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特集!あの人の本棚
219.

和田輪   (Maison book girl)


安らぎを得るための選択肢(和田輪 インタビュー)

和田輪
さまざまなプロフェッショナルの考え方・作られ方を、その人の本棚、読書遍歴、本に対する考え方などから紐解いていくインタビュー。今回はホンシェルジュ連載陣の一人でもあるMaison book girlの和田輪さんの登場です。連載でも取り上げている漫画について、改めてインタビューでいろいろ語ってもらいました。
安らぎを得るための選択肢(和田輪 インタビュー)

アイドルに括られることが多いMaison book girlは、確かにバックグラウンドやステージに付随するもの(サクライケンタによる音楽、メンバーの経歴や個性、振り付け、衣装など)にフォーカスすれば、アイドル文脈でいろいろと語りたくなる。しかし、それだけではない不思議な広がりを持っているところが、Maison book girlの魅力でもあるのだ。広がりがあるからこそ、例えばノイズやポストロック系のアーティストと対バンしても違和感なく、その姿はアイドルユニットというより「バンド」のような雰囲気を放っている。もちろん、音楽を司るサクライケンタの才能あってこそなのだが、今回インタビューした和田輪が「バンドの方とも張り合えるくらいの曲を表に出すため、私たちを一つの手段として使ってもらえていることが、今すごく幸せです」と話してくれたように、ステージに立つ4人が音楽の「媒介」として完璧に機能していることが、彼女たちを特別なものにしている。ただ、ステージを下りれば等身大の女の子なわけで、この記事も和田の好きな漫画を聞いていくインタビューなのであります。

人生の波乱万丈さと反比例して、読む漫画の好みが変わる

── 前回お話し聞いたときから半年経過しましたが、漫画は変わらず買い続けてるんですか?

和田輪(以下、和田) ちょこちょこ買ってはいるんですけど、漫画の数が増えすぎて部屋が狭くなってきて、最近は漫画喫茶に通っています。

―― 好きな漫画の傾向は?

和田 自分の人生の波乱万丈さと反比例して、読む漫画の好みが変わってくるんです。ワンマンやリリースで忙しいときは日常系のユルいやつが読みたくなって、特に予定がないなぁという時期は人がめっちゃ死ぬやつを読んだりします。で、今日はどちらかというと日常寄りの、ほのぼの系を持ってきました。

―― メジャーデビューということもあって、以前とは比べものにならないほど忙しそうですもんね。

和田 なので、家にいるときは癒しを求めてる(笑)。

―― じゃあ早速、持ってきた漫画を順番に聞かせてもらってもいいですか?

かわいい子と美味しいゴハンの組み合わせは最高

『甘々と稲妻』 雨隠 ギド

和田 まずは最近アニメ化もされていた『甘々と稲妻』です。シングルファザーの先生と女子高生が一緒にゴハンを作って、娘と一緒に食べるっていうお話で。最近冬だからか、すごくお腹が空きまして、こういうグルメ漫画みたいな作品に惹かれますね。その中でも一番好きなのが『甘々と稲妻』です。学校の先生と女子高生が出てくると、「どうせこいつら一緒になるんだろうな」って思うんですけど、この漫画は2人がくっつかないところがいいんですよ。お互いに3人の空間を大事に思っているし、たぶん女子高生は先生のことが好きなんですけど、大切にしている場所を恋愛感情とかそういうものに括りたくないから、好きだとは言わないんですよ。そこがすごくいじらしくて好きです。かわいい。

―― ゴハン系だと前回のインタビューでも同じようなの挙げてましたよね。

和田 前に取材していただいたときに『きのう何食べた?』を挙げたんですけど、あれは料理できる人が淡々とゴハンを作っていくお話なんですけど、この漫画の2人は両方とも料理初心者で、手探りで作っていくんですよ。「どうやったら美味しくなるだろう?」って、レシピをもらったりしながら試行錯誤したり。私も料理はできないので、「かわいいな、混ぜてほしいな」って思いながら読んでいます。

―― ほのぼのしますね。

和田 最近、グルメ漫画やお酒が出てくる漫画って、女の子が主人公のものが流行っているような気がするんです。古き良き漫画のように、おじさんがゴハンを食べているものよりは、女の子や小さい子が食べてる方が可愛く見えると思います。かわいい子と美味しいゴハンの組み合わせは最高だと思います。

―― 分かりました。2冊目は何でしょう?

