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特集!あの人の本棚
259.

MONO NO AWARE   (バンド)


「断定しない」という哲学(MONO NO AWARE インタビュー)

MONO NO AWARE
さまざまなプロフェッショナルの考え方・作られ方を、その人の本棚、読書遍歴、本に対する思いなどから紐解いていくインタビュー。今回は東京のインディ・シーンで注目を集めるMONO NO AWAREが登場。インタビューの前編では、彼らの音楽性のルーツについて伺いました。
「断定しない」という哲学(MONO NO AWARE インタビュー)

既存のカルチャーには、ご多分に漏れず「型」があり、もちろん音楽も例外ではない。型から外れたものを指す「型破り」が意味するのは、固定化された枠組みでは捉えられないもの、端的に言えば“常識を超越した何か”である。バンド名の由来を、もののあはれ(無常観的な哀愁や得も言われぬ情緒)に持つ4ピース、MONO NO AWAREの1stアルバム『人生、山おり谷おり』から読み取ることができるのは、“新しい型を提示する”という彼らなりの決意だ。さながらオムニバス映画のように曲調の異なるバラバラな楽曲群で構成された世界観は、最大限の驚きを携えてリスナーを待ち構える。アルバムに添えられた「何度もおり間違えて、僕たちの人生は複雑になっていく―――」との言葉を受け、私たちの人生に折り重ねるようにして、華やかで瑞々しい彼らの楽曲に耳を傾けてみたい。

安易に断定しないことで、自分たちを好きになってくれる人が増えたら嬉しい

―― 1stアルバム『人生、山おり谷おり』から想起されるのはバンド名の通り、うつろいゆく情景や無常観的なイメージです。一曲ごとに変化していく多彩でメロディアスな曲調は、良い意味でバンドとしての全貌をなかなか掴ませてくれません。そこでまず、MONO NO AWAREとはどんなバンドなのかを伺えればと思っています。

玉置周啓(以下、玉置) バンド名のモチーフになっている「もののあはれ」は、辞書を引くと代表的に2つの意味が記されています。ひとつが、得も言われぬ風情という、なんとも言えない良さに対する感情。僕は曲や歌詞の中で、ただ哀しい、ただ楽しいという感情ではなく、どういう感情なのかよく分からない時のものを、できるだけ切り取って楽曲にしようとしていて、バンドとしてはその際のバランス感を大事にしています。

もうひとつが、自然のうつろい、諸行無常に関すること。僕たちは特定のアーティストに影響を受け、そのフォロワーとなって活動するという意思を持って始まったバンドではないので、常に楽しそうな方向を見つつ、目移りしてでも好きなジャンルをやっていく。それがうつろいであり、ひとつに固執しないということです。固執しないことが“MONO NO AWAREらしさ”となり、バンドの色としてまとまれば、ひとつの形式として成立するのではないかなと。 

例えば、ロックバンドがバンド名にロックと入れるように、自分たちでも掴みどころの無いことが分かっているので、それをバンド名で説明というか、提示しておこうと思いMONO NO AWAREという名前にしました。2013年の結成当初はまだぼんやりとしていたけど、意味合いを意識するようになったのは2015年にドラムの柳澤が加入した時です。

―― それはドラマーの交代というタイミングが転機になったのでしょうか。あるいは、柳澤さんのサウンドがバンドの方向性を明確にしたのでしょうか。

玉置 以前のドラマーとは、叩くドラムが全く違いました。音楽性が本当にまるっきり。その変化によって自分のやりたいことが広がったというか……それゆえに、やはり曲によって違いは出るので聴いてくれる人たちにはバラバラな曲をやっているように映るのかなと。でもそれは視野が広がって、且つ絞っていないという明確な意思があるからこそ、ひとつの枠組みに捕われない曲になるんです。同じような曲をやり続けたとして、自分たちも疲れてしまうので、やりたくなくなってしまう。ジャンルをひとつに絞るということは、そういう危険性を孕むということです。

―― 今作に関しても、「折り紙」というコンセプトありきではなく、バラバラになった曲たちにコンセプトを与えたということでしょうか。

玉置 まさにそうです。「折り紙」をテーマにしたのもバンド名と同じで、10曲全てがバラバラの曲調なので、どうやってアルバムとしてまとめようかとなり、タイトルにすごく迷いました。その時にデザイナーが折り紙という案を出してくれて。

折り紙は最初正方形ですけど、二次元の状態から三次元にもできるし、色味も変えられて形も好きにできる。だから、こんなにぴったりなものは無いと。そしてMONO NO AWAREという一枚の折り紙から色々な形で曲が生まれてくるという考え方になり、曲がバラバラなことの言い訳ができるようになります(笑)。

―― なるほど(笑)。アルバムを客観的に見てみると、どんな作品になったと思いますか?

