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特集!あの人の本棚
231.

山本紳也   (HRファーブラ代表)


グローバル社会で取り残されるドメスティック日本企業の人事部門、その問題点とは? (インタビュー)

山本紳也
グローバル化の波の中で、日本は人口減少と少子高齢化が進み、労働力の視点からも市場の力の視点からもその規模は縮小します。今後、大きな成長は見込めない社会で、日本の企業はいかにグローバルの土俵にのればよいのでしょうか。また、それを支える人事とはどうあるべきでしょう。

組織の一員である個人にとっては、変革に乗り遅れないため、今、求められているグローバル人材について知っておくことも重要です。

25年以上にわたって組織・人材マネジメント戦略に関わるコンサルティングに従事してきたHRファーブラ代表の山本紳也氏は、日本の人事には、いろいろな意味で遅れている面があると指摘します。では、実際にどのような問題があるのか、具体的な人材戦略をどうすべきか、山本氏に語っていただきました。
グローバル社会で取り残されるドメスティック日本企業の人事部門、その問題点とは?  (インタビュー)

日本企業のHRが意識すべき5つのメガトレンド

先日、フィリピンでのコンファレンスに出席したとき、アジアでは、今でも日本をすごい国だと思っている人は多いということを感じました。日本の強みとは何でしょうか。これまではチームワークとハードワーキング、それから品質追求などが強みでした。でもそれらは今後も、日本の強みであり続けられるでしょうか。

世の中は、明らかに変わってきています。近年、世界的変化をもたらすさまざまなメガトレンドが報告されています。このうち、日本企業のHRという視点から意識すべきメガトレンドは、次の5つだと考えています。

  • 世界経済地図の変化
  • 世界・日本の人口構造の変化
  • ビジネスにかかわる人の多様化
  • IT化による情報化とスピード化
  • 組織内世代間格差

1と2は、すでに広く知られている通りです。各国の経済規模ランキングは、この25年で変化しました。1992年はG7がトップ7をしめていましたが、2010年には中国が日本やドイツを抜いて世界第2位になっています。

今後、どうなるか、予想は難しいものの、新興国の成長にともない、アメリカ、日本、ドイツの順位は相対的に落ちていくでしょう。円ベースの日本の名目GDPは、1992年と2015年がほぼ同じで、この25年間全く成長していません。また、人口の面でも、日本は今後人口減少が進む上に、ますます少子高齢化が進んでいきます。

昨年、アメリカで開催されたコンファレンスで、こんなプレゼンテーションを聞きました。2050年に日本の人口は1億人を切り、平均年齢は53歳、一方、ナイジェリアは2億5000万人で平均年齢は23歳、どちらでビジネスをしたいかというのです。すごくわかりやすいと思いました。

日本はこの先、労働力も市場の力も規模としては落ちていきます。ビジネスは確実に、日本から出ていくでしょう。このとき、企業はどのようにグローバル化を図り、生き延びるのか。また、どういう人材を採用し、いかに育成していくべきか、戦略的に考えるタイミングに来ていると思います。しかし同時に、日本の人事には、いろいろな意味で遅れている面があるとも感じています。

グローバル社会で日本人が決定的に苦手なこと

さきほど、意識すべきメガトレンドの3番目に、「ビジネスにかかわる人の多様化」を挙げました。世界的なグローバル化の流れの中で、さまざまな国の人や企業と仕事をする機会が増えました。今後は益々増えるでしょう。このとき、異なる文化をどう受け入れるかが課題となります。

日本の企業でも、最近、「ダイバーシティ&インクルージョン」という言葉が、よく言われるようになりました。これにはいろいろな解釈がありますが、基本的には、多様な背景や価値観を持った人材(ダイバーシティ)とその受け入れ(受容、インクルージョン)という意味です。

つまり、「私とあなたは違う」ということを、どのように理解し、受け取るかということです。相手に迎合したり、100%同意したりする必要はありません。相手はこういう意見を持っているということを理解し、でも自分は違うということを伝え、コミュニケーションをとり、お互いの理解を深めるのです。

ただ、そう言われても、実際にはどうしたらよいかよくわからないというのが、多くの日本人の実情ではないでしょうか。日本では組織に属すと組織のルールに従うだけでなく、相手に同意し従う、ある意味同化するという暗黙のルールというか、文化があります。これは、海外では通用しません。

また、頭で理解するのではなく、肌で感じるものですから、日本国内のオフィスに座っているだけだと、これを本当に理解するというのは難しいかもしれません。

アメリカでは子供のときから、まず自分で考えなさいと言われて育ちます。「親や学校の先生がいつも正しいと思うな」という教育で、議論や討論は日常的に行われます。一方、日本の子供は、親や先生の言うことは正しいと教えられます。

そして学校でも会社でも、考えの違いを述べることはあまりしない。そうした日本のモノカルチャーを一概に否定はしませんが、相手と自分は違う考えである前提での議論ができないと、グローバルビジネスの土俵に乗ることは難しいでしょう。

ハイスピード情報化社会を生き抜く人材に必要なこと

次に、ITの普及と、それにともなう情報化やスピード化による課題について考えます。Cisco社によれば、インターネットへの接続デバイス数は2008年に世界の人口を超え、2010年には一人当たり1.84個、2015年には3.47個、2020年には6.58個にのぼると予想され、実際にその通り動いています。

インターネットを通じて、世界はますますつながり、しかも、その変化のスピードはさらに高速化しています。テクノロジーのスピードを表す例として、ユーザーが5000万人に到達するまでの時間というものがあります。それによると、ラジオ38年、テレビ13年、インターネットは4年、SNSは2年だそうです。

