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特集!あの人の本棚
187.

ROLLY   (ミュージシャン)


「繋げること」の意味(ROLLY インタビュー)

ROLLY
さまざまなプロフェッショナルの考え方・作られ方を、その人の本棚、読書遍歴、本に対する考え方などから紐解いていくインタビュー。今回は、70年代ジャパニーズ・ロックのカバーアルバム『ROLLY’S ROCK THEATER ~70年代の日本のロックがROLLYに与えた偉大なる影響とその光と影~』を8月にリリースしたROLLYさんの登場です。
「繋げること」の意味(ROLLY インタビュー)

日本屈指のクレイジー・ギタリスト、不屈のエンターテイナーとして知られるROLLYさん。普段はそこまで読書家ではないという彼が選んできた4冊は、どれも小説とは異なる本でした。しかし、そこには小説以上にドラマティックなストーリーがあり、小説より奇なるROLLYさんのヒストリーが感じられます。ギターに魅せられること35年以上、プロになって26年。今もなおROLLYさんを支えている美意識を強く感じるインタビューです。

自分でギターの本を書いたら、「これは教則本ではなく、人生の手引書だ」って周りから言われました

―― 1冊目は史群アル仙さんの『臆病の穴』ですね。

ROLLY えぇ。漫画といえば、今ここに手塚治虫作品がないのが不思議なくらい(笑)、僕は子供の頃から手塚治虫を読んでいたんです。『火の鳥』を読んで何度も心臓を掴まれる想いがしたし、宗教を飛び越えた向こうにある生命の意味とか「……よくぞ人間がこんなことを描くな!」と思っていて。それ以外にも、たとえばジョージ秋山、吾妻ひでお、つげ義春、日野日出志なんかも大好きで。だから史群アル仙さんの作品を発見した時はびっくりしました。

臆病の穴

『臆病の穴』 史群アル仙

―― タッチはまさに昔の漫画です。

ROLLY 作者の方はまだ若いんですけど、現代の漫画にあんまり興味を持たず、昔の漫画ばっかり読んでたらしくて。まず、質感がすごく手塚治虫っぽい。あとは『三丁目の夕日』も入っていて、その他にもいろいろ、僕が大好きだった70年代の漫画のテイストを全部合体させているんですね。先人たちの良いところを実にうまく取り入れているし、決して自分こそがオリジナルだという認識もない。先輩たちへの尊敬の念を失っていない。それは“すかんち”で僕がやっていたことと非常に近くて。“すかんち”は、ありとあらゆる音楽の中から、大好きだった先人たちの音楽の良い部分を取り入れ、先人とはまた違う形でやっていたわけです。

―― ええ。さまざまなルーツが垣間見えるバンドでした。

ROLLY だから、この人の存在を知って、ものすごく興味が湧いてネットとかでいろいろ調べたところ、ものすごくシンパシーが沸きましたね。それで連絡を取るようになりました。この方は今もツイッターで『今日の漫画』っていう一コマをやっているんですね。私、9月6日に53歳になったんですけど、その日の『今日の漫画』がね、僕の話なんです(タイトル「一雄とチビ」)。本名が寺西一雄で、子供の頃に飼っていたワンコはチビ。これは僕のことを描いている漫画だった! もう……震えたね。

―― (実際の漫画を見ながら)これは実話なんですか。

ROLLY はい。僕、子どもの頃は苛められていて、毎日毎日泣かされていた。そんな日々の中で、ある夏休み、母の実家がある兵庫県の丹波篠山に行った際に、セミの抜け殻を発見したんです。そこで気がついたんです。僕らはミンミン鳴いている虫のことをセミだと思っているけど、よく考えたら幼虫は6年間も土の中にいる。その幼虫は、よもや自分が空を飛ぶような存在になるとは思ってないんじゃないかと。6年経って、ある時に土から出てきてセミになって、背中がパックリ開いて羽が出てくる。その時に「あぁ自分の本当の姿はこれだったのか!」と気づくんじゃないか。

だとすれば、人間の一生にたとえてみれば、まだ自分は幼虫で、本当の自分の姿はこれからじゃないかと思ったんです。今は毎日泣かされているけど、いつか羽ばたいて、今とは違う何かになるんじゃないかと気がついて。それから僕はギターと出会うんです。で、ギターを弾くことによってなぜか苛められなくなって、いつの間にかプロになって26年なんです。その話を漫画にしてくれたから……ものすごく感動しましたね。

