
アメリカの婚活事情を徹底分析
―― 「アジア人特化型の婚活サイトを創ろう」と決意して、まず行ったことはなんですか?
時岡 サイトを作る前に、とにかく色んなアメリカ人にインタビューをしました。すると国籍や人種によって結婚相手に求めるものが違うことが分かりました。
例えば白人女性が男性に求めるものは、体つきや目の色などの外見がトップの条件。だからアメリカの大手マッチングサイトでは、男性のプロフィール写真に上半身裸が多いんですよ(笑)。一方アジア人は出身大学や、現在の仕事や年収、どんな食事が好きかなど、もっと一緒に生活できるかなどの内面を重視しているんです。
tinderやokcupidなどアメリカで人気の大手マッチングサイトは、白人向けに作られているので、アジア人が求める相手を探しにくい。だから彼らが理想の相手に出会えるようにと、アジア系アメリカ人を徹底的に分析してサービスを創りました。
―― アメリカではマッチングサイトが普及していますよね。日本でも婚活アプリなどを活用する人が増えていますが、まだまだ使っている人は少ない印象です。そもそもなぜアメリカは、そこまで浸透しているのでしょうか?
時岡 理由は3つあると思います。1つはアメリカ人が合理的だということ。もし出会いを求めてパーティに参加するとしたら、そのためのお金や時間がかかりますし、参加したからといって理想の相手に出会えるかは分かりませんよね?でもマッチングサイトは通勤などの隙間時間でも利用でき、自分の理想の条件で検索できるので、効率的に婚活ができるんです。
ニューヨークに住む私の友人は、マッチングサイトを使ってかなり戦略的に婚活をしていました。1ヶ月以内に30人の男性とデートをし、第2デートまで進めたのは何人かなど、統計もとっていました。さらに第2デートに誘ってくれなかった男性にはその理由を聞いて、KPI分析までしていました。
―― ニューヨークの女性はすごい!恋愛も仕事のようですね!
時岡 昔流行った海外ドラマ「Sex and the City」でもありましたが、ニューヨークは男性より女性の方が多いんです。なぜなら、ファッションやメディア、金融など女性が活躍できるキャリアがあるから。だから男性が少ない分、女性が積極的なのかもしれませんね。
そしてアメリカでマッチングサイトが人気である2つ目の理由に、テクノロジーが進んでいるということも挙げられると思います。FacebookもUberもアメリカ発。様々なものがテクノロジー化しているので、そのテクノロジーを使って婚活をすることも自然な流れなんだと思います。
最後に3つ目は、マッチングサイトへの抵抗感がないからだと思います。CNNの世論調査によると「マッチングサイトは良い出会いを提供するツールか?」というアンケートに半数以上がYesと答えているんです。アメリカはここ10年でマッチングサイトに対する意識がガラっと変わったので、日本でインターネット婚活が常識になるのも、遠くはないと思いますよ。
―― アジア系アメリカ人を徹底的に分析された後は、何をされたのですか?
時岡 テクノロジーの会社なので、まずは開発してくれるエンジニアを探すことから始めました。以前日本で勤めていた会社の先輩で、優秀なエンジニアである江島健太郎がジョインしてくれることになり、制作期間3ヶ月でリリースすることができました。
しかしサイトができても、当たり前ですが最初は登録者ゼロ。登録してくれる人がいないとマッチングサイトは成り立たないので、ニューヨークの凍えるような寒さの12月、コリアンタウンに行ってアジア人を見つけては「登録しませんか?」と声をかけてまわり、100人ぐらい登録者を集めました。
ブレイクのキッカケは動画マーケティング
時岡 最初はアジア系アメリカ人が見るサイトに広告を出していたのですが、一番大きくブレイクしたのは、アジア系アメリカ人のYouTuberとのコラボ企画でした。彼らの動画のファンって、同じくアジア系アメリカ人なんですよね。だから「このアジア人向けマッチングサイト、おすすめだよ」と紹介してもらったら、一気に登録者が増えました。
YouTuberによって動画のジャンルは様々。例えば「オンライン・デーティングについてどう思う?」と色々なアジア系アメリカ人にインタビューする動画や、恋愛のコメディドラマ風に「見た?このサイトにカッコイイ人がいるんだよ」というショートストーリー動画だったり。動画の中でどんな風にサービスを打ち出していったらより効果が出るかなど、トライ&エラーを繰り返して検証していき、最終的に広告が目に入ってからサイト登録するまでの比率が、通常のWeb広告の20倍になりました。
また今の若い子は、基本モバイル。アプリでメッセージを送ったり、モバイルでやりとりすることに慣れているんですよ。そしてマッチングサイトはfacebookなどのSNSと同様に、写真をアップしたり、メッセージを送り合ったりと、そういうアクティビティがないと成り立たない。だからモバイルに力を入れ、ユーザーのアクティビティをより活発にするような機能をつけていったら、ユーザーの継続率も伸びていきましたし、課金も上がりましたね。
ベンチャーはスピードが命
―― 時岡さんがお仕事をする上で、意識していることはありますか?
時岡 いつも意識しているのは、いかに最新の情報をとってこれる環境をつくれるか、ということ。ベンチャーって参考にする本がないんですよ。というのは、常に新しいトレンドを創り出しているので、本が出る頃には古い情報になっている。だから時代の流れを掴み成長できるように、業界関係者のfacebookやtwitterをフォローしたり、最新情報をアプリで一覧で見れるようにしたり、起業家のネットワークを作ることによって、毎日フレッシュな情報を得られる環境を作っています。
あとは人材の採用にもスピード感をもってやっています。昔は数百枚の履歴書を見て、面接をして3ヶ月ぐらいかけて採用していましたが、ベンチャーにとって四半期ってすごく長いんです。それに採用したからといって、その人が結果を出せるかは分からない。だからキーエグゼクティブなどの重要な採用は全員、信頼できる知人経由の採用に変えました。その採用方法に変えてから雇った人は、1ヶ月で採用して1週間目から結果を出してくれました。
―― 「EastMeetEast」は2013年の10月にリリースし、昨年2016年の売り上げは前年比8.7倍。短期間で急成長するにあたって、大変だったことはありますか?
時岡 どこのベンチャー企業もそうだと思うのですが、なかなか投資家が見つからなかったことですね。投資金がほしいベンチャー起業が何百、何千社ある中で選ばれなくてはいけないので、99%断られるんです。
私も何度も失敗しました。でもその時に、ベンチャーキャピタルに勤めている友人に「教科書的なプレゼンだったら決まらない。最終的に投資家の心を動かすのは、魂の入ったプレゼンだ。」と言われました。
そこでプレゼンにはストーリーが大事だと気づきました。自分は何でこのサービスを始めようと思ったのか、どんな想いで創ったのかなどのストーリーを入れ、自分のプレゼンを録音して聞いては何度も練り直し、魂の伝わるプレゼンを準備しました。その努力が実り、最終的には潤沢な資金の調達に成功しました。
この頃に参考になったのは、デール・カーネギーの『人を動かす』という本です。大企業で営業の仕事をしていた時にこの本と出会ったのですが、今でも度々読み返している名著です。
人を動かす
『人を動かす』 D・カーネギー現代のテクノロジーを使って、たくさんの人に幸せなご縁をつくっていきたい
―― 最後に、今後の目標や挑戦していきたいことがあれば、教えてください。
時岡 EastMeetEastではこれまで、2,200名以上が正式な交際へと発展しました。これをもっと大きな規模にしていきたい。その為にアメリカでよりサービスを拡大していきたいですし、これからはアジア諸国でも展開していきたいと思っています。
私自身が婚活で苦労をしたので、現代のテクノロジーを使って、たくさんの人に幸せなご縁をつくっていきたい。私が今一番追求していきたいのは、これに尽きますね。
コメント
プロフィール