何気ない日々の幸せが詰まってます

『シャーリー』森 薫

和田 『シャーリー』です。カフェの女主人がメイドさん募集の張り紙を出したら、年齢制限をつけ忘れたせいで、すごく小さい女の子が来ちゃったっていう話です。この漫画は人から頂いたんですが、そのちょっと前にロングメイドのメイド喫茶に初めて行ったんですよ。そのお店がすごく良くて。ロングメイドのメイドさんが御給仕してくれるんですけど、秋葉原のメイド喫茶みたいな感じで、萌え萌えキュンというか、ツーショット撮ったりする感じじゃなくて、ただお茶を出してくれて、仕事がなくなると片隅で編み物を始めたりするんです。それがすごく、メイドの世界観に沿っていてコンセプトカフェとして素晴らしいなと思った……っていうことを言っていたらこの漫画を頂いて。漫画とそのメイド喫茶の相乗効果で「ロングメイド最高!」となりました。

―― すみません、ロングメイドっていうのは何ですか?

和田 萌え系じゃなくて、本物のメイドさんが実際に使われていたような長い丈のメイド服のことですね。

―― なるほど。

和田 この漫画では、女主人が女の子をメイドとして受け入れてから、特に大きな事件が起きるでもなくただ2人の日常が描かれていくんです。たまに小さなミスをしたときに落ち込んだり慰めたりして、2人の信頼関係がどんどん育っていく様子が描かれ続ける。ずっと読んでいたい作品です。最後の方のあとがきに、作者さんのメイド服のスカートの広がり方とかに対する熱い想いが書いてあって、「ああ、メイドのことが大好きなんだなぁ」って思います。この作者さんの別のシリーズで『エマ』っていう大人の女性でメガネをかけているメイドさんの話があるんですけど、今それを狙っていて、自分の「次に読むリスト」に入っています。

―― 女性の作者さんなんですね。

和田 はい。メイドさんって女の子は一回憧れると思うんですよね。

―― 和田さんはロングメイドのメイド喫茶に行って、その場にいるメイドさんたちを見ているときはどんな気持ちなんですか?

和田 この漫画のメイドさんと女主人の様子を見て萌えるのと同じ感覚です。メイド長と普通のメイドさんの関係とかを遠くから見て、「萌え……」って思います(笑)。メイド長だとブローチがちょっと豪華だったりするんですよ。「あの人は偉い人で、あの子に仕事を教えてるんだ」みたいなことが分かるようになっていて。

―― 漫画は女性キャラがメインなんですね。

和田 そうですね。主要キャラは基本的に女の人です。男性キャラは、たまに執事が出てきたり、女主人がカフェを経営してるので、この女の人の取り巻きのお客さんたちが出て来たりするくらいで、お家にいるのは2人だけです。独身の28歳の女主人とメイドさん。何気ない日々の幸せが詰まってます。

―― 癒される感じ?

和田 癒しです。

―― では、3冊目は?

「信頼」「友情」を恋愛に見立てて表現

『推しが武道館いってくれたら死ぬ』平尾アウリ

和田 『推しが武道館行ってくれたら死ぬ』です。本屋さんで見かけて、絵の可愛さに惹かれて買ってみた漫画です。女性アイドルの女性ファン――作中の言葉を引用してオタクと呼ばせてもらいますが、お話はアイドルオタクの視点で描かれてます。主人公は地方のアイドルグループの一番不人気の子を推していて、その子にはそのオタクしか付いてないといってもいいくらい。けど、推しにはすごく頑張ってほしいし、推しが武道館行ってくれたら死んでもいいっていう熱い想いで応援している様子を描いた漫画です。主人公の子はCDをいっぱい積んだりして応援するのに、一方でアイドルの女の子は、その子に対してすごくつれない態度をとるんですね。それはなぜかというと、ファンの女の子がすごく好きなんですよ。大好きすぎて素直になれない……っていう、百合的展開のお話になっていまして。

―― はいはい。

和田 私、実際にアイドルインベントにもよく出るので、リアルなアイドルの楽屋の様子とかも知っているし、最近すごく好きなアイドルができまして、オタク側の気持ちも分かる。すごく分かる時期なんですよ、今!

