文倉十がイラストを描くおすすめラノベ5選!きりっとした瞳が特徴

更新:2021.12.3

数々の人気ライトノベルシリーズのイラストを手掛けている文倉十。「狼と香辛料」シリーズなど、さまざまなメディア展開がされたヒット作も担当しています。今回は文倉が挿絵を描いたライトノベルを5作紹介していきましょう。

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文倉十とは

文倉十は、ライトノベルの挿絵やゲームのキャラクターデザインを手掛ける人気のイラストレーター。代表作に「狼と香辛料」シリーズがあります。

意志の強そうなきりっとした瞳が特徴で、それでいてどこか影を背負って憂いを携えているなど、それぞれのキャラクターの性格やイメージを書き分けるベテランです。
 

経済学ライトノベルの決定版!!文倉十が描く狼少女

山奥まで塩を売りに行っていた行商人のロレンスは、その帰りの道中で、この辺りで異教徒の祭があるらしいが知らないかと、通りすがりの騎士から尋ねられました。

ロレンスは知らないと答えましたが、実はその祭に関して心当たりがありました。

それは異教徒の祭などではなく、パスロエ村でおこなわれる麦の豊作を祝うためのもの。ただ、豊作の神の化身である狼を捕まえるというちょっと変わったものでした。

著者
支倉 凍砂
出版日
2006-02-10

電撃大賞で銀賞を受賞した作品で、作者にとってはデビュー作であり代表作でもあります。テレビアニメ化やゲーム化などさまざまなメディアに展開され、全19巻で完結していますが、その後新しく「新説 狼と香辛料」シリーズが発表されました。

主人公はクラフト・ロレンスという25歳の青年。行商人として独り立ちして7年目の彼は、仕事にも少しずつ余裕が出てきています。しかしひとりで旅を続けていると、ふと人恋しさを覚えるようになっていました。

ピンチをチャンスに変えて成果をあげたり、経済はもちろん歴史や宗教など幅広い知識を持っていたりと、行商人としての能力は高く、各所から一目置かれていますが、女性の扱いはやや苦手という一面も持っています。

そんな彼とひょんなことからともに旅をすることになったのが、ホロと名乗る少女です。ホロは人間ではなく、狼の耳と尻尾を持った、豊作を司る神様。長いことパスロエ村に住み着いていましたが、時代とともに村人からもその存在を忘れられ、村を飛び出したところでロレンスと出会い、一緒に旅をすることになりました。

見た目は10代半ば程度の少女ですが、実は何百年も生きていて、「わっち」などの廓詞(くるわことば)を使うのも特徴です。

ホロのイラストは輪郭がシュッとしていて、少女の愛らしさと狼のカッコよさが合わさり、イメージにピッタリ。可愛いんだけれども可愛すぎず、作品の世界観を引き締めています。

物語は中世ヨーロッパ風の架空の世界で、ホロのような人間に化けることができる知性を持った獣が存在します。魔術や超能力といったような超常的なものはありません。

ストーリーの中心になるのは、ロレンスの行商人という職業を活かした経済ミステリーです。商談や取引が物語上で重要な伏線となるなど、経済学を基盤にした物語は、他にはあまりない面白さを感じることができるでしょう。お金の動きを追いかけるマネーゲーム的な要素もありますが、専門的すぎることはないので、知識のない方も楽しめます。

ひと味違うファンタジーを読みたい方はもちろん、剣と魔法のファンタジーがあまり得意ではない方にもいいかもしれません。小説を読んだ後は、ぜひアニメ版などもチェックしてみてください。

思春期の少年少女の内側にあるもの

雨の日にアメくんにフラれた加奈は、同じ雨の日に死ぬことにしました。しかし飛び降りるために訪れた屋上で出会ったのは、互いを「ライオン」「ブリキ」「カカシ」と呼び合うおかしな男女の3人組でした。

彼らは死のうとしている加奈に、自分たちももうすぐ自殺をする予定だけど、その前に復讐をしようと思っていると話しかけてきて……!?

