唯川恵のおすすめ文庫小説ランキングベスト7!女性に大人気の、あの作家。

更新:2021.11.25

直木賞作家であり、女性の心の奥に潜む心理を巧みに描き続ける唯川恵の作品は怖さを感じながらも、思わず共感し心揺さぶられるものばかり。ここでは、そんな唯川恵のおすすめ作品をご紹介していきます。

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女性から圧倒的な支持を受ける作家、唯川恵とは?

1955年、石川県に生まれた唯川恵は、短大を卒業後、銀行に就職し10年のOL生活を送ります。

1984年に『海色の午後』で集英社第3回コバルト・ノベル大賞を受賞し、作家デビューを果たします。以後、数々の恋愛小説を執筆するようになります。

1997年には、それまでの少女向け恋愛小説とは異なる、ホラー色の強い『めまい』や、サスペンス要素を取り入れた『刹那に似てせつなく』を発表します。一気に世間からの注目を集め、2001年に『肩ごしの恋人』で直木賞を受賞しました。

7位: 唯川恵が迫る、美容整形に取り憑かれた女性たち『テティスの逆鱗』

美容整形をテーマに、女性の美に対する執念を描いた作品です。徐々に深みにはまり込み、超えてはいけない境界線にまで来てしまった女性たちの姿に、恐怖感を覚えることでしょう。

著者
唯川 恵
出版日
2014-02-07


加齢への恐怖心を感じ、アンチエイジングにはまる美しい女優・條子。不倫をきっかけに、出産前の体に戻りたいと美容整形を繰り返すOL・多岐江。かつて自分を苛めた男へ復讐するため、整形をするキャバ嬢・莉子。独自の哲学によって美を追求するあまり、整形手術を繰り返すことがやめられない資産家令嬢・涼香。そして、この4人の女性を担当する美容整形外科医・晶世。物語はこの5人の女性を中心に進んでいきます。

それぞれの想いや心の闇が描かれ、5人のストーリーは複雑に絡み合っていきます。物語は徐々にホラーめいた恐ろしさに包まれます。女性たちには、どんな結末が待ちうけているのか。

美しさの基準とはなにか?という疑問を持たずにはいられない、女性にぜひおすすめしたい作品です。

6位:結婚をして家族のために生きることは幸せなのか『永遠の途中』

結婚をして仕事を辞める道を選んだ薫と結婚せずに仕事を続ける道を選んだ乃梨子。そんな彼女らの生涯を描いた作品が『永遠の途中』です。

物語は2人の最初の別れ道にして永遠に交わることのない運命の道をお互いが選ぶことから始まります。同じ職場で働いていた2人は同じ男性を好きになり、薫は思いを告げて結婚することに。一方乃梨子は自分の思いは隠したまま仕事に没頭していきます。

著者
唯川 恵
出版日

期待と裏切り、成功と挫折の繰り返しの中で2人は自分の歩んできた道が正しかったのかどうか何度も自分に問います。誰かに強制されたわけではなく自分の意志で選んできた道が間違っていなかったのか悩むのです。

人間は壁にぶち当たると自分がやってきたことは正しいのかを自問自答しがちです。自信を持って今の自分の生き様を語れる人というのは少ないのではないでしょうか。ここでも2人はお互いの生活を羨んだり、時には見下したり、またある時は無関心を装いながらも執着する自分をおさえることはできません。

作中では女性が直面するさまざまな問題に対して焦点をあてて、まるで唯川恵本人が経験してきたかのごとく2人の揺れ動く内面が赤裸々に描かれています。20代~60代までに2人は様々な人との出会いをして、最後にはやっと自分の生き方に対して意地を張るでもなくかといって卑下するのではなく、そのまま受け入れることができるようになるのです。

読みすすめていくと、自分も同じようなことしたなという場面に出会えるかもしれません。

5位:唯川恵が女の怖さを描く『セシルのもくろみ』

夫と一人息子がいるアラフォー世代の主人公宮地奈央は、専業主婦で平凡だけれど幸せな暮らしをしていました。そこへたまたま再会した学生時代の友人から、女性雑誌の読者モデルの応募をしようと持ち掛けられます。軽い気持ちで応募したのになんと合格。そこからどんどんとのし上がってなんと専属モデルにまでなっていき、誌面の表紙をめぐっての女の戦いが描かれていきます。

著者
唯川 恵
出版日
2013-04-11


この本の最大の魅力はなんといっても奈央の成長する姿です。モデルなので外見が美しくなっていくのはもちろん、心も成長していく姿が素晴らしいです。

最初は「わたしなんてモデルに向いていない」とか、誌面の連載が終了するときも「読者モデルとしていい経験をさせてもらっただけ」などというネガティヴな気持ちでいました。

専属モデルになってからは、上手くいかなくて自分と葛藤する日々もありました。しかし、誌面の表紙を飾りたいという思いが表れ始め、ライバルモデルからの嫌味やいじめに立ち向かっていきます。

周りの人たちからも助けられたり、後押しされたりと主人公がおかれている立場は徐々に変化していきます。宮地奈央という一人の平凡だった専業主婦がトップモデルになっていく姿と心が強くなっていく姿に共感したり、感銘を受けたりする女性も多くいるはずです。 