2016年に大ヒットした「ポケモンGO」に至っては、1週間で6500万人を越えました。この「ポケモンGO」はインフラにもなり、ここと組めば、一か所にあっという間に観光客を集められるということも起こっています。

世界がそれほどのスピードで動いているということは、現時点で優れたスキルを持った人を採ったとしても、10年どころか3年も持たないということです。最新の技術も、あっという間に陳腐化してしまいます。

そうなると、会社にとって重要なのは、知識や技術の確保ではなくなり、人事部では、新しいものを創りだしたり、新しいものに順応できる人を採用する方向に切り替えていく必要があります。

成長を謳歌した世代と成長を知らない世代の埋まらない溝

ここで問題となるのが、グローバルビジネスの担い手となる若手世代と、彼らを育成する立場にあるベテラン世代のギャップです。海外でもよく言われる話ですが、かつての連絡手段は手紙でした。それが電話になり、メールになり、今の若い人はテキスト、すなわちLINEなどSNS上で、一行程度の短い言葉をやりとりするようになりました。大きくコミュニケーションの常識が変わっています。

これに加え、日本の場合は、成長を知らない若者世代と、成長を謳歌したベテラン世代の間に、大きな価値観の隔たりが生じています。現在80歳を超える方が代表を務める会社もありますが、現在80歳を超える方々が入社したころ、わずか10兆円にすぎなかった日本の名目GDPは、彼らが社長になるまでの間に、500兆円にもなりました。

ところが、今、40代半ばで部長になる人たちは、社会人になってから、この500兆円規模経済しか経験していません。さらにその子供世代にあたる新入社員は、生まれてからずっと500兆円の時代しか生きていません。価値観が異なるのは当然です。

以前、20代の青年に「若いんだから、今、がんばらないでどうするんだ」と言うと、「がんばって何かいいことあるんですか」と言われたことがありました。かつてはがんばれば能力が上がり、その先に、もっと面白い仕事ができる、出世できるということと、給与やボーナスが上がるということがセットでありました。

けれど、今の若者は、最初のワンステップだけです。がんばったら、知識や技術が身につくとは思っているものの、それで自分の人生が変わるということが描けず、将来に不安を抱えています。そういう若者に「俺たちの若いころはこうやってうまくいった」ということを伝えても、彼らには響きません。

人事コンサルティングを始めた1990年代から2000年代前半の人事というのは、基本的には制度設計、つまり枠組みづくりのハードインフラが課題でした。近年はそのインフラの上で、一人一人異なる人材をどうマネジメントしていくか、どう変えていくかが課題となってきています。人をどうするかは、仕組みをどうするかより、遥かに難しい問題です。

では、そうした状況の中で、どのような人事戦略をとっていけばよいのでしょうか。

人事の本気が会社を変える

『人事の本気が会社を変える』 山本紳也

ビジネス環境の大きな変化の中で、人事、人材マネジメントにも変革が求められていると著者の山本紳也氏は指摘します。本書では、思い切ったグローバル人事戦略を進めるLIXIL、カルビー、ファーストリテイリング、サイバーエージェント、コカ・コーラ、リクルートなどにインタビューし、その具体的な戦略を「グローバルビジネスが人事を支える」「ダイバーシティ&インクルージョンとの付き合い方」「若者が躍進の場をどう作るか」「人事が変わる時」という4章にまとめています。

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プロフィール

山本紳也
山本紳也
HRファーブラ代表

組織・人材マネジメント戦略に関わるコンサルティングに25年以上従事。ビジネス戦略達成のための組織・人材マネジメント、考える組織の開発、グローバル化時代のリーダー開発、M&Aにおける人事サポートなどに経験豊富で、活力とイノベーションの生まれる組織と個の新しい関係を生涯の研究テーマとする。
1999年3月から2014年6月まで、プライスウォーターハウスクーパースにおいてパートナーとして人事・チェンジマネジメント部門をリード。以前は、電機メーカー、外資系人事コンサルティング会社に勤務。
著書に、「新任マネジャーの行動学」(経団連出版)、「21世紀の“戦略型”人事部」(共著、日本労働研究機構)、 などがある。他に、組織人事に関わる論文・講演は、国内外において多数。http://hrfabula.co.jp/

ライターについて

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hontoビジネス書分析チーム

本と電子書籍のハイブリッド書店「honto」による、注目の書籍を見つけるための分析チーム。ビジネスパーソン向けの注目書籍を見つける本チームは、ビジネス書にとどまらず、社会課題、自然科学、人文科学、教養、スポーツ・芸術などの分野から、注目の書籍をご紹介します。

丸善・ジュンク堂も同グループであるため、この2書店の売れ筋(ランキング)から注目の書籍を見つけることも。小説などフィクションよりもノンフィクションを好むメンバーが揃っています。

プロフィール

山本紳也
HRファーブラ代表

組織・人材マネジメント戦略に関わるコンサルティングに25年以上従事。ビジネス戦略達成のための組織・人材マネジメント、考える組織の開発、グローバル化時代のリーダー開発、M&Aにおける人事サポートなどに経験豊富で、活力とイノベーションの生まれる組織と個の新しい関係を生涯の研究テーマとする。
1999年3月から2014年6月まで、プライスウォーターハウスクーパースにおいてパートナーとして人事・チェンジマネジメント部門をリード。以前は、電機メーカー、外資系人事コンサルティング会社に勤務。
著書に、「新任マネジャーの行動学」(経団連出版)、「21世紀の“戦略型”人事部」(共著、日本労働研究機構)、 などがある。他に、組織人事に関わる論文・講演は、国内外において多数。http://hrfabula.co.jp/

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