―― あぁ、素敵なお話です。そして次は『独身者の科学』。科学にはセックスとルビが振られています。

独身者の科学

『独身者の科学』 伴田 良輔

ROLLY 伴田良輔さんの本です。本の内容は、真の変態とはいかなるものか、ですね(笑)。俗に変態というとマイナスイメージですけど、これは変態のセックス、オナニーなど、性行為について恐ろしく真面目に解説している。そこが最高なんです。しかも変態プレイとはインテリジェンスの高い人の嗜みである、知性の高い者にこそ与えられた嗜好である、ということが書かれている。

現代の世の中って言葉がカジュアルになってますよね。美輪明宏さんも言っているけど、美しい言葉を使って人間として気高く生きることが大切だと。たとえば「食事に行こう」と言いたい時、「ハラ減った、メシ食い行こう」って言うのと「もうお食事は済まれましたか?」って言うのとはずいぶん違う。そういうニュアンスで、この本は、ものすごくアホらしいこと、変態とか性について異常なほど高尚な口調で書かれているんです。

―― 今アマゾンを調べましたが、カスタマーレビューで星が一つですね(笑)。

ROLLY え? どんなこと書いてある? (レビューを読みながら)……「センスの無い悪ふざけの典型」……「ここにあるのは“才能のあるボクが、キミ達の為に、これだけくだけているんだよ。”という無意識のエリート意識」……「自分には、この一冊からは“ボンボンの道楽趣味”しか感じられない」……うん、これは褒めてるね!

―― はははははは!

ROLLY くさしているようで、褒めてる! だってこの人、わざわざ全部読んだんでしょう? こう言われることが、この本にとって最高の褒め言葉なのよ。逆に「よくできた手引書だ!」とか「共感できる。泣ける!」って言うのは、この本に対する侮辱。これは最高のレビューですよ。この作者は、読者にこう言わせただけでも大成功です。日常でどうでもいいことを、本当に上品に、すごく高尚なものとして描いている。異常だね。この本を国民の80%が褒めだすような時代が来たら、日本は即滅びます(笑)。

―― 3冊目は『神界からの神通力』。深見東州の作品です。

神界からの神通力

『神界からの神通力』 深見 東州

ROLLY 僕は、死んだらどうなるのかってことに、ものすごく興味があるのね。死後の世界とか占いも好きで、そういう本はよく読むんですけど。これが面白かったのは霊性の話。

―― 霊性。たとえばどういうことでしょうか。

ROLLY ある女性が身体の調子が悪いと言う。11人くらいの女の霊がひとつの怨念となって取り憑いている。で、その女性は別に何もしていないんだけど、実はその女性の先祖の中にすごく悪い奴がいたんですね。今でいう猟奇殺人のように、若い生娘を次々と乱暴しては殺していた。殺された娘たちの怨念が一丸となって、代々、その家に取り憑いているんだと。「末代まで祟ってやる!」っていうやつですね。

ここからが面白いんだけど、被害者の女性がなぜ若くして死ななければいけなかったかというと、その人のまた何代も前の先祖も、誰かを殺していたんですよ。で、その時殺された人には、さらに同じことをしていた先祖の存在がある。そのさらに前にも同じことがあって……だから永遠に終わらないんです。「色情因縁」というらしいんですけど、これは誰もが持って生まれてくるものだそうですね。そういう途方もないことが書かれていて、目から鱗が落ちましたね。

―― なんだか手塚治虫さんが書きそうな話ですね。

ROLLY そう。『火の鳥』の世界だね。どこから始まったのかはわからないけど、永遠に続くもの。あとは、見方を変えると途端に恐ろしくなるもの。僕の主観でいえば、そんなに悪行を働いてきたとは思ってないんだけど、たとえば牛とか豚、鶏にも命があり、それぞれが意志を持って生きていると考えれば、人間って途方もなく悪い奴らでしょう。もう絶対に許されないよね?

