フルーツが好きな人にプレゼントしたい本5冊

更新:2021.12.12

毎月「プレゼントしたい本」を選んでご紹介していきます。 世の中、誰しも助け合って生きているとよく言いますよね。友達に突然お礼のプレゼントをしたり、家族の記念日に何かを贈ったり、仕事仲間の何かをお祝いしたり、プレゼントをしようと思えばいつだってチャンスなのです。 しかし、何を贈ったらいいのかわからない。 大丈夫。毎月5冊ずつ、プレゼントにオススメな本をセレクトしてご案内します。 今月は「フルーツ」をテーマに選んでみました。

ブックカルテ リンク

きっとあなたの知らない果物の数々

著者
アダム・リース ゴウルナー
出版日

表紙にある果物、あなたはいくつ名前を挙げることができますか?名前がわからなくても、味を想像できる果物はひとつでもありますでしょうか?
よく見てみてください。左下には最近スーパーでも売られているドラゴンフルーツがあります。ドラゴンフルーツを食べたことがある人なら共感いただけると思うのですが、あの派手な外見に反して、ドラゴンフルーツの味は淡泊で拍子抜けしてしまいます。初めてあの白い果肉を口にしたときのドキドキと、そして何か裏切られたような感じは今でもドラゴンフルーツのあの独特の外見を目にする度に、脳裏に蘇ってきます。
思いもよらない味がする、というのは、初めて食べる果物の最大の楽しみなのかもしれません。

本書はかつて『VICE』誌で編集者をしていた著者が世界各地で見て食べてきた無数の「果物」についてのエッセイをまとめたもの。極上の小説のように、饒舌かつ情緒過多ぎみな文体で、副題の通り「冒険とビジネス」が綴られています。読者は「フトモモ科のクローヴ・リリー・ビリー」や「ゾンビヤシ」や「バスタード・チェリー」のような聞いたことも食べたこともない果物の味や姿を想像しながら、かつてない切り口で世界を眺めることになるでしょう。
 

美麗な写真で眺める、美味しい果物の楽しみ方

著者
渡辺 康啓
出版日
2014-09-26

コムデギャルソン勤務経験を持つ著者によるレシピ集。
まるでファッション写真集のような美麗な料理写真に加え、季節ごとの果物を使った献立が紹介されています。果物だからといって甘いものばかりではありません。「酢豚にパイナップルはどうしても受け付けない」という人にはなかなかキツイものがあるかも知れませんが、案外ハマってしまったりもするかも知れません。

コムデギャルソン勤務経験を持つ著者によるレシピ集。

まるでファッション写真集のような美麗な料理写真に加え、季節ごとの果物を使った献立が紹介されています。果物だからといって甘いものばかりではありません。「酢豚にパイナップルはどうしても受け付けない」という人にはなかなかキツイものがあるかも知れませんが、案外ハマってしまったりもするかもしれません。


 

フルーツパフェはパフェの王道

著者
斧屋
出版日
2015-03-20

本書の中では、「フルーツパフェ」はパフェの王道であると位置づけられています。
「大事なことは、みんなこのパフェから教わった」と本書の冒頭で登場するのは、なんとファミレス「ロイヤルホスト」のイチゴのブリュレパフェ。上層部はクレームブリュレのごとく、スプーンでパリンと割って食べるように硬く焼いてあります。それだけでも楽しいのですが、食べ進むにつれ、並みのパフェでは味わえない複雑な味覚の物語が待っています。まだ経験していない人は、ひとまず今夜ロイヤルホストへ足を運ぶことをオススメします。

本書に登場するフルーツパフェのひとつでご紹介したいのが、浅草「フルーツパーラーゴトー」のフルーツパフェ。驚きの低価格でハイクオリティなエンターテインメントを提供してくれるこのパーラーのフルーツパフェには、なんとメニュー表に果物の産地やパフェの中身の解説がついているのです。これは、「何を食べているか分からないのでは面白くないだろうし、生産地による違いや生産者の思いも分かってほしい」というオーナーの意向によるもの。食べて美味しい、読んで楽しい、とはまさにこのことです。

