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特集!あの人の本棚
19.

朝倉祐介   (ジョッキンゼー代表取締役)


Vol 2. 人間の本質に迫る作品は、古典もマンガもすべて読む

朝倉祐介
競馬の騎手を目指した後、東大、マッキンゼー、ベンチャー、ミクシィ社長という異色の経歴をたどった朝倉さん。経営の参考にしたのは、マキャベリの『君主論』に『ゴッドファーザー』、『沈黙の艦隊』!? 本の読み方や買い方についてのお話もうかがっていきます。
Vol 2. 人間の本質に迫る作品は、古典もマンガもすべて読む

出版はしないけれど、これまでのことを書きためている

――普段、本は紙で読まれますか? 電子書籍も使いますか?

朝倉祐介(以下、朝倉) マンガはiPadのKindleアプリで、普通の本はKindle Paper whiteの端末で読んでいます。最近はKindleばかり使ってますね。本屋で欲しい本を見つけても、Kindleで探して買うようにしています。もうね、そうしないと家が本だらけになっちゃうんです。

――ああ、置き場所のことを考えると電子のほうが便利ですよね。

朝倉 僕、本を読むのがすごく遅いんです。一方で読みたい本を見つけると、すぐ買っちゃう。だから本当に、床が抜けるんじゃないかってくらい「積ん読」状態になってて。それをなんとかするために、整理術の本とか買ってみるんですけど、またそれが積ん読になる。キリがないんですよ(笑)。

――永久ループですね(笑)。

朝倉 Amazonでポチる(購入する)のが、ストレス解消になってるんですよね。本ならどれだけ買ってもたかが知れていますし。マーケットプレイスの中古本なら、1冊10円とかで買えますから。あと、最近気づいたのは、僕、耳からの情報がぜんぜん入ってこないんですよ。人の話がちゃんと聞けなくて、なにかの病気なんじゃないかと思ってます(笑)。大学の講義も全然覚えてない。

――そんな(笑)。

朝倉 だからこそ、活字とか目から入ってくる情報のほうが、頭に残ってるんですよね。

――本は、自分のペースで読めますしね。

朝倉 目から入った情報のほうが、圧倒的に大きいんですよね。東大に進学したのも、東大新聞が発行してる冊子をたまたま読んで、「あ、楽しそう」って思ったのがきっかけですから。

――そうだったんですね。 朝倉さん自身は、文章を書くことはあるんですか? 本を書きませんか、というオファーなどがたくさん来ていそうだなと。

朝倉 実は、学生時代にネイキッドテクノロジーという会社を立ち上げたところから、今までのことを書き溜めてるんですよ。知見をちゃんと言語化して残しておくために。それが、自分のためにも、サポートしたい後進のためにもなると思っているんです。

――おお、それは出版されないんですか?

朝倉 出版は考えていません。というのも、やっぱり具体的に、誰がこの時何をして何を言ったかというところまで書き記さないと、意味がないので。そこが本質なんですよね。抽象化してしまうと伝わらないことがある。でも、それをそのまま世の中に出したら、暴露本になってしまいます。暴露本は僕の本意ではありません。

――しかも朝倉さんが出版するとなると、帯に「マッキンゼー出身、元ミクシィ社長の…」みたいに、センセーショナルなコピーがつけられてしまいそうですよね(笑)。

朝倉 そうですよ! そういうの、本当にどうかと思います。読者の目を引くための施策だっていうのはわかりますけど、僕はやりたくないですね。

『沈黙の艦隊』『蒼天航路』『サンクチュアリ』はテッパン

――後進のために、とおっしゃいましたが、後輩の経営者などに、本を勧めることはありますか?

朝倉 うーん、参考になるウェブの記事を送ったり、「『起業のファイナンス』はちゃんと読んでおくといいよ」とか言うことはありますけど、そんなに勧めることはないですね。自分が経営の参考にしていたのも、ビジネス書というよりマキャベリとかの古典だったので。

――またマキャベリが…! じつは、以前この特集でインタビューした、経営再建の仕事をされている加藤崇さんも、マキャベリの『君主論』を勧められていたんです(過去記事)。

朝倉 いやあ、マキャベリはすばらしいですよ。『君主論』には人間の本質に迫ることが書かれています。

――朝倉さんはどうやってマキャベリにたどり着いたんですか?

