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特集!あの人の本棚
286.

住岡梨奈   (ミュージシャン)


さらけ出す作詞術(住岡梨奈 インタビュー)

住岡梨奈
さまざまなプロフェッショナルの考え方を、その人の本棚、読書遍歴、本に対する思いなどから紐解いていくインタビュー。今回は、レーベル移籍第一弾アルバム『colors』を発表した住岡梨奈さんが登場。ホンシェルジュ連載陣の一人でもある彼女が、歌詞の話を通じて「言葉の伝え方」について語ってくれました。
さらけ出す作詞術(住岡梨奈 インタビュー)

住岡梨奈はリスナーとの関係性を大切にするシンガーソングライターだ。音楽だからこそ可能なコミュニケーション。「私的なメッセージを発信するだけだったら、手紙でいいかもしれませんが、それよりも“私が思っていることを、あなたが聴くとどんな景色に見えるんだろう?”という点に興味があります」。そんな彼女が、“四季とその移り行く色合い”をテーマに、カバー曲6曲を収録したミニアルバムと、新曲6曲入りのミニアルバムをコンパイルした2枚組作品『colors』を発表した。多彩なアレンジに加え、美しく伸びやかなヴォーカルが紡ぐ豊かな情景。キャリア初の全曲セルフプロデュースで、全12曲のサウンドプロデュースを自身で手がけた。現在ツアー中の彼女に話を聞いた。

フィクションとノンフィクションの違いに近い

──四季をテーマにアルバムを作ろうと思った理由は?

住岡梨奈(以下、住岡) 私が書く曲は、冬の曲が多い気がします。それは、地元が北海道だから雪が恋しくなったり、季節感を大事にしているからだと思います。夏の暑さや春の匂いなど、誰もが感じていることなのに、思い出の中では見える景色がそれぞれ違う。私にとっての雪は故郷を象徴するものの一つで、夏といえば家族とのキャンプを思い出します。過去と今が繋がって、未来にも繋がっていく。私が今回のアルバムで目を向けたかったのは、そういう部分です。季節というキーワードでみんなの体験が繋がっていったらいいなと思います。

──カバー曲のセレクトも四季とリンクしていますよね。

住岡 そうですね。今回はテーマがハッキリしていたので、夏ならどういう歌詞がいいだろうとか、冬ならこの言葉がいいんじゃないかなど、全体の流れを大事にしました。季節の移ろいを表現したかったので。

──住岡さんはやっぱり冬が一番好きなんですか?

住岡 冬がいいです。暑いより寒い方が好き(笑)。夏は、ほんと暑いですよね。汗をかくのがどうしても辛いなって思います(笑)。

──オリジナルの新曲6曲は“私とあなた”の関係性を描いた歌詞が多いですが、「Daughter」はお父さんに向けられた曲ですよね。親目線で聴いても印象に残りました。

住岡 私には姉が二人いるのですが、一番上の姉には娘がいます。私たちを育ててくれた母親がいて、その娘が母親になって……という繋がりがすごく不思議だなぁと感じました。自分もいつか子どもを持ったらどういう風に見えるのだろうと思って、この曲を書きました。ちょうどこの曲を書いた時、父が東京マラソンに出るために家に泊まりに来たんです。いつもは母と一緒に来るんですけど、父一人で来たのはその時が初めてでした。大人になってから久しぶりに父と一対一で出かけて、お互いに歳を取ったんだなぁと感じながらお酒を飲んだりしました(笑)。東京と北海道で離れ離れで暮らしているから、あと何回こうやって食事に行けるかなぁとか、どれくらい遊びに来てくれるかなぁと考えたら、すごく気持ちがギュッとなりました。子どもの頃、おやすみのチューを父から寝る時にしてもらったこや、祖父が亡くなった時に最期の挨拶でおでこにキスをしたこと、そういう大きく巡るものに思いを馳せた結果、生まれた曲が「Daughter」でした。これまでにも家族に向けて曲を書いたことはありますが、ちょっと違った感じのものができたかなと思っています。

──そういうタイプの曲って今までも書いたことはあるんですか?

住岡 ファースト・アルバム(『ツムギウタ』)に入っている「雪どけの街」という曲があります。東京に来て2~3年経った頃、故郷がすごく恋しくなって、それをポジティブに歌詞にした曲です。私はこっちで元気にやっているよ、大きな声で歌えば故郷にも届くね、という思いを込めました。固有名詞は出していませんが、両親がその曲を聴いたあと、伝わったよと言ってくれて、そのときに「気持ちをさらけ出すことは恥ずかしいことではないんだ」と実感しました。直接言えないことでも、曲だったら伝えることができるんだなと思いました。

──「ひみつ」という曲には『星の王子さま』が出てきます。ホンシェルジュの連載でも紹介したことがありますね。

住岡 はい。とてもお気に入りの本です。「ひみつ」は春の曲です。好きとか嫌いではなく、恋人や家族のような本当に大切に思っている人への接し方って、そこに意味はなくてもいいのではないかと思ったんです。どういう関係性なのかをハッキリさせたがる人は多いですけど、実際は曖昧なままでもいいのではないかなと。ごまかしたり嘘をついたりするのではなく、お互いに曖昧だと分かっていながら、秘密として思いを留めておく。春って出会いや別れの季節ですが、たとえ物理的な別れはあっても、ちゃんと気持ちはそこにあるということを歌いたくて。『星の王子様』は、本当に大切なものは目に見えないけど、見えないものを信じるというお話だと思うのですが、信じているものが偽りやまやかしだったとしても、私の気持ちは変わらないし、そこは大事にしたいなと思います。

──自分が大切にしているものをさらけ出して、それを曲として表現する。住岡さんは作曲へのこだわりって何かありますか?

