Loading 81b424ebf5b28b6979c5bfbadb4fe3d86654abdce81e3c0259cc91c3ecd00497
特集!あの人の本棚
32.

中原圭介   (経営コンサルタント/経済アナリスト/著者大学教授)


世の中の「本質」を見極めるための勉強法とは

中原圭介
さまざまなプロフェッショナルの考え方・つくられ方を、その人の本棚、読書遍歴、本に対する考え方などからひもといていくインタビュー。今回のゲストは、経済アナリストかつ経営コンサルタントである中原圭介さんです。100万円を資産運用するならまずは自己投資にかけろ!とお話される中原さんの語るいちばんの自己投資は、広い分野の本を読むこと。そして古典を読むこと。読むべき本、そして「本質を見極める力」を得るための方法をご紹介いただきました。
世の中の「本質」を見極めるための勉強法とは

本質を学ぶには、ひとつの学問にこだわっていては、いけない

――  2014年11月に発売されました『未来予測の超プロが教える 本質を見極める勉強法』ですが、この作品は今までの本と少し毛色が違いますね。今までは経済アナリストという立場から経済に関する著作が多かったと思いますが、今回は「勉強法」というテーマで執筆されている。このことには、どのような想いがあったのでしょうか。

中原圭介(以下、中原) おっしゃるとおりで、ここ10年間ほど「経済」や「経営」に関する書籍や連載記事を書いてきたのですが、今回の切り口は初めての試みでした。ただ、今回の本のテーマである「本質を見極める」というものは、今までの「経済」に関する情報発信が基になっているのです。

―― どういうことでしょうか?

中原 2012年末のアベノミクスが始まって以降の私は、それまで以上のペースで経済についての本を出してきました。それは、このままでは日本経済がわるくなるという警鐘を鳴らすためです。そして、その危機感は、「経済の本質」をみていたら自然と抱くものだったのですね。

―― 経済の本質といいますと。

中原 例えば、アベノミクスが行ってきた施策 ― 量的緩和や公共工事の増加など ― は、10年も20年も昔の経済理論に基づいているんですね。また、アメリカが行った施策も参考にしていると思うのですが、アメリカと日本とは大きく前提条件が違う。同じことをやってはいけないはずなんです。 例えば基軸通貨をもつ国か否かという経済構造だけを見ても、大きく違います。前提条件が、時代によっても国によっても大きく異なっているにも関わらず、同じような理論から施策を行っている。これは、本質が見えておらず、狭い視野でしか見えていないと思うのです。

―― 本質を見るためには、どうすればいいのでしょうか?

中原 ひとつの学問にこだわっていてはいけない。いろいろな分野の知識を広くみることで、本質は見えてきます。経済学というひとつの学問の中、象牙の塔の中に籠っていては、物事の大きな流れは見えないのです。それが今回、執筆した本で訴えたいことであり、執筆の動機でした。

――  なるほど。中原さんは経済アナリストとして活動されていますが、経済学部出身ではありませんよね。

中原 はい。私は大学時代は、文学部で歴史学を専攻していました。だから歴史をベースにした考えをもっていますし、またその後、心理学や哲学、あるいは自然科学の分野も学んできました。これが、経済を見るのにものすごく役立っているのです。

――  幅広く学んでいるからこそ、他の人とは違う目線で経済が見えると。

中原 すべてを専門的にやるのはたいへんなので、広く浅くでいいんです。ただ幅広く学んでいると、経済だけを専門に学んでいる人よりも、経済の本質が見えてくるようになったんですね。

――  経済だけではなく、グローバル化とさけぶ風潮についても、「英語を学ぶよりも、物事を考える力を学べ」とおっしゃっていますよね。これも同じような考えからでしょうか。

中原 留学をしたがる人が多いと思うのですが、欧米に行って英語が堪能になっても、彼らの価値観を学んでいない人が多いのは困りものです。欧米の価値観とは何かというと、極端に言えば、「民主主義」と「基本的人権」。彼らがなぜこの2つにあれほどこだわるのか、ということを、留学していても日本人はほとんど知らないわけです。

――  そうなんですね。

中原 はい。これは留学をしなくても、歴史と宗教、特にキリスト教史を学べば分かるはずなんですね。この2つを学べば、欧米の人の価値観が分かるはずです。英語を学ぶよりも、この価値観を学ぶことの方が重要だと思います。英語を学べばグローバル化に対応できると思っているのは、大きなかん違いです。もちろん、グローバルを意識しないのであれば、学ぶものは別の学問でいいと思いますが。

