Loading 81b424ebf5b28b6979c5bfbadb4fe3d86654abdce81e3c0259cc91c3ecd00497
特集!あの人の本棚
123.

KUSHIDA   (プロレスラー / 新日本プロレス所属)


起承転結と主人公の成長(KUSHIDA インタビューVol.3)

KUSHIDA
さまざまなプロフェッショナルの考え方・作られ方を、その人の本棚、読書遍歴、本に対する考え方などから紐解いていくインタビュー。新日本プロレス・第73代IWGPジュニアヘビー級チャンピオン、KUSHIDAさんのインタビューVol.3です。
起承転結と主人公の成長(KUSHIDA インタビューVol.3)

念願の新日本プロレスで活動をスタートさせたKUSHIDAさん。今ではジュニアヘビー級の王座に輝き、さらにしかも作家として小説も書いてしまうという多才ぶり。3回にわたってお届けするインタビューのVol.3では、そんな彼が考えるプロレスと小説の共通点を聞きました。

小説は一字一句不必要なものがない。プロレスもまったく一緒で、リングの中も外もすべてに意味がある

―― 『NEW WORLD 新日本プロレスワールド公式ブック』では「東京ドーム」という短編で作家デビューを果たしました。今まで日記以外で何か文章を書くというのは?

KUSHIDA なかったですね。初めてでした。

―― 物語の構想はどういうところから出てきたんですか?

KUSHIDA 最初はちょっとカッコつけて、プロレスじゃない話を目指していたんですけど、やっぱり無理だなと思って(笑)。例えば、OLさんの気持ちとか自分にはわからないし、結局プロレスのことしか書けないなと。プロレスラーを題材にした作品は結構あるかもしれないけど、プロレスのリングスタッフとかレフェリーとか、そういうポジションの人も僕は大好きなんですよ。ユニークな人が多いですし、そういう人を描きたいなぁと思ったんです。それだったら自分にしかない視点で書けそうだなと思いました。

―― もともと何か伝えたかったことがあるんですか?

KUSHIDA プロレスって過去と比べられることが多いと思うんです。昔のプロレスはどうだったとか、それに比べて今はどうだとか。僕がちょうど就職で悩んでいた時に、PRIDEのブームがあったんです。当時は総合格闘技とプロレスが比べられて、やっぱりプロレスはアントニオ猪木の時代が凄かったよなとか言われたり。実際、当時はプロレスよりも総合格闘技の方が人気があって、そういう風潮に対して悔しい思いをしていたし、今でも昔のプロレスの方が良かったと言われると悔しいです。でも、それってプロレスに限らず、どのジャンルでもあることじゃないですか。お笑いの世界だって、昔の芸人さんの方が面白かったとか、やっぱりビートたけしが凄いとか。そうやって世代で比較されるのが僕はすごく悔しくて、そういう気持ちを描きたいなぁと思いました。

―― なるほど。

KUSHIDA 劣等感っていう言葉がありますけど、昔のレスラーって何かしらで劣等感を持っている人が多かったと思うんです。プロレスをやっているのに、プロレスラーです!と胸張れる人が少なかったんじゃないかなと。でも今のプロレスラーは、僕もそうだけど、プロレスに憧れてプロレスラーになった人たちが多いなので、みんなとにかくプロレスが大好きなんですよ。今、こうしてリングで闘っている人間として、そういったことを小説にうまく落としこめたらなと思って書きました。

―― そう考えると、実体験から感じたことに勝るものはないんですね。

KUSHIDA そうですね。これを伝えたい、こういうことを書きたいっていう思いがあったから書けたのかもしれないです。小説家って凄いなぁと思ったのが、そういう本を何冊も出してるわけじゃないですか。そして、それぞれの本に魂が宿っている。イメージする天才なんだろうなって思いましたね。僕はプロレスラーだからプロレスのことしか書けないけど、実際に自分で書いてみることで、小説家を改めて尊敬しました。小説って一字一句、不必要なものが1つもないじゃないですか。悔しいとか美味しいとか、シンプルな表現にも必ず意味がある。プロレスもまったく一緒で、この仕草にはこういう意味があってとか、そういうのに繋がってくるんですよね。リングの上だけ見ていると気づかないですけど、例えばリングサイドにいるヤングライオンが一生懸命雑用をしていたり、そういうのにも意味があるわけです。

―― 担当編集者さんとのやりとりで印象に残ってる言葉は?

KUSHIDA 「KUSHIDAさん、小説とはいかに書かないかなんですよ」って言われたことです。例えば、美味しいという言葉を使わずに、周りから固めていって「あ、これは美味しいってことなんだ」と読み手に思わせられるかーー。食べ物が運ばれてきました。食べてみたら美味しかった。これだとただのあらすじになってしまちゃうんです。それは小説ではないですよと言われて。いかに言わないかってことが、小説を形作ると。それを聞いて、「小説のカラクリってそういうことなんだ」と思いました。

―― ああ、たしかに。

KUSHIDA あと、結局のところ主人公の成長が大事だと。最初はダメな男だったんだけど、いろいろな事件が起きて、ラストは成長した主人公がいい男になってる。それが1つの小説のきれいな形だと思いますし、読み手としても気持ちがのいいものなのかなって。僕の書いた小説でいうと、主人公は本来プロレスラーになりたかったけど、ケガで挫折して渋々レフェリーをやってるんです。でも、そんな男が紆余曲折を経て、最終的には自分もリングの中で戦っているプロレスラーなんだとポジティブな気持ちでレフェリーをしているところで終わる。この変化っていうのが、やっぱり小説のきれいな形なんだと思います。

NEW WORLD 新日本プロレスワールド公式ブック

『NEW WORLD 新日本プロレスワールド公式ブック』

―― ホンシェルジュの連載1回目は「小説を書くこととプロレスは似ていた」というテーマでしたが、やはり似てましたか?

