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特集!あの人の本棚
80.

秋葉哲也   (株式会社アシュラスコープインスタレーション 代表取締役社長)


プロジェクション・マッピングの原点 (秋葉哲也インタビュー)

秋葉哲也
さまざまなプロフェッショナルの考え方・つくられ方を、その人の読書遍歴や本に対する考え方などからひもといていくインタビュー。今回は昨年、東京都ベンチャー技術大賞を受賞した、株式会社アシュラスコープインスタレーション代表の秋葉哲也さんのインタビューをお届けします。プロジェクション・マッピングを仕事にする人の本顔とは。
プロジェクション・マッピングの原点 (秋葉哲也インタビュー)

理想と現実とその狭間、傍にいた中原中也

―― まずは、どのような事業をされているのか聞きたいのですが。

秋葉哲也(以下、秋葉) 最近だとプロジェクション・マッピング(以下、PM)と言われる手法を使って、空間デザイン(映像で空間を演出)をしています。“メディアリウム”という呼び方をしています。

―― PMとの明確な区別をしたいところで“メディアリウム”なのでしょうか。

秋葉 そうですね。映像というよりも空間がメインになったもので、大きな違いは機材の設置の方法とか、スクリーン側のデザイン、設計をするところです。コンクリートに打ったらどう見えるとか、木目の上に打ったらどう見えるとか、素材によって同じ映像でも違います。あとは、スケール感とか、その場所の意味ですね。例えば、空間の中でPMをする場合、人がどっちから歩いてきたらどう見えるかという導線、あるいはその前後に何があるのか。トイレから出た後にそれ(PM)があるのと、劇場から出た後にそれ(PM)があるのでは、まったく意味が違ってきますよね。そういう空間の意味までを考えて、PMで何をやるか。その点で一般的に言われているPMとの違いを明確にしています。

―― さて、そんなPMで空間演出する人のルーツとなる一冊には、どんな本が選ばれたのか気になるところですが…。

秋葉 その前に、この子を紹介させてください!

―― おもむろに何ですか?

秋葉 秋葉:師匠です!

(一同大笑)

秋葉 この子は、チェコの国民的アニメ「クルテク」ですね。日本でいうところの「ドラえもん」でしょうか。その中で『もぐらとじどうしゃ』という、車を直すもぐらの絵本があるのですが、その本が今の仕事に繋がる、原体験としての一冊です。子供ごころに響いたのは大義名分ではなくて、好きなものは好き、無いなら作ろうという純度の高い私利私欲でした。主人公のもぐら(クルテク)は車を直したい一心ですが、決してクリエイティブではありません。その代わり、まわりの鳥をせっせと働かせ、足りないものは落ちているもので補い、また仲間を集めてはお願いしてひとつの車を仕上げる。もはや、仕事におけるディレクションの域ですね。他人に任せるという。

―― 知恵を働かせるあたり、一休さんを連想させますね。

秋葉 そうそう。クリエイティブの原体験というと、「ものづくり好きでした~」っていう人が多いのですが、純粋に自分がいいと思ったものを手に入れることが目的で、過程がクリエイティブであろうとなかろうと関係ない。その考え方は結構大事だなって、子供ながらに感じたところですね。壁にぶつかったら、ぶち破るのではなくて、飛び越える方法を見つける!欲求に対する純粋さが非常にわかりやすく、子供はそれでいいなと思える本ですね。

―― 今の仕事に繋がる考え方でもあるし、子供時代に無意識で感じていたからこそおもしろいですね。この少年のそれからが気になるところですが、自我に目覚めた頃に出会った本、というか人物が次に出てくる…。

秋葉 中原中也(以下、中也)です。中学の国語の教科書に『月夜の浜辺』という詩が載っていたんですよ。

―― 詩ですかー。既に普通ではない感が否めませんが、なんで詩だったのでしょう。

秋葉 それがですね、かっこつけたミュージシャンがいう「言葉でいえる位だったら音楽なんて作らない!」みたいなのあるじゃないですか(笑)。当時、この詩を読んだときも、この感情を表現するのはこの詩でしかないと思ったんですよ。この詩の感想を書けと言われても、書けないと。何ていうのか、中学1、2年で(中也の)気持ちなんてわかるはずもないんだけど、すごく共感できる部分がありました。それからランボウ『地獄の季節』を読んだりして。中学は病んでましたね(笑)。

―― この時期特有の中ニ病ですか(笑)。

秋葉 中ニ病もなにも、小学校3、4年生くらいからそんな感じですけど。

(一同笑) 

秋葉 中也の作品は、その後も中・高・大学生と何回も読んだり、中也の人生を顧みたりしてますが、知ってのとおりウジウジして、人付き合いが下手だったり駄目な男なわけですよ。例えば、中也の好きな彼女が、自分の友達とできちゃって部屋を出ていくのですが、彼はその荷づくりを手伝ったりするんです。そういうところに、うわぁ…、似てる…、その感覚わかる…って。そういう駄目な部分にすごく共感してしまって、一緒じゃんって!それで中也がすごく好きになりました。

