5分でわかるシェールガス!採掘方法やメリット、アメリカの革命などを解説!

更新:2021.11.18

2000年代からたびたび報道されるようになり、世界のエネルギー事情に一大変革をもたらすといわれている「シェールガス」。この記事では、採掘方法やメリットとデメリット、アメリカの革命とOPECの対応などをわかりやすく解説していきます。おすすめの関連本とともに、参考にしてみてください。

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シェールガスとは

 

「シェール」と呼ばれる頁岩(けつがん)の地層から採掘される天然ガスを「シェールガス」といいます。

シェールはもともと、数千万年前から数億年前に堆積した泥岩で、そのなかには藻やプランクトンの死骸などが含まれています。これらの有機物が長い年月を経て地中深くに埋没し、熱や圧力によってガスに変化していきました。これは原油と同じ成形の経緯で、シェールガスも化石燃料に分類されます。

ただその他の天然ガスとは堆積する地層が異なるのが特徴。その他の天然ガスは砂岩層から産出され、比較的簡単に取り出すことができますが、シェールガスが含まれる泥岩層は採掘が困難で、大々的な開発は難しいと考えられていました。

しかし2000年代前半から、技術革新によって商業ベースでのシェールガスの採掘が可能に。その結果、広大なシェールの地層があるアメリカを中心に開発が盛んになり、その他の地域でもシェールガスに対する注目が高まっているのです。

シェールガスの採掘方法

 

採掘が困難と考えられてきたシェールガスですが、以下の3つの手法によって商業ベースでの採掘が可能になりました。

まずひとつ目が、「水平坑井」という技術です。

従来の天然ガスのように垂直に採掘を進めていっても、泥岩からは十分な産出量を確保することができません。そこで、ガスを産出する地層まで垂直に掘った後、水平方向にも坑井を進める「水平坑井」を用いることで、効率的にガスを採掘することができるようになったのです。

ふたつ目は、「水圧破砕」という技術です。

水平に掘り進めたパイプに水を流し、水圧で地層にひび割れを作ります。割れ目の中にガスの通り道を作り、「水平坑井」と併用することで効率的な採掘を実現しています。

みっつ目は、「マイクロサイスミック」という技術です。

「水圧破砕」をおこなうと、「マイクロサイスム」と呼ばれる非常に微弱な地震が発生します。「マイクロサイスミック」とは、その地震の際に生じるP波とS波を観測する技術のこと。「水圧破砕」によって生じたひび割れがどれくらい広がっているの確認することができるようになりました。

2019年現在、これらの技術の知財権はアメリカが独占しています。この技術的優位を生かして、アメリカを中心にシェールガス革命が進展していったのです。

シェールガスのメリット、デメリット

 

エネルギー戦略を考えるうえで、シェールガスの採掘はさまざまなメリットがあります。

まず、これまで開発がほとんど進んでいなかったこともあり、シェールガスはまだ膨大に埋蔵されています。アメリカや中国をはじめ、世界各地にシェールの地層は存在しているのです。テキサスA&M大学のステファン・ホールディッチの発表によると、その量は実に461兆㎥に達するそうです。

またシェールガスには、水素の原料であるメタノールが豊富に含まれています。シェールガスを採掘して水素を作りだすことで、燃料電池を大量に生産できるようになり、CO2排出量の削減につながることが期待されています。

ただシェールガスにはメタンも含まれていて、燃焼すると原油よりも多くの温室効果ガスを発生させるという説も。かえって地球温暖化を進めてしまうのではないかとデメリットとして問題視する人もいるのです。

さらに後述するように、シェールガスの増産はエネルギー輸出国の戦略に大きな影響を与えます。エネルギー産出国の立場が揺らぐことで、国際政治のパワーバランスが変わることも懸念されています。

アメリカの「シェールガス革命」と影響、OPECの対応を解説

 

ここではシェールガスをめぐるアメリカの動きをまとめるとともに、それに対するOPEC(石油輸出国機構)の対応をまとめていきます。

アメリカは、国土のほぼ全域にシェールの地層が存在します。そのため、エネルギーの自給を目指してシェールガスの大々的な開発を試みていました。2000年代には先述した採掘技術を確立。2013年に世界最大の天然ガス生産国へと躍進します。また並行して、アメリカでは天然ガスを生産するコストが低下、従来の4分の1ほどになりました。

アメリカは今後、シェールガスの海外輸出拡大を目指しています。かつてオバマ大統領が「米国発のシェールガス革命は世界を席巻する」と発言したように、低価格のシェールガスは世界中から注目を集めていて、エネルギー資源をめぐる各国の動向は大きく変化しつつあるのです。

この影響を特に受けているのが、中東を中心とする産油国です。もともとアメリカは世界最大のエネルギー消費国であり、世界有数の原油購入国でもありました。そのアメリカがエネルギーを自給自足し、さらには輸出するようになると、産油国にとっては最大の顧客がライバルに変わることになるのです。

シェールガスが登場して以降、原油価格は低迷しています。これまでOPECは、原油生産を減少させることで原油価格の下落に対応してきました。しかし十分な量のシェールガスが採掘できるようになったことで、原油を減産するとそのままシェアを奪われてしまうというジレンマに悩まされているのです。

2014年11月のOPEC総会では、原油価格が下落しているにもかかわらず、原油減産が見送られています。OPECによる原油価格の調整が困難になった結果、原油価格は下落し続け、「逆オイルショック」と呼ばれる混乱を招いてしまいました。

さらにシェールガスの影響は、政治面にも波及しています。

これまでアメリカは、中東から安定的に原油を獲得するために、サウジアラビアとの関係を重視していました。しかしエネルギーの自給自足が可能になったため、アメリカにとってサウジアラビアという国はそれほど重要でなくなっているのです。

サウジアラビアは、アメリカとの関係を背景に中東で大きな力をもっていました。そのため、この現状に危機感を抱き、今度はロシアに接近を図っています。

このようにシェールガスをめぐり、国際関係は日々変化をしているのです。

これからのエネルギー戦略は

著者
石井 彰
出版日
2014-04-16

 

本書は、さまざまなエネルギー資源の特性や現状をまとめ、将来的なエネルギー戦略の展望をまとめた作品です。

シェールガスに関連した記述も充実。作者は行き過ぎた再生可能エネルギーへの傾注に批判的な立場で、シェールガスなど天然ガス資源を重視すべきだと主張し、どのように活用するのが日本にとって有益なのかを詳細に論じています。

その他の資源についても広く言及しているので、エネルギーに関する全体像を把握するうえでも役に立つでしょう。

シェールガスなどエネルギーをめぐる国際情勢を理解するために

著者
藤 和彦
出版日
2017-02-16

 

シェールガスの台頭により大きな変動を強いられている石油に注目した作品です。原油価格の乱高下が生じた背景を解説しつつ、将来の展望についても踏み込んでいます。

トランプ政権誕生後の国際情勢や、技術的な観点から石油情勢の特性を説明。さらにシェールガスの意外な盲点に触れるなど、さまざまな視点を提供してくれています。

日々変化する国際情勢に対応し、第3版まで刊行。日々のニュースへの理解も深まるでしょう。

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