ぜひ一度読んでみてください。

4位: 唯川恵が男性を主人公にした話題作『ため息の時間』

唯川恵の作品には珍しい男性が主人公の恋愛短編集です。大人の男性の、切なさ漂う恋を描いた9つのストーリーが収録されており、「唯川恵の新境地」と書評家たちの間でも話題になった作品です。

著者
唯川 恵
出版日
2004-06-27


『口紅』の主人公・原田は、自分の妻が化粧をすることを許しませんでした。ほんの薄化粧でも、みっともないと叱るほどです。しかし妻が病気にかかり、原田の生活は一変。病状は進行していき、次第に弱っていく妻は、最後の願いとして「口紅を買ってきてほしい」と原田に頼むのです。妻が口紅を望んだ意外な理由とは?原田の心に真実が突き刺さります。

『父が帰る日』の主人公・彰一の父は、30年前、母に借金を押し付けたまま、若い女と失踪します。父が病気で入院しているという連絡を受けた彰一は、複雑な想いを抱えながらも、彼を自宅に受け入れることに…。

その他、完璧に家事をこなす妻がいるにも関わらず、不倫を続ける男が手痛いしっぺ返しを受ける『バス・ストップ』。婚約者がいながら、会社の新入社員と二股をする『言い分』など男性の哀愁が漂い、女性のしたたかさも見える本短編集。男性にもぜひおすすめしたい作品になっています。

3位: 日常に潜む女の悪意『息がとまるほど』

女性たちの計算高さや嫉妬心、他者に感じる優越感など、普段は隠している黒い感情を濃密に描いた恋愛短編集です。本作品のヒロインたちは皆、息がとまるほどの思いを味わうことになるのです。

著者
唯川 恵
出版日
2009-09-04


『無邪気な悪魔』の主人公・朋絵は、同僚と付き合う傍ら上司と不倫。同僚にプロポーズされたことをきっかけに、不倫関係を清算することを決意します。ところが上司との最後のデートをしているところを、後輩の美保に見られてしまうのです。

『蒼ざめた夜』の主人公・早紀は、略奪愛の末に今の夫と結婚をしました。ところが夫との関係がうまくいっていません。ある日、早紀はかつての同僚・亜希子と会う約束が、キャンセルされてしまい、1人バーで飲む羽目に。そこで男性に声をかけられ、心惹かれた早紀は思わず独身だと嘘をつき……。

その他、電車で濡れた傘を当てられ怒った主人公が、相手の後をつけていく『雨に惑う』。顔も性格も似ていない、二卵性双生児として生まれた2人の女性の闇を描く『あね、いもうと』など、背筋がぞくりとする8編のストーリーが綴られています。

2位: 痛々しいまでの失恋物語『燃えつきるまで』

結婚を考えていた恋人に、突然振られた主人公の傷ついた心情を描いた作品です。2002年、中谷美紀主演でドラマ化され、多くの女性から共感を呼びました。

著者
唯川 恵
出版日


主人公・玲子は31歳。キャリアウーマンで仕事も順調な玲子は、5年間付き合っている耕一郎と結婚を考えていました。しかしある日突然、耕一郎が「別れないか」と言い出します。「これといった理由はない」という彼の言葉に納得できない玲子。彼女は次第に仕事も手につかなくなり、精神的に弱っていきます。

そんな傷ついた玲子の耳に、「耕一郎に新しい彼女ができた」という噂が入ってきます。相手は自分よりも年上のバツ1。なぜ自分ではなくあの女なのか……。混乱し理性を失っていく玲子は、ある行動に出てしまいます。

玲子は失恋を乗り越えることができるのか?嫉妬に狂い、もがき苦しみ泣いた末に、彼女が出した答えとは?

失恋で辛い思いをしたことのある女性に、ぜひおすすめしたい作品です。

1位: 唯川恵の直木賞受賞作!『肩ごしの恋人』

まったくタイプの違う2人の女性が、恋愛や結婚、仕事を通して幸せな生き方を模索していきます。第126回直木賞を受賞した本作品は、2007年に米倉涼子主演でドラマ化されました。

著者
唯川 恵
出版日
2004-10-20


るり子は自称「鮫化の女」。恋愛に積極的で、自分の幸せのためには手段を選ばないバツ2の女性です。一方の萌は、お人好しで面倒見が良く、男性が嫌いなわけではありませんが、イマイチ恋愛にのめり込めないでいます。まったくタイプの違う2人ですが、昔からとても気の合う幼馴染です。

物語は、るり子の結婚式から幕を開けます。るり子の結婚相手・信之は、かつての萌の恋人。るり子から恋人を奪われる形となった萌は、式に参列しますが、気にする様子はありません。そんな萌は、式で出会った新婚の男性・祐介と関係を持ち、ほどよい距離を保ちながらも、不倫関係をスタートさせます。実は祐介は、るり子のかつての恋人でした。

不思議な絆で結びつき、絶妙なバランスで支え合う2人。彼女たちの感情を丁寧に綴り、様々な出来事を通して語られる、真逆の考え方は、とても読み応えがあります。

「女はいつだって、女であるということですでに共犯者だ」。この一文に、妙に共感を覚える女性は少なくないでしょう。

唯川恵のおすすめ作品をご紹介しました。唯川作品には、様々な女性の姿が描かれています。女性読者は自分とどこか似ている登場人物を発見できるかもしれません。もちろん男性が読んでも楽しめる作品になっているので、興味のある方はぜひ読んでみてくださいね。

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