『イリアス』を簡単に解説!あらすじ、『オデュッセイア』との違いなど

更新:2021.11.15

『イリアス』は古代ギリシャ最古期の英雄叙事詩。伝説の戦争であるトロイア戦争の10年目、その数十日間の部分が描かれています。 この記事では、そんな本作のあらすじから結末まで、要点を押さえて解説。ぜひ最後までご覧ください。

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『イリアス』のあらすじ、概要を簡単に解説!ギリシャ神話を元にした長編叙事詩

 

本作はギリシア神話のひとつであり、ゼウスによって導かれたトロイア戦争10年目の約50日間の部分が描かれている、ヨーロッパ最古の叙事詩です。

まず聞きなれない方もいらっしゃると思うので、叙事詩について簡単に触れておきます。

叙事詩とは、物事や出来事を記述した文であり、ある一定程度の長さがある文章のことをいいます。一般的には民族の英雄や神話、民族の歴史として語り伝える価値のある事件を、物語形式として語り伝えるもののことを指すのです。

つまり本作はフィクションではなく、ノンフィクションということになります。ただ、語り継がれてきているものを書いているため、本当のことかと問われると、そこは誰もわかり得ないというのが事実でしょう。

著者
ホメロス
出版日
1992-09-16

 

さて、本編に話は戻します。本作に登場するトロイア戦争は、アガメムノンを総大将とするアカイア軍と、トロイア軍との戦いです。そして本作では、主人公であるアキレウスの怒りをテーマにして、物語が描かれていきます。

序盤は、アガメムノンとアキレウスが対立するところから始まります。アガメムノンが、アキレウスが気に入っていた捕虜の娘を奪ってしまったことから、アガメムノンに協力をしなくなってしまったのです。
 

アガメムノンやオデュッセウスの説得にも意地を張り、心を開かないアキレウス。そんななか、幼馴染みのパトクロスが、トロイア軍に殺されてしまい……。

『イリアス』の登場人物を紹介!

本作に登場する人物を、簡単にご紹介します。

 

  • アキレウス

    物語の主人公。アカイア軍の英雄です。

     
  • アガメムノン

    ミケーネの王であり、アカイア軍の総大将。とても傲慢な性格をしています。

     
  • メネラオス

    スパルタの王であり、アガメムノンの弟。妻であるヘレネーを、パリスに誘拐されました。

     
  • オデュッセウス

    イタケの王であり、アカイア軍の智将。叙事詩『オデュッセイア』の主人公でもあります。

     
  • パトロクロス

    アキレウスの幼馴染であり、親友。戦場で亡くなります。

     
  • ヘクトール

    トロイアの王子であり、勇敢な英雄。

     
  • パリス

    トロイアの王子で、ヘクトールの弟。ヘレネーを誘拐して、トロイア戦争を仕掛けた張本人です。

     

『イリアス』の主人公の怒りがすごすぎる……!アキレウスの思いとは?

 

アキレウスは、総大将であるアガメムノンからお気に入りの捕虜の娘であるブリセイスを奪われたことにより、怒り浸透し、戦争から離脱してしまいます。

アガメムノンは1つの都市の統治権を与えることや、まだ手をつけていないブリセウスを返すことを約束し、彼に戻って来てくれと懇願します。

しかし、いくら頼んでも、何を差し出されても、アキレウスは首を縦に振ることはありませんでした。それまでに彼の怒りは凄まじく、アガメムノンに憎悪を抱いていたのです。

アガメムノンも1度の裏切りで、まさかこんなにまでなってしまうとは、予想もしなかったと考えます。しかしプライドの高い男が、それを傷つけられたときの怒りは凄まじいもの。きっと、それが身に染みてわかったことでしょう。

 

『オデュッセイア』との内容の違いは?共通点の多い作品を、わかりやすく解説!

著者
ホメロス
出版日
1994-09-16

実は『イリアス』の他にも、ヨーロッパ最古の叙事詩が存在します。それが『オデュッセイア』という叙事詩です。『イリアス』の著者はホメロスという人物ですが、『オデュッセイア』も彼が作成しました。

『イリアス』は、トロイア戦争でのアキレウスに焦点を当てた物語であるのに対し、『オデュッセイア』は、トロイア戦争が終わったあとの、オデュッセウスの漂流と帰還について書かれた物語となっています。

どちらの作品も人間という存在の運命や力、そして神と人間についてが描かれており、愛や友情を強く意識させてくれる作品です。

まずは『イリアス』を読み、そのあとに『オデッュセイア』を読むことで、ホメロスが伝えたかった世界観を理解できるのではないでしょうか。

トロイア戦争とは?『イリアス』にも影響を与えた戦争の原因を解説!

 

そもそも、この戦争はなぜ起こったのでしょうか。

トロイア戦争とは大神ゼウスが、増えすぎた人口を調節するために、秩序の女神であるテミスと思案して起こした大戦です。

トロイアの王子であるパリスは、スパルタ王であるメネラーオスの妃・ヘレネーを奪い去りました。この事件を知ったアガメムノンは、オデュッセウスとともにトロイアに赴いて、彼女の引き渡しを求めましたが、相手はそれを拒否。

そのことにより、ヘレネー奪還のため、遠征軍を組織してトロイア戦争が勃発したのです。

 

『イリアス』は漫画もおすすめ!

著者
ホメロス
出版日
2011-10-31

 

ギリシャ神話の物語で共通することは、物語に登場する人物の名前が似ていて、誰が誰がだわからなくなってしまうことではないでしょうか。それで挫折してしまう方も多いかもしれません。

そんな方におすすめなのが、『イリアス・オデュッセイア (まんがで読破)』です。

漫画であるため、当然ですが、登場人物を絵で認識することができます。ギリシャ神話は登場人物を認識することで、物語がスムーズに理解できるようになります。

まずは、『イリアス・オデュッセイア (まんがで読破)』で大枠の『イリアス』を理解してから、小説を読むのがおすすめ。より一層、魅力的な本作に触れることができるかもしれませんね。

 

『イリアス』の結末をネタバレ解説!英雄ヘクトールとの戦いの行方は?

著者
ホメロス
出版日
1992-09-16

 

しばし怒りに明け暮れていたアキレウスですが、どんどんとギリシャ軍が危機に陥っていきます。やはり、彼が抜けた穴は大きかったのです。アキレウスの親友であるパトクロスが見兼ねて、彼の武具を借りて出陣します。

しかしパトクロスは、トロイア軍の英雄であるヘクトールに討たれてしまいました。悲しみにくれたアキレウスは、復讐することを誓います。そしてアガメムノンと仲直りをし、とうとう戦場に復帰したのでした。

復讐に燃えている彼はさらに強さを増し、トロイア軍をみるみるうちに追い詰めていきます。そして、とうとう、パトクロスの復讐の相手であるトロイア軍の英雄ヘクトールとの一騎打ちとなるのです。

ギリシャ軍の英雄であるアキレウスと、トロイア軍の英雄であるヘクトールの戦いは、一体どちらに軍配が上がったのでしょうか。敵であるヘクトールも、自分が負けることが妻と子供の運命を左右してしまうので、絶対に負けられない状況です。

そして、物語はクライマックスを迎えます。果たして、勝利の行方は……。この続きが気になる方はぜひ本編をご覧ください。予想だにしない結末が待っているかもしれません。

 

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