KUSHIDA 起承転結と言いますけど、プロレスも起承転結だったりするんですよね。もちろん、それだけじゃなくて、たぶん小説もそうなんですけど、起、承、転、結で、いきなり「転」で始まったりとか、変化球でいきなり事件が起きたりするんですよ。でも、主人公の成長という部分では一貫したテーマがあるので、そういう構造もプロレスと小説は似ているなと思いました。

―― わかりました。最後にプロレスの話を。7月20日からは「SUPER J-CUP 2016」が開催されます。開催自体、久しぶりなんですよね。

KUSHIDA 約7年ぶりですね。

―― KUSHIDAさん、前回の大会の時は?

KUSHIDA 会場で観戦していました。Tシャツやパンフレットも持ってますよ。そんな大会に出られるのは光栄なことです。

―― 新日本プロレスに限らず、いろんな団体から参戦があるという。

KUSHIDA 最近になって新日本プロレスは他団体の選手が上がれる隙間がなくってきているので、そういう意味でも新鮮で面白いものが見られると思います。

―― ジュニアヘビー級の祭典でもあるわけですが、KUSHIDAさんの一連の発言やツイートを見たりしていると、ジュニア戦士としてのプライドは常に大事にしていますね。

KUSHIDA そうですね。単純に僕がジュニア好きで、昔っからジュニアの試合の方が面白いと思っていたので。アメリカとかだと今は階級の差を固定観念で見るのって薄れつつあって、良いレスラーは良いレスラーとして評価される。ジュニアヘビー級という括りがあるのは日本のプロレス界だけなんですよ。で、日本だとヘビー級があって、次にジュニアヘビー級っていう括りがあるので、その価値観を逆転させるのがKUSHIDAの仕事というか、やりがいを感じています。価値観が逆転するのって、楽しいじゃないですか。僕自身がそういうプロレスの面白さを経験してきたので、それを自分でも提供できたらなと思います。そういう意味で、「SUPER J-CUP」は1つの良い手段でもあるし、「G1 CLIMAX」より「SUPER J-CUP」の方が面白かったなと思ってもらえるように頑張りたいです!

Photographs by Motoki Adachi

インタビューの一覧

プロフィール

KUSHIDA
KUSHIDA
プロレスラー / 新日本プロレス所属

KUSHIDA
学生時代に総合格闘技でプロデビューした後、2005年に単身メキシコに渡り、プロレスデビュー。日本と海外のマットを渡り歩き、2011年4月に新日本 プロレスへ移籍。 2016年1月、東京ドーム大会でケニー・オメガを破り、第73代IWGPジュニアヘビー級王座を奪取。以降、BUSHI、ACH、ウィル・オスプレイ、 獣神サンダー・ライガーを相手に4度の防衛に成功している。7月20日(水)東京・後楽園ホールで行われる「SUPER J-CUP 2016」にも参戦予定。

KUSHIDAのプロレス浪漫飛行
http://ameblo.jp/ts-kushida/

新日本プロレス オフィシャルウェブサイト
http://www.njpw.co.jp/index.php

ライターについて

Writer 5
ホンシェルジュ編集部・芸術/芸能班

音楽、映画、アイドル、その他の芸術/芸能に詳しいライターによる班。もちろん皆が本好きだが、そのレベルや守備範囲はさまざま。日本のエンタテイメントのトップランナーを通じて、本/読書の楽しみへの入り口をつくりたい。あるいは本/読書という切り口を通じて、トップランナーの新たな一面を引きだしたい。

プロフィール

KUSHIDA
プロレスラー / 新日本プロレス所属

KUSHIDA
学生時代に総合格闘技でプロデビューした後、2005年に単身メキシコに渡り、プロレスデビュー。日本と海外のマットを渡り歩き、2011年4月に新日本 プロレスへ移籍。 2016年1月、東京ドーム大会でケニー・オメガを破り、第73代IWGPジュニアヘビー級王座を奪取。以降、BUSHI、ACH、ウィル・オスプレイ、 獣神サンダー・ライガーを相手に4度の防衛に成功している。7月20日(水)東京・後楽園ホールで行われる「SUPER J-CUP 2016」にも参戦予定。

KUSHIDAのプロレス浪漫飛行
http://ameblo.jp/ts-kushida/

新日本プロレス オフィシャルウェブサイト
http://www.njpw.co.jp/index.php

KUSHIDA さんの本棚

こたつでミカンを食べながら年末年始に読む本

こたつでミカンを食べながら年末年始に読む本

KUSHIDA
%e3%82%a2%e3%82%a4%e3%82%b3%e3%83%b3
「さようなら」ではなく「またね」の精神ーー旅を物語る本

「さようなら」ではなく「またね」の精神ーー旅を物語る本

KUSHIDA
%e3%82%a2%e3%82%a4%e3%82%b3%e3%83%b3
小説を書くこととプロレスは似ていた

小説を書くこととプロレスは似ていた

KUSHIDA
%e3%82%a2%e3%82%a4%e3%82%b3%e3%83%b3
プロレスラーのマイクアピールばりに自信を持ってスピーチできるようになる本

プロレスラーのマイクアピールばりに自信を持ってスピーチできるようになる本

KUSHIDA
%e3%82%a2%e3%82%a4%e3%82%b3%e3%83%b3
自分の仕事に迷った時に読む本

自分の仕事に迷った時に読む本

KUSHIDA
%e3%82%a2%e3%82%a4%e3%82%b3%e3%83%b3