著者
カミツキレイニー
出版日
2011-05-18

小学館ライトノベル大賞・ガガガ大賞を受賞した作品です。大好きな彼氏のアメくんにフラれた加奈は、そのショックから立ち直ることができず、死のうと考えて屋上を訪れました。

「どうせ死ぬんならさ。僕たち何でもできると思いません?」(『こうして彼は屋上を燃やすことにした』より引用)

「ライオン」「カカシ」「ブリキ」の3人にこう言われたことによって、加奈の「ドロシー」としての物語が始まりました。

彼らの呼び名は、かの有名な児童文学『オズの魔法使い』に出てくる登場人物のものです。「ライオン」はどこかのほほんとした男の子で、勇気がないために怒ることができないというキャラクター。「ブリキ」は冷酷にも思える物言いをし、心がないため笑うことができない男の子。

「カカシ」は人形のように可愛らしい容姿をしている女の子ですが、知恵がないために泣くことができません。そして主人公の「ドロシー」は、雨空が嫌いで眠ることができないのです。

いずれも『オズの魔法使い』の登場人物とリンクしているため、原作を知っている読者には嬉しいポイントでしょう。

物語はこの4人を中心に進み、章ごとにそれぞれの物語がピックアップされます。各章の物語が最後にひとつにまとまっていく全体の構成が美しく、胸がスッとするような爽快感を覚えることができるでしょう。

思春期を切り取ったような、繊細な世界観を彩った透明感のあるイラストは、読者のイメージをより喚起させてくれます。それぞれ影を抱いているキャラクターの雰囲気がそのままイラストになっており、物語全体の静かなイメージをより伝えてくれます。

ライトノベルではなくジュブナイル小説と評されることもある本作は、青春小説を読みたいという方にもおすすめ。4人の結末をぜひ手に取って読んでみてください。

子作り以外何もしなくていいヒモ生活……!?色気たっぷりの王女を文倉十が描く

24歳の山井善治郎(やまいぜんじろう)は、ブラック企業に勤めるサラリーマン。そんな彼に、半年ぶりに休日出勤のない土曜日がやってきました。

社会人になってからほとんど経験していない2連休を満喫するために、わざわざ早起きをしてコンビニで弁当とお茶を買った帰り道、ふと気が付くと見知らぬ場所に迷い込んでいました。

そして目の前には、赤い髪をした美女が……!?

著者
渡辺 恒彦
出版日
2012-09-28

小説投稿サイト「小説家になろう」で総合ランキング1位を獲得し、書籍化された作品です。2017年には漫画化もされ、青年漫画雑誌「ヤングエース」での連載も始まりました。

主人公の山井善治郎は、ブラック企業に勤める24歳のサラリーマン。社会人になってからずっと働いてはいるものの、休日もろくにとれない状況に嫌気が差していました。

そんな彼が、めったに取れない貴重な休日を満喫しようとしていたまさにその日、カープァ王国という異世界に召喚されてしまいます。

善治郎を召喚したのは、カープァ王国の王女で彼と同じ25歳の王女、アウラ・カープァです。彼女は赤い髪と小麦色の肌が特徴の長身の美女で、自分の婿にするために善治郎を召喚したのでした。

どうして彼が選ばれたのか、それについても作中できちんと描かれており、同時に善治郎の意外な出生の秘密にも繋がっていくので要チェックです。

もともと働くことに嫌気が差していた善治郎は、子作り以外何もしなくていいと言われ、アウラと結婚してゼンジロウ・カープァとして異世界での生活を始めました。しかしそこは一国の王女の婿。何もしなくてもいいと言われても、政治や社会のトラブルは多く、彼も否応なく巻き込まれていくのです。

設定はライトノベルの王道である異世界ものですが、召喚された主人公が王様や勇者になって大活躍する……というわけではなく、王女として忙しくするアウラを内助の功のごとく支えるという関係は、どこか新鮮さを覚えます。

また善治郎は、異世界に現代のものを自由に持ちこむことができ、そのことがストーリー上で重要な設定になっていきます。異世界ものでは元の世界に戻れずに苦労する主人公が描かれることも多いですが、この点でも一風変わった作品だといえるかもしれません。

1巻の表紙に描かれているのがヒロインのアウラですが、パッと目を引くのはやはりそのグラマラスな雰囲気。作中でも子作りに励む善治郎が描かれるなど大人っぽいシーンも多い本作ですが、そのような色気を胆なイラストで彩っています。ちょっと大人なライトノベルといえるかもしれません。

