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特集!あの人の本棚
85.

WEAVER   (ピアノバンド)


6年目で見つけた「いま伝えたいこと」 (WEAVERインタビュー)

WEAVER
さまざまなプロフェッショナルの考え方・作られ方を、その人の本棚、読書遍歴、本に対する考え方などから紐解いていくインタビュー。今回は約3年ぶりのアルバム『Night Rainbow』をリリースしたピアノバンド、WEAVER(ウィーバー)から河邉 徹さん、杉本雄治さん、奥野翔太さんに登場して頂きました。
6年目で見つけた「いま伝えたいこと」 (WEAVERインタビュー)

2015年は全国10カ所のホールツアーを行い、今年も4月から全国9カ所でホールツアーを開催することが決まっている3人組のピアノバンド、WEAVER(ウィーバー)。「WEAVERの楽曲は情景が大事なんです。それを考えると、ホールでのライブというのがベストな選択。音楽の響きとともに、お客さんと一緒に景色を作り上げていきたい」と話すのは杉本雄治(Piano/Vo)。今回、約3年ぶりのオリジナルアルバム『Night Rainbow』を完成させた彼らに、その世界観とリンクする本をセレクトしてもらった。杉本の他、河邉 徹(Dr/Cho)、奥野翔太(Ba/Cho)の3人に話を聞いた。

WEAVER・河邉 徹がセレクトした『Night Rainbow』とリンクする本

七夜物語

七夜物語(川上弘美)

河邉徹(以下、河邉) これは児童文学というか、読書感想文で取り上げたりしたら先生が大喜びしそうなタイプの本なんですけど、誰もが幼い頃、クローゼットの向こう側に階段があるとか、どこか知らない世界に行けることを願っていたりしていたと思うんですけど、僕自身も小学校の頃は友達と「冒険」と称してファンタジーの世界に入り込んだように、近所の公園を空想の街に見立てて、その中でモンスターが現れたり……みたいな遊びをしてたんです。

この本も日常からどこか違う世界へ行くという点で、すごくインスピレーションを受けるところがあって。『七夜物語』という特別な本が図書館にあって、読んでいる間はその話を覚えていられるんだけど、本を閉じるとだんだん忘れていってしまう。でも、そんな本を手にした小学生の男の子と女の子の2人が、本の中に引きずり込まれていく。その世界は「夜」が七つあるんですよ。2人は小学生なので未熟なところもあるんですけど、その世界の中で少しずつ成長していく……というストーリーなんです。

僕自身も昔からこういうファンタジーが好きだし、自分が書く歌詞の世界にもそういうところがあるのかなと思っているので、こういうテイストは大好きですね。児童文学なので文章のタッチも柔らかいですし、読みやすいです。大人が読んでも面白いと思います。

ウォルト・ディズニーの言葉

ウォルト・ディズニーの言葉 ~今、我々は夢がかなえられる世界に生きている~

河邉 名言集は普段あまり読まないんですけど、僕はディズニーが大好きなので、そこを切り口に読み始めた本です。「物語や本は、出会うタイミングが大切だ」みたいなウォルト・ディズニーの言葉の数々が、英語と日本語の両方で書かれているんですけど、WEAVERの3人は2年前にロンドンで約半年間暮らしていたので、英語学習という部分でもおすすめです。もともとの言葉もきれいですし、勇気を与えてくれるものばかりなので。歌詞を書く時は、こういう短く切り取った言葉が大切なので、すごく参考になります。

これからの「正義」の話をしよう

これからの「正義」の話をしよう(マイケル サンデル)

河邉 大学が哲学専攻で、今も哲学について勉強したいなって気持ちがあるんですけど、大学時代からこういう本をたくさん読んでました。で、この本は内容的に難解なものではなくて、哲学に親しみがない人でも楽しめるし、読みやすいと思います。哲学というと抽象的なものというイメージがあるかもしれないけど、実は具体的で現代的なんです。100~200年前に確立された思想が、今の僕らの生活の中で無意識のうちに結びついてる。例えば、功利主義の話だって現代の価値観の中に根付いていたりする。そういうことを知ることができるのは、すごく面白いですね。ファンタジーが好きな自分、こういうロジカルな本が好きな自分。客観的に見ても自分には二面性があるなと思いますし、そこを武器にしていければいいなっていうのはあります。

