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特集!あの人の本棚
289.

ペヤンヌマキ×安藤玉恵   (ブス会*主宰/女優)


現代によみがえった「究極の愛」の姿(ペヤンヌマキ×安藤玉恵 対談インタビュー)

ペヤンヌマキ×安藤玉恵
12月8日(金)から19日(火)にかけて、東京・こまばアゴラ劇場で開催される「ペヤンヌマキ×安藤玉恵 生誕40周年記念ブス会*『男女逆転版・痴人の愛』」。谷崎潤一郎『痴人の愛』を現代に置き換えて描かれた本作。脚本・演出を手がけるペヤンヌマキさんと出演者の安藤玉恵さんにおすすめの本を聞きながら、“究極の愛”について語ってもらいました。
現代によみがえった「究極の愛」の姿(ペヤンヌマキ×安藤玉恵 対談インタビュー)
左:安藤玉恵 / 右:ペヤンヌマキ

脚本家・演出家であり、演劇ユニット「ブス会*」主宰のペヤンヌマキが、同い年の女優・安藤玉恵と立ち上げた新しい舞台のシリーズ「生誕○周年記念ブス会*」。40才を迎える今年は、谷崎潤一郎の名作『痴人の愛』を、男女逆転にした現代劇で上演します。40歳の独身女性が美しい少年ナオミと出会い、「理想の男」に育て上げようとするも、次第に翻弄され破滅に向かっていくというストーリー。文豪・谷崎の求めた“究極の愛”を、2人はどのように蘇らせたのでしょうか。今回、2人には“愛”をテーマにお気に入りの本を紹介してもらいながら、作品について、愛について、ざっくばらんに語ってもらいました。2人の考える“究極の愛”とは……?

人は自分にないもの、失ってしまったものを求めるのかもしれない

―― 今回、谷崎潤一郎の『痴人の愛』を男女逆転の現代劇にしようと思った経緯を教えてください。

ペヤンヌマキ(以下、ペヤンヌ) 中学生の頃に一度読んだことがあるのですが、その時は全然意味が分からず、すぐ断念してしまったんです(苦笑)。でも、20代前半に読んだときは「すごくわかる!」と思って。男女の立場が逆転していくところも面白かったし、歳上の男性を翻弄するナオミに憧れて読んでいたのですが、40歳直前になって読み返してみたら、また感じ方が全然違って。むしろ、自分がおじさん側の視点で読んでしまったんですよね(笑)。そういう、自分の心情の変化と、上演に関する様々なタイミングがマッチしたというか。安藤玉恵さんと、40歳の記念に上演するのにはピッタリかなと思いました。

―― まず『痴人の愛』という作品ありきで、男女逆転の設定を思いついたわけですね。

ペヤンヌ はい。ただ、そのアイデアを思いついてからは、過去の名作を色々観たり読んだりしたときに「これ、男女逆転にしたら面白いんじゃないかな?」と思うことが多くなりましたね。『美女と野獣』も、野獣に感情移入して観ちゃうんですよ。「引きこもっている私のところに美少年がやってきて、心を開いてくれるストーリーとかどうかな……」って。

安藤玉恵(以下、安藤) あははは、それいいじゃん(笑)。やっぱりそこには願望が入っちゃうよね。でも確かに、年老いて醜くなっていく自分を野獣に投影して、「それでも幸せになりたいときにはどうしたらいいの?」というのは重要なテーマだと思う。美しいものへの憧れが、年々増していく感じとかね。

―― ナボコフの『ロリータ』を男女逆転しても面白いかもしれないですね。

安藤 ああ、『ナボコフ 男女逆転版』はいいですね、確かに。あと、トーマス・マン『ヴェニスに死す』の、あの綺麗なラストは、今回ちょっと参考になるかもね。

ペヤンヌ そうだね。あの、「美しい少年を眺めながら死んでいく」というのは一つの理想形だと思う。ルキノ・ヴィスコンティの映画でも、あのおじいちゃんの顔がポーッと上気しているところがすごくいい。

―― 自分よりもうんと若い恋人を持つと、その相手に自分を投影することにより、「若さを取り戻したい」という気持ちは、男女問わずあるのかもしれないですね。

ペヤンヌ あります、あります。その存在が欲しいというより、「自分が(その存在に)なりたい」という気持ちというか。フィギュアスケートを観ていると、羽生結弦くんに自分がなりたいと思うし。

安藤 ……何言ってんの(笑)?