果物のセクシーで知的で変態チックな側面を学ぶ

著者
ジャン=リュック エニグ
出版日

最初に挙げた『フルーツハンター』もなかなか文学的でしたが、こちらの『果物と野菜の文化誌』は事典形式とはいえ、よりいっそう文学的だ、と言えるかも知れません。

本書のテーマは、副題に記されている通り「エロティシズム」。さまざまなエロティックなエピソードが古今東西から集められ、気取った文体で紹介されています。この本に書いてあることを人前で披露すると、変態な上にちょっと嫌なヤツと思われかねませんが、ひとりで読みふける分には…。

なお、こんな感じです。
「マルセイユでは《いちじくを干す》あるいは《いちじくの胸》という表現が、戻らない夫を待ってやせ細る娘たちについて言われていたということは驚きである。というのも、干しいちじくは耽美主義者たちを常に夢中にさせたからである。なかでもフランシス・ポンジュは本を一冊丸ごと捧げている。1977年の『言葉のいちじくはいかにそしてなぜに』である。彼はいちじくにおもねったりはしない!彼は干しいちじくからとりわけ二つのイメージを取り出す。ひとつは《しおれた胸》である。乾いた石の色をした大きな乳首、形はたるみ、垂れ下がり、しぼんでいるがまだしぼみすぎではなく、ちょうどかぶりついても恥ずかしくない程度である。そしてもう一つは…p.64より」

このあとには「もう一つ」のイメージが紹介されているのですが、そっちはぜひ書籍でご確認ください。いちじくの味がちょっと違う感じに思えてきます。
ちなみにほとんど同じタイトルの『くだもの・やさいの文化誌』という本もありますので、セクシーに興味のない人はそっちをチェックしてみてくださいね。くれぐれもお間違えのないように。
 

SFに登場する圧倒的な果物の表現

著者
宮部 みゆき 牧野 修 北野 勇作 斉藤 直子 蘇部 健一 樺山 三英 松崎 有理 高山 羽根子 船戸 一人 七佳 弁京
出版日
2011-11-05

現代日本SFの旗手のひとりである樺山三英による短編小説。
この作品を収録しているのは大森望氏による人気の短編アンソロジー『NOVA』の第6集。作品のタイトルは「庭、庭師、徒弟」。タイトルの通り「庭」がテーマになっています。本作において、庭師とその徒弟は、語り合いながら庭の中を彷徨します。

この作品に登場する「庭」は、おそらく「世界」そのものの別名であり、庭師はいわば世界を創る神、もしくはその創造主から世界の管理を任された何者かであると考えることができます。そしてその「徒弟」は、この世界の管理者に学び、やがてその跡を継ごうとする者なのです。神とともに世界を彷徨すること、それはまさに当て所無く歩くように生きる人生そのものだと言えるでしょう。

この作品に登場する「庭」が果てしなく広大で、その内部では国が戦争をしたりしています。そこでは圧倒的な存在感を持った「無花果(いちじく)」が描かれます。

旧約聖書の失楽園のエピソードでイブにそそのかされたアダムが口にした「禁断の果実」は林檎ではなく実は無花果だったという説もあり、ヨーロッパの文化において無花果が与えられている位置づけは独特の重みがあります。そういえば、羞恥を知ったアダムとイブは、たしかに「無花果の樹の葉」で陰部を隠していました。

さらにちょっとした薀蓄を書いてしまうと、「無花果」と書かれるこの果物、実は食用になっている部分じたいが「花」そのものです。「花嚢(かのう)」と言われる部位が無花果のいわゆる果実として食用に供されているわけです(精確には、内側のプチプチの部分が花にあたる部位ということになります)。
 

ここまで書いてきたように、無花果ひとつとっても神話のエピソードあり、意外な植物学的な薀蓄があったりと、「くだもの」は非常に奥が深いモチーフです。フルーツが好きで本が好きな人にはきっと退屈な人間はいないのではないでしょうか。そんな人が身近にいるあなたはとても幸せ者なのかも知れません。ぜひ今回紹介した書籍をプレゼントして、2人で世界の滋味を堪能してください!

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