小説『うちの執事が言うことには』の魅力を全巻ネタバレ紹介!映画化決定!

更新:2021.11.14

講談社のキャラクター文芸の人気シリーズ『うちの執事が言うことには』。上流階級の存在する日本で、若き当主と執事が日常の中に隠された事件を解決していくライトミステリーです。 映画化も決まり、ますます人気の高まりが期待されるキャラクター小説のファーストシーズン全9巻をご紹介します。

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『うちの執事が言うことには』登場人物1:鳥丸花穎(からすまかえい)

著者
高里 椎奈
出版日
2014-03-25

 

烏丸家27代目の若き当主。長くイギリスに留学していましたが、18歳の時、父親が突然当主を引退すると言い残し旅に出てしまったため、家督を継ぎ烏丸家の当主となりました。

当主としては新米、性格もそれほど社交的ではない眼鏡男子。生まれつき人より優れた色彩感知能力を持っており、映画のような色鮮やかなものを長時間見るのは苦手です。

 

『うちの執事が言うことには』登場人物2:衣更月蒼馬(きさらぎそうま)

著者
高里 椎奈
出版日
2014-07-25

 

烏丸家の新しい執事。執事としてはまだ若い22歳ながら、前任の執事・鳳から仕事を受け継ぎ、花穎の身の周りの世話を始め、他の使用人とともに烏丸家に関わる様々な仕事をそつなくこなす優秀な青年です。

鳳のことを心から尊敬しており、彼から受け継いだ懐中時計をとても大切にしています。冷静沈着な性格ですが、花穎と衝突することもしばしば……。

 

『うちの執事が言うことには』登場人物3:赤目刻弥(あかめときや)

名門・赤目家の御曹司。現役大学生ながらパティスリー「アントルメ・アカメ」のオーナーを務める青年です。

物語の当初から何かと不穏な動きを見せており、いい人なのか悪い人なのかよくわからないタイプ。シリーズ中盤でその目的が明かされます。

小説『うちの執事が言うことには』1巻の見所をネタバレ紹介!

18歳の烏丸花穎は、ある日突然、父親から当主を引退すると告げられます。父親は烏丸家の26代目当主。その引退はつまり、花穎が27代目投手となることを意味していました。

突然のことで驚きを隠せない花穎でしたが、実は密かに喜んでもいて……!?

著者
高里 椎奈
出版日
2014-03-25

父親の突然の引退宣言により27代目烏丸当主となった花穎。18歳の少年にとってはまさに寝耳に水の状態で驚きを隠せないのですが、実は当主となったことで叶うであろう願いが1つありました。それは、頼りにしている執事の鳳が自分のものになるということ。

花穎は幼い頃から鳳を頼りにしていたので、当主になることに不安はあっても、鳳がいれば大丈夫だと思っていたのです。しかし、そんな願いは虚しく、花穎の前に新しい執事として現れたのは、衣更月蒼馬という男でした。

当主と執事がメインのミステリーと言うと、何となく執事が探偵役かな?と思う方は多いかもしれません。しかし、本作での探偵役は執事ではなく、当主の花穎です。執事の蒼馬は花穎の推理を助けるどころか、むしろ当主であり主人であるはずの花穎に向かって「クソガキ」と言い放ってしまうような人物。蒼馬は花穎のことを主人とは認めていなかったのです。

執事というと有能で丁寧で主に従順というイメージがありますが、それを全て壊してしまう辺りも本作の面白いポイント。物語は1話完結で、1巻には3話の物語が収録されています。ミステリー自体もそれほど複雑ではないので、さらっと一気に読み終えることができるでしょう。花穎と蒼馬がこれからどういう関係になっていくのかも気になる第1巻です。

小説『うちの執事が言うことには』2巻の見所をネタバレ紹介!