――  他にはどんな学問を学ぶのがいいのでしょうか。

中原 自分が好きなものでいいと思います。好きなものでいいのですが、とにかく自分の専門分野を飛び出して、興味をもったものでいいから、いろいろな本を読むことです。最初は薄い本でいいので、とにかくたくさん読む。

―― これは、今回の本の2-3章でも語っていらっしゃいますね。

中原 本屋も喜びそうな話ですよね(笑)。またもうひとつの柱として、新聞を読みなさい、と言っています。新聞というのは、世の中を俯瞰でみられるだけではなくて、自分の興味のない記事も目に入ってきますよね。これがいいんです。

―― 思いもかけない見出しに惹かれることはありますからね。

中原 大学の先生と話す機会があったのですが、10-20年前の学生と比べて、いまの学生はとにかく「興味の範囲が狭い」と言っていました。物事の見方、視野が狭くなってしまっている。これは以前から指摘されていたと思いますが、インターネットの発達やスマートフォンの浸透によって、若者たちの視野が狭くなってしまっていると思います。

―― 情報が増えているがゆえに、自分の好きな情報だけで完結してしまいかねないですよね。

中原 そうですね。自分の好きな情報だけ追いかけてしまうのが、ネットの弱点だと思います。だから私は、ネットではなくて、いろいろな分野の本を読み、視野を広げることが、大事なのかなと思うのです。学問のための学問じゃなくて、自分の視野を広げるための学問、と考えてもらえればいいんです。

自然科学や物理学、経済学や経営学も、すべては「哲学」だった

―― はじめは興味のある分野から、とおっしゃると同時に、今回の著書では「古典」を読むことをおすすめしていますね。

中原 はい。まずは古典が大事だと思っていますし、勧めています。ただ、知識のない人が古典を読むのは、非常にたいへんですよね。その古典が書かれた時代背景を知らないと、理解するのは難しい。基本的な歴史の知識が求められるので、ハードルが少し高いんです。だから、今回の本では、読むべき古典を25冊(※1)紹介すると共に、挫折しないように、古典を解説した本のおすすめも25冊(※2)紹介しています。

※1、2 ページ右にある本棚に該当の25冊を紹介しています

―― いきなり古典に取り組まずに、入門書からでもいいと。

中原 マラソンを私はよくたとえに出しているのですが、練習を繰り返し、負荷がかかることで、最初はつらいけれどもタイムが伸びていく。脳も同じです。いろいろな人の思考の枠組みを知ることによって、考える力や考える持久力がついてくる。マラソン・陸上と違うところは、考える持久力だけではなく、考える瞬発力も同時に鍛えられることです。

―― なるほど。

中原 古典がまさにそうですし、本を読むことは、つらいからこそ鍛えられるんです。そう思っていますが、基礎知識がないと読み進めるのが難しいのも事実。だから、どうしても難しいという人はマンガから入るのでもいい。とにかく、入門からでいいので、概要をつかむところからはじめるのが大事です。 古典を学ぶといっても、暗記する必要なんかはないわけです。考え方を取り入れることが大切。歴史も同様で、ありきたりの流れを知るのではなく、その時代を生きた人がその世界をどういう「思考の枠組み」で捉えていたのかを学ぶのが大事なのです。

―― 古典は思考の枠組みをとらえるように読め、ということですが、今回の本は、主にどのような人を対象にして書いたのでしょうか。

中原 本を読むこと、たくさん読むことの重要性に気づいていない人がいると思うんです。そういう人に、気づいてほしい。読んでほしいと思っています。当然、すでに本をたくさん読む人にとっても、考え方の気づきが得られるのでは、と思っていますが。一番読んでほしい人は、その重要性に気づいていない人ですね。あとは、最近よく本屋に並んでいる「ビジネス書」を読む人です。

―― ビジネス書を読む人ですか。

中原 ビジネス書を否定するわけではありません。ただ、あれは著者の実践してきたことをエッセンスやノウハウにして書いていますよね。しかしその著者は、過去に積み上げてきた経験や実績があった上で、本の内容のようなことを実践しているわけです。だから、読者が本の内容を同じように試してみても、環境や状況が異なれば、うまくいくとは限らないですよね。読んで満足した気持ちになっている人も多いはずです。