―― (笑)。劇中ではハイブランドや百貨店の固有名詞が出てきたり、SNSネタなども盛り込んだりしていましたが、現代劇にする上で気をつけたこと、こだわったことはありますか?

ペヤンヌ 古典の雰囲気も残しつつ、現代を象徴するフレーズを入れていくという、そのあたりの匙加減は気をつけましたね。「いつの時代だろう?」っていう、不思議な空間にしたかったんです。

安藤 先日、リーディング公演(脚本を朗読する公演)を行なったのですが、脚本の持つ言葉の美しさを体感しましたね。大きな声で読むことで、黙読とは違うリズムが生まれて、まるで音楽のようだと感じて。1時間のコンサートのような気持ちで演じていました。谷崎さんの文体と、そこに混じってくるペヤンヌさんの文体が、全然違うのがわかるんですよ。「あ、ここは原作から引用した部分で、ここはペヤンヌさんの書いた部分だな」って。その混じり具合にも美しさを感じました。

―― 後半の展開は、男女逆転にしたからこそ生まれたペヤンヌさんのオリジナルですものね?

安藤 そうなんです。すごくいいですよね。ペヤンヌさんっていう、40歳の生身の作家の全てが血と肉になり迫ってくる感じがします。

―― こういう愛のカタチに対して、安藤さんは共感する部分はあります?

安藤 共感は全くしないです(笑)。ただ、ナオミが堕落していくのを見て「私の育て方が悪かったんだ」と自分を責めるところは、女独特の考え方というか。父性よりは母性の方が、そういうところがありそうですね。

ペヤンヌ 「私のせいで……」って思ってしまうと、どんどんダメンズを作っちゃうんだよね(笑)。ナオミ自身の中に元々持っていた(ダメンズとしての)素質もあるけど、相乗効果というか、より増長させてしまうというか、引き出してしまうのは女性側の問題でもあるのかなと。

―― さて今回は、「愛」をテーマにした本をお持ちいただきました。まずはペヤンヌは、やはり谷崎潤一郎『痴人の愛』ですね。

ペヤンヌ 改めてあらすじをいうと、美少女ナオミを「自分好みに育てよう」と思った主人公が、その体に溺れていくという、オジサンの愚かな顛末を描いた文学作品です(笑)。でも、理想通りに育たなかったけれども、「虐げられることに悦びを感じていく」という、ある意味では理想通りの結末を迎える。ひとつの愛のともいえます。 谷崎潤一郎作品では、『瘋癲老人日記』と『鍵』も好きなんですけど、『瘋癲老人日記』はさらに進化していてすごかったですね。体は機能しなくなっているのに、妄想だけは頭のなかでどんどん広がっていくという……。墓に入ってからも、好みの足に踏まれていたい、墓石に足型を残したいっていうのは、もう究極のフェティシズムだなと。

『痴人の愛 』谷崎 潤一郎

安藤 私は、江森陽弘さんの『金子光晴のラブレター』を最初に紹介します。これは、金子光晴さんの愛人に江森さんがインタビューをするという形で、2人の間に起きたことを時系列で紹介していく作品です。彼女がどういう形で愛されていたかが記されているのだけど、もうね、なんて言ったらいいんだろう……壮絶なんですよ。『痴人の愛』の“リアル・ヴァージョン”。金子さんが譲治さん(『痴人の愛』の主人公)で、このレイコさんという愛人がナオミ。文学を志向していたレイコさんは、23歳で金子さんと出会い、すぐに見初められて二度目に会った時には関係を持つんです。彼女のお母さんも、そのことに気づき、会う時には着物を持って行かせて。

『金子光晴のラブレター』江森 陽弘

―― へえ!

