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特集!あの人の本棚
172.

虎姫一座   (「昭和歌謡レヴュー」グループ)


昭和のエンターテイメントから学ぶこと(なお インタビュー)

虎姫一座
さまざまなプロフェッショナルの考え方・作られ方を、その人の本棚、読書遍歴、本に対する考え方などから紐解いていくインタビュー。今回は浅草発のパフォーマンスユニット、虎姫一座のキャプテン、なおさんの登場です。
昭和のエンターテイメントから学ぶこと(なお インタビュー)

東京・浅草の劇場を拠点にダンス、歌、踊りなどをミックスさせたパフォーマンスで活動を続ける虎姫一座。古きよき昭和歌謡のリバイバルをコンセプトに作られた演目は、映像を使った演出も加わり、1940~80年代へタイムスリップしたかのような気分にさせてくれる。ただ、キャプテンの「なお」を筆頭にメンバーはリアルタイムで当時の流行に接してきたわけではない。

彼女いわく「昭和の本って図書館に行くと結構あるんです。それを皆で教えあったりして」というように、本の存在が彼女たちのイメージを膨らませるのに役立っているというわけだ。今回はそういった本も含めて、なおが個人的にセレクトした選書を紹介する。

当時のニュアンスを言葉で説明するのは難しい。そんな時に本が役立ちます

シャボン玉ホリデー スターダストを、もう一度

『シャボン玉ホリデー―スターダストを、もう一度』 五歩一 勇

―― まずは『シャボン玉ホリデー スターダストをもう一度』からお願いします。

なお 8月の虎姫一座の演目だった『シャボン玉だよ!牛乳石鹸』の資料本です。当時の関係者の方が書かれていて、写真や台本が載ってます。『シャボン玉ホリデー』は昭和の伝説的な歌番組ですけど、600回近く放送されたのに資料がほとんど残ってなくて、映像も4~5本くらいしか目にすることができない。そんな偉大な番組を舞台にするわけですから、資料集めは必死でやりました。そのなかで何とか手に入れた資料の一つが、この本です。ザ・ピーナッツさんとかハナ肇とクレージーキャッツさんとかの関連本はあるんですが、この本には番組の台本がそのまま載っているんです。実際の番組を観ることはできないけど、台本を読むことで「こういうギャグをやっていたんだ」という新たな発見があります。それに写真も豊富に掲載されていますし、資料性という意味でもこの本が一番ですね。

―― 舞台で演じる上で参考になることも多いですか?

なお 私は『シャボン玉だよ!牛乳石鹸』の演目でザ・ピーナッツさんの役をやらせてもらうので、ファッションの研究はもちろんですけど、歌っている時の雰囲気とか、そういうのはすごく研究しますね。クレージーキャッツさんを思わせるようなコントみたいな寸劇も入るので、当時の笑いのニュアンスを感じるのにも役立ってます。現代のものとは絶対に違うニュアンスなんですよ。「これです」って説明するのがほんとに難しいので、こういう本をいっぱい読んでその時代の空気を感じるしかないんですよね。

なんだっけ?歌詞ことば

『昭和歌謡曲 なんだっけ? 歌詞ことば』 牛田 正行

―― 続いては『なんだっけ?歌詞ことば』です。

なお 昭和歌謡に出てくる歌詞のフレーズを辞典形式にまとめた本です。例えば〈暮れなずむ町の〉という歌詞だったら、「暮れなずむ」を調べると意味がわかる。“「なずむ」は、物事がすんなり進まない状態。暮れなずむは日が暮れそうでなかなか暮れないこと”って。個人的に驚いた歌詞は「銀座カンカン娘」という虎姫一座でも歌わせてもらっている曲に出てくる〈ままよ銀座は私のジャングル〉でした。私は「あれ? お母さんに向けて歌ってるんだ」と思って、「ママ」の意味だと勘違いしてたら、実は「まま」って日本語で“施す術がなく成り行きに任せるという意味で、どうにでもなれ”という意味で。そういったフレーズが昭和歌謡という切り口で全部まとめられてるんです。

ほかにも「メリケン波止場」って昭和歌謡の頻出ワードなんですけど、「アメリカン」を「メリケン」って言ってた時代があって、外来語がまだ不安定だった頃だから今と違う言い方なんですよね。「キッス」みたいに「ッ」が必ず入るとか、当時ならではの表現っていうのは、こういう辞書じゃないとわからなかったりするので。

