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【連載小説】「ロマンティックが終わる時」第10話【毎朝6時更新】

更新:2018.1.9 作成:2018.1.9

ユウはジュンヤに中1の頃の話をする。リョウスケとともに売店に向かったシンゾウはコーヒー牛乳を買おうとするが……。

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村上淳也SIDE

連載第1回はこちら


中1の頃といえば、ユウの愛想が悪くなり始めたと言っていた時期だ。直接的なきっかけとか、中1のいつ頃かは聞いていないけれど、クラスで浮いてしまったと。 

ユウが浮いたことと、呉道は何か関係あるのだろうか。

「呉道とは、学校祭委員を一緒にやってたんだ」

ユウはおれの方ではなく、正面を見ながら言う。

胸の奥がうずく。

学校祭委員を一緒にやるっていうのは、他の委員会をやるのとは違う。クラスをひとつにするために、密にコミュニケーションを取らなくちゃいけない。学校祭委員のカップルができることもある。事実、うちのクラスの学校祭委員の花村と花上は付き合っている。

「今考えると、つまんない展示だったけど、当時は結構頑張ったんだ」

中学1年の学校祭は、全クラス展示企画と決まっている。クラスでテーマを決めて調べて発表するというもの。受験生と生徒の親くらいしか見に来ない退屈な企画だ。

「それで呉道と対立したとかか?」

「ううん。当時は呉道もあんな感じじゃなくて、クラスをちゃんとまとめてた。企画の出来もそんなに悪くなかったと思う」

じゃあなんで? と聞こうとして、ひとつ考えたくない答えが頭をよぎる。

個人的には最悪の答え。

ユウはおれを見て、口を開きかけて、そのままかたまる。

視線の先はおれというより、おれの後ろ。

振り返る。

今一番会いたくないやつがそこにはいた。

「楽しそうだな。おれも混ぜてくれよ」

呉道。

原島真蔵SIDE

「ハニー」

スキップが小走りにかわって、売店に向かう松本。

「ダーリン」

手を広げる安藤。

そのまま抱きしめ合うふたり。

……ナチュラルにそういうことやるのやめてもらえないかな?

あいつら流の挨拶だったのだろうか、すぐにハグを解く。

「シンちゃんハリーアップ」

僕に向かって、大きく手招きする。

急がなくてもコーヒー牛乳は逃げない。そのままのスピードで売店まで歩く。

「神社で寝てた人だ!」

安藤が僕を見て言う。

見られてたのか。いや、それにしても、その記憶のされ方はひどい。

「違うよハニー。あれは寝てたんじゃなくて転んだんだよ」

不必要なフォローを入れるな。

「そうだったんだ。受験生じゃなくてよかったね!」

「正月から滑ってこけてたら、受かるものも受かんないからね!」

いや、実は生徒会長選挙に出ようと思ってるんだけど、割としゃれにならないんだけど。

そんな風に僕にダメージを与えて、松本と安藤はお土産を物色し始めた。

「ダーリン、お土産どうする?」

「うーん、もう木刀は買ったんだけど~」

「はやっ!」

「早いもの勝ちだからね」

「おっ、松本と原島じゃん」

後ろから声がする。振り向かなくても誰かはわかる。

「なんだよ、お土産買うなら言えよ」

「もしかして、抜け駆けして二本目の木刀買うつもりだったのか?」

「うわっ、ずり」

「おれも二刀流になる!」

「じゃあおれ三刀流!」

「3本は厳しいだろ」

「口にくわえればいける!」

「700円×3本で2100円」

「……厳しいっす」

他の班員たちである。

「今、ハニーと話してるから、邪魔しないで」

松本が軽い感じで言う。

「わかってるよ。原島、うちの部屋で人生ゲームやるんだけど、来るか?」

人生ゲームなら悪くないかもしれない。ルーレットを回すだけだし、いくらこいつらと一緒でもそんなに荒れることはないだろう。

でも、松本がここで安藤と話しているのであれば、自分の部屋に戻ればひとりになれるということだ。

「おれはいいや」

「りょうかい。じゃあ、買うもん買って部屋行くか」

そう言って、班員たちは売店の中に入って行く。

何を買うのかと思って見てみると、飲み物のようだ。

最初のひとりがコーヒー牛乳を手に取る。次の班員もコーヒー牛乳。班員たちは全員コーヒー牛乳を手に取って行く。他にもコーラとかお茶とか色々と種類があるというのに。

コーヒー牛乳は僕の前で売り切れる。

「なんでおまえらみんなコーヒー牛乳なんだよ……」

ため息とともにつぶやく。

「だって風呂上がりはコーヒー牛乳だろ? 何言ってんだ原島」

いや、それはそうなんだけど。

班員たちは、僕をおいて部屋に戻って行く。

「ダーリン、なんか怒られたって聞いたけど大丈夫だった?」

松本と安藤は売店の中まで入ってきたようだ。

「そんなにでもないよ」

「そっかぁ。ところで、なんで怒られたの?」

「うーんと、クレミーが池に落ちたからかな?」

「なんで呉道が池に落っこちてダーリンが怒られるの?」

「わかんない。でも、ジュンヤちゃんとかアキラちゃんも一緒に怒られた」

「えっ、村上くんたちも一緒にいたの?」

「そうだよ」

「ってことは、ユウも?」

「ユウちゃんは怒られてないけど、近くにはいたよ」

会話はそこで途切れる。それまでテンポよく話が続いていただけに気になる。

見ると、安藤が珍しく気難しそうな顔をしていた。

「ユウ、大丈夫かな?」

「ん? ユウちゃんは怒られてないんだよ?」

「ううん。違くて、ユウにとって、呉道は天敵なの」


次回:1月11日6時更新予定

第11話

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大場諒介
KDP