安藤 それで一軒家を借りて、2人で生活し始めるんです。もちろん金子さんには妻子があって、金子さんが亡くなった時に、レイコさんはお通夜の席に座れないエピソードなども全部書いてある。とにかく、愛し方がすごいんですよ。何回も妊娠するんだけど、「あなたは子供を産んじゃいけない。何故なら、あなたはまだ子供だから。お母さんにはなれない」って説き伏せ堕胎させる。その度に彼女は狂っていくんですよ。そりゃそうですよね、本当に残酷。なので、結末としては『痴人の愛』とは全く違います。

ペヤンヌ まだ谷崎さんの方が愛すべきというか、間抜けなところがあっていいね(笑)。

安藤 そう。金子光晴の身勝手さときたら……。あんな美しい詩を書いていますけど、とんでもないんです。でもまあ、芸術家ってそういうものなのかもしれないですけどね。ただ、気持ち悪いと思いつつその一方で、「ここまでいったら幸せなのかもな」とも思うんですよ。「破滅」と「幸福」が表裏一体というか。もう、生きているか死んでいるか分からないような極限状態って、何もない平々凡々な日常と比べたら、幸福度も高いのかなと。そんなことを、読みながら追体験してドキドキしますけどね。

―― 安藤さんは、自分の中にあるそういう欲望を、「演技」という手段で解放しているところもありますか?

安藤 あると思います。そういう意味では芝居っていいですよね。どんな世界を構築したとしても、最後には舞台セットごと壊すことができる。ゼロから始まってゼロに戻るというサイクルが、自分の性格にもあっているのだと思います。実生活で、金子さんや谷崎さんみたいには愛されたくないから(笑)。

ペヤンヌ この流れだと、次は岡本敏子さんの『奇跡』を紹介したいです。岡本太郎さんの秘書であり、事実上の「妻」であった敏子さんの、小説家としてのデビュー作ですね。岡本太郎さんのような、凄い才能に愛された女性の話。自伝的な内容で、てっきり私は「才能のある男性に従順に尽くして……」っていう話なのかと思ったら、意外と違うんですよね。物語の中盤で、太郎さんがモデルになっている男性は死んじゃうんですけど、その後の彼女は他の男性ともどんどん関係を持っていくんです。ただし、心の中には常に太郎がいる、みたいな(笑)。発展的でもあり、ある意味では従順でもある女性を描いている。

『奇跡 』岡本 敏子

安藤 へえ、いいね。

ペヤンヌ まあ、小説なのでどこまでが敏子さん本人の実体験なのかは分からないんですけど。しかもこの本、敏子さんが77歳の時に書かれた本なんですが、20代の女性が肉体的に求められることの悦びを、すごくリアルに描写されていて。「77歳で思い出してよく書けるよなあ」とびっくりしました。セックスが現役な感じなんです。生命力に満ち溢れているというか、太郎さんのような確固たる存在を失った後でも、より輝きを増していくっていう。自分の中に、岡本太郎を取り込んだんでしょうね。

―― なるほど。喪失感で心に穴が開くというより、自分の一部にしてしまうという。幸福な愛のカタチの一つですね。

ペヤンヌ ええ、そう思います。

―― エーリッヒ・フロム『愛するということ』は、「愛するとは、技術である」と言い切っている本です。

安藤 最初に読んだのは18歳の頃かな。「そうか、愛って技術なのか」と。でも、それを私は何となく分かっていたんですよ。私が幸せな幼少期を過ごしてこられたのは、大家族の中で溺愛されたからで、「愛されたいならまず自分が人を愛することが、何より大切なんだな」と自然と身につきました。自分が幼いときに、ずっとやってもらってきたことを、これからは自分がやればいいんだなって、この本を読んで再確認したというか、自分が心の中で感じていたことを言葉にしてもらったような気持ちになりました。「よし、私はこのまま進んでいけばいいんだ」って思わせてくれた本です。

『愛するということ 』エーリッヒ・フロム

―― 僕もこの本は大好きです。「愛は訓練でしか身につかない」とフロムは説いていて。つまり「愛する対象は誰でもいい」というか、「この人を愛そう」と思えば、「技術」で愛することは可能だと言っている。であれば、「母性本能なんてなくていいんだ」とも思えるじゃないですか。

安藤 そう。それだけで楽になる女性はたくさんいると思いますね。子育てに関する一般認識って、押し付けがましいものが多いですからね。「女なら母性本能があって当然だ」みたいな。そんなところで苦しむ必要なんてないはずなのに。そう、なので『愛するということ』は、「愛するための技術」を説くと同時に、「生きる技術」も説いている本なんです。

