斬新な世界観でファンタジーからミステリーまで!『BASARA』『7SEEDS』の田村由美オススメ特集

更新:2021.12.10

斬新な世界観に定評のある漫画家・田村由美。災害や事故、天変地異で荒れ果てた世界で逞しく生きる若者たちを描かせたら、彼女の右に出るものはいないだろう。今回はそんな魅力的なキャラクターが所狭しと駆けずり回る5作品を紹介しよう。

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『BASARA』

未来の荒廃した日本を舞台に、革命のリーダーとなった少女の闘いと愛を描いた大河ロマン。20世紀の終わりに大いなる禍(わざわい)のため文明が崩壊した日本。それから300年後、山陽地方の白虎の村で主人公・更紗と双子の兄・タタラは平和に暮らしていた。タタラは「人民を率い国を救う運命の子」として大切に育てられていたが、更紗は女ゆえ「運命の子」ではないとして、タタラと比べて軽視されていた。しかし、村に「赤の王」の軍が攻め込み、更紗の運命は大きく変えられてしまう。1998年にテレビアニメ化。

謀反を企てているとして宝刀「白虎の刀」とタタラの首を要求し、国王の末子「赤の王」率いる軍が村を襲う。タタラは首をはねられ、希望を失った村人を目にした更紗は自ら「タタラ」を名乗り反旗を翻すことを決意する。実は更紗こそが本物の「運命の子」であり、タタラは彼女の身代わりに過ぎなかったのだ。その後、更紗は革命を起こすべく戦いに身を投じてゆくが、一方赤の王・朱理(しゅり)は謀反に遭い落ちぶれていた。運命に導かれるように更紗と朱理は再会を遂げるが、お互い過去に因縁を持つ敵同士であることを知らぬまま絆を深めてゆく。激動の時代を生き抜く更紗の逞しさと、朱理への一途な愛が胸を打つ。素性が白日の下に晒され、命の危機を迎えた二人が歩む意外な結末も感動的だ。


『7SEEDS』

天変地異により滅亡した日本で、選ばれし少年少女たちが人類の存亡を懸けて生き残りに挑む近未来サバイバルストーリー。内気で平凡な女子高生・岩清水ナツは、目が覚めると嵐で沈没寸前の船の中にいた。前日まで家族と平和な毎日を過ごしていたナツは、うまく現状を呑み込めないでいたが、同じ境遇にある青田嵐、麻井蝉 丸、早乙女牡丹の三人に急かされるように船を降りボートで脱出する。翌朝彼女たちがたどり着いたのは、九州・長崎沖にある無人島であった。

実はナツたちは、過去の日本から希望を託された「7SEEDS」プロジェクトに選ばれし若者であった。巨大隕石により滅亡の危機を迎えた政府は、選抜された7人の若者を5つのチームに分け、未来に向けて冷凍保存していたのである。「夏のBチーム」であるナツはチームガイドの牡丹の下、リーダー格の嵐や協調性に欠ける蝉丸と共に島での生活を余儀なくされる。一方「春のチーム」で嵐の恋人・末黒野花(すぐろのはな)や、「冬のチーム」ただ一人の生き残り・新巻鷹弘もまた巨大生物や難病が蔓延る世界で過酷な旅を続けていた。本作は、荒廃した日本で困難に負けず生き抜く若者たちの群像劇だ。それぞれのチームが織りなす物語も魅力的であり、壮大な結末まで是非とも見届けたい。


『BOX系!』

とある事故をきっかけに出会った若者たちが、それぞれの夢に向かって切磋琢磨する青春群像劇。主人公・富士瀬々(ふじぜぜ)は、アイドルを目指す中学3年生だ。ある日瀬々は、親友の田丸律子と共に箱根で行われる最終オーディションに向かうためマイクロバスに乗り込む。しかし道中バスは崖から転落し、命に別状はなかったもののオーディションへの参加は絶望的となってしまう。打ちひしがれる瀬々たちをよそに、救助を待てずにいた一人の少女が立ち上がる。

