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特集!あの人の本棚
198.

hontoビジネス書分析チーム   (本と電子書籍のハイブリッド書店)


累計発行部数70万部のシリーズに続く、待望の新作! ミスミグループ会長の描く、小説仕立ての「戦略の教科書」

hontoビジネス書分析チーム
丸善とジュンク堂は、ビジネスパーソンや各界の専門家を主な利用者とする大手書店グループです。その購買データを分析すれば、ビジネスパーソンにとって「いま注目の本」が見つかるのではないか、というこの連載。今回は、9-10月の「経営学・経営戦略」分野に絞り、売れ筋のランキングとトレンドを読み解いてみました。
累計発行部数70万部のシリーズに続く、待望の新作! ミスミグループ会長の描く、小説仕立ての「戦略の教科書」

今回注目したのは、9月1日の発売で早くも9月のランキング第2位におどり出し、10月のランキングでも第3位と上位を維持している『ザ・会社改造 340人からグローバル1万人企業へ』(以下、『ザ・会社改造』)です。

著者は企業再生の専門家でもあり、経営コンサルタントでもある三枝匡氏。氏は現在、東証一部企業であるミスミグループの会長ですが、本のタイトルにもあるように、ミスミが340人の頃から現在の1万人企業になるまで経営に携わっています。12年に渡るその自らの経験を小説仕立てにしたのが、今回著した『ザ・会社改造』なのです。フィクションでありながら、ノンフィクションとしても読める本書の魅力を、もう少し深堀りしてみましょう。

丸善・ジュンク堂「企業研究」書籍 2016年10月ランキング

(2016年9月26日~2016年10月25日までのデータ)

著者は過去に『戦略プロフェッショナル』『経営パワーの危機』『V字回復の経営』(いずれも日本経済新聞出版社)という著作を著していて、いずれも企業再生を内側から描いており、氏の三部作と言われています。

満を持して発表された本作では、三枝氏が12年に渡って経営改革を行ってきたミスミという実在する企業を舞台とし、主人公として「三枝」が登場。当然、事実は多少デフォルメされてはいますが、極めてノンフィクションに近い、私小説ともいうべきものとなっています。

ザ・会社改造 340人からグローバル1万人企業へ

『ザ・会社改造 340人からグローバル1万人企業へ』 三枝 匡

中小企業から大企業への道程を活写

三枝氏は知る人ぞ知る名経営者。そして企業再生のプロです。その経歴を見ると、若いころから理論と実践の両面から「経営」に携わってきたことがわかります。1967年に一橋大学経済学部を卒業した後、三井石油化学を経て、ボストン・コンサルティング・グループの国内採用第1号コンサルタントになります。さらにスタンフォード大学でMBAを取得後、30代で赤字会社2社の再建とベンチャーキャピタル会社の経営をそれぞれ社長として経験します。

煌びやかな経歴に見えますが、赤字会社の再建というのは、並大抵の苦労ではありません。経営戦略の構築力に加え、人々を巻き込む人間力、厳しい意思決定を次々と下さなければならない実行力など、あらゆる経営者の力が問われます。したがって、立て続けに複数企業の再建と成長を成し遂げた三枝氏は、この時点で本当の「プロ」として知られるようになっていました。

さらに三枝氏には、文才も備わっていたようです。前述の企業再生や企業経営の経験をもとに、ノンフィクション要素を下敷きにした小説仕立ての本『戦略プロフェッショナル』を記しますが、ストーリー性があり読みやすい上に、戦略の要諦がギュッと詰まった「戦略の教科書」として人気を博します。

その後、会社変革、再建をテーマに、『V字回復の経営』、『経営パワーの危機』という2冊を記すも、いずれもが前作に劣らない良書。「三枝匡氏の3部作」「経営の3部作」としてロングセラーとなり、累計発行部数は70万部に達しています。

そして、3部作の出版とほぼ同時期の2002年に三枝氏はミスミ(現ミスミグループ本社)社長CEOに就任します。その後は本を記すこともなく、2008年に同グループ会長CEOに就任。本書タイトルにもあるように、同社を社員340人の商社からグローバル1万人の国際企業に変身させてきました。

過去3部作では、苦境に立たされた企業が復活し、成長軌道に乗っていくまでを活写したものでしたが、今回著した『ザ・会社改造』では成長軌道に乗った後の中小企業が1万人の世界企業グループへと拡大していく軌跡を描いています。

会社「改革」ではなく、会社「改造」というほどにドラスティックな変革を行うためには何が必要だったのか。その内容を理論的に提示し、解決策を丁寧に追っています。論理的でありながら、理論書にありがちな堅苦しさはなく読みやすい。それでいて、実体験を通じて現実をリアルに反映しているだけに、臨場感を伴って読ませます。本の登場人物も空想の人物には思えず、そこには血の通った社員たちの人となりが垣間見えるのです。