―― た、たしかに(苦笑)。

ROLLY 豚の生姜焼き定食を美味しく食べてはいるんだけど、でもそのブタちゃんは「おかあちゃーん!」って言いながら親と引き離され、狭い場所に閉じ込められて無理やり食べさせられて……。食べるために生まれて食べられるために死んでいく命の立場になったら絶対怖いでしょう。恐るべきことに切り身にされて、何事もなかったかのようにスーパーに並べられて、それを僕らは普通に買ってるわけじゃない? おっそろしいなぁと思いますよ。そういうことを考えるきっかけにもなる本でしたね。僕、普段はそんなに読書家ではないけど、これは面白いなと思って人に勧めているんです。

―― では最後の1冊をお願いします。ご自身の著書『ROLLYのギター術 100のコツ』ですね。

ROLLYのギター術 100のコツ

『絶対!魅せる ROLLYのギター術 100のコツ』 ROLLY

ROLLY 恐縮ながら自分の本です。ギター術とありますが、これにはギター奏法とかほとんど書いてないんですね。いわゆる教則本ではまったくなくて。誰かから「これは教則本ではなく、人生の手引書だ」って言われましたね。

―― 物事の選び方や、人との接し方に重点が置かれていますね。

ROLLY そう。たとえばね、ライブハウスに出演する際の心得。まず店に入ったらきちんと挨拶をしましょうと。でね、たとえばパンクロックが好きで、ステージでカーッと痰を吐く奴がいたとしましょう。それを「キャー! 素敵」と思う方は別ですけど、一般的に言えば道で痰を吐くだけでも行儀がよろしいことではない。しかもステージは、我々ミュージシャンにとって神聖な場所であり、みんなが使う大切なもの。お店の店長さんにしてみれば自分の城ですよ。そこにカーッと痰を吐いて、おまけにモニタースピーカーの上に乗ったりする。

これを逆の立場で考えてみましょう。あなたの家に来た汚いパンク兄ちゃんが、リビングで「カーッ、ペッ!」とやって、あなたの大事なスピーカーに乗っかろうとしたらどうですか? ロックミュージシャンだから許されるというものではない。もしあなたがパンクスで、どうしてもステージ上で痰を吐きたいのなら、お客さんが最高潮に盛り上がってる時に「カーッ」とやり、その時に自分で用意した痰壺を持ち、痰壺の中に「ペッ!」と吐いてごらんなさい、と。

―― はははははは!

ROLLY 床に吐くのは、今まで同じことをやってた人たちと一緒ですよ。でも痰壺に吐けばものすごく尊敬されると思うんです。今までのパターンを踏襲している奴らに「その発想はなかった!」と驚かれる。もちろんロックってある程度の型がありますけど、それを、ユーモアを持って新しい次元に持っていくことこそが本来のロックなんじゃないかって……こういうことが延々と書いてありますね。これ、実を言うと伴田良輔の『独身者の科学』に影響された文章で。くだらないことを、ものすごく真剣に書いたものです。

―― 先人に敬意を払い、周囲への気遣いを忘れず、同時にユーモアを持って表現する。これはROLLYさんがずっとやってきたことですね。

ROLLY そうですね。僕はデビュー当時、なぜか『笑っていいとも!』から声がかかり、出演させてもらっていたんです。そうすると“すかんち”ってバンド名を悪く言う人が出てくるんです。僕は自分から「私たちは“すかんち”でございます」と名乗ってるんですよ? なのに「やーい、逆から読んだら“チンカス”」なんて言ってくる。それは僕から言わせてもらえば非常にインテリジェンスの低いことで。さっきの伴田良輔の本と同じですよね。彼の本が「センスの無い悪ふざけ」と言われるように、僕は「ギターを持ったお笑い芸人」なんて言われ方をしていた。だけどそれから26年が経って、まだ僕はギターを弾いてるんです。

―― 真面目にやっていなければ続きませんよね。最新のカバーアルバムにも、自分を形成してきた音楽に対する強い愛情と敬意を感じます。

ROLLY ええ。今回のアルバムには一曲だけ「1978」という自分の新曲を入れたんですけど、それは自分が初めてロックコンサートに行った経験を歌ったものです。地元の高槻という町に山本恭司さん率いるBOW WOWがやってきたんです。僕は友達のナカタくんとチケットを買って、自転車でガーッと行くんですね。髪の長いロンドンブーツを履いたお兄さん達がいたりして、ドキドキしながらコンサートを見て「なんだこれは? かっちょいい!」「いつか自分もあんなふうになりたい!」って思いましたね。その気持ちのままギターを弾き続け、そしたらいつの間にか自分もプロになっていて、今では山本恭司さんと2人でコンサートをやっていたりする。この「1978」は、憧れていた人たちへのお礼、そして、その人たちと共演できるようになった喜びを、一曲の中で表現したものですね。