謎の美少女・梶真珠(かじしんじゅ)は、今夜中に大事な人に会いたいと救助を待たず歩き出そうとする。オーディションを諦めきれない瀬々と律子、乗客の一人である三神蓮 司も彼女に賛同し、土地勘があるという円谷ハジメと共に山荘を目指し歩き出す。途中遭難しかけるが、紆余曲折を経て無事に瀬々はアイドルの卵として上京し修業を積むことに。ヘアメイクを夢見ていた三神、将来を嘱望されるフィギュアスケーターであった真珠、謎多き御曹司の円谷に律子を交えた5人は同じ高校に通いそれぞれの夢を目指してゆく。本作は、事故がきっかけで出会った同い年の若者たちの王道の青春ストーリーだ。挫折や葛藤を繰り返しながら、瀬々がたどり着く意外な結末にも考えさせられる。


『巴がゆく!』

不良女子高生が、とある財閥をめぐる争いに巻き込まれてゆく、アクション・ラブストーリー。王島巴(おうじまともえ)は「首都高速の巴御前」の異名を持つ17歳だ。だが、首都高でのローラーバトルで友人を亡くし、不良から足を洗う。失意の中、かねてから彼女に目をつけていたスタントマン養成所「緑の船(グリーン・シップ)」の教官・氷室上総(ひむろかずさ)にスカウトされ、入所することに。氷室の寵愛を受ける彼女を待ち受けていたのは、運命の出会いであった。

上総に連れられ新宿へ向かった巴は、かつての彼女を知る暴走族に囲まれ暴行を受ける。だが、その場を偶然通り掛かった大財閥・東条グループ総帥の隠し子である東条伊織(とうじょういおり)に助けられる。巴は施設に戻るが、実は緑の船は東条グループの私兵養成所であることを知る。殺されそうになった巴は施設を脱出し、伊織の元に向かう。しかし東条家の刺客である上総もまた、後継者候補の伊織の命を狙うべく彼の元へ。二人は幾度となく対決することとなり、巴は予期せぬ後継者争いへ巻き込まれてゆく。本作は殺しや銃撃戦、爆発ありの派手なアクションが見どころである。一方、伊織と行動を共にする中で彼に惹かれていきつつも、上総への思いも残す巴の心情が丁寧に描かれておりラブストーリーとしても秀逸だ。


『シカゴ』

とあるバーに集まる犯罪レスキュー隊員たちの活躍を描いた、近未来サイバーアクション。20XX年11月、東K市(とうきょうし)をM7.8の直下型地震が襲う。主人公・レイは壊滅的な被害を受けた「湾岸D地区」に、自衛軍レスキュー班第四部隊として同僚の魚住と共に派遣されていた。被害者を探して回るうちに、魚住は見つかった遺体が地震によるものでないことに気づく。その瞬間ドヴォルザークの「新世界」が辺りに流れ、二人は謎のセスナから爆撃を受ける。

思いもよらぬ爆撃を受け、第四部隊は二人を残して全滅する。更に、魚住は地雷を踏んでしまい片足を失ってしまう。時は流れ、驚異的な復興を遂げる東K市でそれぞれの生活を送る二人であったが、J・Jなる謎の男にスカウトされる。南S宿(みなみしんじゅく)の餃子が美味しいバー「シカゴ」に呼ばれた彼らは、犯罪レスキュー隊として集結。さっそくレイたちは、第四部隊全滅事件と同じく「新世界」が流れていたという少年誘拐事件の話を聞かされる。頭脳明晰だがクセありの男・シンを仲間に加え、彼らは真相に迫ってゆく。本作は、近未来特有のサイバーアクションに、クラシック音楽を絡ませたミステリーが見事に溶け合っている。多くの謎を残したまま終了したのが惜しまれる一作だ。


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