マネジメント層から中堅ビジネスパーソンまで必携の一冊

机上の空論と揶揄されがちな経営コンサルタントの本ではなく、三枝氏がどっぷりと企業の成長ために内部から関わったからこその体験談が本書にはちりばめられています。そして、その体験に裏打ちされた、ドキッとするような格言もちりばめられているのです。 例えば次のような記述に見られます。

“ 人は、もつれた糸のような混沌を《自分たちの手に負える大きさ》にまで分解しない限り、中身を理解することはできない。《因果律》を探し出すのは、「論理的」な作業である。 ”

(『ザ・会社改造』より、以下引用箇所は同様)

どんな仕事でも慣れてくると、わかった気になってしまうことは多いものです。しかし、相手にわかりやすく説明せよと言われると、その本質を深く理解していないとなかなかできません。

「自分の手に負える大きさ」は人それぞれですから、上司は「自分の手に負える大きさ」のものを部下に指示しても、部下にとっては「手に負えない大きさ」なわけです。ここに気づかないと、事実誤認や誤解で仕事を進めてしまいかねません。

ではどうすればよいか。上司はひとつ前の段階まで戻って説明し、部下の「手に負える大きさ」のレベルで指示を与えることが必要になるでしょう。こうした事象が積み重なっていったものが、会社経営ではないでしょうか。

前述したような「格言」は、経営を実体験している人にこそ、刺さるものでしょう。本書は会社改革の道筋を疑似体験できる本ですから、これから経営者を目指す人、管理職にある人にはうってつけの本です。なにげない一文、ひと言が、経営に携わる人ほど重みをもつ。その意味で、すでに経営者である方々はもちろんのこと、30代半ばから40代の中堅ビジネスリーダーにも、参考書として座右においておきたい一冊といえます。

ザ・会社改造 340人からグローバル1万人企業へ

『ザ・会社改造 340人からグローバル1万人企業へ』 三枝 匡

冷静な筆致ながら情熱的で緻密な思考の描写

会社「改造」にはさまざまな種類の困難が伴います。最初に行うべき現状把握からしてそうです。どんな数字、実態が現状を示しているかを認定すること自体が難しいものでしょう。現状を把握したいだけであっても、改革を阻止したい勢力もいて、正しい情報を出されるとは限りません。

また、経験があるがゆえに思考の過程をすっ飛ばしてしまい、手近で慣れ親しんだ手法に転んでしまうことも多々あるのではないでしょうか。そうしたぬるま湯に慣れた状態からすべてを洗い出し、原因のありかを妥協なく探っていくことは、並大抵のエネルギーでできるものではありません。

本書ではビジネス小説には珍しく、「判断の分かれ目」という囲み記事の形式を設けており、「リーダー三枝」の思考の過程を読み解くことができます。さらには、実際の社員を取材したらしきコメントも「〇〇事業部長の話」のような形で登場します。「三枝」の言葉や意思決定を社員がどのように受け止めていたか、もわかるため、経営者の思考や行動が部下にどのように映るのかも知ることができます。、管理職には興味深い内容でしょう。

三枝氏は実践的、経験的に得た知見を原稿に記したのではなく、もともとある経営論を現場の実情に当てはめていき、その結果から導かれた理論の正当性を原稿にしたに違いありません。ですから、私たちも本書を読んでその通りに実践しようとするのではなく、原則をベースに、現実に即したやり方を模索することが必要なようです。実はそのようにして、理論を現実に即してカスタマイズする能力こそが、ビジネスの上での本当のスキルと言えるのではないでしょうか。

著者は並外れた情熱で、会社にエネルギーを注いでいきます。冷静な筆致なのですが、ときに社員に厳しい言葉も浴びせます。その裏にある熱いものを感じさせるのです。それにしても、会社をドラスティックに変革していく過程では本人自身、周りの人から嫌われることも多々あったことでしょうから、経営者というのはつくづく大変な仕事だと思わざるをえません。けれど、経営者は大変な仕事だからこそやりがいもあり、人生を賭して捧げる仕事になるのでしょう。

三枝氏のエネルギーを感じてモチベーションをアップさせて仕事を情熱的にこなし、理論を自分なりに咀嚼して冷静にことにあたる。そんな読み方のできる本だといえます。

ザ・会社改造 340人からグローバル1万人企業へ

『ザ・会社改造 340人からグローバル1万人企業へ』 三枝 匡
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丸善・ジュンク堂も同グループであるため、この2書店の売れ筋(ランキング)から注目の書籍を見つけることも。小説などフィクションよりもノンフィクションを好むメンバーが揃っています。

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