ひと昔前の男女関係がわかるおすすめ本5冊!

更新:2021.12.14

10年ひと昔、という言葉がありますが、今回紹介するのはそれよりももっと前、日本が大きく変化した明治から昭和周辺ほどの「昔」の男女の姿です。今でこそ自由で当たり前の恋愛も、当時の人々にとってはそうではなかった、そんな時代の話が分かる本を今回はご紹介します。

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時代が変わっていく中での、宮廷生活を描く

「みやび」と「モダン」という二つの要素が無理なく同居を果たしていた明治宮殿の12か月を宮廷絵巻としてまとめた一冊です。多くの宮中行事を通して、明治天皇の人となりや、天皇を取り巻く高官や小姓たちの姿がとてもよくわかります。

著者
米窪 明美
出版日
2013-09-03

その描写力は当時の息遣いまで感じられるほどの臨場感があふれ、微笑ましい暮らしぶりが軽やかな文章で再現されているのです。

著者はNHK「坂の上の雲」の宮廷シーンの時代考証を担当した米窪明美という方で、とても分かりやすく当時の暮らしを1冊にまとめあげています。明治時代の雲の上の人々がどのようなことしていたのか、親近感がわくような構造で書かれているため読み物としても純粋に面白い出来になっているのも特徴です。

明治天皇は姉さん女房な皇后には逆らえなかったなどの男女関係もなんだか身近に感じられ、たしかにそこに人がいたのだということを教えてくれます。時代を超え、さらに身分という垣根も超えて私たちの知らない世界が垣間見える作品です。

華族の実態とはどのようなものだったのか?

華族とは、明治から昭和までの激動の時代の中で存在した日本の貴族階級のことを言います。この本ではそんな近代日本の歴史や変遷とともに、上流階級というしがらみの中で生き続けることになった女性たちの生き様を書いた一冊です。

300ページをも超える分厚い本の中には、学者である著者がまとめた濃い内容がぎっしりと詰まっています。

著者
小田部 雄次
出版日
2007-04-26

華族の女性というとどうしても何不自由なく過ごしたお嬢様を想像しがちなのではないでしょうか。しかしこの本に書かれているのはそんな表面だけのありがちなイメージではなく、たしかにその時代そこにあった女性たちの暮らしです。

教育者や研究者などの学問の道で名を成した人や、身分を捨て一般の男性との結婚を選んだ人、政治的活動に走りすぎて逮捕された人まで、普通の人と変わりなく様々な暮らしをしていたことがよくわかります。

しかし、華族という立場ゆえに社会から多くの期待を寄せられていたことは間違いないでしょう。そんな彼女たちのエピソードがテーマ的にまとめられている、資料価値の高い一冊です。

激動の時代、徳川に嫁いだ一人の女性の物語

この本は戸田伯爵家に生まれ、徳川家へ嫁いだ女性が書いた手記を本の形にしたものです。幼くして両親を失い、兄弟にも結核で先立たれて、そして戦争の時代へと波乱万丈な人生がここでは綴られています。

著者
徳川 元子
出版日

華族の女性で、文学が好きだということもあり非常に綺麗な文章も魅力の一つでしょう。非常に上品で、品のいい貴族階級にある女性が求められていたのはこういう姿なのだろうと納得させてくれます。

華族の書いた随筆はいくつも出版されているのですが、こういった当時の記録がそのまま読めるというのはその時代を知る上で非常に重要なことです。

もちろん、そういった資料価値を除いても、この本は非常に読み応えがあり読み物として十分に面白い一冊です。激動の時代を生きた女性の、その心を書いた手記は間違いなく当時の女性の芯の強さを現代に伝えてくれています。

大村益次郎、その生涯の物語

歴史小説の大家・司馬遼太郎の長編歴史小説です。大河ドラマの第15作目として1977年に放送されたものの原作でもあります。

著者
司馬 遼太郎
出版日
1976-09-01

物語は村医者から転身し、官軍総司令官となり、そして維新の渦中で死を遂げた大村益次郎の生涯が書かれています。蘭学の知識があり、軍事の才能もあった大村ですが、彼はどのようにして生き、死んでいったのか、それが鮮明に、そして小説として面白くまとめ上げられているのです。

大村益次郎というと、日本史を学んだという人でも咄嗟に名前が出てこない人物ではないでしょうか。彼はどちらかというと技術屋であり、科学者であるので歴史の教科書などでも大きく取り上げられることはなく、悪く言えば地味な存在です。

しかし、司馬遼太郎はそんな彼を合理的で無骨、しかし面白味も感じされてくれる人物として非常に魅力的に描いています。歴史に呼ばれるように登場し、歴史のために退場することになった彼の人生はどのようなものだったのか、読んでみればきっと印象が変わることでしょう。

多くの女性を愛した初代総理大臣の姿

初代内閣総理大臣であり、近代日本に大きな影響を与えた人物・伊藤博文を題材として描かれた小説です。明治天皇に少し謹んではどうかとまでたしなめられたほど彼の好色は政界では非常に有名なものでした。この作品ではそんな彼の女好きの点に焦点を当て、ノリが良く楽しい小説に仕上げています。

著者
南條 範夫
出版日

幕末周辺の時代を中心とし、登場人物たちを生き生きと描いた作品です。本当にこれが真実なのかはともかく、その明るい作風から非常に読みやすい本であると言えるでしょう。

著者である南條範夫は1908年に生まれた人物で、残酷ものと呼ばれる独特の作品や歴史、時代小説で有名な方です。この作品は1967年に書かれたものであり、彼の作品としては大体中期ごろのものになります。

間違いなく歴史小説ではありますが、ちょっと青春小説のような、独特の雰囲気が作品には溢れています。教科書には載ることのない、初代総理大臣の人柄や幕末にかける思いが面白く爽やかに描かれているので、すっきりした気持ちで楽しく読み終わることができるでしょう。

いかがでしたでしょうか。どれも当時の生活を伝える良質の資料であるとともに、読み物としても楽しめる書籍だったかと思います。幕末、明治、大正、昭和、とどれも日本が大きく変わり様々な文化が混ざり合っていた時代です。その時代で生きた人々のことを考えてみるいいきっかけになれば幸いかと思います。

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