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特集!あの人の本棚
210.

結城洋平   (役者)


「答え」導く舞台を(結城洋平 インタビュー)

結城洋平
さまざまなプロフェッショナルの考え方・作られ方を、その人の本棚、読書遍歴、本に対する考え方などから紐解いていくインタビュー。今回は、ホンシェルジュ連載陣の一人でもある役者・結城洋平さんに話を聞きました。結城企画第一弾の舞台「ブックセンターきけろ」にまつわるセレクトです。
「答え」導く舞台を(結城洋平 インタビュー)

10年間の劇団所属を経て、2014年に独立を果たした結城洋平。待望の初自主企画公演「ブックセンターきけろ」が、11月11日(金)~13日(日)にかけて東京・下北沢Geki 地下 Libretyにて開催される。自他ともに認める「読書好き」の彼がプロデュースした作品について、そのヒントとなった本とともに話を聞いた。

いつも本を読む時、舞台用に何か面白い題材はないかなって考えてる

―― 『ごく平凡な記憶力の私が1年で全米記憶力チャンピオンになれた理由』は、ホンシェルジュの一回目の連載で取り上げていた本ですよね。

結城洋平(以下、結城) はい。いつも本を読む時、舞台用に何か面白い題材はないかなって考えてるんですけど、そういう意味でもこれはピッタリでした。読み物としの面白さもあるし、記憶術に関して深く書いてある。僕は物事の「起源」にすごく興味があって、例えば火が出た瞬間を初めて見た人のリアクションはどうだったのかとか、人間が初めて水を飲んだ時はどんな様子だったのかとか、そういうことが気になってしまうんです。記憶力について最初に考えた人っていうのは、この本にも出てくる古代ローマのキケロっていう人なんですけど、その人のお名前をお借りして「ブックセンターきけろ」っていう舞台の名前になりました。

ごく平凡な記憶力の私が1年で全米記憶力チャンピオンになれた理由

『ごく平凡な記憶力の私が1年で全米記憶力チャンピオンになれた理由』 ジョシュア・フォア

―― なるほど。

結城 記憶力という概念がまだなかった時、キケロさんがパーティを催していたところ、その建物が崩れてしまった。キケロさんは建物から出た後で助かったんですけど、跡形もなく建物が壊れてしまって、どこに遺体があるのか分からなくなった。そんな時、キケロが誰がどの場所にいたのかを覚えていたらしく、そこから記憶術っていうものが始まったそうなんです。その起源も面白いなと。

―― どういう形で使うかは分からないけど、自分の舞台で何かしら引用できたらいいなぁくらいには思ってたんですか。

結城 ボンヤリと思ってました。頭の中だけで完結する記憶術っていうものと、外の記憶媒体を使うインターネットって関連性があるなぁと。インターネットは記憶するのに便利ですけど、人間の記憶力って古代ローマの人のほうが優れていたと思うんです。もし今、電気がいきなり使えなくなってパソコンもスマホも使えなくなってしまったら、頼れるものって頭の中だけなのかなって。

―― そういう結城さんの洞察みたいなものが、今回の作品は反映されている?

結城 そうですね。舞台のお話の流れで、記憶力を使うパートもあるんですけど、自分的には古代ローマに挑むというか、記憶術で魅せる……みたいなことをやっていきたいです。

―― 次にセレクトしてもらった本は『野心のすすめ』です。

野心のすすめ

『野心のすすめ』 林 真理子

結城 林真理子さんの『野心のすすめ』は、前に出演した舞台の脚本家さんにお勧めされた本です。若者はもっと野心を持ったほうがいいということが書いてあって、その通りだなと思って。今の時代、周りと歩調を合わせることが重要視されているけど、もっと野心的でもいいんだと。僕の心を動かしてくれた本です。

―― 結城さんの周りには、同世代の野心的な人って少ないんですか?

結城 そうですね。この本を読んでいると、林さんが世に登場した頃の人たちって、野心に満ち溢れた方ばかりだったんだなと思います。自分の周りで同じくらいの野心を持って「やるぞ!」っていう人は本当に少ないです。歩調を合わせてやっていこうっていう人のほうが多いですね。僕もどちらかというと後者のほうなので、この本を読んで「もっとエネルギー出していかないと、同じままだな」って。6年くらい前に読んだんですけど、実際そこから少しずつ意識が変わっていきました。

―― 前の事務所を辞めて独立したのも、そういう意識から?