ペヤンヌ 「愛は技術で身につけられる」っていうのは、とても救われますね。俵万智さんの『トリアングル』には、30歳の頃に読んでメチャメチャ共感しました。33歳のフリーライターの女性が、妻子持ちの男と不倫しているんですけど、同時に年下の男性とも付き合っているという。

―― 瀬戸内寂聴の『夏の終わり』にも通じるものがありますね。

ペヤンヌ ああ、確かに。俵万智さんは未婚で子供を産んでいますが、この小説の主人公も、妻子ある男性の子供を身ごもり、最後はシングルマザーの道を選ぶ。やはり自伝的な内容なんですよね。この本や、岡本敏子さんの『奇跡』のように、「どこまでが事実で、どこからがフィクションなんだろう?」って思わせる小説が好きなのかもしれない。なんか、色々想像しながら読むと楽しいじゃないですか。谷崎さんなんかはもう、完全に自分のことを書いてますけど(笑)。 あと、俵さんらしく美しい短歌が随所に挿入されていて。単なる「不倫小説」じゃないところも好きです。言葉の美しさってすごく重要だと思いますね。谷崎さんも、ストーリー的には単にどうしようもないオッサンの話なんですが、言葉の美しさでコーティングされているというか。

―― 今回紹介してくださった作品の多くもそうでしたが、「年の差恋愛」って文学小説になりがちですけど、それは何故なのでしょうね。

ペヤンヌ やっぱり、人は自分にないもの、失ってしまったものを求めるのかもしれないですね。若い頃は年上の異性が持っている、自分にはないものに憧れますし、歳をとると若い異性が持っている、自分が失ってしまったものを求めるというか、そこにロマンがあるのかもしれない。『トリアングル』では、主人公が歳下と歳上、両方の美味しいところを持っていきますが……貪欲な人だな、俵さんって(笑)。

―― それと、複数の人と恋愛する話も文学には多いですし、最近は有名人のそういった恋愛が取り沙汰されがちですよね。

ペヤンヌ 不倫がメチャクチャ叩かれている一方で、「ポリアモリー」(関係者全員の合意に基づき、多重的な性愛関係を営むライフスタイル)のような概念が話題になっていますよね。だから、多くの人はどこかで複数の恋愛を求めているのかもしれない。思うに、たった1人の人に多くを求めるよりも、分散した方が色んな意味でうまくいくことも多いじゃないですか(笑)。その現実と、どう上手く折り合いつけるかが、結婚生活を長く続けるコツなのかもしれませんね。……と、言いつつ私が選んだ本は、3冊とも「結婚に囚われない愛のカタチ」がテーマになっていました。狙ったつもりはないけど。

―― 元々ペヤンヌさんは、どのような経緯で「ブス会*」を立ち上げたのですか?

ペヤンヌ 私と安藤さんは、元々早稲田大学の演劇サークル「早稲田大学演劇倶楽部」で知り合ったんです。その後、私はAV会社に就職して、しばらく舞台の活動はお休みしていたんですけど、30才の頃から「演劇またやりたいな」と思うようになって。ちょうどフリーランスになり、自由に時間が使えるようになったのと、 AVの世界でいろんな女性を観察している中、「こういう女性の姿を描きたい」っていう気持ちが沸々と沸いてきたんです。そのタイミングで安藤さんと、30歳を機に「女芝居」をやりたいねという話になって。AV女優を主人公にした『女のみち』を作ったのが、最初のキッカケです。その時は劇団ポツドールの番外公演名義だったのですが、そこから本格的に自分のユニットとして立ち上げたいという気持ちが芽生えて「ブス会*」を立ち上げました。

―― これまで「ブス会*」では、どのような作品を上演してきたのですか?

ペヤンヌ 最初の頃は女性中心の群像劇を上演していたのですが、そうすると観にきてくださった女性が特に共感して帰っていくという……「みんなで頑張ろうよ!」みたいな感じになるんですね。一方、男性は、そこで演じられる女性の滑稽さに失笑するというか、冷笑するというか。そんな雰囲気だったんですが、ここ数年は割と男性も、物語の中心に入るようになりました。女性1人男性5人の芝居だったこともありましたし、家族を通して女性を描くということを前回ではチャレンジしてみました。なので、「女性の群像劇」という初期のスタイルからは、結構遠ざかってきたというか、進化してきてはいると思います。

―― 男性を登場させることで、より女性の生き方のようなものが浮き彫りになりやすい傾向もあるのですかね?