―― ビジネス書を読む人こそ古典を読め、と。

中原 そうですね。古典のひとつの特徴は、その時代の知的エリートに向けて書いている、ということです。一般層に向けて書いているわけではない。それを理解するためには、自分の知的レベルも相当上がらなければいけない。古典と格闘していると自然と知的レベルがあがるのは、そういうわけです。

―― なるほど。

中原 ちなみに、古典といわれる書物の多くが書かれた近代以前の時代、学問というのは、哲学と神学と医学しか存在しなかったんですね。いまある自然科学や物理学、経済学や経営学も、もとはと言えば哲学から派生したものです。 古典力学の祖であるアイザック・ニュートンも、あとはレオナルド・ダ・ヴィンチなどもそうですね、元々は哲学者なんですよ。哲学者だから横断的に色々なことを研究していた。それぞれの学問が後に派生して、近代の学問に分かれていったわけです。だから、ニュートンやダ・ヴィンチが博学であらゆる分野に精通していてすごい!といいますが、彼らは哲学を追及していただけなんですね。

―― 物理学を研究しているという認識が、当時はなかったということですか。

中原 今回紹介している25冊もそうですが、古典と呼ばれる書物に哲学や思想の書物が多いのはそういう理由です。自然科学や物理学の古典がなぜないのだろう?と思っている人もいると思いますが、その理由もわかりますよね。

(次回へ続く)

今回のインタビュー中に登場した主な本、最新刊

本質を見極める勉強法 これから日本で起こること
Facebook top 1200 03 01 %281%29 %281%29
ビジネス・自己啓発の一覧 インタビューの一覧

コメント

コメントを書く・見る 0

プロフィール

中原圭介
中原圭介
経営コンサルタント/経済アナリスト/著者大学教授

なかはら・けいすけ/1970年生まれ、土浦市出身。慶応大学文学部卒。経営・金融のコンサルティング会社「アセットベストパートナーズ」の経営コンサルタント・経済アナリストとして活動。「総合科学研究機構」の特任研究員も兼ねる。企業・金融機関への助言・提案を行う傍ら、執筆・セミナーなどで経営教育・経済教育の普及に努めている。
経済や経営だけではなく、歴史や哲学、自然科学など、幅広い視点から多面的に経済や消費の動向を分析している。
◇最新著書
『未来予測の超プロが教える 本質を見極める勉強法』(サンマーク出版) 、『これから日本で起こること』(東洋経済新報社)

ライターについて

Writer 2
東海林真之

honciergeを運営する会社の代表。出版社に勤める両親のもとで生まれ、本に囲まれて育つ。 本屋をうろつき衝動買いをするのが趣味だが、書店員に限らず「人のおすすめを通じた本との出会い」は出会いの体験を豊かにするはず!という思いからhonciergeを開始。より多くの幸せな本との出会いを、みなが感じられるように、試行錯誤中。

プロフィール

中原圭介
経営コンサルタント/経済アナリスト/著者大学教授

なかはら・けいすけ/1970年生まれ、土浦市出身。慶応大学文学部卒。経営・金融のコンサルティング会社「アセットベストパートナーズ」の経営コンサルタント・経済アナリストとして活動。「総合科学研究機構」の特任研究員も兼ねる。企業・金融機関への助言・提案を行う傍ら、執筆・セミナーなどで経営教育・経済教育の普及に努めている。
経済や経営だけではなく、歴史や哲学、自然科学など、幅広い視点から多面的に経済や消費の動向を分析している。
◇最新著書
『未来予測の超プロが教える 本質を見極める勉強法』(サンマーク出版) 、『これから日本で起こること』(東洋経済新報社)

Facebook top 1200 04 %281%29

中原圭介 さんの本棚

経済アナリストの中原圭介が選ぶ、「古典に挫折しそうな時に読みたい入門書」

経済アナリストの中原圭介が選ぶ、「古典に挫折しそうな時に読みたい入門書」

中原 圭介
中原 圭介
経済アナリストの中原圭介が選ぶ、「まず読んでおきたい古典25冊」

経済アナリストの中原圭介が選ぶ、「まず読んでおきたい古典25冊」

中原 圭介
中原 圭介

注目記事

月間ランキング