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特集!あの人の本棚
42.

ロマン優光   (ミュージシャン)


寮生活での読書体験 (ロマン優光インタビュー)

ロマン優光

「本をたくさん読んだ方がいいよって思うのは、結局楽しいからです」

―― ロマンさん、自分で小説を執筆したりとかは?

ロマン まあ、書きたいとは思ってますけどね。なかなか不精なもので。

―― でも、文章を書くことって年齢関係なく続けられるのがいいですよね。おじいさんになってもできるわけですし。

ロマン そうですね。音楽も文章を書く行為もずっと続けていきたいと思ってます。ただ、音楽に関しても今は新曲をぼちぼち作ろうかなっていうくらいで、無理して頑張らないタイプなんです。生理的に頑張ることが嫌い。少し違う話なんですが、これはある意味、悲しい現実なんですけど、漫画にも小説にも言えることで、すごい努力家の人よりも、才能ある人が鼻クソほじりながら書いたものの方が面白かったりする。この現実には勝てないんですよ。才能もあって、努力ができる人っていうのがいちばんすごいんですけど、必ずしも努力したからいいものができるわけではない。そういうことを考えると無理して頑張る気がなくなるんですよね。もちろん、才能あるわけじゃないんだから頑張って努力した方がいいんですけど、自分がノッてるときっていうのは勝手に頑張るものなので(笑)。

―― そうかもしれないですね(笑)。

ロマン たくさん本を読んだり、音楽を聴いたりするのは、努力ではない。自分の趣味を楽しむためのものであって、娯楽だから。自分はアイドルが好きで、現場にもよく行くんですけど、オタクの中には使命感で行きだす人も多いんです。でも、それはやっぱり間違っていると思っていて、最終的には娯楽でしかない。どんなに自分が思いつめていても、結局は趣味でしかないってことを認識しておかないと、ダメになるんじゃないかなって。例えば映画だったら、お腹が空いたらゴハンを食べるってことと同じくらい当たり前のように映画を観る人と、映画をたくさん観ないと立派なシネフィルになれない!と思ってる人ではすごく違う。シネフィルになるために映画を観るんだったら、そんな努力はやめた方がいいと思う。娯楽の分野に関して言えば、勝手にやるものなんですよ。テストがあるわけじゃないし、落第するわけでもないんだから、自分の楽しい範囲でやる。で、その範囲を飛び越えた人が本当にすごい人になる。そこは勘違いしないようにした方がいいなって思います。

―― なるほど。

ロマン だから、本をたくさん読んだ方がいいよって思うのは、結局楽しいからです。音楽をたくさん聴くのは楽しいからで、そのときにつまらないなと思っても後々になって楽しくなるんですよね。今はネットで音源がすぐ聴けちゃうから、意外にみんな掘らないんですよ。本でもなんでもいいから掘った方が楽しいというか、見つけたものが面白くなくても、それは後になって駄作を発見する能力に長けてくるとか、必ず自分の楽しいことに役立ってくるから、それは努力ではなくて娯楽だっていう風に思いますね。

(終わり)

ロマン優光の「乱読家がお薦めする本 その3」

本田靖春「疵」

疵 ― 花形敬とその時代

花形敬ってヤクザの話。マチズモは好きじゃないんですけど、ヤクザの伝記は好きなんです。生き物としての生々しさ、見栄の張り方、やせ我慢の美学。そういうのが好きで。何が面白いかっていうと、彼らが極限状態に置かれているところです。この本も結局は異常者の話で、建前を本音だと信じてしまったばっかりに死んでしまった人とか、そういう話はやっぱり面白い。