―― (笑)なるほど。

和田 なので、どちらにも感情移入できてすごくグッときます。視点はファン目線なんですけど、たまにアイドルユニットの中の人間関係、楽屋の様子とかが描かれることがあるんですね。例えばグループの中で、順位が5番目の子が3番目の子をすごく尊敬していて、投票制で立ち位置が変わるイベントで、「私が上の順位になると、あの子が下がっちゃうから頑張りたくない」って思ったり。逆に上位の子が下位の子に投票したりもする。前で踊る景色を見てほしいからって、自分でCDを買って投票するんです。他にも、1位と2位の子がいて、2位の子が1位になれそうっていうときに、「私にとってのセンターは1位のあなただから、私は絶対あなたが1位じゃないと嫌だ」って言ったりとか。自分が一番になろうとするよりも、その子への信頼が大事というような、これもまた百合的な描写が多くあって、いろんなカップリングがあるんです。すごくかわいいんですよ。そして、私の今推しているアイドルの子にも少し重ねて見てしまうんですよね。好きなアイドルがいる人にはぜひ、妄想の足しとして読んでほしいです。

―― 和田さんのブログに「最近、BL的なものに興味を持ち始めた」って書いてありましたけど、そういうことも関係してるんでしょうか?

和田 そうですね。BLや百合っていうのは、「信頼」「友情」とか人間関係を恋愛に見立てて表現しているものなんだってことを急に理解して、それは最高だって思ったんですよ。私はアイドル同士が仲いいと嬉しいんですけど、その様子を適度に美化して適度に現実味を持たせて書いてくれている漫画なので、安らぎます。

―― ちなみに和田さんが推してるアイドルは誰ですか?

和田 アイドルネッサンスの石野理子さん。素晴らしいです。私は歌が上手い子が好きなんですけど、こんなにアイドルのことを好きになったのは何年ぶりだろう、っていう感じです……は、恥ずかしい(笑)。

―― (笑)めちゃくちゃ照れてますね。この漫画は、さっきの2作品とはまた違うタイプのものですね。

和田 でも今まで挙げた3作品の共通点って、具体的には叶わないけど、お互い両思いであり続けるっていうことなんだと思うんですよ。先生と生徒、女主人とメイド、アイドルとファンとか。それがグッとくるポイントだと思います。

―― 確かに。じゃあ最後の漫画は何でしょう?

友達と接してるときのように語ってくれる

『人生山あり谷口』谷口菜津子

和田 『人生山あり谷口』です。作者の谷口菜津子さんは4〜5年くらい前にレバ刺しが禁止になったとき、レバ刺しに対する愛を恋愛になぞらえた漫画をブログに投稿していらして、私は当時すごく見ていたんです。本当に面白くて、それがきっかけで谷口さんの漫画を買うようになりました。これは最新の単行本です。谷口さんの絵って、自然の描き方が独特なんですよ。昆布みたいなやつが陸上に生えていたり、ピンクのモフモフしたものがあったり、舞台は山なんですが、リアルな自然かどうか分からない感じがあって。地面にキャンディーが突き刺さってたりとか、ハートがついていたりとか、フルカラーで描いてあって、谷口さん流の綺麗な自然がいっぱい見れる。絵本みたいな感覚で読んでも楽しい漫画になっています。

―― セリフやモノローグの情報量も結構ありますね。

和田 どのコマも絵として綺麗になっていて、すごくかわいい絵柄なんですけど、結構現実的なことをずっと言っているんですよ。例えば、恋人が病気になって辛いとき、芸人さんのラジオを聴いていた、みたいなリアルな話とか。私はどこかファンタジーっぽいけど、現実味のあるものが好きなので。あと私、花粉症が凄まじい上に虫もすごく嫌いなので、たぶん一生山には登らないんですよ。だから、この漫画を通して登山について知った気になれるっていうのはあります。自分は友達があんまりいないので、友達と接してるときのように登山のことを語ってくれる感じがいいです。