WEAVER・杉本雄治がセレクトした『Night Rainbow』とリンクする本

舟を編む

舟を編む(三浦しをん)

杉本雄治(以下、杉本) 歌詞はドラムの河邉がメインで作ってるんですけど、去年ぐらいからヴォーカリストとして自分も何かを伝えていきたい気持ちが、どんどん出てきたんです。そのためには言葉をもっと知らなくちゃいけないと思っていた時、出会った本の一つが『舟を編む』でした。人生の中で大変だったり、苦しかったりした時、これまでは音楽そのものに救われることが多くて、言葉から救われることってそんなになかったんですね。

でも、この本を読んで、言葉というものを理解することで、人間同士がもっと歩み寄れるんじゃないかっていう価値観を知って。言葉の捉え方の尺度も人それぞれ違うし、思い入れや背景も違う。だから、理解しあうのは難しいんじゃないかって少し突っぱねてた部分が自分にはあったんですけど、こちらから歩み寄っていけば分かり合えるってことを教えてもらいました。辞書を作るという目的の中で、いろんなストーリーが紡がれていくわけですけど、誰かを愛しているという気持ちでも、表現が違うと伝わり方がぜんぜん変わってくるんだなとか、そういう発見がすごく新鮮でした。

WEAVERの今回のアルバムに入ってる「Hello Goodbye」は、僕が初めて作詞した曲なんです。この歌詞にも大きな影響を与えてると思います。

逢沢りく

逢沢りく(ほし よりこ)

杉本 松本隆さんが好きなんですけど、松本さんの特集をしていた何かの雑誌を読んだ時、『逢沢りく』が面白いと松本さんが話されていたので、それがきっかけで手に取ってみました。装丁からして小説だろうと思って開いたらマンガだったので「何やこれ?」ってビックリしたんですけど(笑)、他のマンガにはない雰囲気が新鮮で。『舟を編む』にも言えることかもしれないけど、僕はどちらかというファンタジーなものよりは、こういう日常的な世界観が好きなんだろうなと。

「こんなコテコテな関西弁の人おるか?」っていうくらい強烈な関西人が出てきたり(笑)、複雑な家庭環境を持つ現代人のリアルな姿を反映したキャラクターの造形だったり、とてもシュールで面白いです。主人公の逢沢は、両親からの愛情を感じずに育ってきたから、喜びや涙の意味を知らないまま育ってきた。で、関西の親戚の家に行くんですけど、いろんな人と交流するなかで出会いや別れがあったりして、そこで初めて涙の意味を知ったりする。最後の方はグッときましたね。

北欧POP MAP

北欧POP MAP アイスランド、ノルウェイ、デンマーク、フィンランド編 (クッキー・シーン・ミュージック・アーカイヴ)

杉本 北欧の音楽やバンドを紹介する本で、自分はもともとUKやヨーロッパの音楽が好きで、その流れで北欧のアーティストに辿り着いたんです。そういった自分が好きな音楽の背景をもっと知りたいと思って読んだんですけど、アーティストが暮らしている街並みとか天候とか、そういうところから音楽の温度感や奥行きを垣間見られるのが面白かったです。

ムームやロイクソップといったアーティストに見られるように、打ち込みを土台にしたサウンドっていうのも北欧ポップ・ミュージックの特徴なんですよ。WEAVERの今回のアルバムだと「マーメイド」って曲は、そういう作風に影響を受けてますね。打ち込みのサウンドの中で、どうやって歌に温かさを出していくかみたいなところで、結構参考にしました。

WEAVER・奥野翔太がセレクトした『Night Rainbow』とリンクする本

山田くんと7人の魔女

山田くんと7人の魔女(吉河美希)

奥野翔太(以下、奥野) 『週刊少年マガジン』で連載してる作品なんですけど、この作品の前は『ヤンキーくんとメガネちゃん』を描いていた作者のマンガです。このマンガがアニメ化する際、今回のアルバムにも収録されている「くちづけDiamond」を主題歌にさせていただいて、それがきっかけでしっかり読みました。

僕はマンガをかなり読む方だとは思うんですけど、少年誌に載っている男性作家のマンガを好む傾向があります。冒険、友情、バトル、みたいな。でも、このマンガは学園ラブコメで、しかもお色気シーンも結構あるんです。それがすごくライトでテンポよく進んで行く感じがある。それって、女性の作家さんじゃないと出せないんだろうなと思ったりしました。ギャグとお色気を心地よく読めるというか。