遠藤 允「静波の家」

静波の家 ― ある連続殺人事件の記録

道でぶつかった女の子につきまとって、その一家を皆殺しにした人の話。藤間静波っていう男なんですけど、死刑判決が出たときにVサインしちゃうような奴なんですよ。本人もネグレクトされて育ってきて、お母さんもちょっとおかしな人。こういう殺人者の実録ものっていうのは、読み物として面白いです。生の感情が出やすいというか、人間の歪みがにじみ出てる。こういうのを読んでいると、どうやっても矯正できない人間はいるってことを考えますね。殺人者で「また殺してしまうから、死刑にしてください」って言う人がいるじゃないですか。その人たちはわかってるんですよ。もう引き返せないって。日本だと山路幸雄もそうですよね。お母さんを殺して刑務所入って、その後出所して何の関係もない姉妹を刺し殺してる。医者もこいつはヤバイから刑務所から出さないほうがいいって言ってたのに、少年法で出てこれた。そしたら殺人が起こってしまったわけで。

四方田犬彦「先生とわたし」

先生とわたし

かつては澁澤龍彦や種村季弘らと並び称された、由良君美先生っていう英文学者がいて。外国の幻想文学の大家みたいな人だったんですけど、ほかの2人に比べて由良先生の評価はすごく低いんです。紳士な人なんですけど、アル中で身を滅ぼしていって、そして信用を失う。作者の四方田さんにとって実在の先生だったわけですけど、恩師との悲しい別れを描いています。師匠と弟子の関係がすごく生々しく書かれてるんですよね。まあ、由良先生には由良先生側の真実があると思うんですけど、確かにこれだったら周りの人は離れていくなってことが書かれてる。

種村季弘「偽書作家列伝」

ハレスはまた来る ― 偽書作家列伝

澁澤龍彦、種村季弘、由良君美の中だと俺は種村先生がすごく好きで。種村先生が書くのは、個人で歴史を勝手に書き換える人たちの話なんですよね。ペテン師というか、「私は王様です」と言って現れる人とか、「世紀の発見をした」と言って現れる人とか、結婚詐欺みたいなのとは違う、古典的で大きなスケールの詐欺師たち。種村先生は、そういう人たちに一貫して興味があったと思うんです。オカルトとかもそうですよね。あれも世界を勝手に書き換える行為なので。例えば、日本の歴史の中では偽書っていっぱいあるじゃないですか。ラブクラフト戦前は日本にピラミッドがあったとか、日本人とユダヤ人は同じルーツで世界を支配する権限があるとか、陰謀論ではないオカルト論がたくさんあるわけですよ。そういった物語そのものを作ってしまう人に自分も興味がある。本気で世界を書き換えたいと思ってる人について触れたノンフィクションとか好きですね。

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プロフィール

ロマン優光
ロマン優光
ミュージシャン

1972年高知県生まれ。早稲田大学第一文学部中退。ニューウェイヴ・バンド「ロマンポルシェ。」のディレイ担当。ソロのパンク・ユニット「プンクボイ」名義でも活動を行う。プンクボイの活動20周年を記念して、幻の非売品セカンド・アルバム『蠅の王、ソドムの市、その他全て』(Less Than TV)がボーナス・トラックを追加して8月に発売された。著書に『音楽家残酷物語』(ひよこ書房刊)、『日本人の99.9%はバカ』(コアマガジン刊)。https://twitter.com/punkuboizz?lang=ja

ライターについて

Writer 5
ホンシェルジュ編集部・芸術/芸能班

音楽、映画、アイドル、その他の芸術/芸能に詳しいライターによる班。もちろん皆が本好きだが、そのレベルや守備範囲はさまざま。日本のエンタテイメントのトップランナーを通じて、本/読書の楽しみへの入り口をつくりたい。あるいは本/読書という切り口を通じて、トップランナーの新たな一面を引きだしたい。

プロフィール

ロマン優光
ミュージシャン

1972年高知県生まれ。早稲田大学第一文学部中退。ニューウェイヴ・バンド「ロマンポルシェ。」のディレイ担当。ソロのパンク・ユニット「プンクボイ」名義でも活動を行う。プンクボイの活動20周年を記念して、幻の非売品セカンド・アルバム『蠅の王、ソドムの市、その他全て』(Less Than TV)がボーナス・トラックを追加して8月に発売された。著書に『音楽家残酷物語』(ひよこ書房刊)、『日本人の99.9%はバカ』(コアマガジン刊)。https://twitter.com/punkuboizz?lang=ja

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