英BBC制作のドラマ『SHERLOCK』を例に、沼に嵌まって生活がじわじわ浸食され、外出も儘ならず、部屋は荒れ、目がかすんでスマホ老眼まっしぐら、活字中毒者が本読めなくなる危機に陥る様をお伝えしたい。
沼に、嵌まっています。
洋ドラです。海外ドラマです。
そうか、わたしももうそんな歳になったか、と、感慨深いです。
20代終わり頃、お酒の場で同席した当時50代の女のひとが、洋ドラにハマっているとかで、あれはたしかアリーマイラブだったかと思いますが
「仕事で疲れて帰ってきても、寝る前にあれを数話ずつ観ると、なんだか元気になるのよ~」
みたいなことを言っていて、へええ~そんなもんすか~~、はあ、ええと、ほええ~~、みたいな、共感度ゼロのぼんやりした相づちしか打てなかったことを、今思い出しました。
いや、だってさ、なんかあちらのドラマ、すごい長いじゃないですか。平気でシーズン5とか6とか。見始めたらもう、キリないじゃないですか。
そんなのちんたらつき合ってらんねーのよ。空き時間はバイトだバイト、でなきゃこちとらソッコー干上がんだよ、時間喰うドラマをわざわざ進んで見るなんてなあ、言うなりゃブルジョアの楽しみだ! 余生だ!
くらいの、血気盛んな20代。
余生と言えば、今年92になるうちの祖母は、それこそヨン様の頃からずううっと、韓国ドラマにぞっこんマイラブです。いつ行っても、常に、必ず、テレビに韓国俳優がうつっている。韓国料理屋か。
朝から各局で流してるやつを順番に観て、夜NHKでやってるやつ(時代モノのなんか大河みたいなやつ)を毎週欠かさず観て、それと並行してレンタルDVDで別のドラマも観て、ムック本で娘2人(私の母と叔母・ともに60代)と各ドラマの設定やら背景やらを細かく確認して、ああだこうだ、きゃいきゃい楽しそうです。余生というには、あまりに能動的。
昨今の日韓感情の悪化とか、ばあちゃん見てるとどこの世界の話かと。不買運動だなんだっつって、カメラの前でこれみよがしにデサントのTシャツ切り裂いてるひとたちに、うちのばあちゃんの1日を見せてやりたいっすよ。
話が大きくそれました。
まあそんなこんなで、中身どうこうよりも、レンタル屋の棚を埋め尽くすその長さに恐れをなして、海外ドラマとは距離を置いて生きてきたのですが、40代半ば、ここにきて不覚にも、海外ドラマの中毒性にまんまとやられました。なんてこと。
ほんっと、われながらアホみたいな感想で大変恐縮ですが、まあなんせ、物語がね、すごい面白いですよ。ようできてる。なに、あれ。
うまいところに、いいエピソードぶっこんでくる。手のひらの上でまんまと踊らされちゃう。なんであんな構成が上手なの。仕掛けが大がかりなの。いい俳優いっぱいいんの。
というか、ものすごい数のドラマの中から淘汰されて、面白いやつがわざわざ日本まで渡ってきてんでしょうけど。
そんでこれまたよくしたもんで、シリーズが長く続けば続くほど、観てる側もどんどん、登場人物たちに情が湧いてきちゃってねえ。本の長編シリーズと同じですね。三毛猫ホームズみたいなもんですよ。
超・可愛かった子役たちは、どんどんと大きくなり、超・男前だった主人公の額は、どんどんと広くなり。でもいいの、みんなあいしてる。
いろんなキャラに肩入れして、今さら視聴やめらんないとまらない。もう、ずっとこのまま、永遠にドラマが続けばいい。
このように、洋ドラ鑑賞楽しんでおりますが、何事も過ぎたるは及ばざるがごとし、のめり込みすぎると生活に支障が。
たとえばここに『SHERLOCK』という、大変面白いドラマがあるとしますね。
え、今さら『SHERLOCK』?と驚きましたか。でーすーよーねー。
これ本国での第1話の放送、2010年ですからね。最終シリーズの放送も2017年、なんだかずいぶん昔の気が。
でもね、せっかく面白い作品なんだもの。いつまでも、堂々と愛でたらいいじゃない。
名作は時代を超えるじゃない。今でもみんな「北の国から」大好きじゃない。
だいたい、ひとが楽しんでたものを急に横から、わああ! これがおもしろいぞ! かっこいいぞ! イケてんぞ! わっしょい! わっしょい!と一斉に持ち上げて、みんな釣られて半狂乱、あれよあれよと一大ブーム、やがて、次の生け贄へとその熱狂がうつっていったら、後に残されたのは散々に喰い散らかされた荒野、あーハイハイあれねー、昔流行ったよね~ププーくすくす、みたく不当に貶めるの、ほんと、まじで、許さじ。
