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特集!あの人の本棚
07.

加藤崇   (Fracta, Inc. 創業者兼CEO)


人生のロールモデルを、本のなかに探していた (加藤崇インタビュー)

加藤崇

人生を変える本に出会うためには

加藤 5月に、母校である早稲田大学の生協書籍部で、僕が選んだ本をずらっと並べて「早大生に贈る、一打逆転の人生」というキャンペーンをやらせてもらったんです。ここ数年に読んだ本で、勉強になった本を紹介させてもらいました。

――おお、どんな本を紹介されたんですか?

加藤 まずは『Founders at Work:33のスタートアップストーリー』。有名ベンチャーキャピタル Y Combinatorの創業者、ジェシカ・リビングストンが自分自身を含めた33人のスタートアップ創業者にインタビューした本です。編集はすごく荒削りなんですけど、とにかく内容がすばらしい。もう、こんないい本は世に出ないんじゃないかと思うくらいです。
あとは『The New New Thing : A Silicon Valley Story(邦題:ニュー・ニュー・シング)』。シリコングラフィックス、ネットスケープ、ヘルシオンと業界を変えるベンチャーを次々と生み出していったジム・クラークの起業家人生を、マイケル・ルイスが書いた一冊です。本当にこの本は、若い人の人生をまるっきり変えるほどのインパクトがあると思いますよ。
『BUSINESS AS UNUSUAL(邦題:ザ・ボディショップの、みんなが幸せになるビジネス)』もいいですね。ザ・ボディショップを立ち上げたアニータ・ロディックの著作で、この本こそは「起業家精神」という形のないものを理解するのに最適な一冊だと思います。

――どれもすごくおもしろそうですね。

加藤 ところが、これらの翻訳本は全部絶版になっているんですよ。もったいないですよね。だから、生協で本を並べてもらったけれど、店舗では買えなくて。興味がある人は中古で買うように、と書き添えました。いまの本屋さんって、新刊本ばかりが並んでいて、こういう少し前の良作ってあんまり置いてないんですよ。プロモーションをかけたい新刊本ばかりが並んでいる気がして、ちょっと残念です。

――そうかもしれません。

加藤 あとおすすめは、前回ふれた『iCon Steve Jobs: The Greatest Second Act in the History of Business(邦題:スティーブ・ジョブズ-偶像復活)』に、『顧客が熱狂するネット靴店 ザッポス伝説』。ハッカーの考え方についてのエッセイ『ハッカーと画家:コンピュータ時代の創造者たち』はちょっとトリッキーですけど、おもしろいです。『ジェネンテック-遺伝子工学企業の先駆者』はバイオ系のベンチャーの創業記で、起業やハード系のベンチャーをやりたい人にとっては必読書ですね。これまた翻訳本は絶版になってるので、中古で買ってください(笑)。

――起業家の本が多いですね。

加藤 やっぱり、起業家の本を読んで勉強するのは、資本効率がいいんですよ。ハーバードのMBAをとりに行くと、2年間で2千万円くらいかかりますよね。でもこれらの3千円もしないような本を読んで、あとは体当たりでベンチャーを創業すれば、ハーバードのビジネススクールに通ったくらいの勉強ができると思います。

――こういった本は、どうやって見つけ出しているんですか?

加藤 本屋で、起業やベンチャー関連の新刊本をとにかく端から見ていくんです。で、おもしろそうだったら買う。本屋は新しい本をざっと探すのに、とても便利な場所ですからね。これは、ここ7年間、ずっとやっている習慣です。もう一つの方法は、Amazonで「起業」「ベンチャー」といった単語で検索すること。少し前に出た本を探すにはこれがいい。こうやって、起業関連の本を買っていると、レコメンドにも起業の本ばかり出てくるようになるので、そこから買ったものも多いです。

――目的によって本屋とAmazonを使い分けているんですね。

加藤 あとは、有名な起業家の名前で検索する、ということもやっていました。起業やベンチャーについての本を読んでいると、アニータ・ロディックの名前が出てくることが何回かあったんです。ボディショップは、ベンチャーの成功事例として取り上げられることが多いんですよね。そうすると、彼女は本を出していないのかなと考えて、探してみる。ジム・クラークについてもそうでした。ベンチャーキャピタリストが書いた本にジム・クラークに関するエピソードが載っていて、「この人すごいな」と思って、Amazonで「Jim Clark」と検索した。そうして、出てきた本を片っ端から読んだんです。