―― ブルトンやカフカ、ダリの本も選ばれているので、すっかりダダやシュルリアリスムの影響があってからの中原中也だと思いましたが、順番的には中也が先なんですね。

秋葉 そうそう。中学、高校は進学校ということもあって、絵を描いたりするようなこともなかったので、シュルレアリスムを意識したのは高校を卒業したくらいからになります。中也の後は、高校の国語で、安倍公房の『飛ぶ男』にすごい!ってなりました。ただ、中也はちょっと帽子を被り、クリっとした目の美少年のイケメンで若くして亡くなったのに対し、安倍公房はおじさんになってからの写真で…。なので、安倍公房にはいかなかったですね(笑)。投影したいのは中也の方だった。

―― そこはビジュアル重視なのですね(笑)。

秋葉 でも安倍公房の作品はすごく好きで、その中でも遺作と呼ばれる『カンガルー・ノート』にはやられましたね。そう表現するのかと。意味のわからない世界観はこれ以前の作品までたくさんみてきましたが、『カンガルー・ノート』に関していえば、もはやシュールを通り越してコントで。脛からかいわれ大根が生えてくるって。終いにはそれ食べて、しょっぱいみたいなことを言っているわけです。

―― そうですね。病床で執筆して、死に近づいている時期に、脛からかいわれ大根の発想は…。

秋葉 ギリギリのところで、攻めてるな~って。

―― いろいろと攻めてる(笑)。

秋葉 あと安倍公房と同じように、カフカも。代表作『変身』も社会との関わり方など中也的でおもしろいですが、短編の『断食芸人』の方ですね。これもみようによっては、ものすごくコメディだなって思います。誰にも見られてなく、誰にも求められていないのに、食べないってことにプライドを持って、何かを成し遂げるための断食ではなく、ただ食べないってことにこだわる(笑)。シュルリアリスムにも繋がりますが、意外とそこに本質があるような気がします。

―― 仕事柄、シュルリアリスムも視覚的な部分で影響を受けているのかと思いきや、思想面からの影響が強い。

秋葉 ビジュアルではないですね。シュルリアリスムの作品は、『変身』など映像化されているものもいくつかありますが、中也の『月夜の浜辺』でこれはこれでしかないといったように、ビジュアル化できないものとして自分にはあって、考え方からの影響が強いです。

(後編に続く)

プロジェクション・マッピングの原点 vol.1

もぐらとじどうしゃ

もぐらとじどうしゃ(世界傑作絵本シリーズ チェコの絵本)

中原中也全詩集

中原中也全詩集

カンガルー・ノート

カンガルー・ノート(安部公房)<

変身・断食芸人

変身・断食芸人(カフカ)
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プロフィール

秋葉哲也
秋葉哲也
株式会社アシュラスコープインスタレーション 代表取締役社長

あきば・てつや/1973年生まれ。学生時代に映像空間演出法をベースにプロジェクションマッピングを着想。2002年より空間デザインプロダクションとして「アシュラスコープ」を運営。2011年にプロジェクションマッピングを使用した空間デザインの企画制作を行う「株式会社アシュラスコープインスタレーション」を設立。店舗内装や美術館、コンサート、イベント、MV、舞台での演出、アーティストとのコラボレーション作品など数多くの案件を手がける。

幼い頃の無垢な想像力…もう一度「見えない存在を信じていた頃」の感覚を呼び覚ましてくれる手法として、観る者の想像力を問うプロジェクションマッピングを用いて、デザイン、アートの領域の中でグラフィックと映像の融合に力を注ぎ、表現の幅を広げている。

ライターについて

Writer 8
パイーノ

音楽・映画・スポーツ・笑いなどのドラマが栄養源。ライターをする傍ら、代官山の書店で働く。
「ホンシェルジュ」「READYFOR」他、TAMA映画祭企画「君が清志郎を知ってる」

プロフィール

秋葉哲也
株式会社アシュラスコープインスタレーション 代表取締役社長

あきば・てつや/1973年生まれ。学生時代に映像空間演出法をベースにプロジェクションマッピングを着想。2002年より空間デザインプロダクションとして「アシュラスコープ」を運営。2011年にプロジェクションマッピングを使用した空間デザインの企画制作を行う「株式会社アシュラスコープインスタレーション」を設立。店舗内装や美術館、コンサート、イベント、MV、舞台での演出、アーティストとのコラボレーション作品など数多くの案件を手がける。

幼い頃の無垢な想像力…もう一度「見えない存在を信じていた頃」の感覚を呼び覚ましてくれる手法として、観る者の想像力を問うプロジェクションマッピングを用いて、デザイン、アートの領域の中でグラフィックと映像の融合に力を注ぎ、表現の幅を広げている。

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