ペヤンヌ 女性だけでいる時と、男性が介入してきた時とでは、女性のあり方も全然違ってきますし。ただし一貫しているのは、お客さんの反応が男女で全く違うということ(笑)。男性がゲラゲラ笑っているシーンで、女性が号泣していたり。そこは結構顕著に違います。

―― 女性が社会で生きていくことの「しんどさ」みたいなものを、啓蒙する気持ちもありますか?

ペヤンヌ うーん、そういった社会的な意識を持って芝居を作ったことはあまりないですけど、でも歳を重ねるにつれて、世の中にある「男尊女卑」的なものに敏感にはなっている気がしています。大々的には訴えてはいないけど、自分が常々感じていることが物語に入ってくることはあるでしょうね。「女性って、こんなことを考えているんですよ」っていうことを男性に知ってもらえる、いい機会かもしれない。大抵は怖がられて終わっちゃうんだけど(笑)。

安藤 確かに。割と女性の本音を吐露する作品が多いから。男性があまり普段目にすることのないような女性の姿も描かれますし。それに対して「怖いな」ってなってしまうのかもね。

ペヤンヌ 今日、こうして話していて思ったのですが、男性は割と女性に本性を含めて晒しているんですよね。女性から男性を見ていて「こんな本性、初めて見た!」って思うことは滅多にないんですけど、その逆は結構ある。

安藤 それか、女を見る時にフィルターがかかっていることもあるよね、男の人の方が。自分の理想じゃないけど、「こうあってほしい」っていうフィルターが一枚入って見るから、本性を露わにされた時「ええ!?」となってしまうのかも(笑)。

―― ペヤンヌさんのいたAVの世界は、何より「男性が見たい女性像」を際立たせて作品を描かなければならないのでは?

ペヤンヌ まさにそうです。でも、それがもう自分には「筋肉」のように付いてしまって、「男性脳」で女性を見るっていう職業病にかかっているのかもしれない(笑)。もちろん、自分の中に「女性性」もあって(笑)、芝居を書く時に「男性性」と「女性性」、両方の視点が入っているのが、自分の個性になっているのかもしれないです。

安藤 ああ、なるほど。

―― 最近はLGBTへの理解や関心も高まってきていますが、「ブス会*」の作品で、そういったことを直接的あるいは間接的に取り上げている中、何かリアクションが変わってきていると感じることはあります?

安藤 そう言われて思い出したんですけど、「ブス会*」の演劇を観た勢いで、それまで誰にもいえなかった自分のセクシャリティをカミングアウトする人は確かにいました。「芝居を見て気持ちが高ぶったのか、「ここはカミングアウトしてもいい場なんだ」と思ってくれたのかはわからないけど。

ペヤンヌ 今回の芝居では、私が「少年好きです」ってカミングアウトしているのと一緒ですもんね(笑)。

安藤 そうそう。最近、いきなりカミングアウトし始めたよね。作者自らが、自分の「少年愛」について堂々と言うようになった。

ペヤンヌ こちらがさらけ出すと、観ている方もさらけ出したいってなるのかもしれない。「実は」みたいな。取材されていても、「実は私も少年が好きで……」みたいにカミングアウトしていくライターさんが結構多いんですよ(笑)。でもそうやって、芝居を観たあとにみんなで色々語りたくなるのは、「ブス会*」の良さかもしれないですね。

―― 芝居を見ることで、自分自身を解放できるというか。

安藤 それはきっと、ペヤンヌさんに差別とか偏見が全くないからでしょうね。全てをフラットに、なんでも受け入れるというか。それについて何もメッセージを発信していないからこそ、フラットにできるのかもしれない。逆に、意図的に盛り込もうとすると、観る方も気構えてしまうというか。

―― 最後に、本公演に向けての意気込みをお聞かせください。

安藤 先日行ったリーディング公演はモノローグが多めでしたが、それを減らして動きや“間”で見せた時に、どんな風に印象がかわるのか、色々試行錯誤しながら準備を進めています。

