“持たない暮らし”で心を豊かにする「ミニマリスト」の入門書

更新:2021.12.12

何を隠そう、私は片付けが苦手だ。正確に言うならモノへの執着が強いので、断捨離するのに苦痛を伴う。 職業柄、本は大量に読むし、3年間毎日違うのを着て過ごせるぐらいの服を所有している。それらを保管するには、当然、大きなスペースが必要なわけで、6畳の部屋を丸々一部屋、物置代わりにしているのだ。 もちろん、気づいている。その保管のためにかかっている家賃が、膨大な額だということを。本当は家の中の空気が常に流れて循環しているような、シンプルな暮らしに憧れているのだが…。

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心の底から大好きな物を毎日身につけよう

フランス人は上質な物を少量だけ持ち、手入れをしながら長く大切に使うという。
ファッション好きでオシャレな人が多いというのが、パリジェンヌのイメージだが、実際は親から譲り受けた服や古着屋で安く購入した服を、スカーフやアクセサリーなどの小物でアレンジして上手に着こなしている。

こうやって限られた量の服で工夫してオシャレを楽しむからこそ「オシャレに見せるテクニック」が磨かれ、洗練されていくのだそうだ。

 

著者
ジェニファー・L・スコット
出版日
2014-10-23

本書には、Tシャツに短パンという生粋のカリフォルニアガールだった著者が、ホームステイ先のフランス人貴族の家庭から学んだ、毎日を心豊かに生きるコツについて書かれている。アメリカ式の物質主義に踊らされて、物に溢れて生活している日本人にとって、目の覚めるような内容だ。

旅行にショッピング、高級料理とたくさんお金を使って贅沢したって、なぜかいつも心が満たされないのは、心が豊かではないからなのだ。精神的な豊かさを物質的な豊かさ(お金)で埋め合わせしようとしてはダメなのだと、この本を読むと痛切に感じる。

私自身、洋服をたくさん持っているからといって、毎日オシャレができているわけではない。組み合わせがわからず、大量の服を目の前にして何時間も悩んだりするし、どこにしまったかわからず終いの服は山ほど。

この状況をなんとかしたいと始めたことは、小さな収納ケースに収まる厳選した20着のみで、1ヵ月間生活してみること。するとどうだろう、毎日の洋服選びが一瞬で済むので、とても清々しいのだ。おまけに着ている服は自分が大好きなもの。うん、これはとても気持ちがいい。
 

“一生もの”という大きな落とし穴

大きな買い物をするとき、誰でもとても勇気がいる。いつもよりゼロが一つ多いわけで、これは『一生もの』なんだと自分に強く言い聞かせながら買う人は多いと思うが、この“一生もの”という考え方を捨てなさいと言っているのが、千曳いく子さんの本。

 

著者
地曳 いく子
出版日
2015-02-23

“一生もの”だと思って買う高価な服は、汚したら大変、勿体ないからなどの理由で使用頻度が低くなり、結果としてタンスの肥やしになりやすいと指摘する。“一生もの”ではなくて、“1週間以内に着る服”を買うのが正解とのこと。

私自身も清水の舞台から飛び降りる気分で買った高価なワンピースなどは、年に数回しか着ることがなく、一生分を着こなせているのかは甚だ疑問。今では新しい物を買うときに、「1週間以内に着る?」「着回ししやすい?」と自分に問いかけてから買い足すようにしている。
 

スーツケース1つで生活できる人になりたい

同業の編集者が著者なので、気になって読んでみたのが、こちらの本。気になるワードやエッセンスが随所に散りばめられていて、読み出したら止まらない。

著者自身、捨てるのが苦手で、モノが溢れかえった汚部屋に10年間も暮らしていたという。いつも他人と自分を比べては落ち込み、仕事もプライベートもうまくいかず、人生が停滞。一念発起してミニマリストの生活を実践してみたところ、彼の価値観そのものがガラリと変わってしまったのだ。

ミニマリストになると、部屋がスッキリして気持ちがいいとか、掃除がラクだというメリットだけじゃなくて、「どう生きるか」という「幸せ」の本質が見えてくるのだそうだ。この本では、人がモノを増やしてしまうメカニズムについても詳しく述べられていて、とても勉強になる。

 

著者
佐々木 典士
出版日
2015-06-12

たくさんのモノに囲まれて生活するのは、一見、恵まれているように感じるが、実はその逆。家賃などのムダな固定費がかかり、探し物はなかなか見つからず、モノを持ち過ぎることで身重になって引っ越しするのが面倒になり、行動力も低下する。まさに、お金・時間・場所の無駄遣いだ。

自分にとって本当に必要なモノが何かが見極められるようになると、少ないモノでも満足できるので、他人と比べることもなくなり、無駄遣いが減るという。そして何より、毎日満ち足りて「幸せ」を感じるのだそうだ。

そのときの気持ちを、著者はこんな風に述べる。

「旅に出かける前、出発ギリギリまでパッキングに明け暮れる。必要な荷物リストをチェックしても、何か忘れているように感じてしまう。もう出発の時間だ。なかば諦めながら、玄関のカギをかけ、スーツケースを転がし始める。そのときに感じる解放感。そうだ、このスーツケースひとつあれば、しばらく生きていける。もしかしたら家に何か忘れたかもしれない。でも、必要なモノがあれば、そのときに手に入れればいいのだ。」

身軽にどこまででも歩いて行けるような清々しさを、日常生活でも感じられるようになったら、どんなにいいだろう。
 

自分の持ち物をきちんと把握して、一つ一つに愛情を注ぎ込めるように、ミニマリストの生活をお手本にするのはどうだろう? 大好きなモノだけに囲まれたシンプルな暮らしは、きっと、あなたの心に潤いを与えてくれるはず。私も少しずつ、自分の持ち物を見直して、ミニマリスト的な生活を心がけてみようと思う。

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