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特集!あの人の本棚
213.

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「経済成長が限界」に到達している21世紀。理想的な、会社と経済のあり方とは?

hontoビジネス書分析チーム
丸善とジュンク堂は、ビジネスパーソンや各界の専門家を主な利用者とする大手書店グループです。その購買データを分析すれば、ビジネスパーソンにとって「いま注目の本」が見つかるのではないか、というこの連載。今回は10月の「経済」分野に絞り、売れ筋のランキングとトレンドを読み解いてみました。
「経済成長が限界」に到達している21世紀。理想的な、会社と経済のあり方とは?

著者渾身の書き下ろし! 株式会社に未来はあるのか

現代の先進国に住む私たちは、衣食住にさほど苦労せず、とり巻くテクノロジーも進化を遂げ続けています。その中で生きていると、これからも経済成長が発展を遂げていくような感覚に陥りますが、しかし実際には、資本家がいくら投資しようとも、より多くの人々が幸せになるための「社会の豊かさ」が増しているわけではありません

では、私たちはこれからの21世紀で、どこを目指すべきなのでしょうか?

その解の指針を与えてくれるのが、2016年9月30日に発売され、10月の経済分野ランキングで3位となった『株式会社の終焉』です。著者である法政大学教授の水野和夫氏は、資本主義が資本の自己増殖ができなくなったとき、果たしてその中心である株式会社に未来があるのか、を本書の中で論じます。

水野氏は以前から、大ベストセラーとなった『資本主義の終焉と歴史の危機』(集英社)など、数々の著書の中で「成長信仰宗教を批判」してきました。そもそも「成長信仰宗教」とは、「資本主義が限界に来ているにも関わらず、衰えることのない成長でどうにかなるであろう、と考えること」です。この成長信仰に身を委ねることは楽なことですが、本質、潮流から目を背けることにも違いありません。その事実を鋭く指摘していることが、読者の関心を惹いているのでしょう。

では、水野氏が唱える「株式会社の今後の在り方」とは一体どのようなものなのか? 著者渾身の書き下ろしとして注目を集める、本書の一部をご紹介します。

株式会社の終焉

『株式会社の終焉』 水野 和夫

丸善・ジュンク堂「経済」書籍 2016年10月ランキング

(2016年9月26日~2016年10月25日までのデータ)

マイナス金利は近代の終わりの象徴

従来の景気の尺度には、「株価」と「利子率(金利)」が使われていました。とくに1997年までの雇用者報酬は不況でも減少せず、増加基調にありました。そのため貯蓄することができ、貯蓄の増減は利子率によって決まっていたため、株価と利子率は同じ方向を動いていました。よって20世紀まで、株価は利子率と連動し、株価が上昇するときは雇用者所得が増加していたのです。著者によれば、株価と利子率はいわば同じ国民国家の「景気」を映し出していた、と言います。

しかし21世紀に入ると、この関係が断ち切られ、利益だけが増加するようになります。雇用者所得の増減に関係なく、「株価」は「資本帝国のパフォーマンスを表す尺度」へと変化したのです。

その中で、安倍政権は「株価」を重視しますが、この場合は「富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が滴り落ちる」(トリクルダウン理論)の成立が不可欠です。けれども、ここ20年近く一人当たりの賃金は減少し続けているので、そもそもこの理論は成立していません。すると、アベノミクスが掲げる円安・株高政策は、資本帝国の政策と言えることになってしまいます。

これまでの経済は、宇宙と地球の空間が、まるで無限であるかのように成長を続けてきました。しかし実際、地球は地理的・物的空間として拡大しません。そのため株価が高値をつけても、利子率は実物投資の収益率を反映するため、ゼロ金利となります。そうなれば、今以上の成長を見込むことが難しくなるため、「マイナス金利は近代の終わりの象徴である」と著者は考えたのです。

さらに、2012年以降、自然利子率と潜在成長率はそれぞれマイナスとなる可能性が高く、著者は、21世紀のシステムは「潜在成長率がゼロであること」を前提として構築される必要があると主張しています。

本書では、このような16世紀以降の近代資本主義と近代株式会社について、歴史の流れを踏まえつつ、丁寧にわかりやすく解説しています。数値的な裏付けも示されているため、読者が理解を示しやすい構成となっていることが特徴です。

成長が限界に達する社会では、「よりゆっくり、より近く、より寛容に」

「無限空間」を前提としていた近代でしたが、21世紀にはITの進化とグローバリゼーションによって、地球が「有限空間であること」がはっきりとしました。成長したあとには収縮する可能性が高く、現在のデフレや低成長などは、経済の均衡や収縮局面を示していると考えられます。

著者は、今や地理的・物的空間として、「より速く、より遠く、より合理的に」を実現する場所はない、と述べます。そもそも資本主義は、この「より速く、より遠く、より合理的に」をもとにした思想です。「株式会社」がこの思想を体現しているため、「無限」を前提としている株式会社の前には、「有限」の壁が立ちはだかっています。そこで著者は、中世の原理である「よりゆっくり、より近く、より寛容に」へと立ち返ることを薦めています。

著者は、企業の不祥事や格差の拡大などの課題を提示しながら、現金配当している「株式会社」には残された時間が少ないことを訴えます。そして、これからの会社がどうすべきか、その解を本書の中で示しているのです。本書は多くのビジネスパーソンに、これから持つべき価値観と行動方針を与えてくれることでしょう。

株式会社の終焉

『株式会社の終焉』 水野 和夫

さて、今月の「経済(銀行を含む)」分野の注目本は以上です。11月はどのような本がランクインするのでしょうか。次回の配信もお楽しみに。

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