住岡 いろんな書き方を試してきて、思いっきりさらけ出す曲、なるべく抽象的にしておく曲、それらのバランスが今はちょうど良い感じになっていると思います。今回のアルバムでは、私の中でのイメージと、相手に伝わるといいなと思う景色をうまく収めることができました。はっきり言うからには嘘をつかないことを大事にしています。物語として書くならまた違うのかもしれませんが、自分の言葉とその思いを伝えたいなら正直でいようという思いがあるかもしれないですね。フィクションとノンフィクションの違いに近いかもしれません。

Photograph by Yoko Yamashita

住岡梨奈がオススメする3冊

『28 地球の歩き方 aruco ドイツ 2018~2019 』

住岡 レコーディング前の5月、初めてドイツに行った時に使った旅本です。とても見やすいので、よく持ち歩いて買い物に行っていました(笑)。一日だけフランクフルトからミュンヘンまで電車で出かけたのですが、車中から見る風景に北海道を思い出しましたね。面白かったのは、ドイツの人たちって人前で鼻をすするのがマナー的にどうも微妙らしく、それだったら鼻をかんだ方がいいと、厳かなレストランで上品そうな男性が突然チーン!って鼻をかむんですよ。あと、お店に入ったら「ハーイ」と挨拶をして、出て行く時も同じように挨拶するのも面白かったです。日本だとお客さんが黙ってお店に入って、店員さんから「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」と声をかけるけど、その逆でお客さんの方からアピールする。海外に行くと、そういうカルチャーギャップを知れるのも楽しみの一つです。

『しごとのきほん くらしのきほん 100 』松浦弥太郎

住岡 音楽活動をしていると、どうしても制作に追われて、どうしたらいいのだろう?という状態に陥る時があります。昨年の2月から4月に全国26ヶ所を廻った前々回のツアーでは、それぞれの会場の反応を見つつ、どのライブもすべて同じクオリティでできることが大切だなと感じました。でも、日によっては焦ったり、イライラしたりすることもあって、そういう時にこの本を読むと素直になれました。この本を買ってみようと思ったのは、自分の基本について考えたかったからです。基本さえあればいつでも普段と変わらずに落ち着いて生活できる。何かあった時でも対応できるようになれるのではないかなと思ったので。生活の中に創作がある作者だから書ける内容だと思いますし、私も生活の中に音楽があるから、そういう点でも共感できました。

『今日の人生』益田ミリ

住岡 「あ、私と同じことを思っている人がいるんだ」と思えるマンガです。別になんでもないことですけど、差し入れで美味しいものがあったら、それをすぐ誰かに買って行ってあげたくなるような、そんな日常の小さなウキウキを感じられる一冊です。だから何?って言われたら終わっちゃう「今日の人生」ですが(笑)。

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プロフィール

住岡梨奈
住岡梨奈
ミュージシャン

北海道出身。1990年生まれ。2012年6月、シングル「feel you」でデビュー。翌年7月から海辺のシェアハウスで共同生活を送る様子を放送する人気番組「テラスハウス」に出演。2017年8月23日にオリジナル曲とカバー曲を6曲ずつ収録したミニアルバムの2枚組、ダブルミニアルバム『colors』をリリース。8月19日の銀座公演を皮切りに、全国20カ所を廻る弾き語りツアー、住岡梨奈 弾き語りtour 2017「二十色~twenty colors~」を開催した。
http://www.sumiokarina.com/

ライターについて

Writer 5
ホンシェルジュ編集部・芸術/芸能班

音楽、映画、アイドル、その他の芸術/芸能に詳しいライターによる班。もちろん皆が本好きだが、そのレベルや守備範囲はさまざま。日本のエンタテイメントのトップランナーを通じて、本/読書の楽しみへの入り口をつくりたい。あるいは本/読書という切り口を通じて、トップランナーの新たな一面を引きだしたい。

プロフィール

住岡梨奈
ミュージシャン

北海道出身。1990年生まれ。2012年6月、シングル「feel you」でデビュー。翌年7月から海辺のシェアハウスで共同生活を送る様子を放送する人気番組「テラスハウス」に出演。2017年8月23日にオリジナル曲とカバー曲を6曲ずつ収録したミニアルバムの2枚組、ダブルミニアルバム『colors』をリリース。8月19日の銀座公演を皮切りに、全国20カ所を廻る弾き語りツアー、住岡梨奈 弾き語りtour 2017「二十色~twenty colors~」を開催した。
http://www.sumiokarina.com/

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