私はずっと好きですよ、ミスタービーンも、スキャットマン・ジョンも。
さて、さすがに世界的な大ヒットとなったこのドラマについて、もしご覧になってなくとも、概要くらいはなんとなく風の噂でご存じかと思いますが、一応念のためごく簡単に100字以内で要約します。
コナン・ドイルの名作シャーロック・ホームズとジョン・ワトソンの冒険譚を、21世紀の現代に舞台を移し大胆に脚色・アレンジした、英BBC制作のドラマ。全4シーズン各3話、ミニエピソード1本、特別編1本。(99字)
100字に入りきらなかったのでさっそく補足、主演がベネディクト・カンバーバッチとマーティン・フリーマンで、2人とも一躍ハリウッドスターんなって、ストレンジなお医者になったり、ホビットなこびとになったり、忙しい毎日です。
まだ観てないなんて方いらっしゃったら、百聞は一見にしかず、第1シーズンの1話「ピンク色の研究」だけでもチラ見、いかがでしょう。ほんっと、ほんの最初だけでも。そしたらきっとすぐアレするから。神回です。
で、まあたとえばの話ですよ、ある主婦が、この『SHERLOCK』の第1話をたまたま観たとして、あれ、案外面白いではないか、となったとしますよ。
スロースターターの最大の利点は、続きが観たい!と思ったとき、待たなくていいことです。次の放送まで1週間とか、まだるっこしいもんね。ゲオいって、大量おとなレンタル。あ、今は自宅でネット配信か。便利な世の中、万歳。
第1シーズン2話、3話、続いて第2シーズン入って、満を持しての第3話「ライヘンバッハ・ヒーロー」でマーティン・フリーマンのお芝居にガツンやられて、もうだめ、何があろうと第3シーズン観ないわけにはいかないの! マーティン・フリーマン演じるところのジョンのためにも!
もう、どっぷり、作品に情が移りましたね。
そしたらこれがほしくなると思うんですよ。
- 著者
- スティーヴ・トライブ
- 出版日
- 2014-12-25
(帯より抜粋)
BBCドラマ『SHERLOCK/シャーロック』公式ガイドブック
シーズン1~3、そして4の最新情報まで、キャスト・スタッフたちの初出し制作秘話をオフショット満載のフルカラーでお届け!
制作秘話、とか。オフショット、とか。よだれ出るわ。
昨今なんでもネットで、ドラマやキャストについて調べられますが、やはり、フルカラーでお手元に携えておきたいものです。
ロケ地、キャスティング時のエピソードのほか、特に、台本上の削除シーンとか面白いなあと。撮影セットやこだわり小道具なども、じっくり見られます。
さてこの、公式ガイドブックですが、実質上の最終シーズンである4が放送されたあと、4自体についての本は出てないですね。なんでですかね。
シーズン1、2の神っぷりからの、3で、ああなるほどそうきましたかああそうですか、そしてまさかの4、うーん、お、おう、うん、えーっと……。
いや嫌いじゃないですよ、全然。ここまで観たらもう、肩入れハンパないので。もはや何されようが嫌いにゃならんのですが。
ただまあ、最初の頃からすると路線がえらい変わっちゃったなあ~とか、ハリウッド化~とか、原作リスペクトからずいぶん奇をてらう一方につっ走ったな~とか。
面白いドラマを、面白いまま続けて、美しく終わるのって、そもそも不可能なことなのかしらんと思ったり、げふっ、げふんげふん。
いやいやいや、ちょい待ち、最後まで素敵にやりきった、正統派シャーロック・ホームズのドラマの金字塔を、決して忘れてはいかんのです、ネバー。それはこちら。
- 著者
- ピーター ヘイニング
- 出版日
- 1998-08-01
(帯より抜粋)
映像化された「ホームズ」の中で最も評価の高い『シャーロック・ホームズの冒険』(イギリス・グラナダTV制作)の番組ガイド&写真集。
出演者のコメント、ロケ地の案内、撮影ウラ話、原作との比較、全ストーリーのあらすじなど、シャーロキアンもうならせる豊富な内容に加えて、181点もの写真とイラストをつめこんだ完全版。
いわゆるグラナダ版ホームズです。これはほんとにもう、名作。ホームズ界の偉業。
あくまで原作に忠実に、細部にまでこだわり抜いた作品作りにただただ脱帽。ホームズ役のジェレミー・ブレット、まじリスペクト。小学生の頃からテレビで観て刷り込まれているので、そもそもシャーロック・ホームズというものは、必然的に、露口茂さんの声をしている生き物なのです。山さぁん!!
