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特集!あの人の本棚
42.

ロマン優光   (ミュージシャン)


寮生活での読書体験 (ロマン優光インタビュー)

ロマン優光

「つまらない本で得た知識が別のものと融合することで、捉え方が変わることもある」

―― 本の選び方にもこだわりはあったんですか?

ロマン 勘を磨いていくというか、無駄玉を打たないようにする。結局、おこづかいなんて限りがあるわけですよ。そうなってくると勘を磨くしかない。自分の趣味をハッキリさせていくというか、なんとなく引っかかるものを読んでいくと、「これは違うな」っていうのもあるじゃないですか。そういう体験を地道に重ねていく。そうすると「当たり」を引く確率が高くなって、例えば音楽だったらジャケ買いでハズレがなくなってくる。

―― 的中率が上がる(笑)。

ロマン つまらない本を大量に読まなきゃいけないですけどね(笑)。ただ、つまらない本って確かに面白くないんですけど、そこで得た知識や情報が別のものと融合することで、捉え方が変わってきたりするんです。量は質を補完するというか、そういう意味では大量に読んでおいて良かったなぁと思いますね。本も音楽もそうなんですけど、自分の好みと合いそうな評論家の人を何人か見つけたとしたら、自分とまったく合わない人を1人くらい押さえておくと、すごくいいと思います。趣味の合わない人がけなすものは、だいたい面白いものが多いので。作家さんでもそうです。とりあえず、読んでみないと。例えば、辻仁成さんの本とかは、そういう意味では読まなければいけないだろうし、実際読んでみてやっぱり嫌いだと安心するみたいな。

―― 読書を通して物事の見方が養われていったわけですね。

ロマン 映画監督のトリュフォーがヒッチコックにインタビューした『ヒッチコック映画術』って分厚い本があるんですけど、俺はヒッチコックの映画をすべて観る前に、その本を何度も読んでるんです。でも、そういう入り方も良かったかなと。無駄なことかもしれないけど、後々になって役に立つというか。そのときはわからなかったけど、後になってわかることもあったりして。あと、年齢を重ねてわかることもあるんです。「この本は、これに似ている」と言われて、そのときはピンとこなくても、大人になってから「そういうことだったのか」って気づくこともある。その逆もあったり。「これには似てないけど、あっちに似ている」とか。まあ、蓄積ですよね。

―― 当時からジャンルはまんべんなく読んでたんですか?

ロマン いや、とはいっても偏ってます。図書館にあるような日本文学全集みたいなのは一応読んでますけどね。昭和中期くらい、1970年代くらいまでの作家のものは大体読んでるんですけど、さっき言ったような読み方をしていると自分の好みもだんだんわかってくるので。あと、レアな作家のものを読むのも好きだったんですよ。「新青年」っていう探偵小説専門の雑誌があって、戦前に創刊されたものなんですけど、戦後になってアンソロジーが組まれるわけです。そこに掲載されている誰も知らないような作家を調べたりとか。探偵小説に関しては、当時自分が本を読んでいる頃に復刊が続いたこともあって、たくさん読みましたね。そんな感じで自分の中で「本」っていうものの体系はあるんですけど、その本流とは別にゴチャゴチャと周りにあるような感じですね。

(Vol.3に続く)

ロマン優光の「乱読家がお薦めする本 その2」

赤瀬川原平「反芸術アンパン」

反芸術アンパン

特に赤瀬川さんの作品が好きってわけではないんですけど、この本で描かれている作家たちの記録的なエピソードがすごく好きですね。作家というか、芸術家とは呼べないような無名の人たちの話なんですよ。赤瀬川さん自身は美術史の中に組み込まれている人なわけじゃないですか。でも、この本に出てくる人たちはそうじゃない。この時代だけ活躍している謎の作家とか、音楽で言うとパンク/ニューウェーブと似ていて。シングル1枚だけ出しているバンドとか、誰だかわからないけど作品だけ残ってる人みたいな、そういう感覚で好きなんですよね。もしくは今はぜんぜん違うことをやっている人が、若い頃にとんでもないバンドをやっていたみたいな。そんな感じで楽しめます。