結城 まさにその通りです。僕は20代後半なんですけど、演劇界で同世代で団体を立ち上げて活動している人が少なくて。少し上の世代、少し下の世代には結構いるんですけど、27~29歳って年齢だとあまりいない。だから自分たち世代にしかできないことをやって、上の世代の人たちに「なんか面白いヤツらが出てきたな」って思わせるような舞台を作りたいんです。

―― 独立後第一弾となる自身の舞台作。理想のものに仕上がりそうですね。

結城 そうですね。でも僕は一人じゃ何もできないので、周りの方が「こうやったらいいんじゃないの」って話をまとめてくれて、気づいたら「あれ? やることになってる」みたいな(笑)。チラシ一枚作るのにもそうなんですけど、周りに支えられてここまでやってこれたと思います。「ブックセンターきけろ」を構想した時、少人数でやりたいなって思ったんです。特にそこに根拠はないんですけど、どうしてもたくさんの演者が出ると分散されるので、しっかり演者が分かるパッケージでやりたいなって。

―― 3冊目は伊坂幸太郎さんの『アヒルと鴨のコインロッカー』。

アヒルと鴨のコインロッカー

『アヒルと鴨のコインロッカー』 伊坂 幸太郎

結城 これは8年ぐらい前かな。人から勧められて読んだんですけど、これがきっかけで伊坂さんの作品はほぼ全部読みました。神様の声を閉じ込めるっていう発想もすごく好きです。ワクワクしながら一気に読みました。伊坂さんの小説は『オーデュボンの祈り』『ゴールデンスランバー』とか有名な作品もたくさんあるけど、自分は『アヒルと鴨のコインロッカー』が一番グッときますね。

―― さっきも話してくれましたが、結城さんと同世代の役者さんで一人やろうとする人が少ないのは、それだけリスクが大きいからだと思うんです。リスクを背負ってまで自分でやってやろう!と思ったのはなぜなんしょう?

結城 事務所を辞めてから2年間、客演としていろいろな舞台に出させてもらったんです。2年間で8本の芝居に出たんですけど、どうしても「出させてもらっている」という意識になってしまう。気持ちとしては「一つの作品を全力で作るぞ!」なんですけど、「客演の結城洋平」が前面に出てしまうんです。次第に物足りなさを感じて、自分で作ったものを「これは自分で作ったものですよ」と提示したいと思ったのが、自分の舞台を作ろうと考えた大きなきっかけです。

―― その2年間で、構想・脚本・キャスティングみたいなものを自分の中でなんとなく考えていたんですか?

結城 そうです。考えてました。眼鏡太郎さんは1年前に客演していた舞台先で一緒になって、先月まで上演していた舞台でも同じ出演者でした。ナイロン100℃の役者さんで、お願いするのにはハードルが高いかもしれないと思ったんですが、エイ!と思って連絡してみたら快諾していただきました。もう一人の目次立樹さんは、目次さんがまだ学生団体で活動している時からお芝居を見ていて、すごく面白い役者さんなのでいつかは一緒にやりたいなと思っていたんです。だから、この3人は本当にベストメンバーだなと。

脚本・演出の大歳倫弘さんは、人づてに紹介してもらって、それまで大歳さんの作品は何回か観させてもらっていたんですけど、例えば「起源」という難しいテーマでも割とライトに面白く書けるような人なんです。僕はどうしても自分の世界にこもりがちで、周りの人からしたらちょっと付いていけないような思想になりがちなんですけど、大歳さんはそこをうまく翻訳してくれる存在ですね。

―― この舞台で何か伝えたいことはありますか?

結城 一本舞台をやるからには、答えを出したいと思います。普段、自分が舞台を観に行った時に観客に委ねるような内容だったりすると、「いや、ちゃんと答えを持ってきてよ。宿題にしないでよ」と思っちゃうんです(笑)。もちろん、そういう内容でも面白い舞台はあるんですけど、やっぱり自分がやるからには3500円分の答えを提示したいなと。約1カ月半、僕たちが稽古したり、いろいろ話をしたりする中で出来上がったものを1時間半という舞台で表現する。その対価としてお客様から3500円をいただくことになるので、しっかり答えを持って挑みたいなと思います。

―― 「ブックセンターきけろ」っていう作品名を聞くと、本屋さんのお話しってイメージがしますけど、その背景にあるものが面白いですよね。

結城 大歳さんと話をしている時、「この本(『1年で全米記憶力チャンピオン』)が面白いんです」って話題になって、そしたら次に会った時に大歳さんが物語の概要を3つくらい考えてきてくれたんです。その中の一つに「ブックセンター(仮)」っていうタイトルがあって、「うわ! これでしょ!」って。で、キケロの名前を足して「ブックセンターきけろ」になったわけです。ブックセンターっていう発想は、僕の話を聞いて大歳さんが「これは本かな?」って思ってくれたのかもしれない。そういう意味ではホンシェルジュで連載のおかげで『ごく平凡な記憶力の私が1年で全米記憶力チャンピオンになれた理由』を読んだので、すべてが関連してるなと思います。

―― そう言ってもらえて光栄です。

結城 東京のはずれにあるブックセンターの中での話なので、ものすごくミニマムなところから物語が始まるんですけど、それがどういう風に広がっていくのか楽しみですね。しかも男3人の舞台。普通は可愛い女の子が出ていたほうが、やっぱりいいじゃないですか。でも今回は男3人だけなので、その分、熱量を出していきたいなと思っています。

