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特集!あの人の本棚
05.

出口治明   (ライフネット生命保険株式会社 代表取締役会長兼CEO)


1冊を徹底的に読み込み、著者の思考のプロセスを追体験する。そうすることでしか、思考力は高まらない

出口治明
さまざまなプロフェッショナルの考え方・つくられ方を、その人の本棚、読書遍歴、本に対する考え方などからひもといていくインタビュー。第3回のゲストは、ライフネット生命保険株式会社 代表取締役会長兼CEOの出口治明さんです。最も本を読んでいた頃は毎週10冊以上の書籍を読破し、多忙を極める現在今も週に4-5冊は読んでいるという出口さんは、いったいどのようにして「おもしろい本を見極め」ているのでしょうか。稀代の読書家の本に対する視点をお伺いしました。
1冊を徹底的に読み込み、著者の思考のプロセスを追体験する。そうすることでしか、思考力は高まらない

本がおもしろいかどうかは、頭から5ページを読めば分かる

――世の中にはたくさんの本があり、今でも次から次へと新刊が発行されます。出口さんはどのようにして「おもしろい本」「良書」を見極めていらっしゃるのですか?

出口治明会長兼CEO(以下、敬称略にて):以前は、毎週のように本屋で2-3時間ぶらぶらして、本を選んでいました。おもしろそうな本があれば全部買う、と。選び方は、まず頭から5ページほど読む。5ページ読めば、おもしろいかどうかが分かります。all or nothingしかないです。5ページ読んでおもしろければ、全部買っていました。

――本屋を徹底的に使うのですね。私も本屋は好きですが、2-3時間はすごい(笑)。本屋で読む本を選ぶ際に、テーマなどは決めて探すのでしょうか。

出口:テーマは設定しません。HONZ(※1)を見てもらえばわかるように、歴史、小説、哲学、ビジネスもあれば生物学もあるし、宇宙論もある。ジャンルは問わず、どんな本でも読みます。判断基準は、おもしろいかどうかだけ。それがすべてです。他にはありません。

※1 読むに値する「おすすめ本」のみを紹介している書評サイト。出口さんも客員として本の紹介をしています

――頭から5ページを読むだけで、おもしろいかどうかが分かるものなのですか?

出口:大体分かります。本を書く人は「読んでほしい」と思って書くはずです。そうすると、最初に力を入れるはず。あたまの部分がおもしろくなければ、その後もおもしろいはずがありません。合コンでも最初からがんばるでしょ。

――(笑)。たしかに。

出口:それと同じです。ただ、この本の探し方は、時間がないとできません。ライフネット生命をつくってからは、ベンチャー企業の経営はとても忙しいので、本屋へ行く時間を捻出できなくなってしまいました。ぼくは今、自分の人生の中で一番長く会社で過しています。それほど時間がない。そこで活用しているのが、新聞の書評欄です。

――新聞の書評欄。どんな新聞を読まれているのですか?

出口:私は前職の若いころから、発行部数の多い順に読売・朝日・日経の3紙をずっと購読しています。新聞の書評欄は実にハズレがない。それは有名な先生が署名入りで書いているからです。極めて役立つ情報源になっていますので、これを読んでおもしろいものがあれば、その場で図書館に注文します。図書館で何か月も待ってしまうようであれば、買います。書評で選んだものが最近読む本の7-8割を占めていますね。

――残りの2-3割は。

出口:友達のすすめや、贈呈していただいた本や、図書館に本をとりに行った際に目にしたものなどですね。これも、5ページ読んでおもしろいとおもったものだけを読みます。

1冊を徹底的に読み込み、著者の思考のプロセスを追体験することで、思考力は高まる

――そのように選ばれた本は、どのように読み進めるのでしょうか。読み方に特徴はありますか?

出口:1冊を徹底的に読み込み、読みつぶします。丁寧に消化して、吸収しきってしまうまで読むのです。そのため、読み返すことはほとんどありません。読書とは、著者とのコミュニケーションです。じっくり読んで、著者の思考のプロセスを追体験しない限り、思考力は高まりません。

――すると、読んだ本はどうするのですか?ご自宅の書棚が気になります。

出口:むかしは果てしなく本を持っていたのですが、社宅では入りきらない。家じゅうが本で埋まって、何回もつぶれそうになってしまったので、考え直しました。今では基本理念を「所有」から「賃貸」に変えたので、蔵書はほとんどありません。とはいえ、何年かたって、もう一度読んでみたいと思う本はありますが。

――その時には、その本はまた買えばいい、または借りればいいということですね。

出口:そのとおりです。

――会社のこの本棚に並べてある本は、どのような本なのですか?

出口:基本的には、最近読んでおもしろいと思った本です。一部、取材のために必要で家からもってきた「昔から読んでいる本」や「座右の本」が混じっていますが。人からいただいたものや、最近読んだものなど、たまたまあるもののうち、おもしろいものを並べています。厳選しているわけではありません。

――この並んでいる本(最近読んでおもしろいと思った本)の中で、特に印象に残っているものはありますか?