美しさは国を滅ぼす兵器となる

「世界一の美しさ」を持つ阿岐ヶ原(あきがはら)国の王女・サクラコは、その美しさを利用しようとするディドル・オルガによって囚われの身となってしまいます。

利用されることを嫌った彼女は自ら命を投げ出そうとしますが、それを救ったのは牢番の少年・ナギでした。

著者
犬村 小六
出版日
2014-08-08

囚われの姫君と牢番の少年との恋愛を描いたボーイ・ミーツ・ガール作品です。作者は『とある飛空士への追憶』で知られる犬村小六で、本作でもどこか歪んだ世界のなかで美しく真っ直ぐな青春と恋愛の物語が紡がれています。

サクラコを捕らえているのは、ディドル・オルガという魔法使い。彼は自国の知事であり科学者で、絶大な力を持っています。サクラコの「世界一の美しさ」を原子炉に利用し、自国以外の7つの国を滅ぼそうと企んでいました。

利用されることを嫌ったサクラコは、自ら捕らわれていた塔から身を投げようとするのですが、それを助けたのがナギという少年です。実は、彼もまたオルガの手によって作られた生物兵器でした。2人は互いに心惹かれるようになり、遂にはオルガからの逃亡を試みます。

2人の感情の機微が巧みな文章で繊細に描かれているので、読者も読んでいるうちにどんどん引き込まれていくでしょう。後半に差し掛かってくると手に汗握るバトル展開もあり、最後まで目を離すことができません。

外見の美しさとともに誇り高いサクラコですが、お姫様らしいわがままなところもあって、そんな彼女に振り回されるナギがコミカルに描かれるところもあります。

作中で「世界一の美しさ」と表現されているサクラコのイラストは、とても瑞々しく幻想的。透明感のあって美しく、どこか切ない本作にピッタリです。ボーイ・ミーツ・ガール好きは必見の一冊なので、ぜひチェックしてみてください。

文倉十が少年少女たちの切ない青春を描く

女子高生の左女牛明海(さめうしあけみ)は、ある日珍しい相手から電話を受けました。

相手は、同級生の神野真国(こうのまくに)。かつて図書委員で一緒になったことはありますが、日頃から話をするような相手ではありません。

不審に思いつつも電話に出た明海に、真国は奇妙な告白をしてきて……?

著者
森田 季節
出版日

MF文庫Jライトノベル新人賞で優秀賞を受賞した作品です。3人の高校生の男女を主軸にしたラブストーリーですが、その味付けはとても奇妙で、独特な雰囲気を持っています。

メインとなるのは、左女牛明海、神野真国、そして栄原実祈(さかえばらみのり)の3人。明海が真国からの電話を受けたことで物語が動き出します。

「僕、女の子を殺したんだ」(『ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート』より引用)

真国はいきなりこう告げてきました。最初は恐怖を感じる明海でしたが、真国から「イケニエビト」という言葉が飛び出したのをきっかけに、すぐに彼の話を理解します。明海も「イケニエビト」の存在を知っていました。彼女もまた、過去に女の子を殺したことがあったのです。

「イケニエビト」という都市伝説のような存在を知る明海と真国、そして実祈の3人は、その存在を知っているがゆえに自分たちの気持ちを振り回されてしまいます。

「イケニエビト」の運命を左右する「タマシイビト」というものも存在し、これが本作の重要なキーワードです。

奇怪な都市伝説を巡りながらも交流を深め、3人はそれぞれ密かな想いを抱くようになりますが、そんな甘酸っぱい恋愛感情の先に待っているのは決してハッピーエンドではありません。それがまた読者の心を切なく打ってくれるでしょう。

思春期の少年少女の内面を生々しく描いているのも本作の特徴のひとつで、読みながらハッとすることも多いかもしれません。

そんな独特の世界観をもった作品のイメージをより膨らませてくれるのが、どこか影を背負ったような表情をするキャラクターのイラストです。笑顔なのに悲しそうに見える彼らは、本作の切ない雰囲気にピッタリ。3人の少年少女たちがどんな結末を迎えるのか、ぜひ手に取って確認してみてください。

いかがでしたか?文倉十がイラストを描いたライトノベルは他にもたくさんありますし、漫画やゲームなども手掛けているので、気になる方はぜひチェックしてみてください。

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