバンドを組んでいた梶秋彦と中山春樹の関係も徐々に変化していくこととなるのです。

 

作者キヅナツキとは

『雪村せんせいとケイくん』『リンクス』など、想い合っているはずなのに、どこかすれ違ってしまう恋を描くのがうまいキヅナツキ。商業デビューは2012年と若手ながら、人気の高いBL作家です。

商業デビューする以前も、その絵の綺麗さや繊細な心理描写で人気を集めていました。

著者
キヅ ナツキ
出版日
2013-01-10

代表作は初の長編作となった『ギヴン』。本作では、今までに見られたようなすれ違いや思い違いだけでなく、「大切な人との死別」といった別れも描かれています。

単に想いが成就する姿を描くのではなく、それぞれのキャラが内に秘めたもどかしさや苦しみを、明確な言葉を使わず表現する描き方が印象的な漫画家です。

キヅナツキのおすすめ作品を紹介した<キヅナツキのおすすめ漫画ランキングベスト3!>の記事もおすすめです。

『ギヴン』の魅力1:本格的な音楽漫画

『ギヴン』の魅力1:本格的な音楽漫画
出典:『ギヴン』1巻

 

本作の魅力は、恋愛だけでなく音楽に関わるシーンも重厚に描いているところではないでしょうか。単に作品の題材として「バンド」や「音楽」という要素を使っているのではなく、キャラたちが音楽を愛し、音に乗せて伝えたい想いがあることを丁寧に描いています。

歌は気持ちを伝えるうえで有効な手段の1つですが、本作のメインバンド「given」に所属する真冬も、普段は言葉にできない想いをライブ中に歌として表現する人物です。

ライブシーンでは、歌詞なのか彼の独白なのかわからない言葉たちが並び、剥き出しになった恋心を晒すようなフレーズに引き込まれます。

また、どんなメロディーが乗っているのかついつい想像してしまうような臨場感も魅力です。天才的と言われる立夏のギターと真冬のボーカル、天才ではないものの確かな才能を感じられる秋彦のドラム、それらの音を繋ぎ合わせて支える春樹のベース。聴く人を魅了する彼らの音楽を想像するだけでも楽しいですよね。

立夏も真冬も、秋彦も春樹も、音楽を通して初めて自分や相手の気持ちを察することができます。この大前提があるからこそ、4人が音楽を作る様子に深みが出ます。

 

『ギヴン』の魅力2:言葉にし難い失恋の過去

『ギヴン』の魅力2:言葉にし難い失恋の過去
出典:『ギヴン』2巻

 

本作は立夏と真冬、秋彦と春樹、この2組の恋を中心に描いていますが、真冬には亡くなった恋人が、秋彦には別れを告げられた想い人がいました。明確な三角関係というわけではありませんが、この2組の恋には別の人間の影が見え隠れするのです。

真冬には、かつてバンドマンの彼氏がいました。ある日、些細なことをきっかけに仲違いし、それからすぐに恋人は死んでしまいました。その後悔から過去と元彼に縛られている真冬。立夏のおかげで立ち直ったように見えたものの、心の奥ではもういない人物を想っているのでした。

秋彦は、高校時代に出会った圧倒的な「天才」に恋焦がれて彼と恋人になったものの、ある日一方的に別れを告げられることに。それでもなお、その元彼は秋彦を自宅に住まわせ、ときには抱くことを許可していたのです。

真冬にとっても秋彦にとっても、相手は他の誰かに置き換えられるほど軽い存在ではありません。彼らは本能にも近い衝動を抱え、言語化できずにいたのです。

そして本作では、このような言葉にできない衝動を巧みに描いています。どうしようもない失恋をした彼らの虚しさや、泥沼にハマってしまった雰囲気は、切ない恋心の描写を得意とする作者の真骨頂ともいえるでしょう。

 

『ギヴン』の魅力3:4人の恋模様

 

やはり本作の最大の魅力といえば、それぞれの恋模様ではないでしょうか。未練を断ち切れずにいる冬と秋彦を、立夏と春樹は見ていました。相手にとって替えのきかない存在があることを受け入れ、そのうえで手を差し伸べようとするのです。