烏丸家の27代当主となった烏丸花穎は、ある日、執事の蒼馬とともに青山にある、イギリスでも通ったことのある紳士服ブランドの店へやってきました。しかし、そこで店長の黄木丈紀から、とある家の女性が店の借金を踏み倒して姿を消すという話を聞いて……。

著者
高里 椎奈
出版日
2014-07-25

当主と執事による上流階級ミステリーの第2弾。本巻には、「嘘吐き主人と真実の鏡」、「狼と七匹の仔山羊」、「三本の木」の3編がメインで収録されています。ボリュームはそれほど多くないので、前巻と同様、さらっと読むことができるでしょう。

本巻では、何かと謎の多い執事・衣更月蒼馬の生い立ちや、彼が心酔している前任の執事・鳳との出会いなどが明かされます。キャラクターの後ろにあるものがわかって来ると、読者としては物語に奥行が感じられてますます面白くなってきますね。

収録されている話の中には、花穎の持って生まれた特殊能力である人よりも優れた色彩感知能力だからこそ解ける話もあり、本シリーズだからこその魅力溢れるミステリーを楽しむことができます。

また、イギリスでの花穎の恩師でもあるナイルが登場したり、赤目刻弥(あかめときや)の放つ謎めいた言葉があったりと、今後の展開がますます気になる伏線もあります。一気に読めるライトさがありつつも、ストーリーは前巻よりも厚みを増した1冊になっているので、前巻以上の期待を持って読める第2巻です。

小説『うちの執事が言うことには』3巻の見所をネタバレ紹介!

烏丸家の当主となった花穎は、父親の真一郎と付き合いのある斎姫家(さいきけ)のご隠居・長十(ちょうじゅう)が入院したと聞き、見舞いに訪れます。しかし、必要以上に厳重な護衛を不信に思った花穎は、長十から院内で妙な出来事が続いているという話を聞き……。

著者
高里 椎奈
出版日
2014-11-22

当主になりきれない花穎と従順のように見せかけて従順ではない執事・蒼馬の上流階級ミステリー第3弾。

花穎と蒼馬の関係は相変わらずデコボコで、蒼馬は一片の隙もなく執事としての仕事をこなす一方、丁寧な言葉で花穎を挑発したりしていますし、花穎もそんな蒼馬に怒ったり悔しがったりといろいろな気持ちを抱いています。執事ものと呼ばれる作品は主を助ける有能な執事というタイプが多いですが、主従関係でありながらどこか対等な関係にも見える2人のキャラクターは、本作ならではの魅力です。

しかし、そんな2人の関係が本巻では大きく動くことになります。また、1巻から登場している赤目刻弥の思惑が明らかになるなど、シリーズを通しての重要なポイントが描かれているので見逃せません。

1巻から1話完結のミステリーとして楽しめる本作ですが、1巻から本巻までをひとくくりとして考えると、いろいろと納得できるものもあるかもしれません。2巻から、3巻から読み始めても楽しめる本シリーズですが、やはり1巻から読んだほうが本巻を楽しめることは間違いないでしょう。

本巻に収録されているのは、「水牛と星祭り」「お祖母さんの古時計」、「狼少年と裏切り執事」の3編がメイン。特にラストは意外な展開に驚きを隠せない必読の1話。ぜひ楽しんでみてください。

小説『うちの執事が言うことには』4巻の見所をネタバレ紹介!

若干18歳で烏丸家の当主となった花穎ですが、当主としての仕事は、執事の蒼馬が用意する書類を読んだり世間の情報を集めたりするくらいでした。

そんな中、烏丸家の当主として、芽雛川(めひながわ)家のチャリティパーティーに参加することになった花穎。船上パーティーに参加した花穎でしたが、そこで船から人が落ちたと騒ぎが起こり……!?

著者
高里 椎奈
出版日
2015-03-25

ギクシャクした関係だった当主の花穎と執事の蒼馬でしたが、前巻でその関係も大きく変わり、本巻からはなんとなく息の合った雰囲気になっている2人。新章突入と銘打たれている通り、本巻を区切りにあらためてシリーズがスタートしているといった感じです。

そんな本巻に収録されているのは主に「永遠の国の王子様」、「生命の木と魔法のお菓子」、「王子と乞食と仮面の執事」の3編。花穎と蒼馬の関係が落ち着いた事や赤目刻弥の思惑が前巻で明らかになっていることもあり、他の要素に気を取られることなく純粋にミステリーを楽しめるようになっています。

船上パーティーが舞台となっている「永遠の国の王子様」は、舞台設定もミステリーの定番で、また以前に登場したキャラクターも出てくるので、ここまで順番に読んできた方にとってはいろいろな見方が出来るかもしれません。

3話目「王子と乞食と仮面の執事」は、蒼馬視点の物語。執事として完璧な彼が少し変わる、そんなエピソードを楽しむことができます。シリーズ新章の第1弾でもある本巻を、ぜひ気分一新して楽しんでみてください。

小説『うちの執事が言うことには』5巻の見所をネタバレ紹介!

