長谷川義史おすすめ絵本5選!『いいからいいから』など傑作多数

更新:2021.12.19

ユニークな物語とやさしい絵、随所にちりばめられた遊び心、すべてが楽しく切なく、心にしみます。

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心がほぐれるユーモアいっぱいの作品を生み出す長谷川義史

長谷川義史は1961年生まれ大阪府出身の絵本作家です。デザイン会社でのグラフィックデザイナーを経た後、イラストレーターに転向しました。絵本作家として活動をはじめたのは、2001年です。また、絵本の翻訳もしています。

ユーモアあふれる長谷川義史の作品は、言葉のリズムが心地よく、肩の力が自然とぬけて、気持ちがほぐれていくような気がします。絵も物語同様、ユーモアいっぱいで、あたたかさがにじみ出てくるようなタッチです。2003年の講談社出版文化賞絵本賞をはじめとし、2005年の日本絵本大賞など、数々の賞も受賞しています。

おおらかな気持ちをもちましょう

とてもおおらかで穏やかなおじいちゃんと、その家族に起こる、不思議な出来事をユーモラスに描いた物語です。大人気「いいからいいから」シリーズの1作です。

ある日の夕方、すさまじい音とともに、雷の親子がやってきます。おじいちゃんは、驚きもせず、「いいからいいから」とおおらかに言いました。雷のおとうさんは、何か言いたいようですが、おじいちゃんたちは、雷の親子をもてなします。

ところが、雷の親子は逃げるように帰ってしまいました。次の日起きると、なんと、おじいちゃんとボクのおへそがない!そんなときでも、おじいちゃんは「いいからいいから」とおおらか。そこに、雷の親子から手紙が届きます。

果たして、おへそは戻ってくるのでしょうか。

著者
長谷川 義史
出版日

怖いはずの雷が、長谷川義史のやわらかいタッチで、やさしく感じられます。一体、この親子は何しにきたのだろうと、次の展開が読めず、わくわくします。やっぱり!と思わせた後に、笑える結末が……。

なんといっても、最大の魅力はおじいちゃんのおおらかさ。見習いたいです。「いいからいいから」は、世界が平和になることばのように思えてきます。他のシリーズも併せて読んでみてはいかがでしょうか。

待ち遠しいのはあかちゃんも同じです

おかあさんのおなかの中にいる赤ちゃんの視点で描いた、こどもの誕生という感動を味わえる物語です。あかちゃんがおかあさんのおへそのあなからのぞいた世界が、逆さまに描かれているのも楽しいアイデアとなっています。

生まれていく日を待っている、おなかの中のちいさなあかちゃんには、おかあさんのおへそのあなから、いろいろなものが見えるのです。ロボットをつくるおにいちゃん、お花を育てるおねえちゃん、うたを作ったおとうさん。おへそのあなからは、においもするし、音も聞こえます。

家族みんなで、あかちゃんが生まれてくるのを楽しみに待っている様子を、おへそのあなからあかちゃんが見ているという、ユニークな発想です。それなのに、もしかしたら?と思わせるリアル感もあるのが、不思議ですよね。

著者
長谷川 義史
出版日

終始、自然と笑顔がこぼれる内容ですが、最後にあかちゃんが、きこえないようにそっと言う一言が、ホロッときます!おかあさんのおなかの中にあかちゃんがいるという神秘を、こどもたちにもわかりやすく伝えるのに、とてもいい作品ではないでしょうか。
 

離れ離れになった家族の運命は?

北の国からやってきた、じゃがいもの「じゃーむす」が主人公のユーモアたっぷりの物語です。「歌い聞かせ」で絶大な人気のお話を、満を持して絵本にした、テーマソングのある楽しい作品になっています。

家族親戚みんなで、北の国から八百屋さんにやってきた「じゃーむす」たち。おとうさんの「じゃっく」、おかあさんの「じゃじゃりん」、妹の「いもーぬ」など、ネーミングだけでも笑えます。八百屋さんの向かいに描かれている魚屋さんも笑えるので、見逃さないでください!

やがて、次々と買われていき、離れ離れになってしまいます。そんな家族親戚一同が、ある日のようちえんのお昼の時間、お弁当の中身として、再会することができます。なんというキセキでしょうか!それぞれ、コロッケやポテトフライやポテトサラダなど、いろいろなポテト料理になってますけど……。

著者
長谷川 義史
出版日
2010-07-08

設定も内容も、思わず笑顔になってしまう、読めば読むほどクセになる楽しい作品。じゃがいもたちの豊かな表情もかわいらしいです。結論は、みんなじゃがいもが大好き!というところも、親しみやすいですよね。読み終わった後は、こどもも大人も、きっとじゃがいもが食べたくなりますよ。

かわいそうなんかじゃない!

てんごくにいってしまったおとうちゃんとの大切な思い出を、ボクが思い返していく、切ないけれどとても力強いメッセージが心にしみる長谷川義史の自伝的絵本です。幼いボクから語られる、おとうちゃんとの思い出にまつわる話には、胸が締めつけられる思いになるかもしれません。

ボクには、少ないけど、おとうちゃんとの大切な思い出があります。キャッチボールをしたり、飛行機のショーを見に行ったり、おかあちゃんが買ってくれなかったあこがれのライトバンのホットドックを買って食べたり。

一度だけ 頭をどつかれたこともありました。痛かったけど、もう一発くらいどつかれてもよかったと思う、ボクの気持ちを考えると切なくなります。周りの大人は、変に気を遣ってしまいがちですが、ボクのように、案外、こどもなりにしっかり事実を受け止めているのかもしれませんね。
 

著者
長谷川 義史
出版日
2008-11-26

悪いことをしたら地獄にいくから、天国のおとうちゃんに会えない!と、自分で律するところは、ボクの健気さが伝わってきます。「かわいそう」だと大人に言われるボクは、「かわいそう」なのはボクじゃなくておとうちゃんだと、こどもながらに思うところも身につまされます。切ない内容ですが、ユーモアの要素もあり、暗くならずに読める、受け入れやすい作品ではないでしょうか。

やさしさと強さを兼ね備えたスーパーおかあちゃん

先に紹介しました『てんごくのおとうちゃん』に呼応するかたちで作られた、笑って泣ける物語になっています。明るく前向きに子育てをがんばるおかあちゃんの姿に、母親のほんとうの強さを教えてもらえるような作品です。

おかあちゃんは、ミシンの仕事をしています。「なんでもつくったる」というおかあちゃんですが、ボクのほしいものとは、少しずれていて、友だちにも笑われてしまいました。ある日、父親参観のお知らせがもとで、ボクはおかあちゃんに、「なんでもつくれるならおとうちゃんつくって」と言ってしまいます。

おかあちゃんは「ごめんな おとうちゃんつくられへんわ」と悲しい表情……。来ないと思ってた父親参観に、おかあちゃんは、なんと!背広を着てやってきたのです。おかあちゃんがボクの耳元で「ミシンでつくってん」とささやくところは、自然と涙してしまう場面。おかあちゃんのやさしさと強さがにじみ出ます。

著者
長谷川 義史
出版日
2012-04-27

言ってはいけないとは思っていても、つい言ってしまうということは、大人でもありますよね。そんなこどもの気持ちを理解し、大きなやさしさで受け止め、明るく元気に進んでいくおかあちゃんは、母親のかがみのような人です。

切ないストーリーも、ユニークなアイデアと絵で、笑って明るくなれる長谷川義史ワールド。是非、ご堪能ください!

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