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特集!あの人の本棚
121.

KUSHIDA   (プロレスラー / 新日本プロレス所属)


プロレス人生の指標(KUSHIDA インタビューVol.1)

KUSHIDA
さまざまなプロフェッショナルの考え方・作られ方を、その人の本棚、読書遍歴、本に対する考え方などから紐解いていくインタビュー。今回はホンシェルジュ連載陣の1人でもあるプロレスラー、KUSHIDAさんに登場して頂きました。インタビューVol.1です。
プロレス人生の指標(KUSHIDA インタビューVol.1)

子供の頃はプロレス雑誌が教科書だったと語るKUSHIDAさん。今では新日本プロレスの第73代IWGPジュニアヘビー級チャンピオンの座に輝くプロレスラーだが、その歩みを振り返ってみると、人生何が起こるかわからないなと改めて実感させられる。3回にわたってお届けするインタビューのVol.1では、そんな彼がプロレスラーになるまでを中心に聞いた。

『サスケが翔ぶ』はプロレスラーになるきっかけとなった本。訴えかける言葉の数々にインパクトを受けた

―― KUSHIDAさんが子供の頃、よく読んでいた本というと何ですか?

KUSHIDA やっぱりプロレス雑誌でした。当時小学生だったんですけど、プロレス雑誌で漢字を覚え、四文字熟語を覚えましたね。国語の授業では出てこないような、プロレス独特の言い回しとかあるじゃないですか。「強烈な~」とか、そういうのをプロレス雑誌で学びました。で、そこからまず漢字が好きになって、文章を書くことも好きだったので、日記とかもつけるようになって。雑誌以外の自伝本、アントニオ猪木とか、僕の世代だとザ・グレート・サスケとか、そういった本もたくさん読んでましたね。

―― 文章を書くのが好きだったのは、どうしてなんですか?

KUSHIDA なんとなくです。当時なんとなく新聞記者に憧れてて、小学生の頃、クラスで勝手に学級新聞みたいなのを作ったりして。文章を書くこと自体が好きだったんでしょうね。あとは雑誌や本が理屈抜きで好きだった。全部プロレスなんですけど(笑)。当時、プロレス雑誌が毎週木曜日発売だったんです。木曜日の朝一に本屋さんに並ぶから、8時開店のお店に7時50分に並んで、開店した瞬間に入って立ち読みしたり買ったりして。

―― 漫画は読んでなかった?

KUSHIDA まったく興味なかったです。同級生は『SLUM DUNK』とか読んでいて、『ジャンプ』と『マガジン』も流行ってましたけど、僕はぜんぜん興味なくて。

―― じゃあ、ほんとにプロレスだけなんですね。試合のレポートやプロレスラーのインタビュー、あとは論評やコラムとか、プロレス雑誌にはいろんなタイプの文章がありますけど。

KUSHIDA そうですね。プロレス雑誌が凄いのは、漢字以外にも英語やスペイン語も学べるんです。技の名前でたくさん出てくるから。当時、そんなプロレス好きは僕しかいなかったので、自分だけが知っている大人の世界……みたいな感じで楽しんでました。「お前らは漫画だけど、俺は違う」と優越感に浸ってましたね(笑)。

―― 好きなライターさんとかは?

KUSHIDA 記者ではいなかったんですけど、ケロちゃん(田中ケロ)ですね。新日本プロレスのリングアナウンサーで、巡業中の日記を本にまとめて一年に一度出版していて、それを読むといろんなレスラーの素顔がわかるんです。面白くて、自分もリングアナウンサーになりたいなぁと思ったりしました(笑)。

―― (笑)。新聞記者になりたいという漠然とした夢がありつつ、リングアナウンサーにも憧れていたと。

KUSHIDA はい(笑)。

―― 自分もプロレスラーになりたいと明確に思った時期は?

KUSHIDA 厳密に言うと、自分がなれるとは思ってなかったですね。小さい頃からプロレスごっこをやっていたので、「俺にもできるんじゃないかな」とは思ってましたけど、まさか本当になれるとは思わなかった。背も小さいちっちゃいし、プロレスはめちゃくちゃデカい人がやってるイメージだったので……。でも、中学校3年生の時に、隣の駅に高田道場ができたんです。高田延彦さんの道場なんですけど、それが神のお告げだったというか。

―― 神のお告げ?