烏丸家の新米当主である花穎は、毎日執事の蒼馬が用意する書類に目を通し印を押す日々を送っていました。新米とはいえ、毎日毎日書類仕事ばかりして退屈しない訳はなく、花穎はうんざりしてしまいます。そんな時、蒼馬が地下に存在するというシアタールームの話を持ち出してきて……。

著者
高里 椎奈
出版日
2015-07-25

新米当主と執事の上流階級ミステリーも第5弾になり、2人の関係を始め、ミステリーの流れや世界観の雰囲気も安定感を増してきました。前巻から新章に突入し、花穎と蒼馬の関係も息が合い始めていましたが本巻でもそれは同じで、2人の関係に安心感がある分、ミステリーに集中して楽しむことができます。

一方、ミステリーではないキャラクターにまつわる話などにも注目です。本巻は「嘘吐きの名前と魔法の鍵」、「綺羅星の集まる所」、「七人の小人と秘密の執事」の3編がメインで収録。18歳でいきなり当主となった花穎が、同世代の人物と交流することで自分の人生について考えたり、そもそも花穎を当主に据えた原因である父親で前当主の真一郎の過去が描かれたりしています。

シリーズも第5弾となると、多少のマンネリ感が出てきてしまうこともありますが、気になるキャラクターの過去エピソードなども入れられていて、読者の興味を保たせてくれるでしょう。

小説『うちの執事が言うことには』6巻の見所をネタバレ紹介!

年の瀬も迫る頃、クリスマスを前に、執事の蒼馬は主人の花穎から、クリスマスの晩餐はいらないと告げられ、少し落ち込んでいました。年末と正月の準備に追われながら、かつクリスマスの晩餐の準備をすることは大変なことですが、それをすることこそ執事の腕の見せ所だったからです。そんな蒼馬に、花穎が差し出したのは使用人用の舞踏会への招待状で……?

著者
高里 椎奈
出版日
2015-11-25

新米当主と冷静沈着な有能執事による上流階級ミステリー第6弾。

本巻は、クリスマスが舞台の物語から始まります。常に冷静で感情を表に出さない蒼馬が、クリスマスの晩餐が必要ないと言われて内心で落ち込んでいたり、花穎が行かないと思っていたオーケストラコンサートに行くと言い出したことに驚いたり、ちょっと可愛らしい蒼馬の内面が描かれていて、冒頭から思わずクスリと笑ってしまいます。

本巻に収録されているのは主に「シンデレラと身元鑑定人」、「蔵のネズミと鉄の鍵」、「夢見る執事と白鳥の子」の3編です。本巻での見所は、蒼馬の過去エピソード。以前にも蒼馬の過去に触れたエピソードはありましたが、本巻では蒼馬が烏丸家に入るために前当主の真一郎に直談判した話などが描かれています。また、花穎と蒼馬の知られざるエピソードもあり、そうだったのか、と思ってしまうことの多い一冊です。

他にも、烏丸家と関わり合いのある上流階級の家柄や主従関係の歴史のようなものが垣間見られ、物語の世界観をよりくっきりと感じられこともあるでしょう。ミステリーもほのぼのも感じられる第6巻です。

小説『うちの執事が言うことには』7巻の見所をネタバレ紹介!

花穎が烏丸家の当主となってそろそろ1年。同じ頃に烏丸家に入った使用人も仕事に馴染んできたらしく家は至って平穏でした。

しかし、そんな頃になって、花穎は小さな違和感を覚えるようになります。絨毯、クローゼット、浴室……どれも些細なことでしたが、いつもと違う不審な出来事が起こるようになっていて……。

著者
高里 椎奈
出版日
2016-03-25

上流階級ミステリー第7弾となる本巻では、物語が大きく動く出来事が起こります。

本巻に収録されているのは、「小人の住む館」、「開かずの赤ずきん」、「幸福な王子と不動の執事」の3編。色彩に関して人より鋭い感覚を持つ花穎は、その才能を活かして美大への入学が決まり、蒼馬はなんと、執事の任を少し離れることになるのです。