―― お客さんの記憶力を刺激するものになるといいですね。

結城 例えば、舞台のセットをパッと見た時に「どこに何が置いてあるのか?」って普通は覚えないじゃないですか。そういうのを利用してお客さんにも「記憶力」っていうものを楽しんでもらいたいです。この3人で記憶術の初歩を身につけながら稽古していこうと思ってるんですが、舞台が終わる頃にはマスターになっていたいです(笑)。

―― 記憶術をマスターしたら、あらゆる場面で応用できそう。

結城 そうなんですよね。古代の人たちもすごく努力して記憶術を身につけていったそうなんですけど、そうだよなと思って。とにかく一生懸命やるってこと以外にやるものはないなと。「ブックセンターきけろ」も一生懸命やって面白くなればな、と思います。

―― わかりました。今回の舞台は結城企画の第一回公演ですが、この後は第二回、第三回と続けていくんですよね。

結城 はい。第二弾も割とすぐにやりたいなと思ってます。

―― 企画のスタイルとしては、まず結城さんが中心にいて、舞台ごとに一緒にやりたい人とやっていくっていう感じなんですか。

結城 そうです。その感覚を面白がってくれる人たちが、毎回気になって観に来てくれたら嬉しいです。

Photographs by Motoki Adachi 撮影協力:nostosbooks  https://nostos.jp

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プロフィール

結城洋平
結城洋平
役者

東京都国立市生まれ。2004年10月、『3年B組金八先生』第7シリーズでデビュー。以後、10年ほど劇団に所属し現在は独立。日本体育大学卒業。高校進路決定時、忍者になりたいという夢を抱え、母親とともに日光江戸村に直談判に行くが、年齢制限のため断念。日本体育大学へ進学した理由も大学の中で一番忍者に近そうだから。現在は役者に専念。職業柄、役作りの際の参考書籍として本を読むことが多い。

●舞台
結城企画 第1回公演
2016/11/11(金)〜13(日)
「ブックセンターきけろ」

【脚本・演出】
大歳倫弘 (ヨーロッパ企画)

【出演】
眼鏡太郎(ナイロン100℃)
目次立樹(ゴジゲン)
結城洋平

【会場】
下北沢・Geki地下Liberty

【アフタートーク開催決定!!】
11日(金)19:00 /
結城洋平、大歳倫弘、今井隆文(劇団プレステージ)、本多力(ヨーロッパ企画)
12日(土)18:00 /
結城洋平、大歳倫弘、松居大悟(ゴジゲン/映画監督)

【チケット/一般発売】
○チケットぴあ
電話番号:0570-02-9999
(Pコード:453-884)
http://w.pia.jp/t/yuukikikaku/

○ローソンチケット
電話番号:0570-084-003 (Lコード:34678)
  0570-000-407 (オペレーター対応)
     http://l-tike.com/
【HP】
http://yuukiyohey.wixsite.com/yuukiyohei/blank

ライターについて

Writer 5
ホンシェルジュ編集部・芸術/芸能班

音楽、映画、アイドル、その他の芸術/芸能に詳しいライターによる班。もちろん皆が本好きだが、そのレベルや守備範囲はさまざま。日本のエンタテイメントのトップランナーを通じて、本/読書の楽しみへの入り口をつくりたい。あるいは本/読書という切り口を通じて、トップランナーの新たな一面を引きだしたい。

プロフィール

結城洋平
役者

東京都国立市生まれ。2004年10月、『3年B組金八先生』第7シリーズでデビュー。以後、10年ほど劇団に所属し現在は独立。日本体育大学卒業。高校進路決定時、忍者になりたいという夢を抱え、母親とともに日光江戸村に直談判に行くが、年齢制限のため断念。日本体育大学へ進学した理由も大学の中で一番忍者に近そうだから。現在は役者に専念。職業柄、役作りの際の参考書籍として本を読むことが多い。

●舞台
結城企画 第1回公演
2016/11/11(金)〜13(日)
「ブックセンターきけろ」

【脚本・演出】
大歳倫弘 (ヨーロッパ企画)

【出演】
眼鏡太郎(ナイロン100℃)
目次立樹(ゴジゲン)
結城洋平

【会場】
下北沢・Geki地下Liberty

【アフタートーク開催決定!!】
11日(金)19:00 /
結城洋平、大歳倫弘、今井隆文(劇団プレステージ)、本多力(ヨーロッパ企画)
12日(土)18:00 /
結城洋平、大歳倫弘、松居大悟(ゴジゲン/映画監督)

【チケット/一般発売】
○チケットぴあ
電話番号:0570-02-9999
(Pコード:453-884)
http://w.pia.jp/t/yuukikikaku/

○ローソンチケット
電話番号:0570-084-003 (Lコード:34678)
  0570-000-407 (オペレーター対応)
     http://l-tike.com/
【HP】
http://yuukiyohey.wixsite.com/yuukiyohei/blank

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