八日目の蝉

八日目の蝉(角田光代)

奥野 メンバー3人共有していることだと思うんですけど、WEAVERの曲を聴き終わった時、何かが救われる、前に進めるような、そんなプラスな気持ちをリスナーに抱いてもらいたいと思っていて、それが僕らの音楽の特徴の一つになってると思うんです。

この本はハッピーエンドではないんです。でも、気持ち的には次に一歩進めるということが示されてる。誘拐犯に誘拐された赤ちゃんが大きくなるまで犯人の元で育てられて、大きくなった頃に犯人が捕まり、本当の親の元へ帰ることになる。その後、犯罪者に育てられたという過去と現在の親への気持ちとの間で苦しむ……みたいな。シチュエーションとしては誰一人として救われていないんですけど、読後感はポジティブなものがあるという。人間、生きてる世界でいいことをすれば自分にもいいことが返ってくると言われてますけど、いいことをしているのに運がぜんぜん良くないとか、逆に悪いことばかりしている人間にいいことが起きたりとか、そういうことがたくさんあるのが現実だと思うんです。そのなかでどうしたら物事を解決していけるのかとか、とてもリアリティのある本だと思います。

僕らも理屈っぽく冷静に「きっと大丈夫だよ」と言いたくなることもあるけど、この本に出てくる人物のように何かを伝えたいという感情が先走る時があってもいいのかなって気がしてます。

空白

空白(井上雅彦)

奥野 『バガボンド』の作者でもある井上雄彦さんが、体調不良などで描きたいものが描けなくなって、同作を長期間休載していたことがあるんですけど、その時にどんな思いでいたのかを綴った本です。僕はバンドをやる前、ずっとバスケをやっていたので井上さんの『SLAM DUNK』がとにかく大好きで。そんな井上さんの生みの苦しみが書かれてるんですけど、僕らもバンドをやっていて曲を作る上での大変さもあるので、この本に書かれていることに共感することも多くて。僕から見たらとにかく凄いマンガ家さんなのに、クリエイターの迷いや葛藤っていうのは、ジャンルや規模が違っても同じなんだなって思いました。

点で辿ってきたものが、ようやく一つの線になった

―― こうして見てみると、三者三様のセレクトですね。

奥野 僕の場合、河邉が宮部みゆきの作品が面白いよって教えてくれて、それがきっかけで『ブレイブ・ストーリー』『ICO-霧の城-』を読んだりしました。でも、メンバーそれぞれが好きに読んでいるという感じです。

―― 今回のアルバム『Night Rainbow』ですが、静けさを湛えた冒頭のイントロから最後を締めくくる長尺の曲のスケール感まで、ストーリー性に富んだ作品だと思いました。歌詞にしても現実を反映したものもあれば、空想の世界に連れて行ってくれるものもある。サウンドに関しても、ロックとかポップスとか、もしくは邦楽とか洋楽とか、そういうカテゴリー関係なく楽しめるオリジナリティがあるなと。

杉本 今年でデビューして6年になるんですけど、これまでのアルバムを振り返ってみると、どこか悩んでた部分がすごく多かったと思うんです。日本の音楽の流行を考えた時、自分たちの置かれている場所はどこにあるんだろう、ピアノバンドってことで自分たちはどういう立ち位置にいればいいんだろうとか、そういうことを悩みながら作品を作ることが多かった。でも、一緒に5~6年やってきた結果、3人が作りたいものがすごく定まってきた感じがして。その理由は一緒にステージに立って同じ景色を見てきたことが大きいと思います。

WEAVERってすごくバランスのいいバンドだと思うんですよ。河邉が歌詞を書いて、僕と奥野が曲を作る。いい役割分担があって、そのなかでようやく3人で一つの世界を作り出すんだという価値観が定まってきた。それが今回の作品なんです。どの曲も同じ方向を見て、同じ世界観を共有できてると思います。いろんなサウンドの曲があるのに、どの曲もWEAVERの曲になってるというか。

河邉 WEAVERっていうのは、今起こっていることを歌い続けるバンドではないと思うんですよ。例えば今、僕たちが大きなステージに行きたいからといって、そういうことを歌詞に投影して歌うことはない。それよりは、一つの作品を作っていくという感覚が強いのかなと思っていて。今回、そういう風に「3人で一緒に作っていく」ということがさらに強固になって、このアルバムになったんじゃないかなと。一つの色では表せないけど、それぞれの曲の色を集めた時に虹のようになればなという思いがあって、『Night Rainbow』というタイトルなんです。

