「Twitter文学賞」とは?国内編の歴代受賞作おすすめ5選を紹介!

更新:2021.12.6

Twitterのアカウントを持っていれば誰でも投票することができる「Twitter文学賞」。他の文学賞とは異なり、一般の本好きユーザーの意見がダイレクトに反映される特徴があります。この記事では、歴代受賞作のなかから特におすすめの作品をご紹介していきます。

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「Twitter文学賞」とは。賞の特徴を紹介

 

「文学賞メッタ斬り!」シリーズなどで有名なフリーライターの豊崎由美が発起人となり、2011年に創設された「Twitter文学賞」。Twitter社は関与しておらず、Twitter文学賞事務局が運営しています。

最大の特徴は、一般のTwitterユーザーがもっとも面白いと思った作品をツイートすることで受賞作が決定すること。対象は前年に刊行された小説です。

作家や書評家、書店員など、本読みのプロや出版業界に関わる人が投票するのではなく、また主催者側が選ぶ候補作があるわけでもありません。純粋に、本好きの一般ユーザーの声がダイレクトに反映されているのが魅力でしょう。

投票された作品や得票数は、公式サイトで公表されています。1票しか獲得していない作品もすべて見ることができるので、どんなものに投票されたのか楽しみにしている人も多いでしょう。

では、歴代受賞作のなかから特におすすめの作品を紹介していきます。

おすすめ「Twitter文学賞」受賞作!ドイツが舞台の歴史ミステリ『ベルリンは晴れているか』

 

第二次世界大戦が終結した1945年。敗戦したドイツのベルリンは、米ソ英仏4国の統治下に置かれていました。

ある日ソ連の領域で、歯磨き粉に含まれた毒によって男が殺される事件が起こります。その歯磨き粉はアメリカ製のものだったため、米兵専用の食堂で働いていた少女・アウグステに殺人の容疑がかけられてしまいました。

アウグステにとって、亡くなった男は戦時中に自分の命を助けてくれた恩人。彼女は自身が疑われるなか、男の家族に死を伝えるため、旅に出ます。時代に翻弄されるアウグステの運命はどうなるのでしょうか。

著者
深緑 野分
出版日
2018-09-26

 

2018年に「Twitter文学賞」を受賞した深緑野分の作品です。本賞のほか、「直木賞」候補、「このミステリーがすごい!」2位、「本屋大賞」3位に入賞したベストセラーだといえるでしょう。

戦争直後のベルリンで起きた毒殺事件を中心に、2日間の出来事を描いたミステリー小説です。特徴は、当時のドイツの様子を一般市民の目線で描いているところ。家族を亡くした人の悲しみ、敗戦国の混乱がリアリティたっぷりに再現されています。

殺人事件の犯人捜しもさることながら、壮大な歴史小説としても読むことができる作品です。

「Twitter文学賞」を受賞した加藤シゲアキの注目作『チュベローズで待ってる』

 

就活に失敗してしまった光太、22歳。誘われるがままに、新宿のホストクラブ「チュベローズ」で働くことになりました。

ナンバーワンの雫、同期の亜夢、店のオーナー、そして女性客。光太はさまざまな人間関係に振り回される日々を送ります。

なかなか売り上げを伸ばすこともできずにいましたが、そんな時、彼の前に美津子という客が現れるのです。ホームページで光太の顔を見て気に入った、とのことですが……。

著者
加藤 シゲアキ
出版日
2017-12-12

 

2017年に「Twitter文学賞」を受賞した加藤シゲアキの作品です。現役アイドルが受賞をしたこと、過去に例のない得票数を獲得したことで話題となりました。

第1部の「AGE22」と第2部の「AGE32」が同時に刊行されましたが、見どころはやはり第2部。第1部がすべて壮大な伏線だったのかと思わせてくれるストーリーです。

ホストを辞めてゲーム会社に勤めている光太。しかし彼の作ったゲームが社会問題へと発展したり、妹が失踪したり、美津子の死にまつわる謎を探ったり……怒涛の展開が続きます。登場人物も多いですが、それでも読者を混乱させないのは作者の筆力によるものでしょう。結末も予想がつかないもので、最後まで楽しめる一冊です。

読みごたえのある「Twitter文学賞」受賞作『吸血鬼』

 

物語の舞台は、19世紀なかばのポーランドです。都会から田舎の村に赴任してきた役人のゲスラーと妻のエルザは、地方独自の風習や迷信、貧困を目の当たりにします。

ある日、村で妊婦の惨殺死体が発見されました。そして彼らは、村に伝わる因習に驚くことになるのです。

著者
佐藤 亜紀
出版日
2016-01-26

 

2016年に「Twitter文学賞」を受賞した佐藤亜紀の作品です。

まるで古典作品かのような、重たく、それでいて美しい文章で表される世界観が見どころ。全体的に陰鬱な空気が漂い、時が止まったかのような古い田舎の村の閉塞感が伝わってきます。

タイトルだけ見るとホラー小説のようにも思えますが、実際はポーランドの独立問題とヨーロッパの文化が絡んだ骨太の内容。吸血鬼とはいったい何のメタファーなのか、考えながら読んでみてください。

本が子どもを産む⁉奇跡の物語『本にだって雄と雌があります』

 

祖父母の住む屋敷でひと夏を過ごすことになった、小学4年生の博。その屋敷には、「書物の位置を変えるべからず」というちょっと不思議な掟がありました。しかし博は、ある晩うっかり掟を破ってしまうのです。すると……。

やがて大人になった博。祖父にまつわる記録を掘り起こし、息子に伝えていきます。

著者
小田 雅久仁
出版日
2015-08-28

 

2012年に「Twitter文学賞」を受賞した小田雅久仁の作品です。

なんといってもタイトルがキャッチー。そして文字通り、作中では本が結婚をし、子どもを産むのです。生まれた本は「幻書」と呼ばれ、そこには過去の謎や未来など誰も読んだことのない内容が記されています。

ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』とジャン・ポール・サルトルの『嘔吐・壁』のカップルから生まれた、『はてしなく壁に嘔吐する物語』という本に博が辟易する場面も……。

たっぷりのユーモアに笑いながらも、家族の物語に心があたたかくなる一冊です。

「Twitter文学賞」を受賞した幻想的な短編集『11 eleven』

 

見世物小屋を生業としている一家が、100年に1度生まれる未来を予言する謎の生物を買い取る「五色の舟」。その人にとって心地よい音を探し出し、脳内に流し続けるマイクロロボットの物語「テルミン嬢」。戦地から生きて戻ってきた名士の長男の話「土の枕」。

SFから幻想小説、怪異ものまでバラエティ溢れる11の物語が収録された短編集です。

著者
津原 泰水
出版日
2014-04-08

 

2011年に「Twitter文学賞」を受賞した津原泰水の作品。津原泰水は、津原やすみというペンネームで少女小説家としても活動していた人物です。本書を読むと、津原の作風の幅の広さに圧倒されるでしょう。

収録されている物語には、どれも作者の美学が詰まっています。なかでも「五色の舟」は、SF文学賞「星雲賞」の候補にもなりました。どこか底冷えするような不安を感じさせ、しかし美しく幻想的な文体が特徴です。精神の深いところを刺激する物語を堪能してください。

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