柳澤豊(以下、柳澤) 最初は、今ある曲でしかできないから、コンセプチュアルなものにはならないな……から始まったけど、制作途中に「折り紙」という話が出てきて、ひとつの形から色々なものができるということで、むしろ曲の多様さを活かしたコンセプト性の強い作品になっていったと思いました。今のバンドのやりたい音楽、ひとつに縛られない音楽というものにリンクしていて、すごく好きです。

―― 1st、2nd EPからの変化についてはいかがでしょう。

玉置 彼(柳澤)が入ってからの2年ちょっとという年月のなかで、バンドとしては常に、自分たちのやっていることが変化している自覚というか、そういう感情を持っています。その変化の途中、つまり真ん中を切り取ったのが1st EPや2nd EPで、最近のものを切り取ったのが今回のアルバムというイメージですね。変わっているといえば変わっているし、変わっていないといえば変わっていない。

―― ソングライティングについて聞いてみたいことがあります。MONO NO AWAREの歌詞は、(韻を踏むなどの)独特の言葉遊びがとても印象に残っているのですが、特に思うのは「もういい、どうにでもなる気がする」「よく聞け、君のことはわかってるつもり」というように、断定をしていないことです。

玉置 ……中学2年の時、担任の先生が僕の親を授業参観後に呼び出して、教室の後ろに貼ってあるみんなの個人目標を指差し、「あなたの子供はね……」って説明したんですけど、僕の書いていた目標が「できれば7時半に起床」だったんですね。

一同 (笑)。

玉置 それで、あなたの子供はこういう人なんですよ、と。上手いけどこれは弱みにもなりますという話をされていて、つまり僕はそういう人間なんです(笑)。だから断定をしてしまうと、凝り固まってしまうというか。バンドもそうで、とにかく断定をしたくない。たぶん、人生とか人間論でいうと、すごく弱いものだと思うんです。断定をしないと次にいけないから。

でも僕は、断定をしなくても流れというか、何か見えない力で続いていくという感覚があるから、大丈夫だと思っている。だから歌詞にも僕の性格が出ているのかなと。結局、ちゃんと断定できる人っていないんじゃないですかね。強がっているだけというか、そうしないと次にいけないからやっているというか。現代は情報社会で選ぶものも多いから、自分で選択するのが苦手な人が多いと思うんです。

―― なので、はっきりと言う人がウケたりしますもんね。

玉置 でも、そういうことをやって人が付いてきても意味がないというか……実(じつ)の無い人たちがフォロワーになるだけ。僕は中立性を保って自分たちを見てくれる人と友達になりたいので、安易に断定しないことで、自分たちを好きになってくれる人が増えたら嬉しいという感じなんですよね。

人生においては選択もしてきましたけど、曲で決めつけはしたくない。言語化が難しいんですけど……僕の中では中立が一番正しいと思っています。時として、断定も必要なんですけどね。今作で断定をしているのは「井戸育ち」だけで、新しい世界を知るということに関しては、断定しても良いと思っているので、「しかないや」という強めな言い方にしました。

加藤成順(以下、加藤) 言い切らないということ、僕も考えますね。自分でどう解釈するかというのは、人によってもちろん違うと思うから、歌詞に関していえば、それはとても面白いと思ってます。

Photographs by Taku Katayama

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プロフィール

MONO NO AWARE
MONO NO AWARE
バンド

東京都八丈島出身の玉置周啓、加藤成順と共に大学で出会った同級生の竹田綾子、柳澤豊で構成される。2013年結成。2015年1月からドラムが柳澤豊に変わり、徐々に現スタイルに。

FUJI ROCKFESTIVAL’16「ROOKIE A GO-GO」3日目の締めに出演。同年の9月には、りんご音楽祭にも出演。 1st single、「イワンコッチャナイ/ダダ」をライブ会場&限定店舗で販売し即完売。 2017年3月には、1st フルアルバム、「人生、山おり谷おり」をP-VINEより全国流通。 バンド名のごとく曲ごとにその曲調は大きく流動しつつも、 一筋縄ではいかないメロディラインと、 言葉遊びと独特のリズムに溢れる歌詞で、 どの曲も喜怒哀楽では測りきれない感情を抱かせる。

ライターについて

Writer 15
烏丸おいけ

『Quick Japan』「Qetic」などカルチャー媒体に寄稿。
Twitter:@oikekarasuma

プロフィール

MONO NO AWARE
バンド

東京都八丈島出身の玉置周啓、加藤成順と共に大学で出会った同級生の竹田綾子、柳澤豊で構成される。2013年結成。2015年1月からドラムが柳澤豊に変わり、徐々に現スタイルに。

FUJI ROCKFESTIVAL’16「ROOKIE A GO-GO」3日目の締めに出演。同年の9月には、りんご音楽祭にも出演。 1st single、「イワンコッチャナイ/ダダ」をライブ会場&限定店舗で販売し即完売。 2017年3月には、1st フルアルバム、「人生、山おり谷おり」をP-VINEより全国流通。 バンド名のごとく曲ごとにその曲調は大きく流動しつつも、 一筋縄ではいかないメロディラインと、 言葉遊びと独特のリズムに溢れる歌詞で、 どの曲も喜怒哀楽では測りきれない感情を抱かせる。

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