5分でわかる三権分立の仕組み!三権の関係、アメリカやフランスの事例を解説

更新:2021.11.15

国家権力の暴走を防ぐために提唱された「三権分立」。近代国家を成り立たせるものとして、必要不可欠です。この記事では、具体的な内容とそれぞれの権力の関係性、基礎を築いたイギリスやフランスの歴史、アメリカの特徴などをわかりやすく解説していきます。あわせておすすめの関連本も紹介するので、ぜひチェックしてみてください。

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三権分立とは。簡単に解説

 

国の持つ権力を「立法権」「司法権」「行政権」の3つに分割し、それぞれを独立した機関に分担させる制度のことです。

古来より、世界各地でさまざまな形態の君主制が成立してきました。しかし君主制は君主のもとに権力が集中しやすく、しばしばその暴走が問題視されてきました。三権分立は、権力が1ヶ所に集中することを防ぐために作られたのです。

具体的には、それぞれの権力がお互いに抑制しあう関係を築くことで、暴走を防ぎ、国民の権利と自由を守ろうとしています。

そのため国民も三権分立に関与することができます。日本では選挙や世論、国民審査などによってその影響力を行使している状況です。

今日では、三権分立は近代的な法治国家が機能するために必要不可欠だとされていて、日本をはじめとする多くの国家がこの考えを統治機構に導入しています。

日本の三権分立の内容と関係。警察はどこに属する?

 

日本では、「日本国憲法」の規定により三権分立の制度が整えられています。具体的には、

「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である」(第41条)
「行政権は、内閣に属する」(第65条)
「すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する」(第76条第1項)

このように記されていて、「立法権」は国会、「行政権」は内閣、「司法権」は裁判所にそれぞれ属しています。

それでは、それぞれの機関はどのように権限を行使し、どのようにほかの権力を抑制しているのでしょうか。

まず国会の有する「立法権」は、法律を制定することができる権限です。

また内閣を抑制するために、内閣総理大臣を指名する権限、衆議院に対しては内閣不信任の決議を提出する権限が与えられています。さらに裁判所に対しては、「弾劾(だんがい)裁判所」を設置し、問題のある裁判官を辞めさせることができます。

次に、内閣の有する「行政権」は、国会の制定した法律を実際に運用する権限です。

国会に対しては、内閣不信任決議に対抗して衆議院を解散する権限を持ち、裁判所に対しては最高裁判所長官を指名する権限を持っています。その他の裁判官の任命も内閣がおこなうことが認められています。

そして、裁判所の有する「司法権」は、社会のなかの争いを法に沿って解決する権限です。

また、国会が制定した法律や内閣の施策が憲法に違反していないかをチェックする「違憲審査」を実施することが認められています。

ちなみに、警察については、行政権に属するのか司法権に属するのか、国によって解釈が分かれています。日本の場合、「犯罪の捜査、容疑者の逮捕」については戦前の大日本帝国憲法では司法権に属する「司法警察」であると考えられていました。しかし今日の日本国憲法では、行政権に属する「行政警察」として位置づけられています。

三権分立の歴史。フランスの思想家モンテスキューが体系化

 

三権分立の概念は、近代以後の欧米社会で発達してきました。

17世紀、イギリスで「ピューリタン(清教徒)革命」と「名誉革命」が起こります。これがきっかけとなり、イギリスでは王権に制限がかけられ、二院制の議会政治が始まることとなりました。

その後18世紀に入ると、「啓蒙思想」が盛んになり、王政を批判して基本的人権を尊重する市民社会の成立を目指す動きが始まります。その一環として、フランスの思想家モンテスキューは、1748年に『法の精神』を刊行しました。彼はこの著作を通じて、イギリスの議会政治を模範として三権分立の概念を示しつつ体系化しています。

『法の精神』は欧米社会に大きな影響を与えることとなり、各国で三権分立が統治機構に取り入れられるようになりました。

1787年には、三権分立を盛り込んだ最初の憲法として「アメリカ合衆国憲法」が制定されます。

その後フランスでも、革命を経て憲法に盛り込まれ、その理念は「ナポレオン戦争」を通じてヨーロッパ各地へ拡散していきました。

またヨーロッパだけでなく、日本でも1868年に三権分立を盛り込んだ「政体書」を発布。世界各地にこの仕組みを取り入れた統治機構が整備されていったのです。

アメリカの三権分立の特徴は?

 

上述のとおり、アメリカは三権分立を最初に憲法で規定した国家です。そして、三権の分離が厳格になされているという特徴があります。

たとえば日本やイギリスは、「議院内閣制」を採用しており、国民が立法をおこなう国会議員を選出し、その国会議員のなかから議員たちが行政府の長となる内閣総理大臣を選ぶ形式を取っています。つまり、内閣は国会の信認に基づいて成立しているので、内閣は国会に対して連帯責任を負うことが定められているのです。

一方でアメリカは、「大統領制」を採用しています。国民は立法をおこなう議会と行政の長である大統領を別々に選出。そのため大統領は議席を持っておらず、国会に責任を負う必要はありません。このことから大統領は、内閣総理大臣と比較すると、より独立性が強い役職だといえるでしょう。

このように、「議院内閣制」は立法と行政の分離が緩やかなのに対し、「大統領制」はより厳密に分離しています。どちらも三権分立を取り入れた制度ですが、国民性や政治体制に応じてそれぞれの形が選択されているのです。

齋藤孝が小中学生にもわかるように日本国憲法を解説

著者
齋藤 孝
出版日
2015-07-30

 

タイトルのとおり、小中学生向けに日本国憲法を解説している作品です。条文の漢字にルビが振ってあるだけでなく、条文の内容をイラスト化したうえで解説しているため、よりイメージをともなって理解することができるでしょう。

著者の齋藤孝は、「知識は、体をアクティブに使うことでより定着する」と考えています。憲法の条文も、自分のなかに定着させるために本文を音読してほしいそうです。

上述したとおり、三権分立は日本国憲法によって規定されているものです。本書を声に出して読むことで、より具体的に成り立ちや意義を知ることができるでしょう。

三権分立も理解できる!池上彰が日本国憲法の条文を大胆に意訳した一冊

著者
池上 彰
出版日
2015-04-17

 

日本国憲法の全文をまとめた作品です。筆者の池上彰が、難しい文章をわかりやすく意訳してくれているため、とっつきやすくなっています。

また、条文を列挙するだけでなく、条文に関する時事的なトピックも紹介。さらに条文を他国の憲法や自民党の改憲案と比較するなど、さまざまな工夫が盛り込まれています。本書を読むことで、憲法をより具体的に把握することができるでしょう。

三権分立についても、条文が実際の運用にどのように反映されているのか解説されています。改憲問題が取りざたされる今日、憲法の規定が私たちの日常にどのように関わっているのかを知るためにも、本書を読んでみるといいかもしれません。

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