ペヤンヌ 視覚の情報ってとても大事ですよね。ちょっとした指の動きとか、ふとした表情が全てを物語る時もありますし。

安藤 そうですね。今回すごく狭い場所で上演するので、隅から隅までみんなで一緒に観られると思うし、丁寧にやればやるほど、いい意味で「気持ち悪い」感じになると思うので(笑)、今から楽しみですね。

インタビューの一覧

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プロフィール

Peyannusan
ペヤンヌマキ
ブス会*主宰

1976 年、長崎県出身。ブス会*主宰/脚本・演出家/AV監督(ぺヤングマキ名義)。早稲田大学在学中、三浦大輔主宰の劇団「ポツドール」の旗揚げに参加。AV監督として活動する傍ら、2010年、演劇ユニット「ブス会*」を旗揚げ。以降すべての作品の脚本・演出を担当。現在はフリーの映像ディレクター・脚本家としてTVドラマなども手がける。

【舞台】ペヤンヌマキ×安藤玉恵 生誕40周年記念ブス会*
「男女逆転版・痴人の愛」
2017年12月8日~19日
会場:こまばアゴラ劇場
http://busukai.com
【本】『女の数だけ武器がある。 たたかえ!ブス魂』(幻冬舎文庫)
https://www.amazon.co.jp/dp/4344425758

Andousan
安藤玉恵
女優

1976年、東京都出身。俳優映画『夢売るふたり』(西川美和監督)で第27回高崎映画祭最優秀助演女優賞受賞。待機作に、映画『探偵はBARにいる3』(吉田照幸監督/公開中)、『羊の木』(吉田大八監督/2018年2月3日公開)。さらに2月に舞台『夜、ナク、鳥』(瀬戸山美咲演出)が控える。ペヤンヌマキ作・演出舞台には『女のみち』『女のみち2012』(初演、再演)に出演。現在、北日本新聞にて「安藤玉恵のたまてばこ」(毎月第三金曜日更新)連載中。
http://webun.jp/card/16375

ライターについて

Unnamed
黒田隆憲

90年代後半にロックバンドCOKEBERRYでメジャー・デビュー。山下達郎の『サンデー・ソングブック』で紹介され話題に。ライターとしては、スタジオワークの経験を活かし、楽器や機材に精通した文章に定評がある。2013年には、世界で唯一の「マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン公認カメラマン」として世界各地で撮影をおこなった。主な共著に『シューゲイザー・ディスクガイド』、著著に『プライベート・スタジオ作曲術』『マイ・ブラッディ・ヴァレンタインこそはすべて』『メロディがひらめくとき』など。

プロフィール

ペヤンヌマキ
ブス会*主宰

1976 年、長崎県出身。ブス会*主宰/脚本・演出家/AV監督(ぺヤングマキ名義)。早稲田大学在学中、三浦大輔主宰の劇団「ポツドール」の旗揚げに参加。AV監督として活動する傍ら、2010年、演劇ユニット「ブス会*」を旗揚げ。以降すべての作品の脚本・演出を担当。現在はフリーの映像ディレクター・脚本家としてTVドラマなども手がける。

【舞台】ペヤンヌマキ×安藤玉恵 生誕40周年記念ブス会*
「男女逆転版・痴人の愛」
2017年12月8日~19日
会場:こまばアゴラ劇場
http://busukai.com
【本】『女の数だけ武器がある。 たたかえ!ブス魂』(幻冬舎文庫)
https://www.amazon.co.jp/dp/4344425758

安藤玉恵
女優

1976年、東京都出身。俳優映画『夢売るふたり』(西川美和監督)で第27回高崎映画祭最優秀助演女優賞受賞。待機作に、映画『探偵はBARにいる3』(吉田照幸監督/公開中)、『羊の木』(吉田大八監督/2018年2月3日公開)。さらに2月に舞台『夜、ナク、鳥』(瀬戸山美咲演出)が控える。ペヤンヌマキ作・演出舞台には『女のみち』『女のみち2012』(初演、再演)に出演。現在、北日本新聞にて「安藤玉恵のたまてばこ」(毎月第三金曜日更新)連載中。
http://webun.jp/card/16375

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