KUSHIDA 小学校の頃に読んだザ・グレート・サスケの自伝『サスケが翔ぶ』に出てくるんです。サスケさんが中学校3年生くらいの時に神のお告げがあって、俺はプロレスラーにならないといけないんだ!って思い始めるエピソードがあるんですけど、高田道場ができると聞いて「これが神のお告げか!」と思いました。「俺、プロレスラーにならなきゃいけないんじゃないか」と。東京の大田区が実家なんですけど、何もない下町なんです。当時はコンビニもスーパーもなかったから、蒲田まで行かないといけなくて。でも、そんな町に高田延彦が道場を作ると聞いて、ほんとに衝撃が走りましたね。

―― 何でそんな場所に道場を作ったんですかね。

KUSHIDA なんだったんですかね……。たまたま土地が見つかったからだと思いますけど。安くてお得な物件があったとか(笑)。

―― (笑)。

サスケが翔ぶ

『サスケが翔ぶ』 ザ・グレート・サスケ

―― 『サスケが翔ぶ』のどういう部分に共感したんですか?

KUSHIDA サスケさんも自分と同じで、身長がほかのプロレスラーより小さいタイプのレスラーだったので、投影しやすかったんだと思います。自分がもしプロレスラーになるんだったら、こういうレスラーになるんだろうなって。自分みたいな人間がプロレスラーになるにはどうしたらいいか? その回答が書かれているような感じはしました。

―― ツイッターで書いてましたけど、サスケさんと最近対談されたんですよね。

KUSHIDA はい、それでサインをもらってですね、持参した本に「永遠の友よ」とお言葉を書いていただきました。

―― プロレスのスタイル以外で、サスケさんのどういうところに魅力を感じたんでしょう。

KUSHIDA ほかのレスラーとは違うカリスマ性ですかね。みちのくプロレス(1992年にザ・グレート・サスケが設立したプロレス団体)を作ったのって、サスケさんが24歳の時なんですよ。ユニバーサル(ユニバーサル・プロレスリング)という前の団体が潰れちゃったから、自分たちと同世代のレスラーを集めて、俺が社長になって新しく東北に団体を作る!って設立した。人に影響を与えるカリスマ性みたいなものを持っている人だと思いますね。カリスマというと、上の世代の人たちはアントニオ猪木の名前を挙げますけど、僕はサスケさんでしたね。この本に書いてあることや語っている言葉、すべてがカッコいいんです。

―― 例えば?

KUSHIDA 人間はどこから来てどこへ行くのだろうか、みたいなことが書いてあったりして、プロレスラーの自伝にありがちな誰々を倒したとか、いつチャンピオンになったとか、そういう事実よりも、(サスケさんの本は)人に訴えかける言葉を持っているんですよね。そういうところに憧れたというか。この人の脳みそどうなってるんだろう?って。もちろん、サスケさんの危険を顧みない技を見ても同じことを思いますけど、そういう訴えかける言葉の数々に、小学生の僕は心をぶん殴られたようなインパクトを受けました。プロレスラーになるきっかけとなった本ですね。

―― 神のお告げによって高田道場に入門した後は?

KUSHIDA その後、総合格闘技でデビューして、結果を残すことができたんです。ただ、僕がやりたいのはやっぱりプロレスだなと思っていて……。ちょうど大学3年生の頃、僕の周りの友達が就職活動をし始めるんですね。チャラかったヤツも急に髪の毛を黒くしたり、急にスーツとか着たりして、「合同説明会行かなきゃ!」みたいな雰囲気になって。そこでちょっと疑問に思ったんです。僕はこのままでいいのか?と。道場には毎日通ってたんですけど、日本だと僕みたいな人間がプロレスできる環境がなかった。学生のままプロレスをするとなると、それこそ頭を丸めて入門する、というシステムしかなかったので。それでいて僕の好きな新日本プロレスは、身長180センチ以上じゃないとプロレスラーになれないっていう入門規定があったんです。じゃあ、自分はプロレスの道を諦めて一般企業に就職するしかないんじゃないのか?と思っていた時、この本と出会ったんですよ。

はたらきたい。

『新装版 ほぼ日の就職論「はたらきたい。」』 ほぼ日刊イトイ新聞

―― 『はたらきたい。』ですね。

KUSHIDA 就活を始めると、就活の攻略本みたいなのを読み始めるじゃないですか。お辞儀の角度についてとか、志望理由についてとかが書いてあるんですけど、そういう本を読んだりすることが僕にとっては意味のないことに思えたんです。で、この本はそういった就活についての本を否定しているんですね。大事なことはお辞儀の角度じゃないと。矢沢永吉さんのインタビューが載ってるんですけど、自分は本当に何をしたいかっていうことを考えるべきだーーみたいな話があって、それを読んで気づかされたんです。やっぱり俺、プロレスがやりたいなと。で、大学を休学してメキシコに行ったんですね。俺が本当にやりたいことは、おそらくプロレスだと思ったんです。

―― いろんな選択肢があったと思いますけど、メキシコ行きを決断するまでには時間がかかったんですか?

