マラルメのおすすめ関連本5冊!詩集から人生を知れる1冊まで

更新:2021.12.19

20世紀に独特の音楽性を持つ詩を書き、多くの芸術家たちに大きな影響を与えたマラルメ。彼の詩集はもちろん、フランス文学を語る上で外せない詩人の姿をより理解するための本も合わせて、おすすめの5冊を紹介します!

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フランス象徴主義の代表詩人マラルメ

マラルメ(1842-1898)は、エドガー・アラン・ポーやボードレールに影響を受け、19世紀にフランスで活躍した詩人です。言葉の意味よりも、言葉自体が持つ音や、形態そのものにより重きを置いて、概念的な世界をほのめかす表現をした象徴主義を代表する詩人と言われています。

彼は生涯にわたり、詩の理想を追求した人でした。詩から詩以外の要素を排除する、つまり経験や教訓、また散文的なものを排除した詩である純粋詩を提唱し、定着させました。代表作は『エロディヤード』(1871年)、『半獣神の午後』(1876年)などです。

彼の難解ながら独特の美しさを持った詩は広く受け入れられ、多くの著名な芸術家たちに影響を及ぼしました。例えば、「月の光」「亜麻色の髪の乙女」で有名な作曲家のドビュッシーは、マラルメの「牧神の午後」に影響を受けて、同じ名前の曲を作っています。サルトルは、『マラルメ論』という評論を書きました。

今回は、そんな多くの芸術家たちを惹きつけてきたマラルメの詩集と、彼のことをより深く知ることのできる本をご紹介します!

マラルメの意外な一面を知れる本

19歳のとき、匿名で文芸雑誌などに書評を投稿し、鮮烈なデビューを飾ったマラルメ。本作は、彼がどのようにして、フランス文学を代表する詩人になっていったのかを、膨大な資料を分析した上で解き明かした伝記的批評です。大変分かりやすく書かれており、偉大な詩人の生涯を追うのにぴったりの一冊でしょう。

著者
柏倉 康夫
出版日

マラルメは、孤高の詩人というイメージを持たれることが多いです。それはおそらく、なかなか読者にすんなりとは受け入れられないような彼の作品や、どこまでも詩の理想を追求していこうとする愚直な姿勢からきているのでしょう。

しかし、『生成するマラルメ』を読むと、そのイメージは少し変化するでしょう。実際、彼は社交的で、友人を大切にしていたり、家族思いな面があったりしたことがわかります。そもそも、無名のマラルメが文壇で注目を得ることができたのは、友人である詩人のヴェルレーヌの紹介があったおかげでした。ヴェルレーヌの一周忌に、彼は「ヴェルレーヌの墓」という詩を寄稿しています。

このように、『生成するマラルメ』を読むと、彼の意外な一面が見えてくるでしょう。一人の詩人の生涯を知りたい人にも、彼に親しみにくいイメージを持っている人にも、おすすめの一冊です!

作品と詩人の間に存在する関係性を紐解く

本作では、20世紀に活躍したランボー、マラルメ、ベルクソン、サルトル、中原中也、小林秀雄らの作品・作家間に関係性を見出し、実際に作品を読み解きながら、その関係性とはどのようなものなのかを具体的に述べられています。かなり専門的で難解ですが、フランス文学や、上述した作家に関心があるなら読む価値のある一冊です。

著者
平井 啓之
出版日

マラルメを含めた、20世紀のフランス文壇で活躍した4人に加え、彼らから大きな影響を受けた日本の作家、小林秀雄や中原中也についても言及されています。

学術書で専門的な内容のため、全てをしっかりと理解するのはなかなか難しいかもしれませんが、20世紀のフランス文学の概要を深く知れる上に、文学史の中核ともいえる作家や作品間の具体的な関連性をつかむことができるでしょう。

マラルメとほかの作家との関連性や、マラルメを文学史の中にどう位置付けることができるか、もしくは20世紀のフランス文学史についてや、20世紀のフランス文学が日本文学に与えた影響についてに関して興味のある方におすすめです。

実存主義者が読むマラルメ

フランスを代表する哲学者・サルトルが著したマラルメについての評論です。「実存は本質に先立つ」で有名な、今存在している自分自身の存在を中心に考える実存主義であるサルトルは、その実存主義的な視点からマラルメを論じています。

著者
ジャン=ポール サルトル
出版日

サルトルは、マラルメを実存主義のパイオニアとして評価しています。サルトルからすると、マラルメは自らの力の無さを完全に理解しており、その理解をもって詩作に取り組もうとする姿は実存主義的である、ということです。

実存主義は、20世紀のフランス哲学を代表する思想であり、20世紀の文学とも深い関連があります。実存主義とマラルメを関連づけて考える際に、見逃せない一冊です。

マラルメ研究必読の書

フランスの戦前を代表する批評家・ティボーデによる批評です。1912年に初版が出て、1926年に改訂版が出版されました。かなり早い段階で書かれた批評であり、マラルメ研究には必読です。

著者
A. ティボーデ
出版日

数あるマラルメ論の中ではかなり早い段階で出版された本で、初期の研究段階で彼がどのようにとらえられていたかを知ることのできる貴重な本です。

マラルメの詩を実際に彼と交友のあった画家のマネのタッチと結び付けたり、哲学者ベルクソンの思想を作品にあてはめたりと、他の著名な芸術家や思想家たちと関連づかせながら、巧みにマラルメの功績、文学史上での位置づけを論じています。

前に紹介したサルトルの『マラルメ論』との違いを探してみるのも面白いです。

マラルメの詩を存分に味わうことのできる1冊

フランスの象徴派を代表するマラルメの自選詩集の日本語訳です。彼の詩は、散文的ではない上に、音にこだわっているため、翻訳は大変難しいといわれています。その詩を日本語に翻訳して、多くの注釈を付けて、読者の理解を少しでも助けようとしてくれているのがこの本です。
 

著者
出版日

正直、フランス文学を勉強している学生でも、マラルメを理解するのは非常に難しいでしょう。目を通した後、その難解さゆえに本を閉じたくなってしまうかもしれませんが、それを我慢して音読してみてください。翻訳でも、言葉の美しさは感じられます。まるで音楽のような、とても心地よいリズムを刻むのです。ドビュッシーなどの音楽家がマラルメに影響を受けたのも、納得できるでしょう。

まずは音から入り、注釈を頼りながら、ゆっくりと詩の意味を自分なりに考えてみる、という味わい方をおすすめします。そうすれば、きっと自分なりの解釈が少しずつできてくるでしょう。

マラルメの詩は難解ですが、彼はフランス文学史に必ず登場する詩人ですし、たとえ意味は理解できないにしても、作品にある音の美しさはぜひ一度味わってみてもらいたいです。彼が追求した詩の理想の精神がなんとなく感じ取れるのではないでしょうか。ぜひその美しい詩を朗読してみてください。

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