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特集!あの人の本棚
126.

植田真梨恵   (シンガーソングライター)


バランスを崩すために読む(植田真梨恵 インタビュー)

植田真梨恵
さまざまなプロフェッショナルの考え方・作られ方を、その人の本棚、読書遍歴、本に対する考え方などから紐解いていくインタビュー。今回は関西在住のシンガーソングライター、植田真梨恵さんに登場して頂きました。
バランスを崩すために読む(植田真梨恵 インタビュー)

中学を卒業するタイミングで、歌を歌いたい!という衝動に突き動かされて故郷の福岡から単身大阪に向かった植田真梨恵。その後、シンガーソングライターとしての彼女にインスピレーションを与えてきたのが、今回本人にセレクトしてもらった5冊の本である。歌手として、作曲家として、彼女の中にある「伝えるべきこと」を引き出してくれるのが、読書という体験だ。5枚目のシングル「ふれたら消えてしまう」では、目の前を過ぎ去っていく“時間”のことを歌っている。植田にとってこれらの本は、自身の過去と未来をつなげてくれるものなのである。

そもそも本を読む時って、人間としてすごく面倒くさくなってることが多いですね

―― 植田さんのツイッターを見てたら、ノートに絵本のあらすじみたいなものが書かれていたりして、自分で何かを書いたり読んだりするのが好きな人なのかなと思いました。

植田真梨恵(以下、植田) 活字をめっちゃくちゃ読みたくなる時はありますね。曲を書いている時、最近刺激がないなぁって時、そんな時に「うわ! すごく本読みたい!」っていうふうになって、一気に何冊かどーんと読んだりします。割と周期がある感じです。小さい時は朗読するのが好きで、よく先生に音読を褒められてたんですよ。よく本は読んでいたし、絵本の中身とか、ほかの人より自分のほうが理解してると思ってました。小学校の時は国語が圧倒的に好きでしたね。成績も国語は良かったですし。

―― 朗読が好きなのであれば、例えば演劇とかのほうに興味を持ったりはしなかったんですか?

植田 すっごい興味はあったんですけど、踏み出さなかったんですよね。それよりよっぽど早い時期に歌を歌うことに目覚めていたので。とにかく自分は歌が好きと思いながら、歌ってましたね。それが小学1年の頃です。

―― 歌詞を書き始めるようになったのはいつ頃?

植田 もっと後ですね。きちんと1曲作り上げられたのは15歳の時です。でも、実はそれより前にチャレンジしたことがあって、10歳くらいの時に一度書いたんですけど、思い出したくもない……。当時は曲を作るというよりは、とにかく歌手になりたかった。そう思いながら成長していって、自分が具体的にどんな歌を歌う歌手になるんだろうと思った時に、自分の歌が欲しいと思って曲を書き始めました。

―― 子供の時に自分で何かお話を書いたりとかは?

植田 きっかけがあればやるっていう感じでした。自分の中からどんどん生まれてくるというよりは、おばあちゃんとかに「何か書いてみたら?」って言われて書いたりしてましたね。学校でもそういう課題が出るとすごく積極的に取り組んでました。

―― じゃあ、セレクトしてもらった本について聞かせてください。まずは『新編 宮沢賢治 詩集』。

植田 マネージャーさんが貸してくれた本なんですけど、この本を読んで、詩の捉え方がすごく変わりました。ちゃんと歌詞を書かなきゃダメだなと。それまでは歌を歌うのが好きで、歌うための歌詞――という捉え方だったんですけど、メロディがない時でも言葉として力強くあるべきというか。歌詞がぜんぜん書けない時はこの本を読みます。

新編 宮沢賢治 詩集

『新編 宮沢賢治 詩集』 宮沢 賢治

―― (マネージャー氏に)なんでこれを貸そうと思ったんですか?

マネージャー 言葉の選び方とかが似てると思って、こういうふうになって欲しいというよりは、ただ単に好きそうだなと思って貸しました(笑)。

植田 そしたらハマってしまった(笑)。今では自分にとって大切な本を選ぶ際、絶対に入れる1冊です。曲作りのモードにパチンと入る時っていうのがあって、そのきっかけになる本とも言えますね。モチベーションが上がって、ピタッとピントが合いやすくなる。

―― どのへんがピンときたんでしょう?

植田 リズム感はすっごい強いですね。あとは文字の並びの美しさ。それから言葉にした時もそうなんですけど、日本語が面白いなぁと思います。面白い文字の並びを見てるだけで幸せになれるというか、言葉だけで成立している世界観がめちゃくちゃ強い。

―― なるほど。

植田 ある時、歌詞が全然書けなくなった時に、縦書きで歌詞を書いてみようかなと思って、突然試してみたことがあったんです。それはこういう本からの影響もあったんですけど、実際にやってみたら効果があって、やっぱり横書きとは感覚が違うんですね。私が前に書いた「変革の気、蜂蜜の夕陽」っていう曲があるんですけど、この曲は縦書きで歌詞を書いていって作ったもので、縦書きで構築された詩集のように、縦書きじゃないと曲自体が違うものに見えるというか……。そういうのも日本語ならではの面白さだなと思いました。

―― この本に出会う前と出会った後ではやっぱり変わりましたか?

植田 はい。抜かりなく、日本語にこだわらなきゃなと思いました。(歌詞って)大体でもいいと思うんですよ。音楽だから「ラララ」でも全然いいんですけど、口滑り、リズム、文字の並び、一つひとつが本当に大事で。そういう意味でも、この本を読むと姿勢を正されます。

―― わかりました。続いて『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』です。

植田 15歳くらいの時に最初に読んだんですけど、別の作家さんの小説に「村上春樹とか読むわ」っていう女性のセリフがあって、どんな小説なんだろうと気になって手に取ったのが、『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』だったんですね。

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド

『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』 村上 春樹

―― 実際に読んでみて、読む前にイメージしてた感じと違いました?

