山中志歩が元気づけられた小説『ひと呼んでミツコ』

更新:2021.12.6

涼しくなってきましたね。最近、オモコロというウェブメディアにまんまとハマり、ずっと笑って読んでいます。菓子盆選手権が私のお気に入りの記事です。天才過ぎる。オモコロを読んでいると、気付けば朝になっているので気をつけよう。

ブックカルテ リンク

私は今、歯列矯正をしている。

今年の2月から始めたから、半年になる。

物心ついた頃から、私の前歯は出ていた。

あごが小さいらしく、笑うとさらに、歯茎が飛び出し、からかわれた。

ちょっぴり恥ずかしかった。

小学生の頃、歯医者さんに「矯正がしたい」と直談判しに行ったこともある。歯医者さんは「矯正するほど出てないよ」と言った。確かに、私はガタガタというわけでもなく、食事や生活に不自由はしていなかったし、時々「前歯が出てて、ねずみみたいでかわいい」と女の子たちが言ってくれた。慰めだったかもしれないけど、「かわいい」と無縁だった私はうれしかった。

しかし、思春期になると、周りの目がますます気になってしまうわけで。制服のスカートをだんだん短くしていくように、私の前歯も奥へ引っ込んでくれたらいいのにと思った。両手の親指で、そーっと前歯を押した。前歯と歯茎がズキズキする。痛みがあると、少し引っ込んだ気になる。もう少し強く押してみた。親指の爪が歯茎に当たり、血が滲んだ。そこを通り抜けると、痛みは麻痺して、前歯を押すことだけにだんだん集中していく。気付いたら1時間以上も鏡の前で前歯を押していた。

舞台に立つようになり、「あんたは歯茎が出とるから、どこにおるか分かる」と母に言われ、そこから自分の前歯がチャームポイントになった。そして去年、根本宗子さんの舞台で、「眼鏡で歯茎が出てて色黒の山ちゃん(山中志歩役)」という役を書いてもらった。うれしかった。思春期の自分が報われた気がした。スーパーコンプレックスも舞台では自分の誇らしいパーツになることを知った。この歯茎と前歯で生まれてきて良かったとさえ、思った。

え? じゃあ何で今、歯列矯正してんの?って話になるんですが、滑舌を良くするために矯正を始めました。

ま、そんなわけで歯列矯正中の今日の私の口腔事情は最悪で、舌にいくつか口内炎が出来ていて、ごはんを食べるとピリピリ痛くて、イライラしている。

何とか気持ちを紛らわしたく、本屋に行った。スカッとする本はないものか……と店内を散策した。1ページ目を読んで、かっこいいなって思った本を買った。

ひと呼んでミツコ

著者
姫野 カオルコ
出版日
2001-08-21

ミツコ、最強だった。ミツコは周りの人から少し小馬鹿にされ、ちょっと変わった性格の女性だ。でも、盲腸の跡から超能力が使えて、それでムカつく奴らを懲らしめる話だ。スカッとする。だけど、ミツコは悩む。好きな人とキスしたいけど歯を磨いてなかったからキスできなかったことに。教育実習先の先生との会話に。生活の中の小さなことに悩み苦しむ。人から言われた一言に傷ついた経験って皆んなあるよなぁ。孤独だと感じる時間が増えた今日この頃だけど、1人じゃないと思わせてくれる。元気になる。ありがたい。

 

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena
もっと見る もっと見る