現在この本は、中古でしか手に入らないみたいですみません。「SHERLOCK」ブーム時、復刻なるかと思ったのですが、残念無念。
1998年初版発行ですが、ドラマの制作裏話、しかも海外ドラマのなんて、当時なかなか知る手立てがなかったので、それらがみっしりと詰めこまれたこの本は本当にうれしかったなあ。
本人や周りのひとの語るエピソードから、ホームズを演じる俳優としての、ジェレミー・ブレット本人の姿を垣間見ることができます。いや、すげえ俳優っすよ。95年に亡くなりましたが、そっか、あのとき61才なのか。しゅっとして、すっと立って、ずううっとかっこよかったなあ。
「SHERLOCK」に戻りますが。
ドラマ全部見終えて、そのままするりと現実に戻ってこられたらいいのですが、そこはもうほら、魂持ってかれてるからね、いんやまだまだもっと観たい! 知りたい!って、なるでしょ。
そんなあなたに、パスティーシュ。
- 著者
- 北原 尚彦
- 出版日
- 2014-09-10
本人もシャーロキアンであり、これまでシャーロック・ホームズのパスティーシュを翻訳したり、書いたりしてきた北原尚彦さんによる「SHERLOCK」のパスティーシュ全6篇。
・ジョンの推理法修業
・ジョン、全裸連盟へ行く
・ジョンと人生のねじれた女
・ジョンと美人サイクリスト
・ジョン、三恐怖館へ行く
・ジョンとまだらの綱
ドイルの原典を読んだことがあればピンとくる各タイトル。1つ目の推理法修業は、ドイルの書いたセルフ・パロディいわゆる経外典である「ワトスンの推理法修業」からとのことですが。
ドラマのみならず、原典と、経外典、これら全てを広く守備範囲とする北原氏によるパスティーシュなので、元ネタがあっちからもこっちからも。シャーロック・ホームズに詳しい人であればあるほど、よりニヤニヤできる納得の内容です。
ドラマ観て、キャストについて調べて、原典読んで、パスティーシュ探して。ほらね、他のことする時間がかなり制限されてきましたよ。
何度も観てるうち、ドラマ内での言い回しやなんかも気になってきますね。
そんなあなたにこちら。
- 著者
- 出版日
- 2015-06-10
ドラマを忠実に再現したコミック版(カドカワコミックス・エース)を、BBC放送時に使用された英語字幕をもとに、バイリンガル版として再編集。原作ドラマに限りなく近い英語でセリフを表記し、それに対応する和訳をコマ外に併記。
ドラマ観てて、んん? 今なんつったの?と聞き逃した英語のセリフを、これで確認したり。英語字幕だと、読み切る前に消えちゃったりするのでね。シャーロック、すごい勢いで長ゼリしゃべるし。
まあなんせ、ベネディクト・カンバーバッチのそっくり具合を見ていただきたい。
室内や街並みの描写とか、ドラマをまんま写し取っていて、あああ、すごい再現力~と。
コミック版、バイリンガル版ともに、シーズン1の全3巻が発売中ですが、さらにこの7月に、ヤングエースで連載中のコミック版「ベルグレービアの醜聞(上)」が2年ぶりに発売されたようです。そうか、シーズン2もいくのかすげえな。
さて、何事にも終わりが来るもの。
夢中で追いかけたドラマが終わって、ぽっかり胸に空いた穴。それを埋めてくれるのは、やはり、次のドラマです。
もっと、もっとだ、もっと長いやつよこせぇぇ!
完全に中毒です。
こうして、次から次へとドラマを渡り歩き、ああ面白い、これもそれも面白い。その世界に愛着湧いたら、手元の電脳機械でちゃかちゃかっと検索。でるわでるわ、姐さまがたによる、2次創作の数々。ごっつあんです!
そんなの読んでたら、数時間なんてあっという間。え、もう保育園お迎えの時間?今日1日なんにもしてない。せめて晩ごはんの買い物を。いや待て、冷凍庫の食材で何とかあれすれば、その浮いた時間でもう1話観られる……!←ジャンキーの発想
英語の2次創作にまで手を出した日にはもうね。世界の姐さまたちが力作を発表してくれてますのでね。その数、なんまん、なんじゅうまん。しぬまでに読み切れるかどうか。
でも、これも立派な英語の勉強。英ドラマのファンフィクションと、米ドラマのファンフィクションとでは、使う単語も結構違ってたりとかして。その世界観も多種多様、うっかり、触手、とかふんじゃってビビりますが。
しょくしゅはさておき、いろんな国の姐さんたちと、同じドラマ観て、萌えを共有してるかと思うと、ウィーアーザワールド的に胸熱です。萌えはボーダーレス。ドラマやMANGAで、世界から戦争がなくならんもんかなあ。
そんなことを考えながら、家族が寝静まったあとも寝る間を惜しんで、こっそりケータイで暗い中読んじゃって、すっかり目が悪くなりました。
文字が小さくって読めなぁぁいっ!
とうとう、本読むのに支障が。あれな、字見づらいと、一気に本読むのが億劫になるのな。本、タッチで字拡大できんからな。
大変、困っております。
せめて、目に良いツボを押したり、遠くの山を眺めたりして、少しなりとも視力を回復させねば。というか早く老眼鏡買わねば。
どうかみなさま、くれぐれもご自愛ください。
では、3つ子をめぐる群像劇とか、ハワイのタスクフォースとか、イングランドのお屋敷の悲喜こもごもとか、観るのに大変忙しいのでこのへんで。
ひと段落ついたら、7王国のなんかドラゴンとか魔法とか出てくるやつ観ようと思っていますが、人名覚えられる気がまったくしません。