竹岡美穂がイラストを描くおすすめラノベ5選!儚げで繊細な画風

更新:2021.12.8

儚げなイラストで人気のイラストレーター、竹岡美穂。ライトノベルをはじめ、一般文芸のイラストなども手掛けています。今回は、特におすすめのライトノベルにスポットをあててご紹介します。

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竹岡美穂とは

コバルトイラスト大賞を受賞した後、「コバルト文庫」をはじめ「ガガガ文庫」や「ファミ通文庫」などの少年・少女向けのライトノベルのイラストのほか、一般文芸の挿絵も手がける幅広い活躍をしている竹岡美穂。

そのほかCDジャケットやゲームのイラストなどにも関わっており、可愛いけれどよくある萌絵とは一風変わった繊細な雰囲気が特徴です。世代や性別を超えて多くの人から支持されています。

 

竹岡美穂が描くキレイで優しい物語

「Keinez(赤)」、「Ruguz(青)」、「Surisuz(黄)」、「Beorc(緑)」、「Arzus(白)」……五色の色と名前を使い、物や生物を呼び寄せる召喚術の名詠式。

そんな名詠式を学ぶエルファンド名詠学舎に通うクルーエルは、ある日、ネイトという少年と出会います。彼は、五色を基本とする名詠式のなかで異端とされる「夜色名詠」を学んでおり……。

著者
細音 啓
出版日

「ファンタジア長編小説大賞」で佳作を受賞した作品。ストーリーもキャラクターも澄んだ印象を受ける物語です。

本作の世界の根本となるのが、名詠式という召喚術。赤色の花を呼び寄せたかったら赤色のものを、青色の鳥を呼び寄せたかったら青色のものを使うなど、色と名詠式を使って術を発動させることができます。

そんななかで異端とされるのが、五色以外の色を使う夜色名詠。それを使うのが、ネイトという13歳の少年です。

彼は努力家でひたむきな性格をしていて、クルーエルとの出会いをはじめさまざまな出来事をとおして成長していくことになります。一方のクルーエルは、あねご肌の世話焼きですが、根は優しい女の子。本作は2人のボーイ・ミーツ・ガールでもあり、成長物語でもあるのです。

このようなキレイな世界観に彩りを添えるのが、竹岡美穂のイラストです。物語の優しい雰囲気にピッタリで、イメージをより掻き立ててくれるでしょう。

 

何が真実なのか……謎が謎を呼ぶ

少年Kが自殺した理由……それはクラスメイトの菅原拓によるイジメでした。しかし、菅原はクラスでも目立たない地味な少年。一方のKは勉強もスポーツもできるクラスの人気者。2人に関わりがあったとはとても思えません。

Kの自殺の謎を追いかける姉と菅原によって、その真実が明かされていきます……。

著者
松村涼哉
出版日
2016-02-10

電撃小説大賞で大賞を受賞した作品。物語は、自殺をした天才少年のKに何があったのか、その真実を追いかけるKの姉、香苗と、Kをいじめたとされている菅原の2人がメインになって進んでいきます。

香苗は弟がどうして死んだのか、その真実を知るために頑張る行動派ですが、どこか天然なところもある優しい女の子。一方の菅原は地味で目立たない少年で、いわゆるスクールカーストでは底辺にいるような存在です。

そんな彼が本当にKのことを自殺をするまでに追い詰めたのでしょうか。だとすればどうやって?

次々に謎が浮かびあがりますが、2人はさまざまな人物から話を聞くことで徐々に真実に近づいていきます。しかし当のKが死んでしまっているため、誰が本当のことを言っているのかわかりません。

ただ、菅原がただの地味な少年ではないということはわかってきて……。

現実世界を舞台にくり広げられる「いじめ」をテーマにした物語は、ともすればライトノベルらしくなく、読んでいて辛くなることもあるかもしれません。ただ読後にふと考えてしまう、心に響く物語です。

竹岡のイラストは、どこか陰がありつつも儚げな青春ミステリーを思わせるもの。肌寒ささえ感じさせるような透明感のあるイラストがストーリーを支えます。

 

竹岡美穂の人気作「文学少女」シリーズ!

「炎の闘牛」と呼ばれる、柔道部の牛園。そんな彼が恋をした相手は、文芸部の天野遠子でした。

牛園は文芸部員である心葉に協力をしてもらい、何とか遠子に告白をしようと試みますが……!?

