5分でわかるSARSの歴史!2002~2003年に流行したコロナウィルス

更新:2020.3.13

2002年から2003年にかけて、中国から世界各地に広がったSARSコロナウィルス。どのように感染拡大し、終息していったのでしょうか。この記事では、感染者数や死者数などの概要、発生から終息までの流れ、症状、兆候、治療法、予防法などをわかりやすく解説していきます。

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SARS(サーズ)とは。いつ、どこから広がった?感染者数と死者数も紹介

 

「SARS(サーズ)」とは、英語の「Severe acute respiratory syndrome」の略称で、SARSコロナウィルスによって引き起こされる感染症です。日本語の正式名称は「重症急性呼吸器症候群」といいます。

最初の症例が確認されたのは、2002年11月。中国南部を中心に感染が拡大し、WHOによると終息する2003年7月までの間に8000人以上が感染し、そのうち774人が死亡したとされています。

2019年末から2020年にかけて世界中で感染が拡大した「新型コロナウィルス感染症(COVID-19)」と比べると被害は限定的ながら、SARSの致死率は9.6%と高いのが特徴です。

SARSは動物起源のウィルスだと考えられていて、野生のコウモリからヒトに感染した可能性や、コウモリを捕食したハクビシンが仲介してヒトに感染した可能性が指摘されています。ヒトからヒトへは飛沫感染および接触感染が確認されています。

 

SARSが中国で発生してから終息するまでの流れを解説

 

SARSの患者として初めて報告されたのは、中国南部にある広東省仏山市出身の、農家の男性です。これが2002年11月のことで、その後広東省内で感染が広がっていったものの、中国政府は感染症が発生していることを2003年2月までWHOに報告しませんでした。

WHOが事態を把握した時、感染はすでに中国国外にまで拡大していたそう。感染者数は2000人以上、死者数も500人以上になっていました。

3月12日、WHOはグローバル・アラートを発して、3月15日には広東省と香港への渡航自粛を勧告します。当時のWHOで陣頭指揮をとっていたのは、西太平洋事務局の責任者だった押谷仁です。しかしこの時点で感染は、中国国内だけでなくアメリカやカナダ、モンゴル、フィリピン、シンガポール、台湾、ベトナムにも拡大していました。

渡航自粛の動きが広がるなかで、観光業や航空業などが打撃を受けます。中国国内では、SARSは中国人を標的にした生物兵器だとする風説が広がり、一方でアメリカやカナダではアジア人に対する差別行為も見られました。

感染ピークは2003年5月頃。その後気温の上昇にともなって減少し、7月5日にWHOがSARSの封じ込めに成功したと発表しています。以降も散発的な感染例は報告されたものの、二次感染の拡大は防がれ、SARSは終息しました。

ちなみに日本では、疑い例は数例あったもののいずれも陰性で、SARSの感染者は発生しませんでした。

 

SARSの症状や兆候、治療法、予防法などを簡単に解説

 

SARSの潜伏期間は2~10日、平均で5日ほど。悪寒や発熱、筋肉痛、咳、くしゃみ、のどの痛みなどの兆候があり、風邪やインフルエンザなどに似ているため、初期の診断を誤らせる要因になりました。

発病して2週間くらい経過すると肺炎になり、咳や下痢、呼吸困難などの症状が出ます。なかには呼吸不全になる人もいて、その場合は集中治療が必要です。

もっとも重い症状は、サイトカインストームと呼ばれるもの。サイトカインとは、細胞から分泌される生理活性たんぱく質で、ウィルスが体内に入った際に免疫細胞を活性化し、排除するという役割をもっています。

サイトカインストームは、サイトカインが免疫細胞を必要以上に活性化させてしまい、過剰な免疫反応が起こってしまうというもの。高熱、腫脹、極度の疲労、吐き気などを引き起こし、最悪の場合は多臓器不全によって死にいたる場合があるのです。

SARSの感染経路は飛沫感染または接触感染とされています。診断は、38度以上の発熱や咳、呼吸困難などの症状があること、さらにSARS感染者と10日以内の濃厚接触があること、もしくはWHOが指定した地域に渡航歴があることが要件でした。感染の疑いがある場合は、胸部X線写真やウィルス検査を実施して確認します。

治療法は確立されていません。解熱役の投与、酸素吸入、人工呼吸器など症状に応じた対処療法をしつつ、隔離病棟にて経過観察するのが一般的です。だいたい6~7日で症状は改善に向かいます。

また、SARSのワクチンは開発途上。現状の予防法は、手洗い、うがい、消毒、マスクの着用、感染者との接触回避が有効です。

 

感染症と人類の戦いの歴史をまとめた本

著者
["石 弘之"]
出版日

 

ヒトにとって、最小で最強の天敵がウィルスなどの微生物だといわれています。本作は、そんな感染症と人類の20万年におよぶ戦いの歴史をまとめたものです。

最強の感染症とされるエボラ出血熱や、都心で流行が確認され日本中を騒然とさせたデング熱、ヘルペス、インフルエンザ、エイズ、麻疹、風疹、SARS……あらためて見ると、ウィルスの種類の多さはもちろん、生命を脅かすものが多く存在することがわかるでしょう。ウィルスを克服する薬を開発する英知と、薬に耐性をつける進化の飽くなき競争は、現在進行形でくり広げられているのです。

事前知識はなくても理解できる易しさで、読み物としてもおもしろいため、感染症の歴史について大枠を知りたい人におすすめの一冊です。

 

ウィルス学の専門家が、SARSなど感染症をわかりやすく解説

著者
["加藤 茂孝"]
出版日

 

作者の加藤茂孝は、東京大学理学部を卒業し、国立感染症研究所室長、米国疾病対策センターの客員研究員、理化学研究所チームリーダーを歴任したウィルス学の専門家です。

本作では、HIV/AIDS、ハンセン病、狂犬病、マラリア、梅毒、コレラ、エボラ出血熱、SARS、MERSという感染症について、それぞれどのように発生し、どのように広がっていったのか、そしてどんな対策が実行されたのかという性質と歴史をまとめています。

日常生活ではほとんど意識することのないウィルスですが、2020年1月から世界に感染が広がった新型コロナウィルス感染症 (COVID-19) からもわかるように、1度流行すればいともたやすく人間を恐怖に陥れる力をもっています。

恐怖を払拭するためには、まずは感染症に関する正しい知識を身に着けることが大切でしょう。ぜひ本作を活用してみてください。

 

SARSなどの感染症をビジュアルで理解できる一冊

著者
サンドラ・ヘンペル
出版日
2020-02-14

 

作者のサンドラ・ヘンペルは、医学分野を得意とするジャーナリスト。本作では20の感染症を取りあげて解説をしています。

インフルエンザやSARSに代表される「空気感染症」、コレラなどの「水系感染症」、マラリアなどの「動物由来感染症」、そしてHIVや梅毒などの「ヒトからヒトへの感染症」という4つに分類。病原体、感染経路、症状、発生・流行状況、予防・治療方法、世界規模の取り組みを、データや写真を用いて紹介しているのが特徴です。

また感染経路や感染地域などの地図も載っているので、視覚でパンデミックをとらえられるのも嬉しいポイントでしょう。