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特集!あの人の本棚
221.

古舘佑太郎   (ミュージシャン・役者)


世界を変える、新たな本との出会い(古舘佑太郎 インタビュー後編)

古舘佑太郎
さまざまなプロフェッショナルの考え方・作られ方を、その人の本棚、読書遍歴、本に対する考え方などから紐解いていくインタビュー。今回は映画や舞台でも活躍中のアーティスト、古舘佑太郎さんに登場していただきました。インタビュー前編に続き、後編をお届けします。
世界を変える、新たな本との出会い(古舘佑太郎 インタビュー後編)

過去の読書遍歴から古舘佑太郎の源流を探った前編に続き、後編では読書家の彼がオススメする、知る人ぞ知る名著を紹介。新しい本との出会いがきっとあるはず!

昔みたいに、現実逃避する気持ちで楽しく読めたらいいのにって思います

── 今はどんな本を読んでいるんですか?

古舘佑太郎(以下、古館) 姉の旦那から借りた本で、『宇宙からの帰還』っていう本です。NASAが月に行ったじゃないですか。その当時、宇宙に行った人たち全員の精神構造の変化みたいなものの考察とインタビューの本です。『宇宙からの帰還』っていうタイトルだけど、いわゆる宇宙人だなんだとかじゃなくて、人間の精神性みたいなところの怖さがあって、読んでいると止まらないんですよ。

宇宙からの帰還

『宇宙からの帰還』 立花 隆

古舘 当時NASAって理系の人がほとんどを占めていて、文系の感覚を持った人はほとんどいなかったらしいんです。宇宙に行くのにそんなの必要ないと思っていたし、ソ連より早く行かなきゃっていう焦りもあったから、とにかく技術技術でやっていたんです。そういう人たちの中で、宇宙に行ってその景色を見て言葉を失って、自分が詩とか文章を書ける人間だったらこれをもっと上手く説明できるって後悔した人がいっぱいいるらしいんです。この著者の立花さんっていう人は、誰も研究してこなかったような、どちらかというと文系の方の考え方を研究していて、それが面白いんですよね。

―― 宇宙から帰還した人たちの中にはどんな人がいたんですか?

古舘 行った人たちの中でも、正常なままの人もいれば、頭がおかしくなってしまった人もいたんです。神と出会ったって言って、帰ってきてから未だにずっと世界中を放浪して説法している人とか。透視能力が持てたって言ってその研究をしている人とか。宇宙にただ行っただけじゃなくて、地球の外周をずっとまわって帰ってきた人、月まで行った人、月に行った時に地面に降りた人、地面に降りた人でもパイロットと船長とか、役割によって精神構造の変化が違うんですよ。そういうことが書いてあって、結構面白いですね。

2010年宇宙の旅

『2010年宇宙の旅』 アーサー・C・クラーク

―― 古舘さん自身、宇宙とかSFっぽいものが好きなんですか?

古舘 それはあると思います。宇宙繋がりでいうと、『2001年宇宙の旅』っていう有名な映画があるじゃないですか。それの小説版に『2010年宇宙の旅』と『2061年宇宙の旅』っていう続編があって、もちろん『2001年宇宙の旅』も面白いんですけど、そのさらに何年後のストーリーがすごく面白いんです。『2001年宇宙の旅』は、ディスカバリー号っていう宇宙船が宇宙に行って、向こうでいろいろなことがあって結局その冒険は失敗に終わるっていう話なんですね。で、『2010年宇宙の旅』ではそのさらに9年後に、どこかの惑星の軌道上に取り残されてしまったそのディスカバリー号を助けに行くっていう話なんです。多分あまり知られていないんですけど、すごく面白いですよ。

星屑ニーナ

『星屑ニーナ』福島 聡

古舘 あと、なぜかSF縛りになっちゃっていますけど『星屑ニーナ』っていう漫画が面白いです。この漫画は4巻までで完結しているんですけど、描かれている世界が壮大で。手塚治虫の『火の鳥』っていう漫画があるじゃないですか。あれは10何巻っていう巻数で、ストーリー上流れている時間は何万年とか、とんでもない年月で、それを初めて読んだときにすごいなと衝撃を受けたんです。でもこの『星屑ニーナ』はそれを4巻でやってしまっているんですよ。これが結構すごいんですよね。

―― どういうストーリーなんですか?