最初に変化した関係は、それぞれが鳴らした音に心を震わされた立夏と真冬。口下手な2人は衝突することもありますが、だからこそ素直に距離を縮めていきます。高校生らしく純粋に互いを思い合う彼らは、未だ真冬の心に残る暗い影とどう向き合っていくのでしょうか。

また、この2人に影響されて秋彦と春樹の関係も動きを見せます。ずっと秋彦に片想いしていた春樹は、それを悟られないようにただの友人として秋彦に接していました。

しかし、真冬の登場に自分が愛した天才を思い出した秋彦は、よくない方向に落ちていきます。そんな秋彦に巻き込まれる形で、関係をこじらせた春樹。彼らがどんな答えを出すのか気になるところです。

バンドメンバーが全員スキャンダル持ちとなった「given」。立夏と真冬には「交際しているとバレるようなことはするな」と口を酸っぱくして言ってきた春樹たちが、今後どのような運営方針にしていくのか……。彼らの恋模様と合わせて注目したいですね。

 

『ギヴン』4巻の見どころをネタバレ紹介!

 

初めて4人で迎えたライブ。あらためて全員で活動することを決めたメンバーは、バンド名を「given」にあらため、SNSアカウントの開設やアーティスト写真の撮影など、本格的な活動を始めます。

立夏と真冬が付き合い始めたこと以外はバンドとして順調なスタートを切ったものの、同居人であり想い人でもある雨月との関係でヤケを起こした秋彦によって、バンドメンバーの間に小さな亀裂が生まれ始めるのです。

 

著者
キヅ ナツキ
出版日
2017-12-29

ここまで立夏と真冬の恋に焦点を当ててきた本作。ここから徐々に秋彦と同居人、そして秋彦と春樹の関係をピックアップするようになっていきます。そんな4巻の見所は、立夏や真冬とは異なり、アダルトなこじれ方をする秋彦と春樹の様子ではないでしょうか。

雨月と衝突するたび、さまざまな人のところへ転がり込んでは、いろいろなことをやってきた秋彦。そんな彼がついに、春樹のところにまでやってきたのです。

秋彦は今まで、春樹に自分の汚いところを見せないようにしていました。しかし、そうやって繕うのに疲れたのでしょう。春樹が自分に好意を持っているのをいいことに、合意もなく衝動的に抱き、冷静になったあとは「しばらく泊めてほしい」と頼み込んだのです。

無理やり手を出して春樹の気持ちを弄び、さらに利用するとは、なかなかのメンタルの持ち主ですよね。しかも春樹はそれを断ることができず、嫌いになることもできずにいました。彼の人柄の良さから「どうしようもない」と片付けることができたのかもしれません。

自身のモヤモヤを悟られないよう笑顔を作り、過去は過去と割り切る春樹の姿は、メンバー最年長の貫禄が見え隠れする非常にかっこいいシーンでもあります。彼のいつもと違う一面が見たい方にとっては、注目の場面でしょう。

『映画 ギヴン』2020年5月16日公開!大人メンバーの苦くて熱い恋

 

2019年7月にTVアニメが放送され、ノイタミナ初となるBLコミックのアニメ化として大きな話題を呼んだ本作。2020年5月16日にはアニメ映画も公開されました。

TVアニメは高校生の真冬と立夏2人の切なくて淡い恋がメインでしたが、映画では大人メンバーである、春樹、秋彦、雨月の苦くて熱い恋がメインに描かれました。新しく立ち上がったBLアニメレーベル「BLUE LYNX」によって制作されたのも注目したいポイントです、。

TVアニメ『ギヴン』公式サイトではティザーヴィジュアルのほか、キャストやスタッフの詳細も公開されています。

声をあてるのは、真冬が矢野奨吾、立夏が内田雄馬、春樹が中澤まさとも、秋彦が江口拓也、そして雨月が浅沼晋太郎です。原作やテレビアニメ版のファンの方は、ぜひとも映画もチェックしてみてください。

 

 

 

細やかに変化するキャラクターの表情、複雑な恋模様、そして迫力の演奏シーンと魅力がもりだくさんの本作。バンド漫画ファンのみならず、体ではなく心の繋がりを大切にするBLが好きな方にもおすすめの作品となっていますよ。

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