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キャリー (新潮文庫)

キャリー (新潮文庫)

作者 スティーヴン キング
出版社 新潮社
出版日 情報なし

「おまえは悪魔の申し子だよ」狂信的な母、スクールカーストの最下層…悲劇はその夜、訪れた。巨匠キングの鮮烈なるデビュー作にして、三度の映画化を経た永遠の名作。

レビュー

『キャリー』は私が初めて読んだスティーヴン・キングの長編小説である。中編以下は文春文庫から上梓された傑作篇『ミスト』を高校生の時分に読んだ。この小説は実はあまり恐ろしく感じられない。『ミザリー』のほうが数倍も身の毛もよだつような迫力がある。しかし『キャリー』では、題名と同名の主人公とそれを取り巻く環境の陰鬱さが掎角の勢をなしていることは読むとすぐにわかる。
キャリーはキリスト教の狂信者である母親と二人で暮らしているのだが、その奇態な生活の様と彼女の社交的でない様子によってクラスメートから虐められている。物語は彼女が体育の授業の後のシャワーで遅れて初潮を迎えたことに始まる。彼女は母親によって生理という現象を教えられていなかったため、それに動揺し、それを見ていた生徒達――クリスが専ら煽り立てて――に馬鹿にされる。それは体育教師のデジャルダンの登場で鎮静されるのだが、ただ一人スーザンは馬鹿にしたもののキャリーに対して罪悪感のようなものを感じ始める。次第に近づく卒業式とその後のプロム。スーザンは恋人のトミーに頼んで、プロムのカップルであるトミーにキャリーと一緒に行ってほしいと頼む。その後トミーがキャリーにそのような頼みを言うと、彼女は彼の申し出に最初は反対するが、結局承諾してしまう。一方でそれが気に入らないクリスはプロムでキャリーを徹底的に陥れようと、親しい間柄の不良ビリーと、キャリーとトミ―のカップルを投票で一位にして、ステージに立った彼女達へ豚の血が入ったバケツを落とすことを画策する。プロム当日、キャリーは内心それを期待して自分で拵えた白いドレスをまとい、トミーに連れられて参加する。初めて社交的に様々な人と会話することが出来たキャリーは自信がつき、今日が最高であると考え始める。しかし果たしてクリスの筋書き通りになり、血を浴びて全身赤く染まったキャリーはやはり自分は幸せになれないと悟り、全てに絶望する。それを傍で見て嘲り続ける周囲のクラスメート達。だが、彼らが知らなかったのは、キャリーがサイコキネシスを使うことが出来、更に彼女が一人で家にいるときそれを鍛えていた(これは全体に亘って書かれている)ことである。そうして彼女はそれを武器にして復讐を始める。彼らだけでなく町全体を。
このような流れを普通の三人称視点の進行のみならず、彼女の復讐による大虐殺に関して後で記されたという設定の架空の書籍やクラスメートの手紙などによって、多角的にとらえられながら進んでいくという手法が、この作品を非現実的なキャリーという存在を現実的に描写することに成功している。そしてそれを読んでいく中で、少しずつ扉から漏れ出る煙のように生々しい不気味さを私達は感得するようになる。それがこの作品の一番の魅力であるように思える。

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