世界一の美女になるダイエット

『世界一の美女になるダイエット』 エリカ アンギャル

―― 3冊目は『世界一の美女になるダイエット』です。

なお 恥ずかしいタイトルの本ですみません(笑)。読み過ぎてボロボロになってますが、虎姫一座を始めたばかりの頃は今より6~7キロ太ってたんですよ。エノケンさんの曲で〈背は低いが肉体美、おまけに足までが太い〉っていうフレーズがあって、その頃は「なおが適役だね!」って言われて「演出のために太くしてるんです~」って冗談を言い合ったりして、私はそういうふうにイジられるキャラクターだったんです。でも、もっといろんな役をやりたいと思って、そのためにはダイエットが必要だなと。その時にメンバーにもらった本なんです。意識がだいぶ変わりましたね。この本を読んでからは「これは身体に悪いから食べたくないな」とか、「これは美容にいいから食べてみよう」とか、無理のない食生活ができるようになりました。レクチャーしてくれる語り口調が「~と思ったわ、あなたは~なのね」みたいな感じなので、読んでいて女子的意識も上がる気がするんです。

―― 無事にダイエットも成功したと。

なお はい。すぐに太っちゃうような食べ物が好きだったので、ちょっと食べるものを変えるだけで身体がだいぶ軽くなって、それ以外にも運動したりしたおかげで一気に痩せましたね。こんなに違うのかって思いました。毎日ステージがあるので、すごく実感がありました。

バガボンド

『バガボンド』 井上 雄彦

―― 次は『バガボンド』です。

なお 私、アルバイト経験のなかで最も長く続いたのが、漫画喫茶の接客だったんです。その時に一番惚れ込んだ漫画が、井上(雄彦)先生の『バガボンド』。武蔵と又八は対照的なキャラクターで、最初は武蔵がヒーロー的な立場で、又八があらゆるところで自分に負けちゃうダメな人、っていう話なのかと思いきや、武蔵の葛藤とか、人間らしいところも描かれる。結局は努力をしなきゃ人はダメなんだっていうメッセージを伝えたいのかなと思ってる矢先に、小次郎っていうほんとの天才が出てくるんです。そういった人間模様に共感しました。私たちの世界でも「この人は天才肌、この人は努力派」みたいなのだったり、「ここで負けたらダメだ!」みたいな場面って誰にでもあると思うんですけど、それぞれ異なるキャラクターの人間の心理をめちゃくちゃ深く描いてるんです。

―― たしかに。

なお 井上先生は筆を使って描かれてるんですけど、武蔵の顔が成長とともにどんどん変わってくるんです。顔の表情もそうですし、絵のタッチにも変化があって、武蔵が頑なに刀を振ってたのが、だんだん柔らかくなってくるんですけど、そのへんから絵のタッチも変わってきていて、それに気づいた時にぶわって鳥肌が立ちました。魂ぶつけて自分も感情移入して、まさに自分のことを表現してるんだなと思って。あと物語の後半になると「真ん中」って言葉がよく出てくるんです。その感覚って、自分もなんとなく思っていたところがあって、あっちでもなくこっちでもなく「真ん中」に伝えたいことがある。武士道にも芸の道にも共通することってあるんじゃないかなと。

―― 舞台に臨む姿勢にも通じるところがたくさんある。

なお そうですね。自分に重ねたりして、ここで負けたら武蔵になれないぞと思う時もあります。

ジ・オフィシャル・クレージーキャッツ・グラフィティ

『ジ・オフィシャル・クレージーキャッツ・グラフィティ』 エディシオントレヴィル

―― 最後に選んでもらったのが『ジ・オフィシャル・クレージーキャッツ・グラフィティ』です。

なお 私、クレージーキャッツさんの大ファンで、これはファンのための完全版みたいな本です。写真のレイアウトがめちゃくちゃオシャレなんですよ。カッコよさをわかってるなぁっていう作りで、どのページもカラーコピーして部屋に飾りたいくらい(笑)。エピソード自体はほかの本にも載ってたりするんですけど、今のセンスでおしゃれにまとめてあるという意味でもオススメです。

―― クレージーキャッツの魅力とは?

なお メンバー全員がプロのミュージシャンで、個性もみんな強くて……っていう、それだけで大変な感じなんですけど、クレージーキャッツさんの映画は1年で5~6本公開してる時もあったりして、そういう過酷な状況をうまく乗り越えるためのギャグだったり、そういうところにも昭和の粋を感じますね。私もチームで活動してるから時にはぶつかり合うこともあるので、クレージーキャッツさんならではの人間ドラマというか、そういう見方で楽しんでるところもあります。例えば、ハナ肇さんはすごく熱があるリーダー気質の人なんですけど、徹夜で考えてきたギャグが全部ボツになって、適当にやってた谷啓さんのギャグが大体採用されるとか、そういう役割みたいなのって私たちにもあるじゃないですか。そういうのが垣間見えるといいなと思います。

