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hozzy、藤森真一(藍坊主)(ロックバンド)

藍坊主・hozzyの選ぶ「静かで、どろっとした怖さが味わえる本」

藍坊主・hozzyの選ぶ「静かで、どろっとした怖さが味わえる本」

こんにちは。今回自分が紹介させていただく本のテーマは「静かで、どろっとした怖さが味わえる本」です。『リング』や『呪怨』のような、日本のホラーを煮詰めたようなものとはまたちょっと違う角度から、ぞっとできるものを集めてみました。こんな季節に(真冬です)、ホラーっぽいものを読むのもどうかと思いますが、年明け早々から熱燗を乗せたこたつに入って、怖い本を読むのもまた乙です。
2016.02.19

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藍坊主・hozzyの選ぶ「静かで、どろっとした怖さが味わえる本」
こんにちは。今回自分が紹介させていただく本のテーマは「静かで、どろっとした怖さが味わえる本」です。『リング』や『呪怨』のような、日本のホラーを煮詰めたようなものとはまたちょっと違う角度から、ぞっとできるものを集めてみました。こんな季節に(真冬です)、ホラーっぽいものを読むのもどうかと思いますが、年明け早々から熱燗を乗せたこたつに入って、怖い本を読むのもまた乙です。

紹介させてもらう3冊に共通しているのは、人間の妄想や想像力が生みだす恐怖や悲しさを描いているところです。幽霊よりも生きている人間の方がよっぽど恐ろしい、とは巷でもよく言われる言葉ですが、生身の人間が幽霊のようなぼやっとした脆い心と、スッと背後に佇んでいるような存在感でもって不安定な行動を繰り返すと、それだけでもう結構な恐怖です。そういった微妙に奇妙な行動や心理、情景描写が「静かで、どろっとした」ものに繋がって、さらにそこに一定の悲しさがブレンドされると、もう自分はブルっときてしまいます。たまりません。

憎しみや、怒りのような強い感情では届かない人間の「ある領域」にこの3冊はそっと触れていると思います。弱さや悲しさや不安定さの方が、むしろ強く飛び超えていくべき境界線が見えるんじゃないかと。というわけで、冬にアイスを食べる感覚で、ちょっと乙な気分になりたい方は是非読んでみてください!

真鶴(まなづる)を舞台に描かれたおどろおどろしい物語

真鶴
真鶴
作者 川上 弘美
出版社 文藝春秋
出版日 情報なし
自分の地元である神奈川県小田原市にほど近い「真鶴(まなづる)」という土地から、ひとりの女性の視点で物語が進行して行きます。いきなり冒頭から「歩いていると、ついてくるものがあった」という、不可思議な一行から始まりますが、この女性は何か幽霊でも見える人なのかなと思わせておいてから、だんだんと話が進むたびに、アレアレ、何かちょっと違うのかもしれないぞと、彼女の過去や不安定な精神部分が、徐々にむき出しになっていくのが淡々と怖いです。

この真鶴という町は、実は自分の母親の実家がある所で個人的にも何度も訪れたことがある場所です。作者の川上さんがなぜ(熱海や湯河原ではなく)この場所を舞台におどろおどろしい話を書こうとしたのかも、ちょっと複雑ですが、読んでいて正直共感してしまいました。独特な雰囲気のある所です。そういえば子供の頃、ここで叔父と親戚の子と鬼火を見たことがありました(笑)。川上弘美さんが書く主人公の意識のふくらみ方やしぼみ方の表現方法が、とても独特で不思議な角度を持っていて、そういう視点から読んでも、とても楽しめる作品でした。

憶測との間に生まれ続ける「ずれ」の恐ろしさ

残穢 (新潮文庫)
残穢 (新潮文庫)
作者 小野 不由美
出版社 新潮社
出版日 2015年07月29日
正月にゴロゴロしながら読み始めたら、あっと言う間に日が暮れて一気に読んでしまったくらい、どろりなお話でした。この小説の一番怖かったところは、怪奇現象の原因がなかなかはっきりせずにいつも憶測との間に「ずれ」が生まれ続けるというところでした。

例えば、おじいさんの幽霊が部屋の隅でじっとこちらに背中を向けて座っている光景を見てしまったとしたら、当然その部屋で過去にその老人に関する「いわく」のようなものがあると考えると思うんですが、調べたらその部屋に老人が住んでいたということはない、というような、整合性のつかない怖さがずっと連続して続くような感じ。最後は全部繋がるんですけど、その繋げ方もちょっとユニークで、民俗学的な考え方を使って謎の答えに導いていたのが新鮮で面白かったです。

話の始めの方で出てくる「畳を帚で掃くような音」が「実はあの音なんじゃ」と主人公たちの中で別の音に変換されていく当りが、まさに人間の妄想が恐怖を新たに生んでいく瞬間で、自分も読んでいて頭の中に嫌な映像がバッチリ浮かびました(笑)。映画でも観てみたいです。

読後に残る、なんとも言いがたい「固まり」が響く

向日葵の咲かない夏 (新潮文庫)
向日葵の咲かない夏 (新潮文庫)
作者 道尾 秀介
出版社 新潮社
出版日 2008年07月29日
とても悲しみのパンチが効いていて、人によっては結構ずーんとなっちゃう場合もあるみたいですが、自分はとても好きな作品です。ホラーではなく、ミステリという枠組みなのでしょう。最後にしっかりとオチもあり、トリックの謎もちゃんと解明され、筋書きとしては全部腑に落ちてスッキリはするんですが、この小説はもう、最後になんとも言いがたい「固まり」が残ります。

小学生のころって、キンケシ(キン肉マン消しゴム)とかでよく遊んだよなあ、ストーリーを自分で作りながらその世界に入り込んでいって……。そんな事を思い出しながら、想像の世界にすぐにいける時期の男の子が主人公(小学5年生)だからこそ、より彼の悲しみや、話の怖さがすっと奥の方に入り込んでくる作品だと思います。

道尾さんの別作品「月と蟹」もそうですが、子供の頃は友達の間だけで通じる世界と言うか、小さな王国のような中で生きている時間が確かにあって、遊びの中では簡単に人が死んだり復活したりして、なかなかカオスな平行世界が生まれては消えていたなあと、そんなことも思い出させてもらって切ない気持ちになります。謎解きとしても面白い本なのでおすすめです!
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