著者
野村 美月
出版日
2008-12-26

人気ライトノベル「文学少女」シリーズの番外編ともいえる、10の物語を収録した短編集です。「文学少女」シリーズは、文芸部の部長で大の物語好きの天野遠子(あまのとおこ)と、なかば彼女に巻き込まれる形で文芸部に所属している少年・井上心葉(いのうえこのは)を中心にくり広げられる物語です。

遠子は大和撫子を思わせる清楚な見た目ですが、食べてしまうほど物語を愛していて、文字どおり紙ごと物語をむしゃむしゃ食べてしまう少し変わった女子高生。心葉はそんな遠子のことを「妖怪」と呼びますが、彼女は「文学少女」だと言い張ります。

一方の心葉は、14才の時に謎の覆面美少女作家として社会現象も巻き起こしたことがある少年です。ある事件をきっかけに作家を辞めていましたが、遠子に巻き込まれて文芸部に入り、しだいに彼女と仲良くなっていきました。

本作には、遠子と心葉と、彼らを取り巻く人たちを描いた10編が収録されています。柔道部で「炎の闘牛」と呼ばれている少年の片想いを描いた「文学少女と恋する牛魔王(ミノタウロス)」や、ボート部のゴタゴタをなぜか遠子が活躍して解決してしまう「文学少女と革命する労働者(プロレタリア)」など、いずれも恋愛をテーマにした物語になっています。

ひとつひとつが物語として完結しているので、「文学少女」シリーズを知らない方でも存分に楽しめるでしょう。竹岡のイラストは本編シリーズでもおなじみです。透明感のある儚げな画風で、遠子や心葉のイメージにピッタリ。シンクロ率100%の挿絵になっています。

 

源氏物語風な学園ロマンス

生まれつき凶悪な顔立ちのせいで、ヤンキーにしか見られない高校生の赤城是光。学校でも浮いた存在です。

そんな彼に、ある日突然「学園の皇子」であるヒカルが声をかけてきました。

しかしヒカルは事故で死亡したはず……そう、是光に声をかけてきたのは、ヒカルの幽霊だったのです。

著者
野村 美月
出版日
2011-05-30

ヤンキーだと誤解されて孤独な生活を送っていた是光と、金持ちの息子で女子から絶大な人気を誇っていたヒカル。

ヒカルは幽霊として登場するのでファンタジー要素はありますが、基本的には現代の学園を舞台にした青春ロマンスです。

彼が是光に話しかけてきた理由は、自分の「心残り」を解消するためでした。それは、「葵の上」と呼ばれる左乙女葵に関わること。

強力することになった是光ですが、もともとヤンキーだと勘違いされているため、なかなか近付くことができません。そうこうしているうちにヒカルの死に関するある事実も浮かびあがってきて……。

「葵の上」という通称からもわかるように、モチーフにしているのは『源氏物語』。巻数を追うごとに、対象となる新たな女の子が登場するのも納得です。女の子によって物語の雰囲気も変わるので、飽きることなく読むことができるでしょう。

竹岡のイラストも、どこか和風のイメージです。淡い色使いの美少女たちはしっとり艶っぽく、物語の世界観とよく合っています。

 

竹岡美穂が描く吸血鬼が演じるドラキュラの儚い物語

バスケの強豪校に通う詩也。毎日練習に打ち込む日々が続いています。しかしその努力とは裏腹に、部内ではなかなか芽が出ずにいました。

そんなある日、突然通り魔に襲われてしまいます。雫という不思議な少女に助けられて一命はとりとめたものの、その代りに詩也は吸血鬼になってしまい……!?

著者
野村美月
出版日
2014-05-30

吸血鬼になってしまった詩也は、演劇に打ち込んでいるある少女と出会い、彼女とともに少しずつ運命を受け入れていきます。ライトノベルではよく登場する吸血鬼ですが、本作がおもしろいのは、彼が演劇部で吸血鬼を演じるというところです。

吸血鬼になった彼は高い身体能力を手に入れ、自分が普通でないことを実感していきます。すると、これまで大好きだったバスケも続けられなくなってしまったのです。そして高校を転校し、出会ったのが綾音という演劇少女でした。

彼女は自身の高い身長にコンプレックスを抱いており、詩也であれば自分の相手役ができると、彼を演劇部に誘ったのです。

そこで演じることになったのがドラキュラ伯爵。こうして、吸血鬼が吸血鬼を演じるというどこか皮肉でユニークな展開になっていきます。

ファンタジーな設定ではありますが、人とは違うことに悩む、誰でも持っている感情が繊細に描かれており、共感することができるでしょう。綾音も詩也と交流するうちに、しだいに彼の苦しみに気づき、そして同時に恋心を抱いていくのです。

そんな静謐な物語に、竹岡のイラストはピッタリ。どこか遠くを見ているような綾音の目や、憂いを帯びた詩也が印象的です。


いかがでしたか?竹岡美穂は、今回ご紹介した他にもさまざまなジャンルでイラストを手掛けています。ライトノベル以外の本棚でもふと見かけることがあるかもしれません。ぜひ手にとってみてくださいね。

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