古舘 このニーナっていう女子高生と、この星屑っていうロボットの話なんですけど、ちょっと簡単には説明できないですね。読むと最初はやっぱり混乱するんですよ。でも最後とか相当ぐっときます。『火の鳥』もそうですけど、そういう何万年とか経っちゃうような、壮大な物語が好きかもしれないですね。

ストレッチ

『ストレッチ』アキリ

酒のほそ道

『酒のほそ道』ラズウェル細木

―― じゃあ日常的な作品はあまり読まないんですか?

古舘 そっちも好きなんですよ。日常系でいうと『ストレッチ』っていうコミックが好きです。医大の女子大学生とOLの先輩が女子2人で同棲して毎日ストレッチするっていう漫画なんですけど、その中のストーリーがめちゃくちゃ面白いんですよね。ストレッチを紹介する、そのおまけ程度のストーリーのはずなのに、それがすごくいいんですよ。ちょっと泣けるというか。

―― この表紙からは想像できないような感じなんですね。

古舘 そうなんですよ。あともう一つ日常系でおすすめしたいのが、コンビニに売っている『酒のほそ道』っていう、ラズウェル細木さんが描いている漫画が本当に面白いです。あれを地方に行ったときにコンビニで買って、ビジネスホテルで読んでいれば、絶対に自分の部屋かのように眠れるっていう魔法の漫画です。サラリーマンがただ酒を飲むだけの話なんですけど、最高ですね。

サラバ

『サラバ』西 加奈子

古舘 あとここ3年ぐらいでナンバー1かもしれないと思ったのが、西加奈子さんの『サラバ』です。僕がTHE SALOVERS(サラバーズ)っていうバンドをやっていたのとは全然関係ないんですけど、僕がバンドを終えるタイミングで知人に、「めちゃくちゃ面白いし名前も近いから読んでみなよ」って勧められて読んだ本です。本で感動したのは本当に久々って感じでしたね。半分実話っぽい感じなのに主人公は男で。西さんがどのキャラに自分を置き換えているのか気になります。

―― 古舘さんは読むだけじゃなくて、「青春の象徴、恋のすべて」という物語の連載もされていますよね。

古舘 やっぱりあれを早く完結させたいです。自分が読んできて感動したことを、どこかで自分もやれるんじゃないかって思うんですよね。でもあれ全然、誰にも気づかれていないっていう悲しいオチがあって。

―― (笑)でもすごく面白いですよ。

古舘 だからそれを耐え忍んで、なんとか繋いでいって完成させて、何かの形で発表したいなと思っています。

―― 本にもいろいろな読み方があると思うんですが、古舘さんにとって本とはどんな存在ですか?

古舘 昔は本を現実逃避として読んでいたので、本当に居心地が良かったんですよね。学校とかいろいろなことが嫌で、その嫌なことから本を読めば逃げられるっていう最上級のエスケープ場所だったんです。それが徐々に、インプットしなきゃ、良い作品を読むことで自分の作品に繋げなきゃ、っていう意識が大きくなってしまった。それで気がついたら現実逃避じゃなくなってしまったんです。他で忙しくてやっていても、フタ開いた時間、「よし、何か取り入れなきゃ」って思って本を読む時間が疲れちゃう。それが今、自分ですごく悔しいです。昔みたいに、現実逃避する気持ちで楽しく読めたらいいのにって思いますね。

―― 最後に新譜『BETTER』の話を聞かせてください。今回のアルバムではサウンド的な変化もそうですが、精神的な部分での変化を感じました。前作の『CHIC HACK』では昔を懐かしんでいるような印象を受けたんですが、今回はそこからさらに踏み込んで、昔を大事にしながらも次のステージに進んでいるような印象を受けました。今回そういう心境の変化はあったんですか?

