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特集!あの人の本棚
21.

羽賀翔一   (マンガ家)


書き出しの1シーンの思いつきがすべての始まりだった

羽賀翔一
『バガボンド』、『ドラゴン桜』、『働きマン』、『宇宙兄弟』などの編集を担当していた佐渡島庸平さんが見出した新人作家。それが羽賀翔一さんです。その羽賀翔一さんが、2011年に週刊モーニングで連載した表題作「ケシゴムライフ」や、描きおろし作品「ZOOO」などを収録した、初の単行本短編集を出版するということで、インタビューを慣行しました。11月7日に発売する短編集『ケシゴムライフ』の制作秘話や、マンガ家になった経緯など、未だ表にはでていない話を伺いました。
書き出しの1シーンの思いつきがすべての始まりだった

ケシゴムライフのはじめは連載ではなく、読み切りを目指してつくられていた

―― いよいよ単行本が発売される『ケシゴムライフ』ですが、この作品が初めて世に出たのは2011年の週刊モーニングでの短期連載ですよね。どのような経緯で、掲載されたのでしょうか。

羽賀翔一(以下、羽賀) はじめは連載を目指すのではなく、読み切りを書いてみようとしていました。講談社の賞にマンガを投稿した後、佐渡島さんが担当についてくれたので、アドバイスを受けながら読み切り用のネームをつくっていたんです。

―― 投稿したマンガとは違うのですね。

羽賀 はい。投稿したマンガは「インチキくん」という話でした。今回の『ケシゴムライフ』には収録されていないですね。そもそもネームをつくりだしたころは、「分度器サンライズ」というタイトルで、現在の「ケシゴムライフ」とは違う話でした。

―― 分度器もケシゴムも、文房具つながりではありますが。「分度器サンライズ」はどんな話だったのでしょうか。

羽賀 小さい頃から、あの「分度器」のカタチというかビジュアルが、僕にはずっと「日の出」のように見えていたんです。それを思い出して、このモチーフでマンガを書けないかと思ったのが始めでした。「ある高校生の男の子が、分度器を忘れても誰も貸してくれなかったのだけれど、ある日分度器を貸してくれる友達ができて、その貸してくれた分度器から自分の中に光が差すような気持ちがした」というようなストーリーでした。そのネームを佐渡島さんにみせたら、「ちょっと気色わるいな」というリアクションで(笑)。

―― (笑)。

羽賀 言われてみると確かに、高校生の主人公にしては子供っぽい感情だったんですね。では、どういう高校生だったら自立しているだろう、自分の考えをもっているように見えるのだろう、と考えていくうちに、今の「ケシゴムライフ」(第一話)の書き出しのシーンを思いついたんです。「学校の床のデザインは、まるで境界線みたいだ」というシーンですね。佐渡島さんも「この書き出しはすごくいいから、これで最後まで話をつくってみよう」という感想で、そこから打ち合わせを重ねて、一話目のネームができていきました。

日常のなにげない行動をこのマンガに持ち込むとどうなるだろう、その発想がジャンプして腑に落ちた瞬間に、これで話がつくれる、と思った

―― 書き出しを思いついたときには、話全体の構想はまだ分からなかったのですね。僕はてっきり、話の最後にあるメッセージ(※)があってから話がつくられたのだと思っていました。

※ネタバレしてしまうため、内容は省略しました

羽賀 はじめは、終わり方を決めていなかったですね。やはり描いていくうちに途中で詰まるのですけれど、「境界線」というところから「マンガのコマ」というところに発想がジャンプした瞬間に、「あ、これで話ができる」という感覚を得られました。

たとえば、「コマのすき間に文字を書く」というシーンも、身近な行動から連想しているんです。ほら、よく、手に文字を書く人がいるじゃないですか。メモをする人。あの行動を僕は、好きだな、親しみがもてるな、と思っていて、そのイメージを引っ張ったというか、このマンガに持ち込むとどうなるんだろうと思ったんですね。