植田 もっと複雑で面倒くさい感じなのかなと思っていたんですけど、どんどん読めたから意外でした。幻想的でファンタジック。絵でイメージしやすいというか、しかも日本っぽくない感じがあって。ぬるっとした、まどろっこしい感じが素敵なんだなと思いましたね。あと、ものづくりをする者としてのパワーというか、自分が作品を手がける上で「仕掛けていくこと」を学びました。

―― 次は『ミシン』。

植田 今回選んだなかでは一番思い入れが強い本だと思います。嶽本野ばらさんが、もう大好きなんですよね。タイトルは『ミシン』なんですけど、「世界の終わりという名の雑貨店」「ミシン」っていう2つのお話が収められていて。私は「世界の終わりという名の雑貨店」がすごく好きで、めちゃくちゃ純粋で混じりっ気なしの、魂で書いてる感じが素敵だなぁと思います。16歳の頃に読んだんですけど、めちゃくちゃ泣いたんですよ。

うまく言葉にできないんですけど、作者の持っている恋愛観や哲学が、ひとつの物語としてリアルに落とし込まれていて、完全に初期衝動って感じがするんです。それがまた美しいなと思います。“雪が降っています”っていう一文があって、それがずっと繰り返し出てくるところがあるんですけど、その時の、私の号泣さったら凄かったです(笑)。乙女のバイブルですね。好きです。

ミシン

『ミシン』 嶽本 野ばら

―― 今も読み返したりします?

植田 たまにしますけど、私はその時読んでるものに影響を受けるので、読んだら面倒くさくなるじゃないですか(笑)。

―― (笑)。面倒くさくなる?

植田 それぐらい感化されるってことです。でも、そもそも本を読む時って、人間としてすごく面倒くさくなってることが多いですね。

―― それは読むことで、自分の中でバランスを保つため?

植田 違います、逆です。バランスを崩すために読みます。読み終わったら崩して、また読んで崩して、崩れきった頃に1曲できてます(笑)。

―― 身を削ってますね(笑)。

植田 そうですね(笑)。

―― でも、そういうのってアーティストにしかできないですよね。普通の人はそれを乗り切れば終わるけど、アーティストはそういう状況になった時、何か作品が生まれる可能性がある。

植田 はい、そのために崩しに行ってます。そういう意味で私の中で三大作家さんがいて、嶽本(野ばら)さん、金原ひとみさん、川上未映子さんです。

―― それって本がやっぱり効き目あるってことですよね? 映画とかではダメ?

植田 映画は流れていってしまうものじゃないですか。音楽もそうですけど、放っておいたら終わるもの。ですけど、本は読む時間を割いて集中しなくちゃいけないし、放っておいても終わらない(笑)。

―― たしかに(笑)。

植田 のめり込まないと。

※インタビュー後編に続く

Photographs by Motoki Adachi

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プロフィール

植田真梨恵
植田真梨恵
シンガーソングライター

福岡県、久留米市出身。中学卒業を期に福岡から単身大阪へ。自らの音楽をジャンルで縛りたくないという思いから、15歳で作詞作曲を始める。16歳の春、力強いハイトーンボイスと怖いもの知らずのライブパフォーマンスがレコード会社スタッフの目にとまり、本格的な音楽制作活動に入る。2014年8月のメジャーデビュー以降、ツアーを繰り返し行い、メジャー2年目となる2016年年明けには、全国7都市10公演のピアノツアーを開催。この春から夏にかけては、全国のライブサーキットに積極的に出演し、6月には昨年に続いて名古屋の「SAKAE SPRING」に出演。7月6日には5枚目のシングル「ふれたら消えてしまう」をリリース。7月23日(土)には自身最大キャパとなる赤坂BLITZでのスペシャルワンマンライブ『植田真梨恵 SPECIAL LIVE “PALPABLE! BUBBLE! LIVE! –SUMMER 2016-”』を開催する。
http://uedamarie.com/

ライターについて

Writer 5
ホンシェルジュ編集部・芸術/芸能班

音楽、映画、アイドル、その他の芸術/芸能に詳しいライターによる班。もちろん皆が本好きだが、そのレベルや守備範囲はさまざま。日本のエンタテイメントのトップランナーを通じて、本/読書の楽しみへの入り口をつくりたい。あるいは本/読書という切り口を通じて、トップランナーの新たな一面を引きだしたい。

プロフィール

植田真梨恵
シンガーソングライター

福岡県、久留米市出身。中学卒業を期に福岡から単身大阪へ。自らの音楽をジャンルで縛りたくないという思いから、15歳で作詞作曲を始める。16歳の春、力強いハイトーンボイスと怖いもの知らずのライブパフォーマンスがレコード会社スタッフの目にとまり、本格的な音楽制作活動に入る。2014年8月のメジャーデビュー以降、ツアーを繰り返し行い、メジャー2年目となる2016年年明けには、全国7都市10公演のピアノツアーを開催。この春から夏にかけては、全国のライブサーキットに積極的に出演し、6月には昨年に続いて名古屋の「SAKAE SPRING」に出演。7月6日には5枚目のシングル「ふれたら消えてしまう」をリリース。7月23日(土)には自身最大キャパとなる赤坂BLITZでのスペシャルワンマンライブ『植田真梨恵 SPECIAL LIVE “PALPABLE! BUBBLE! LIVE! –SUMMER 2016-”』を開催する。
http://uedamarie.com/

植田真梨恵 さんの本棚

シンガーソングライター・植田真梨恵に、インスピレーションを与えてきた本

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植田真梨恵
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