古舘 前作を作ったときは、THE SALOVERSというバンドが終わってそこから何もしていなくて、でもその間ミニアルバムだけは作って、別にどこにも所属せずにやっていたんですよ。でもそれは自分で選んであえてどこにも所属せずにやっていた部分があって、それでいいやと思っていたんです。でもそこからいろいろな変化や出会いがあって、新しい事務所に所属してからの一発目のアルバムとして今作ができたんですよね。それは結構大きかったですね。だから正直前作は、本当何にも制約されないでやるというか、自分の中でリハビリに近い感覚で作っていて。事務所に所属して本気で活動していくっていうマインドに、その当時はまだなれなかったんですよね。でも今作は、周りに支えてくれる人たちがいたから作れた作品なんです。それを出したことで自分の中で、「やっぱり音楽をやりたい」って思えたから本当に良かった。だから今回はそういう意味では「前に進む」っていう風に今言ってくれたのが本当そうで。自分がやってきたことと違うことをやる、っていうのをメインに作りました。

―― 古舘さんの連載されている「青春の象徴、恋のすべて」っていう物語の中に、“新たな出会いを求めるからこそ、世界は変わっていくのだ。”っていう一節があって、それがすごく印象的でした。これからもそうやって新たな出会いを求めて、いろんなことに挑戦していきたいなっていう感じですか?

古舘 そうですね。じゃあ自分はめちゃくちゃ音楽の才能があるかって言われたら、正直分からないところがあるんですけど、自分が唯一誇れるのは、人が好きだし人との出会いにすごく恵まれていることだと思うんですよ。それはなんでなのか分からないですけど。だから小さいところにずっと引きこもることはできないというか、とにかく外に出ていろいろな人と出会えたら、自分もどんどん変わっていけると思っているんですよね。今舞台とか役者のお仕事もやってみたりしているのは、やっぱりいろんな人に出会いたいっていうのが大きい気がします。

Photographs by Motoki Adachi

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プロフィール

古舘佑太郎
古舘佑太郎
ミュージシャン・役者

1991年4月5日生まれ。東京都世田谷区出身。2015年3月自身が率いていたバンドTHE SALOVERSが無期限活動休止。約半年後の10月21日にソロアルバム『CHIC HACK』をリリース。音楽活動の他に、舞台、映画、ドラマ等で役者としても活動中。WebマガジンNeoLにて連載小説「青春の象徴 恋のすべて」を執筆中。2016年11月9日に1stフルアルバム「BETTER」をリリースした。
http://www.yutarofurutachi.com

【ライブ情報】
ファーストフルアルバムリリースワンマンツアー「BETTER」
2017年1月20日(金)大阪・Pangea
2017年1月21日(土)名古屋・CLUB UPSET
2017年1月28日(土)渋谷・Milky Way
チケットは各プレイガイドにて発売中

ライターについて

Inshot 20161208 001644
岩澤春香

1995年生まれの大学生。音楽レビューの執筆や記事の編集をしながらライターを目指しています。好きなお話は星の王子さま、好きな作家はリルケ、好きなギターはグレッチ・アニバーサリー。

プロフィール

古舘佑太郎
ミュージシャン・役者

1991年4月5日生まれ。東京都世田谷区出身。2015年3月自身が率いていたバンドTHE SALOVERSが無期限活動休止。約半年後の10月21日にソロアルバム『CHIC HACK』をリリース。音楽活動の他に、舞台、映画、ドラマ等で役者としても活動中。WebマガジンNeoLにて連載小説「青春の象徴 恋のすべて」を執筆中。2016年11月9日に1stフルアルバム「BETTER」をリリースした。
http://www.yutarofurutachi.com

【ライブ情報】
ファーストフルアルバムリリースワンマンツアー「BETTER」
2017年1月20日(金)大阪・Pangea
2017年1月21日(土)名古屋・CLUB UPSET
2017年1月28日(土)渋谷・Milky Way
チケットは各プレイガイドにて発売中

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