―― なおさんは、ハナ肇さんがお気に入りなんですよね。

なお 私はハナ肇さんに恋してしまったんですが、なぜ素敵かって言われたら、「昭和」っていう時代背景も一つの理由としてあるなと思ったんです。だから今の若い世代の人にも、昭和のスターがきっかけで当時の文化とか好きになってくれたら、虎姫一座の舞台の雰囲気がもっと伝わるかなと思います。私自身、虎姫一座に入ったばかりの頃は昔のことをどうやって勉強したらいいかわからなくて、漠然と「浅草の歴史」みたいな年表みたいな本を読んでたんですけど、なかなか入りにくくて。でも、当時活躍していた芸人さんや歌手を好きになって調べていったら、どんどんのめり込んでいったんです。浅草の歴史を知ることも大切ですが、エノケンさんのような浅草で活躍されていた方の本を読むほうが、私には合ってるなと思いました。

―― そう考えると、ハナ肇さんは重要人物ですね。

なお ほんとに結婚したかったなって思います(笑)。それくらい好きですね。

―― 虎姫一座の舞台を観て、クレージーキャッツやザ・ピーナッツもそうですけど、昭和歌謡って皆で一緒に歌えるわかりやすさが魅力だなと思いました。

なお 毎公演、お客様と一緒に歌うシーンは絶対に作ってるんです。当時にタイムスリップしたような気持ちになる方もいますし、純粋に音楽だけでも楽しめると思います。振り付けはMIKIKO先生(PerfumeやBABYMETALなどを担当する振付師)が指導してくださったり、自分たちで担当したりもするんですけど、MIKIKO先生のファンの方も時々来てくれます。歌もそうなんですけど、ダンスに関してもバレエが得意なメンバー、新体操が得意なメンバー、ヒップホップが得意なメンバー、ほんとにいろんな人がいるので、いろんな色を出せるのが特徴です。

Photographs by Motoki Adachi

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プロフィール

虎姫一座
虎姫一座
「昭和歌謡レヴュー」グループ

2010年12月7日結成。浅草六区にて、「復活!昭和歌謡!!『エノケン・笠置のヒットソングレヴュー!』」と「昭和歌謡レヴュー『シャボン玉だよ!牛乳石鹸!!』」の2演目で通算1200回を超えるロングラン公演を敢行。2014年2月には六本木アミューズ・ミュージカルシアターに登場。江戸から平成までの東京をテーマに綴る、豪華昭和歌謡レヴューショー「ファミリーマートプレゼンツ 浅草レヴュー虎姫一座 六本木特別公演『東京モダンガールズ ~天海からの贈りもの~』」を上演。2014年7月より、浅草六区、アミューズ カフェシアターを本拠地に据え、再びロングラン公演に挑戦中。2016年9月13日からは新演目「これが浅草レヴュー『虎姫一座』だ!~VIVA! 昭和歌謡カーニバル!!~」を上演。9月17日からは土曜夜公演と日曜は限定演目として「昭和歌謡レヴュー『シャボン玉だよ!牛乳石鹸!!』」をロングラン上演することが決まっている。

http://www.torahi.me/

ライターについて

Writer 5
ホンシェルジュ編集部・芸術/芸能班

音楽、映画、アイドル、その他の芸術/芸能に詳しいライターによる班。もちろん皆が本好きだが、そのレベルや守備範囲はさまざま。日本のエンタテイメントのトップランナーを通じて、本/読書の楽しみへの入り口をつくりたい。あるいは本/読書という切り口を通じて、トップランナーの新たな一面を引きだしたい。

プロフィール

虎姫一座
「昭和歌謡レヴュー」グループ

2010年12月7日結成。浅草六区にて、「復活!昭和歌謡!!『エノケン・笠置のヒットソングレヴュー!』」と「昭和歌謡レヴュー『シャボン玉だよ!牛乳石鹸!!』」の2演目で通算1200回を超えるロングラン公演を敢行。2014年2月には六本木アミューズ・ミュージカルシアターに登場。江戸から平成までの東京をテーマに綴る、豪華昭和歌謡レヴューショー「ファミリーマートプレゼンツ 浅草レヴュー虎姫一座 六本木特別公演『東京モダンガールズ ~天海からの贈りもの~』」を上演。2014年7月より、浅草六区、アミューズ カフェシアターを本拠地に据え、再びロングラン公演に挑戦中。2016年9月13日からは新演目「これが浅草レヴュー『虎姫一座』だ!~VIVA! 昭和歌謡カーニバル!!~」を上演。9月17日からは土曜夜公演と日曜は限定演目として「昭和歌謡レヴュー『シャボン玉だよ!牛乳石鹸!!』」をロングラン上演することが決まっている。

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