奥野 亀田(誠治)さんにプロデュースしていただいたり、その後はセルフプロデュースでアルバムを作ったり、サポートの方と一緒にライブをする時期もあったり、ロンドン留学もあったり、この5~6年で本当にたくさんのことを経験してきていて。「これもやりたいし、あれもやりたいし、どうしたらいいんだろう!」というなかで、いろんなことに挑戦してきた感じなんです。そういう感覚が今までずっとあったんですけど、今回のアルバムは点で辿ってきたものが、ようやく一つの線になったというか。「これまでやってきたことは、このアルバムを作る為にあったんだな」という感じです。

Photographs by Motoki Adachi

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プロフィール

WEAVER
WEAVER
ピアノバンド

2004年、兵庫県にて結成。現在のメンバーは、杉本雄治(Piano/Vo)、河邉 徹(Dr/Cho)、奥野翔太(Ba/Cho)。2007年、現編成の3ピース・ピアノバンドとしてライブハウスで活動をスタート。2010年4月より本格的に活動を開始するため上京。6月にリリースした「Hard to say I love you~言い出せなくて~」はサウンドプロデューサーに亀田誠治を迎えての初めてのパッケージシングルとなった。同年にはアルバム『新世界創造記・前編』『新世界創造記・後編』と2作連続でリリース。2012年3月からは全国31カ所33公演、『WEAVER Live House TOUR 2012「Piano Trio Philosophy ~do YOU ride on No.66?~』を開催。2013年にはアルバム『Handmade』を発表。その後、半年間の英ロンドン留学(2014年1月~7月)や、全国ツアー2本、また2015年夏は全国各地のフェス・イベントにも約10本出演するなど、精力的な活動を行ってきた。同年10月からは全国10カ所のホールツアーを敢行。そして、2016年2月10日には待望のオリジナルアルバム『Night Rainbow』をリリース。4月9日(土)大阪・オリックス劇場を皮切りに、『WEAVER 11th TOUR 2016「Draw a Night Rainbow」』を全国9カ所で行うことが決まっている。http://www.weavermusic.jp/

ライターについて

Writer 5
ホンシェルジュ編集部・芸術/芸能班

音楽、映画、アイドル、その他の芸術/芸能に詳しいライターによる班。もちろん皆が本好きだが、そのレベルや守備範囲はさまざま。日本のエンタテイメントのトップランナーを通じて、本/読書の楽しみへの入り口をつくりたい。あるいは本/読書という切り口を通じて、トップランナーの新たな一面を引きだしたい。

プロフィール

WEAVER
ピアノバンド

2004年、兵庫県にて結成。現在のメンバーは、杉本雄治(Piano/Vo)、河邉 徹(Dr/Cho)、奥野翔太(Ba/Cho)。2007年、現編成の3ピース・ピアノバンドとしてライブハウスで活動をスタート。2010年4月より本格的に活動を開始するため上京。6月にリリースした「Hard to say I love you~言い出せなくて~」はサウンドプロデューサーに亀田誠治を迎えての初めてのパッケージシングルとなった。同年にはアルバム『新世界創造記・前編』『新世界創造記・後編』と2作連続でリリース。2012年3月からは全国31カ所33公演、『WEAVER Live House TOUR 2012「Piano Trio Philosophy ~do YOU ride on No.66?~』を開催。2013年にはアルバム『Handmade』を発表。その後、半年間の英ロンドン留学(2014年1月~7月)や、全国ツアー2本、また2015年夏は全国各地のフェス・イベントにも約10本出演するなど、精力的な活動を行ってきた。同年10月からは全国10カ所のホールツアーを敢行。そして、2016年2月10日には待望のオリジナルアルバム『Night Rainbow』をリリース。4月9日(土)大阪・オリックス劇場を皮切りに、『WEAVER 11th TOUR 2016「Draw a Night Rainbow」』を全国9カ所で行うことが決まっている。http://www.weavermusic.jp/

WEAVER さんの本棚

杉本雄治がセレクトした『Night Rainbow』とリンクする本

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河邉 徹がセレクトした『Night Rainbow』とリンクする本

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