毎日新聞社会部編「梅川昭美の30年 破滅」

破滅 ― 梅川昭美の三十年

梅川昭美って人は三菱銀行人質事件の犯人なんです。銀行に立てこもって女性の行員を裸にして人の盾にしたり、人質同士で耳を切らせたり、最後は射殺されて終わるんですが、その犯人の梅川の実録ものです。梅川は10代で殺人を犯してるんですけど、少年犯罪なので、少年法ですぐ外に出てきて暮らしている。微妙なチンピラとして生きているんですけど、「俺ももうすぐ30歳だから、でかいことをしなくてはならん」といって、事件を起こすわけです。梅川が人質に「お前らにソドムの市を見せてやる」と言う場面があるんですけど、それはプンクボイの『蠅の王、ソドムの市、その他全て』のタイトルにも繋がってます。「蠅の王」のイメージにもっとも近い人物が、この梅川です。それにしてもこの本、古本屋で100円で売ってると思わず買ってしまうので、家にすごい量あるんですよね……。

団鬼六「真剣師 小池重明」

真剣師 小池重明

『梅川昭美の30年 破滅』と同じくらい古本屋で毎回買ってしまうのが、この本です。SM小説で有名な団鬼六先生が書いてるんですけど、小池重明という実在の人物の話で、大きくなってから将棋の才能に気づいてしまった悲劇。将棋っていうのは奨励会に入って段を取っていってプロになれるんですけど、この人は大学生ぐらいになって将棋を始めて、そしたらプロにも勝ってしまうくらい強かった。ただ、人妻と駆け落ちしてしまったり、お店の金に手をつけてバックれたり、賭け将棋をしていたり、二日酔いで将棋大会に現れたりとか、すごくデタラメな奴だったんですよ。実際、「こんな奴は将棋界では受け入れられない!」と言われて、プロより強いのにもかかわらず、プロになれなかったんです。特例としてプロにしようという話もあったみたいなんですけど、こんなデタラメな奴を将棋界に入れるわけにはいかないと。恩人の金に手をつけたりもするんですけど、本人はなんとなく憎めない人で、愛されるタイプなんですよ。なんとなく許しちゃうみたいな。最後は非業の死を遂げるわけですけど、出てくる場所を間違った人間の悲劇というか、喜劇ですよね。この人自体が、俺の好きな世界観の中に生きてしまったような人です。

立川談志「談志楽屋噺」

談志 楽屋噺

談志がいろんな芸人について語る本。評論集であり、思い出エピソードをまとめた内容なんですけど、デタラメな人たちがたくさん出てきて。優しいのに突き放したような視線がいい感じですね。「この人はこういうところがダメだ」ってハッキリ言っちゃうし。でも、ひどく突き放してるけど、優しい部分が表れていて、談志の人柄がよく出てる作品だと思います。こういう本は若い頃の話がいいですよね。本人がまだ何者でもなかったような頃の。

ビートたけし「漫才病棟」

漫才病棟

ビートたけしの本でいちばん好きなのがこれなんです。たけしさんの若い頃の話。ツービート結成時の話で、うだつの上がらない時だったりするんです。その時期に出てくる周りの人たちや、たけしさんの苦痛とか、そういうのを大きく優しく見ているような視点があるんですよね。そういう部分は、談志の本と似ているかもです。

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プロフィール

ロマン優光
ロマン優光
ミュージシャン

1972年高知県生まれ。早稲田大学第一文学部中退。ニューウェイヴ・バンド「ロマンポルシェ。」のディレイ担当。ソロのパンク・ユニット「プンクボイ」名義でも活動を行う。プンクボイの活動20周年を記念して、幻の非売品セカンド・アルバム『蠅の王、ソドムの市、その他全て』(Less Than TV)がボーナス・トラックを追加して8月に発売された。著書に『音楽家残酷物語』(ひよこ書房刊)、『日本人の99.9%はバカ』(コアマガジン刊)。https://twitter.com/punkuboizz?lang=ja

ライターについて

Writer 5
ホンシェルジュ編集部・芸術/芸能班

音楽、映画、アイドル、その他の芸術/芸能に詳しいライターによる班。もちろん皆が本好きだが、そのレベルや守備範囲はさまざま。日本のエンタテイメントのトップランナーを通じて、本/読書の楽しみへの入り口をつくりたい。あるいは本/読書という切り口を通じて、トップランナーの新たな一面を引きだしたい。

プロフィール

ロマン優光
ミュージシャン

1972年高知県生まれ。早稲田大学第一文学部中退。ニューウェイヴ・バンド「ロマンポルシェ。」のディレイ担当。ソロのパンク・ユニット「プンクボイ」名義でも活動を行う。プンクボイの活動20周年を記念して、幻の非売品セカンド・アルバム『蠅の王、ソドムの市、その他全て』(Less Than TV)がボーナス・トラックを追加して8月に発売された。著書に『音楽家残酷物語』(ひよこ書房刊)、『日本人の99.9%はバカ』(コアマガジン刊)。https://twitter.com/punkuboizz?lang=ja

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