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大統領のクリスマス・ツリー (講談社文庫)

大統領のクリスマス・ツリー (講談社文庫)

作者 鷺沢 萠
出版社 講談社
出版日 情報なし

これがね、大統領のクリスマス・ツリー。治貴(はるき)の言葉は香子(きょうこ)の耳の奥に今でも残っている。ワシントンで出会い、そこで一緒に暮らし始めた2人。アメリカ人でも難関の司法試験(バー・エグザム)にパスし弁護士事務所(ロー・フアーム)でホープとなった治貴。2人の夢は次々と現実となっていく。だが、そんな幸福も束の間……。感涙のラストシーン!

レビュー

昔この小説の一部を抜粋した国語の読解問題を解いたことがある。それは香子とジョナが一緒に家で食事をとるシーンである。私はこの問題文を読んだとき、ランプが白く、そして仄かに部屋と二人を照らしている図を思い出した。何故かはわからないが、そこに薄っすらと陰が見えたのだ。
果たしてその通りであった。治貴がそのジョナと浮気しているのをふとしたきっかけで香子が知り、自分の彼との距離が、彼女のよりもはるか遠くなったことに気づき、最後は十一年前、二人が邂逅したときに訪れた思い出の「大統領のクリスマスツリー」で別れを告げることにする。
私はこの小説を読んだとき、何年も二人とも相手のことを思いやり、香子が流産したときも支えあい、その後二人の子の有香が生まれて、家も買うという、様々な思い出があったのに、こんなつまらないことで二人の関係は幕を閉じるのかとそのあえなさに胸が空いたような気がした。更に有香もまだ幼いのに、そんな自分たちの都合でいいのかと。
しかしこれは先で挙げた食事の場面を含め、二人の関係が、経歴もやり取りも何もかも、微妙に離れていて暗い感じを漂わせ、全ては初めから決まっていたことが全体からうかがえるのである。最初はそのようなあっけなさを覚えたが、もう一度読み返してみると、確かにそうだと納得できる。また二人のやり取りも確かに支えあってはいるのだが、それは愛情というよりも助け合いの精神が大きいように見える。
それでもこれを書いているうちに私は腹が立ってきた。治貴は香子の家族による信頼、有香の子供時代をこんなことで台無しにしたと思うとただ酷いとしか言いようがない。

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