株式会社日本オラクルで勤務後、オックスフォード大学MBA取得。DeNA共同創業者の渡辺氏とロンドンにてQuipperを創立し世界の教育プラットフォームを創る。自身が婚活で苦労をした経験から、2013年にニューヨークにてアジア人特化型の婚活サイト「EastMeetEast」を立ち上げる。
EastMeetEastのHP: http://www.eastmeeteast.com
ライターについて

NY在住ライター/ニューヨーク女子部♡主催。青山学院大学フランス文学科卒業後、サイバーエージェントに入社し広告制作・メディア編集・イベント企画運営に携わる。2015年より夫の海外転勤で渡米し、現在はニューヨークの新聞をはじめ様々な媒体でコラムや、海外で活躍する日本人のインタビュー記事を執筆。またNY在住の20~30代女性が約600名所属するコミュニティ「ニューヨーク女子部♡」を主催し、イベント企画運営も行っている。
プロフィール
株式会社日本オラクルで勤務後、オックスフォード大学MBA取得。DeNA共同創業者の渡辺氏とロンドンにてQuipperを創立し世界の教育プラットフォームを創る。自身が婚活で苦労をした経験から、2013年にニューヨークにてアジア人特化型の婚活サイト「EastMeetEast」を立ち上げる。
EastMeetEastのHP: http://www.eastmeeteast.com
時岡真理子 さんの本棚

ベンチャー企業の事業を急成長させ成功させた、経営の参考書

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