―― なるほど。

ROLLY そして、そんな僕のことを客席で見ていた中学生が、今ではプロになっていたりする。自分のことを見てくれた人たちがプロになり、今は、その人を見ていた中学生が音楽をやっていますから。それは怨霊がずっと繋がっていくんじゃなくて(笑)、音楽の感動のバトンが繋がっていってるんですね。山本恭司さんが発信して僕が受け取ったものを、また次の人が受け取ってくれる。そうやって自分の遺伝子が、自分がいなくなっても受け継がれていく。自分がいなくなるのは怖いけど、音楽を真面目にやっていれば、その中に自分の遺伝子が永久に残るんだろうなって思っていますね。

Photographs by Motoki Adachi

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プロフィール

ROLLY
ROLLY
ミュージシャン

9月6日生まれ。ROLLY(ローリー寺西)を中心に1982年結成されたロックバンド、すかんちで大きな注目を集める。ヒットシングル「恋のマジックポーション」を含め、1996年のバンド解散までにオリジナル・アルバム6枚に加えベスト盤などもリリース。解散後、ROLLYは、すかんちとしての断続的な活動以外にも、ROLLYとしてのソロ活動、THE卍、ROLLY&GlimRockersや様々なユニット、プロジェクトなどでの音楽活動、プロデュースを行う。また、タレントや役者としても活躍。最近ではジャンルレス技巧派集団、オルケスタ・リブレとの共作アルバム『Orquesta Libre+ROLLY『ROCK OPERA!』を発表。洋楽の名曲を日本語で大胆にカバーした。一方、70年代の日本語ロックに光を当て、2015年7月にはカバーアルバム『ROLLY’S ROCK CIRCUS~70年代の日本のロックがROLLYに与えた偉大なる影響とその影と光~』を発表。2016年8月にはその続編とも言えるアルバム『ROLLY’S ROCK THEATER ~70年代の日本のロックがROLLYに与えた偉大なる影響とその光と影~』をリリースした。また、リリースに合わせて東名阪のワンマンツアー「”ROLLY’S ROCK THEATER" RELEASE ONE MAN TOUR」を10月15日(土)、16日(日)、18日(火)にかけて開催する。

http://www.rollynet.com/

ライターについて

Writer 14
石井恵梨子

音楽ライター。1977年、石川県金沢市生まれ。パンク/ラウドロック/ロックンロールを中心に音楽雑誌やWebで執筆中。本も大好き。こちらは特にジャンルを問わない活字中毒。アイコンは横山健画伯によるもの。

プロフィール

ROLLY
ミュージシャン

9月6日生まれ。ROLLY(ローリー寺西)を中心に1982年結成されたロックバンド、すかんちで大きな注目を集める。ヒットシングル「恋のマジックポーション」を含め、1996年のバンド解散までにオリジナル・アルバム6枚に加えベスト盤などもリリース。解散後、ROLLYは、すかんちとしての断続的な活動以外にも、ROLLYとしてのソロ活動、THE卍、ROLLY&GlimRockersや様々なユニット、プロジェクトなどでの音楽活動、プロデュースを行う。また、タレントや役者としても活躍。最近ではジャンルレス技巧派集団、オルケスタ・リブレとの共作アルバム『Orquesta Libre+ROLLY『ROCK OPERA!』を発表。洋楽の名曲を日本語で大胆にカバーした。一方、70年代の日本語ロックに光を当て、2015年7月にはカバーアルバム『ROLLY’S ROCK CIRCUS~70年代の日本のロックがROLLYに与えた偉大なる影響とその影と光~』を発表。2016年8月にはその続編とも言えるアルバム『ROLLY’S ROCK THEATER ~70年代の日本のロックがROLLYに与えた偉大なる影響とその光と影~』をリリースした。また、リリースに合わせて東名阪のワンマンツアー「”ROLLY’S ROCK THEATER" RELEASE ONE MAN TOUR」を10月15日(土)、16日(日)、18日(火)にかけて開催する。

http://www.rollynet.com/

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