―― お仕事していれば、いつかどこかで谷口さんと会えるかもしれないですね。

和田 ああ、会えたらいいな……。

―― 4冊いろいろ挙げてもらいましたが、最初に話してくれたように安らぎを得られるタイプの漫画ですね。ほんとに今忙しいってことの裏返しでもある。

和田 そうですね。ちょっと前までは『GANTZ』とか読んでたので。

今は4人それぞれが欠かせないものとして存在している

―― Maison book girlで海外にライブしに行ったり、ワンマンも大成功に終わり、そしてメジャーデビューを果たすことができて、さらに2017年はアルバム発売が予定されている。前より自信もついていってるんじゃないですか。

和田 私はもともとの自己評価がすごく低いので、自信をつけてくれる人が周りにたくさんいて良かったと思います。自信を持ってこの流れに乗っていきたいです。

―― 今は「自分ごときが……」って思ったりすることはなくなった?

和田 いや、今もありますね。ありますけど、他の3人の魅力的なメンバーを見て、この人たちと同じステージに立てているんだから、私はもっと自信を持っていいんだ!って言い聞かせるようにして頑張っています。

―― グループに関しても個人に関しても、今はいい感じであると。

和田 自分で自分を認めるのが下手なので、認めてくれる人がいると自信に繋がります。頑張れます。

―― 前にお話し聞いたとき、Maison book girlに入るまでの歩みを話してくれましたけど、かつて試行錯誤していた時期、それこそ「自分が本当にやりたいことは?」って悩んでいたこともあったわけじゃないですか。ああいう時期があって良かったなって今は思います?

和田 そうですね。私は結局、自分では「無」から何かを作り出すことはできなかったんですけど、こうやって自分が今いるのはトラックを作ってくれるサクライ(ケンタ)さんがいたり、私たちを売り出そうとしてくれる人たちがいてくれたおかげだと思ってます。私自身、クリエイターと作品の間に挟まれることが嬉しいです。メジャーデビュー前、11月のワンマンに向けて皆で練習をいっぱいしたんですよ。そのなかで自分たち自身の力とか、Maison book girlの一員だってことを改めて認識できたところがあって、以前だったらメンバーが一人変わってもグループは続けていけたと思うんですけど、今は4人それぞれが欠かせないものとして存在しているなって。これから先に進むにつれて、そういった経験や記憶を一つひとつ大事にしていきたいと思います。

―― 楽しみにしてます!

和田 ありがとうございます。そしていつか自分が自分を認められるくらいになればいいな、って思います。

Photographs by Motoki Adachi

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プロフィール

和田輪
和田輪
Maison book girl

2014年結成のMaison book girlの一員として活動中。2016年3月、EP『summer continue』をリリース。11月に2回目のワンマンライブを成功させた後、同月にシングル「river(cloudy irony)」でメジャーデビューを飾った。2017年にはアルバムのリリースが決まっている。LINE blog、ツイッター常時更新中!

「river(cloudy irony)」特設サイト
http://www.maisonbookgirl.com/river.html

ライターについて

Writer 5
ホンシェルジュ編集部・芸術/芸能班

音楽、映画、アイドル、その他の芸術/芸能に詳しいライターによる班。もちろん皆が本好きだが、そのレベルや守備範囲はさまざま。日本のエンタテイメントのトップランナーを通じて、本/読書の楽しみへの入り口をつくりたい。あるいは本/読書という切り口を通じて、トップランナーの新たな一面を引きだしたい。

プロフィール

和田輪
Maison book girl

2014年結成のMaison book girlの一員として活動中。2016年3月、EP『summer continue』をリリース。11月に2回目のワンマンライブを成功させた後、同月にシングル「river(cloudy irony)」でメジャーデビューを飾った。2017年にはアルバムのリリースが決まっている。LINE blog、ツイッター常時更新中!

「river(cloudy irony)」特設サイト
http://www.maisonbookgirl.com/river.html

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