KUSHIDA もしプロレスラーになるんだったら、プロレスだけで飯を食っていきたいと思ってて、中途半端なプロレスラーにはなりたくないと思っていて。ただ、どうしたらいいかわからなかった。大学生って自由な時間はたくさんあるじゃないですか。特に勉強しなくても、ぼーっとしててもれば単位が取れたりするし。そういう環境のなかで、すごく迷ってました。大学生の頃は人生について一番迷ってましたね。だから今、街中で就活生を見ると胸がキュンとなります(笑)。

―― (笑)。ちょっとエモい気分に。

KUSHIDA 当時の自分の背中を押してくれた本ですね。この本のせいで人生が狂ったんです(笑)。大学生の時は、就職とはどういうことなんだろうなっていうのはすごいよく考えてて。あと、新聞記者っていう選択肢もあったんですよ。当時は東スポ(東京スポーツ)でバイトしてたんです。そこで内定もいただいて、内定式にも出席したんですけど、結局内定を辞退するという(笑)。

―― 卒業してからじゃなくて、今すぐメキシコに!という感じだったんですか?

KUSHIDA そうですね。卒業してからじゃ遅いなと思っていました。メキシコに行くと決めてから、すぐに休学のお金を調べて、意外と安かったんです。親には自分で払うからと説明して。で、友達がちょうどメキシコに語学留学に行っていたので、とりあえずそこに泊まらせてもらいました。あとはスポーツ新聞で働いていたコネを活かして、現地のプロレス団体の窓口を紹介してもらって。コネは最大限に利用しました(笑)。それでメキシコでようやくデビューできて、これは行けるかも!という手応えを掴んだんです。

―― 向こうにはどれくらい滞在を?

KUSHIDA 1年ですね。当時、休学して海外に行ったから現地でも夢をしょっちゅう日本の夢を見るんですよ。「あれ、あと何単位残ってるんだっけ? 卒業できない! やばい!」って、ひたすら焦る夢を見ました(笑)。

※インタビューVol.2に続く

Photographs by Motoki Adachi

インタビューの一覧

プロフィール

KUSHIDA
KUSHIDA
プロレスラー / 新日本プロレス所属

KUSHIDA
学生時代に総合格闘技でプロデビューした後、2005年に単身メキシコに渡り、プロレスデビュー。日本と海外のマットを渡り歩き、2011年4月に新日本 プロレスへ移籍。 2016年1月、東京ドーム大会でケニー・オメガを破り、第73代IWGPジュニアヘビー級王座を奪取。以降、BUSHI、ACH、ウィル・オスプレイ、 獣神サンダー・ライガーを相手に4度の防衛に成功している。7月20日(水)東京・後楽園ホールで行われる「SUPER J-CUP 2016」にも参戦予定。

KUSHIDAのプロレス浪漫飛行
http://ameblo.jp/ts-kushida/

新日本プロレス オフィシャルウェブサイト
http://www.njpw.co.jp/index.php

ライターについて

Writer 5
ホンシェルジュ編集部・芸術/芸能班

音楽、映画、アイドル、その他の芸術/芸能に詳しいライターによる班。もちろん皆が本好きだが、そのレベルや守備範囲はさまざま。日本のエンタテイメントのトップランナーを通じて、本/読書の楽しみへの入り口をつくりたい。あるいは本/読書という切り口を通じて、トップランナーの新たな一面を引きだしたい。

プロフィール

KUSHIDA
プロレスラー / 新日本プロレス所属

KUSHIDA
学生時代に総合格闘技でプロデビューした後、2005年に単身メキシコに渡り、プロレスデビュー。日本と海外のマットを渡り歩き、2011年4月に新日本 プロレスへ移籍。 2016年1月、東京ドーム大会でケニー・オメガを破り、第73代IWGPジュニアヘビー級王座を奪取。以降、BUSHI、ACH、ウィル・オスプレイ、 獣神サンダー・ライガーを相手に4度の防衛に成功している。7月20日(水)東京・後楽園ホールで行われる「SUPER J-CUP 2016」にも参戦予定。

KUSHIDAのプロレス浪漫飛行
http://ameblo.jp/ts-kushida/

新日本プロレス オフィシャルウェブサイト
http://www.njpw.co.jp/index.php

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