すると、「彼(主人公の友人)はマンガを描いているんだから、そのマンガのコマのすき間に、手にメモを書くような感覚で、このふとっちょの子(主人公)がメッセージを書くとおもしろいんじゃないかな」と思いつきました。思いついたときに、「あぁ、これで話ができるな」、と思いましたね。

―― 羽賀さんの作品は、視点が独特で、おおきな魅力ですよね。ところで、このシーンが一番思い出深い、このシーンに実は注目してほしい、というようなものはありますか。

羽賀 ケシゴムライフ第一話の1ページ目の1コマ目は、ネームから同じ構図なんですけれど、僕が高校時代に自転車をこいでいた光景なんです。僕は茨城のつくば出身で、土浦にある高校まで通っていたのですが、10分くらい自転車をこいでいる道の両側はずっと田圃ばかりで、時おり道にはでっかいウシガエルがいたりする。そんな田舎の道を毎日通っていたんですね。

そのイメージを思い起こして、「このふとっちょ(主人公)は自分なんだ」という思いで1コマ目がかけた。その実感が、自分の中に印象として大きく残っているんです。このコマって、実は、マンガの知識や技術がほぼ何もない中で描いた絵なので、しばらくマンガを書き続けてきた今、同じような構図で描くかというと、意外と使わない構図なんですね。けれど、昔の通学時の光景が思い浮かぶのはやはりこの構図ですし、それが読む人にも伝わるみたいなんです。

初めて会った人の何人かから、僕と会う前に抱いていた(羽賀翔一の)印象がずっとこのふとっちょ(主人公)だった、しかもこのコマの印象だったと言われたのですが、それは僕にとってすごくうれしいし印象に残っている出来事です。思い込みかもしれないのですが、コマを描いたときに強く抱いていた気持ちやイメージなどは、やっぱり読む人に届くものなんだなという気がして。これは自分なんだ、自分が昔見た道なんだ、という思いが、一番最初のマンガの1コマ目に描けたというのが、マンガ家のスタートとしてもいいことだったなと思っています。

―― 羽賀さんの作品は、日常を描いているので懐かしさを抱くのですが、日常を切り取る視点やそれを描く構図が独特ですよね。第三話の、横断歩道にワニが潜んでいるというシーンなどは、僕のとても好きなシーンです。この話はまた次回に伺わせてください。

次回に続きます...

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プロフィール

羽賀翔一
羽賀翔一
マンガ家

はが・しょういち
茨城県出身のマンガ家
2010年、大学ノートに描いた『インチキ君』で第27回MANGA OPEN奨励賞受賞。2011年に「ケシゴムライフ」をモーニングで短期集中連載。PRESIDENT NEXTで『ダムの日』を、カフェ マメヒコ発行のM-Hicoでは、トークイベントと連動した作品を連載中。

公式サイト: http://hagashoichi.cork.mu
公式アプリ(iPhone用): http://appstore.com/hagashoichi
Facebook: https://www.facebook.com/hagasho1
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ライターについて

Writer 2
東海林真之

honciergeを運営する会社の代表。出版社に勤める両親のもとで生まれ、本に囲まれて育つ。 本屋をうろつき衝動買いをするのが趣味だが、書店員に限らず「人のおすすめを通じた本との出会い」は出会いの体験を豊かにするはず!という思いからhonciergeを開始。より多くの幸せな本との出会いを、みなが感じられるように、試行錯誤中。

プロフィール

羽賀翔一
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はが・しょういち
茨城県出身のマンガ家
2010年、大学ノートに描いた『インチキ君』で第27回MANGA OPEN奨励賞受賞。2011年に「ケシゴムライフ」をモーニングで短期集中連載。PRESIDENT NEXTで『ダムの日』を、カフェ マメヒコ発行のM-Hicoでは、トークイベントと連動した作品を連載中。

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