蒼馬の代理としてやってきたのは、ヴァズという穏やかな青年でした。彼は蒼馬の執事養成学校の同期なのですが、彼に絡んだ事件が発生するなど先がどうなるのか気になる展開が続いていきます。18歳でいきなり家督を継ぎ、当主としてはまだまだ新米の花穎が、蒼馬を始め、家で働く使用人達との絆を深め、少しずつ当主として成長して行く姿も微笑ましく読むことができるでしょう。

美大に入学することで花穎の世界も広がり、物語の幅もさらに広がりました。これからまた新たなステージが用意されていると思うと、また次が楽しみになっていきます。新しい展開を迎える第7巻をぜひ読んでみてください。

小説『うちの執事が言うことには』8巻の見所をネタバレ紹介!

14年ぶりの旅行に浮き足立つ烏丸家の当主・花穎。しかしその旅行は、気楽な物見遊山ではなく、一ノ宮グループ総帥・一ノ宮光史郎の招待を受けてのことでした。当主として恥ずかしくないようにと招待主のデータを覚えつつ一ノ宮家の別荘へとやってきた花穎でしたが、突然火事騒ぎが起きて……!?

著者
高里 椎奈
出版日
2016-07-23

第8弾上流階級ミステリーとなる本巻。収録されているのは、「三人の当主と狼と」、「人魚男」、「不用の笠と狐の墓守り」の3編がメインです。

美大に入学したことで花穎の世界も広がり新しい友達も出来ているようです。花穎と蒼馬の関係は相変わらずで、信頼関係が深まっているのは間違いありませんが、まだまだ成長中といったところでしょうか。

本巻は、火事の話から始まり、誘拐、立て籠もり、墓荒らしとちょっと物騒なことが続きますが、どんなことでも首を突っ込みたがってしまう花穎のキャラクターはやはり魅力的です。そんな彼の周りを引っ掻き回す役といえば赤目刻弥ですが、本巻は彼の登場率も高め。刻弥が好きな方にとっては嬉しい1冊です。

また、長十の孫で5歳の男の子・頼長の大人っぽさにも注目。すでに登場済のキャラクターですが、本巻では彼視点の話もあり、その可愛さを充分楽しむことができるでしょう。

小説『うちの執事が言うことには』9巻の見所をネタバレ紹介!

久しぶりに愛馬の白妙に乗るため厩舎を訪れた花穎と蒼馬。久しぶりに会うのに自分のことを覚えていてくれたらしい白妙を見て嬉しさを感じていた花穎でしたが、突然、落ち着きを失った白妙に踏まれてしまいそうになり……!?

著者
高里 椎奈
出版日
2016-11-25

半熟主従による上流階級ミステリーの第9弾。ファーストシリーズが完結する巻でもある本巻は、「賢者の懐中時計」、「ロバの耳」、「眠れる森の」の3話の他にエピローグも収録されています。完結編らしく、シリーズ最大の危機が花穎と蒼馬の2人に振りかかります。

花穎の危機を救ったがために2人の間に亀裂が入ってしまったり、執事としての在り方に悩む蒼馬や、そんな蒼馬を解雇する花穎、命を狙われる各家の当主達……とハラハラする展開が続く9巻。同時に、花穎の通う美大を舞台にした話は蒼馬の登場しないエピソードで、花穎の世界がどんどん広がっていっていることを感じることができるでしょう。もちろん、いろいろとあっても最終的には決着を付けるので安心して最後まで読むことができます。

ファーストシリーズは本巻で完結ということですが、新シリーズも始まっているので、ここまで読んで本シリーズを気に入った方は、ぜひ新シリーズもチェックしてみてください。

いかがでしたか? 執事もののミステリーは他作品にもありますが、本作の特徴は何と言っても、最初はギクシャクしていた主人と執事が少しずつ理解し合い、関係を築いていくという過程があることです。

また、上流階級の華やかな世界観や、名門の当主という立場だからこその葛藤なども丁寧に描かれており、ミステリー以外にも様々な楽しみ方のある作品をぜひ読んでみてください。

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