――人のつながりで探していく。

加藤 立花隆さんが昔何かに書いていたのですが、おもしろい本を選ぶポイントは、重版がされていること、そして参考文献がちゃんと書いてあること。重版がされているということは、多くの人の興味をひく何かがあったからです。そして、参考文献はどれだけ手間をかけて書かれたかの指標になる。これは僕も自分で本を書くときにすごくこだわりました。「これだ!」と思った本の巻末に、幸運にも参考文献リストが載っていたなら、その参考文献を端から読んでいくのもおすすめです。自分がいいと思った本の著者が参考にしている本は、またおもしろい確率が高いんですよ。

――第1回の記事で、加藤さんは高校生になってから本を読みだした、とおっしゃっていましたが、それはなにかきっかけがあったのでしょうか。

加藤 本をたくさん読んでいた友達から、これはおもしろいからと、椎名誠さんの本(『哀愁の町に霧が降るのだ』)を紹介されたのが、最初のきっかけです。思いのほかスラスラと読めてしまって、気づくと椎名誠さんばかり10冊も読んでいた。あと、高校のときに通っていた塾に、「高校生ならこれを読め」みたいなちょっとしたライブラリがあったんですよね。信用できる先生がそう言うのなら読んでみようかな、と庄司薫さんの本などを読み始めました。そこから本のおもしろさに目覚めていったんです。信用できる人が紹介してくれる、というのはいい入り口だと思います。

――本屋でも、そういう試みをしているところがありますよね。

加藤 また、僕の母親はめちゃくちゃたくさん本を読む人で、やっぱり母に紹介されると「読んでみよう」と思えたんですよね。「山岡荘八の『徳川家康』って、26巻まであるんだけどおもしろくて1日1冊読んじゃった!」とか言われたら、理系だった僕はまったく徳川家康に興味がなかったんですが(笑)、「そこまで言うなら読むか」と思うじゃないですか。そうして読んでいくと、やっぱりおもしろくてハマるんですよね。

――誰がどういう文脈ですすめているか、というコンテクストが大事なんですね。

加藤 そうですね。本をすすめる側として思うのは、本って文芸からノンフィクション、実用書までジャンルが幅広くて、考えれば考えるほど、何をすすめるべきかわからなくなるんですよね。だから読み始めるとき、最初はどんな本でもいいと思うんです。本の内容というよりも、好きな人や信用できると思った人をきっかけに本に近づいていくのがいいんじゃないかと、最近は思っています。

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プロフィール

加藤崇
加藤崇
Fracta, Inc. 創業者兼CEO

かとう・たかし/早稲田大学理工学部(応用物理学科)卒業。元スタンフォード大学客員研究員。東京三菱銀行等を経て、ヒト型ロボットベンチャーSCHAFTの共同創業者(兼取締役CFO)。2013年11月には、同社を米国Google本社に売却し、世界の注目を集めた。

2015年6月に、人工知能により水道配管の更新投資を最適化するソフトウェア開発会社(現在のFracta, Inc.)を米国シリコンバレーで創業し、CEOに就任。2018年5月には株式の過半(50.1%)を栗田工業株式会社に売却し、現在も同社をCEOとして経営。著書に『未来を切り拓くための5ステップ:起業を目指す君たちへ』(新潮社)、『無敵の仕事術』(文春新書)。

ライターについて

Writer 1
崎谷実穂

さきや・みほ/求人広告、記事広告のライターを経て、現在ビジネス系のインタビューライター。ブックライターでもある。cakes、日経ビジネスオンラインなどで連載担当中。

プロフィール

加藤崇
Fracta, Inc. 創業者兼CEO

かとう・たかし/早稲田大学理工学部(応用物理学科)卒業。元スタンフォード大学客員研究員。東京三菱銀行等を経て、ヒト型ロボットベンチャーSCHAFTの共同創業者(兼取締役CFO)。2013年11月には、同社を米国Google本社に売却し、世界の注目を集めた。

2015年6月に、人工知能により水道配管の更新投資を最適化するソフトウェア開発会社(現在のFracta, Inc.)を米国シリコンバレーで創業し、CEOに就任。2018年5月には株式の過半(50.1%)を栗田工業株式会社に売却し、現在も同社をCEOとして経営。著書に『未来を切り拓くための5ステップ:起業を目指す君たちへ』(新潮社)、『無敵の仕事術』(文春新書)。

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