朝倉 僕が東大にいたときの総長が佐々木毅さんといって、マキャベリの政治思想の研究をしていた方だったんですよ。それで、『君主論』は読んだほうがいいとおっしゃっていたから、学生時代に読んでみたんです。当時はまったく腑に落ちなかったのですが、社会人になって改めて読んでみたら、すごくためになりました。シェイクスピアもそうなんですけど、こういった古典は人間の本質を知るために読んでいます。

――それはやっぱり、経営に関わるようになったから。

朝倉 大きい組織になればなるほど、人の気持ちを一定の方向にどう向けていくのかということが課題になりますよね。だからけっこう、「ゴッドファーザー」みたいな、マフィアとかヤクザの世界を描いた作品も参考になるんですよ。こういう出来事が起こると、こういう人がこういう行動をとって、こういう派閥ができて……って、あれはさまざまな組織の縮図ですよね。

――ああ、なるほど。

朝倉 僕は最近『センゴク』っていう戦国時代を描いたマンガが好きなんです。いやあ、作者の宮下英樹さんは、なんでこんなに人の気持ちがわかるんだろうって鳥肌たちますよ。例えば、長篠の合戦の前に、織田信長が一瞬逃げるんです。この感じ、リアルですよね。リーダーの孤独みたいなところにすごく迫ってる。あと、僕が一番好きなのは、「敵の大将の首をとったぞー!」って喜んでいるやつが、後ろから味方に刺されてる一コマ。極限状態でむき出しになる人間のエゴが、凝縮されてるシーンだと思います。

――まさに人間の本質に迫る内容なんですね。

朝倉 こういう生々しさを伝えるのに、マンガっていうのはすごく適したフォーマットだなと思います。マンガでいうと、原子力潜水艦の戦いを描いた『沈黙の艦隊』、三国志を独自解釈した『蒼天航路』、ヤクザの世界と政治の世界の両面から日本を変革する『サンクチュアリ』は僕のなかのテッパンですね。この3つは、ずっと前から好きなマンガです。

――3つとも名作ですよね。

朝倉 『沈黙の艦隊』は国家とはなにか、ということを考えさせられます。国際政治の駆け引きという、知的なおもしろさもある。また艦長の海江田四郎が主人公なんだけれど、まわりのキャラもすごく立っていて、自衛官、政治家、アメリカ大統領など、それぞれ立場の違う人たちが、己の信念に従って行動する。彼らのぶつかり合いに引き込まれます。

――わかります。

朝倉 前回お話した、ノンフィクションや『ハゲタカ』にも共通することですが、そこに登場する人間の挟持、美学みたいなものに触れられる作品が好きなんです。



(次回へ続く)

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プロフィール

朝倉祐介
朝倉祐介
ジョッキンゼー代表取締役

あさくら・ゆうすけ/1982年、兵庫県生まれ。小学生の頃から競馬騎手に憧れ、中学卒業後、オーストラリアクイーンズランド州の競馬騎手養成学校に留学。しかし1年で背が伸びすぎてしまい、体重制限のため騎手の夢を諦めざるを得なくなる。帰国後、北海道浦河町で調教助手となるも、バイク事故に遭い競馬の道を断念。大学受験資格を取得できる専門学校に通い、20歳で東京大学に入学。2007年、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。2010年、学生時代に立ち上げたネイキッドテクノロジー社に戻り、CEOに就任。2011年、同社をミクシィに売却したことにより、ミクシィに入社。事業開発などを担当し、12年、執行役員経営企画室長に就任。2013年6月にCEOに就任し、立て直しを図る。2014年6月、CEOを退任し、顧問に。

ライターについて

Writer 1
崎谷実穂

さきや・みほ/求人広告、記事広告のライターを経て、現在ビジネス系のインタビューライター。ブックライターでもある。cakes、日経ビジネスオンラインなどで連載担当中。

プロフィール

朝倉祐介
ジョッキンゼー代表取締役

あさくら・ゆうすけ/1982年、兵庫県生まれ。小学生の頃から競馬騎手に憧れ、中学卒業後、オーストラリアクイーンズランド州の競馬騎手養成学校に留学。しかし1年で背が伸びすぎてしまい、体重制限のため騎手の夢を諦めざるを得なくなる。帰国後、北海道浦河町で調教助手となるも、バイク事故に遭い競馬の道を断念。大学受験資格を取得できる専門学校に通い、20歳で東京大学に入学。2007年、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。2010年、学生時代に立ち上げたネイキッドテクノロジー社に戻り、CEOに就任。2011年、同社をミクシィに売却したことにより、ミクシィに入社。事業開発などを担当し、12年、執行役員経営企画室長に就任。2013年6月にCEOに就任し、立て直しを図る。2014年6月、CEOを退任し、顧問に。

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