出口:今、書棚にある本の中で読んでおもしろいと思ったのは、『デモクラシーの生と死』。一言でいえば、デモクラシーの世界史です。それと『スキタイの騎士』。あと、小さい本だけど、『風の王国』もおもしろかった。

――『デモクラシーの生と死』と『スキタイの騎士』は、HONZにも書評を書かれていましたね。『風の王国』は、どんな物語なのですか?帯に「大河歴史ロマン」と書いてありますが。

出口:チベットに嫁ぐ王女様の物語なんだけど、よかったら持っていく?郵便で返送してください。読みやすいしすごいおもしろい。

――いいんですか(笑)。ありがとうございます! あと、マンガが1冊だけ棚にあって気になっているのですが、マンガも読まれるのですか。これは、マンガHONZでも紹介されていた歴史マンガ『風雲児たち』ですね。

出口:これ(『風雲児たち』第2巻)は、なんで置いてあるかといえば、歴史認識に関する質問をされたときに便利だからなんだよね。これを読めば一瞬で分かってしまう。説明に代えられるから、歴史認識を聞かれたら「これを読め」と言っている(笑)。そうやって使うために置いているのです。

――「ふせん」が一か所、貼ってありますね(笑)。

出口:そう。ここから8ページ、読めと言っているんです(202ページから209ページまで)。「中国や韓国は、なぜ70年も前に済んだ太平洋戦争の話をいつまで蒸し返してくるのでしょう」と尋ねてくる人がいるのだけれど、この8ページを読むだけでその答えが分かる。毛利藩はこのようにしてアイデンティティをキープしていたから、今も総理大臣を出しているのだし、それと同じだということです(※2)。人間という動物は、自分が経験していてもしていなくても過去のことをそう簡単には忘れない動物なんですよ。

※2 山口県は安倍晋三さんを含め、歴代8人(全国最多)の総理大臣をだしている県です

――この本は、ギャグマンガのかたちをした「歴史書」ですからね。

出口:この8ページを読むだけで、少し知恵のある人であれば、すぐに分かりますよ。あぁなるほど、人間というものはたしかにこんなもんだ、とね。人間が歴史に対してどういう認識をもつかというのは、このマンガの8ページでほぼすべてが言い尽くされていると思います。広島に大きい城をつくって150万石もあったオレたちが、なんで萩の田舎に流されなければいけないのか、なんでこんな理不尽が罷り通るのか許せん、というのが、今の山口県のあり方につながっている。薩摩藩にも同じような話があるのですが、この部分が一番わかりやすいから、この巻を置いているんです。


(次回は、出口さんおすすめの本を次々に紹介します。続きます...)

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プロフィール

出口治明
出口治明
ライフネット生命保険株式会社 代表取締役会長兼CEO

でぐち・はるあき/1948年三重県生まれ。京都大学を卒業後、1972年に日本生命保険相互会社に入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当するとともに、生命保険協会の初代財務企画専門委員長として、金融制度改革・保険業法の改正に従事する。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て、同社を退職。2006年に生命保険準備会社を設立し、代表取締役社長に就任。2008年の生命保険業免許取得に伴い、ライフネット生命保険株式会社を開業。2013年6月より現職。

主な著書に、「生命保険入門 新版」(岩波書店)、「直球勝負の会社」(ダイヤモンド社)、「仕事に効く教養としての『世界史』」(祥伝社)、「ビジネスに効く最強の『読書』」(日経BP社)「早く正しく決める技術」(日本実業出版社)、「部下をもったら必ず読む『任せ方』の教科書」(角川書店)、「『思考軸』をつくれ」(英治出版)、「百年たっても後悔しない仕事のやり方」(ダイヤモンド社)など。

ライターについて

Writer 2
東海林真之

honciergeを運営する会社の代表。出版社に勤める両親のもとで生まれ、本に囲まれて育つ。 本屋をうろつき衝動買いをするのが趣味だが、書店員に限らず「人のおすすめを通じた本との出会い」は出会いの体験を豊かにするはず!という思いからhonciergeを開始。より多くの幸せな本との出会いを、みなが感じられるように、試行錯誤中。

プロフィール

出口治明
ライフネット生命保険株式会社 代表取締役会長兼CEO

でぐち・はるあき/1948年三重県生まれ。京都大学を卒業後、1972年に日本生命保険相互会社に入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当するとともに、生命保険協会の初代財務企画専門委員長として、金融制度改革・保険業法の改正に従事する。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て、同社を退職。2006年に生命保険準備会社を設立し、代表取締役社長に就任。2008年の生命保険業免許取得に伴い、ライフネット生命保険株式会社を開業。2013年6月より現職。

主な著書に、「生命保険入門 新版」(岩波書店)、「直球勝負の会社」(ダイヤモンド社)、「仕事に効く教養としての『世界史』」(祥伝社)、「ビジネスに効く最強の『読書』」(日経BP社)「早く正しく決める技術」(日本実業出版社)、「部下をもったら必ず読む『任せ方』の教科書」(角川書店)、「『思考軸』をつくれ」(英治出版)、「百年たっても後悔しない仕事のやり方」(ダイヤモンド社)など。

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